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星の勇者  作者: アシラント
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オタク少女『ヤミナ』

レイジたちはパンツ一丁の女の子に出会った。彼女はむっちりとした体形で胸が非常にデカかった。昆布はそれを見て両手を合わせて合掌した。


「あああああ!ありがたやー!ありがたやー!!たわわな果実を見られるとは...まことに眼福でござるよぉ!」


昆布は神に祈りをささげるような声で言った。レイジは気にせずにその女の子に話を聞いた。


「お前は誰なんだ?どうやってドラゴンフライに入ったんだ?そしてなんでエンジンルームにいたんだ?しかもカギまでかけて...」


レイジは気になることが山ほどあった。女の子はその豊満な胸を腕で隠しながら「ひえぇー!!!」と叫んでエンジンルームの中に入って行った。


「あ!おい!待て!」


レイジが叫んで追いかけようとしたが、扉にはすでにカギがかけられていた。


「くそっ!カギがかかっていやがる。」


レイジはそれを確認して扉をドンドンと叩いた。


「おい!お前は誰なんだよ!敵か?味方か?それをまず聞きたいんだが!?」


レイジは何度も扉を叩いたが返事は無かった。そして姉御がレイジの肩に手を置いて言った。


「やめなレイジ。どうやらこの状況に困惑しているのは向こうも同じみたいだね。ここは落ち着いて冷静に話を聞こうじゃないか?」


「姉御...そうだな。まずは落ち着こうか。今の俺は冷静じゃなかったな。」


レイジはそう言って深呼吸をして気持ちを落ち着けた。


「...とりあえず、どうする?」


レイジはみんなに聞いた。するとあんこが真っ先に言い始めた。


「それはもちろん!仲良くなろうよ!あたし意外にも服を着ない女の子は初めて見たよ!ぜったいに仲良くなれそうだよ!」


あんこは興奮した様子で言った。レイジはうなずいた。


「...確かに、俺もそんな女の子は初めて見たな。あんこと仲良くなれるかもしれないな。」


レイジはそう言った。ネネはツッコんだ。


「...なんで冷静に分析しているのよ。これからどうするかって話をしているんじゃないの?」


レイジはハッと気づいた。


「ああ!そうだったな。まあ、とりあえず待とうか。話を聞かないと彼女が敵か味方かもわからない。知りたいことがいっぱいだからな。」


レイジがそう言うとみんなは頷いた。


「そうでござるねぇ。無理やり扉を壊して入ったりしたら、冷静な話し合いにはならなさそうでござるしねぇ。」


昆布の言葉にレイジたちはうなずいた。そしてレイジは扉に向かってしゃべりかけた。


「なあ!さっきは悪かったよ。驚かせるマネしちゃって。とりあえず俺たちは君と敵対する気は無い。だから落ち着いたら話してくれないか?この扉越しでも構わないからさ。」


レイジは扉の向こうにいる女の子に聞こえるように大きな声で言った。すると向こうから声が聞こえてきた。


「そ、それは本当?ほんとにウチを傷つけない?」


「あ、ああ!本当だとも!ただ話を聞きたいだけなんだ。このドラゴンフライ...この乗り物は俺たちが昔に乗っていたものなんだ。だから久しぶりに見に来ただけなんだ。人が住んでいるとは思ってなかったからビックリしただけだよ。」


レイジは極力敵意がないことをアピールするために細心の注意を払って言葉を選んだ。その姿勢に姉御は感心していた。そして小声でレイジを褒めた。


「レイジ。なかなか人の心を理解してきたじゃないか。そうだね。相手は怖がっている。そんな相手に対しては敵意が無い事を表すのが一番大事だからね。」


「...あ、ありがと。」


レイジは照れくさそうにお礼を言った。そして壁の向こうからまた声が聞こえた。


「そ、そうなの?この船、あなたたちのものだったの?そ、それは、ご、ごめんなさい。」


「ああ!謝らなくてもいいよ!俺たちもまさかほかの人に見つかるとは思ってなかったからさ。ちなみに、どうやってこの船を見つけたの?」


「そ、それは...」


壁の向こうの女の子は言葉に詰まった様子だった。そして少しの時間を空けてからまた話し始めた。


「ぐ、偶然、見つけたの。そのー、うち、機械が好きで、探知機で見つけたの。」


「探知機?」


レイジはそう聞き返した。すると返事が返ってきた。


「そ、そう。うちの発明品第4号。未知の金属を探知できる優れもの...だからこの船見つけられたの」


「なるほど。未知の金属を探知できる...そんなものがあったとは。知らなかったな。」


「う、うん。だってこれ作ったのウチだから。きっと、世間じゃ知られてない...と、思う...たぶん」


「なるほどなー。この船に未知の金属が使われていたとは...なるほどな。一応予想していた一部は当たっていたのか。」


レイジは自身の予想が当たって嬉しそうだった。そして女の子は少し声色を明るくして言った。


「う、うん!だから、ウチはこの船までたどり着けたの。そしてこの船を見たときはもう目玉が飛び出るかと思っちゃった!だって光学迷彩ステルスをこんなに大きなものに使用されているとは思ってなかったもん!しかも本当に驚いたのはエンジンルームだね!故障してたけど一目でわかったの!この船は私の知らない技術がふんだんに搭載されてるんだー!ってね!だからウチはこのエンジンルームにこもりっぱなしで研究してたの!だけどそこで問題になったのがウチは極度の怖がりってところだよね!もーうカギのかかってない部屋だと落ち着かなかったの!だからエンジンルームにカギかけたの!それでね...」


彼女は早口でペラペラと話し始めた。その内容がレイジと姉御の耳にはきちんと入っていたが、ほかのメンバーの耳には入らなかった。そして昆布が小声で言った。


「あー、彼女はあれでござるね。いわゆる、『オタク』ってやつでござるね。好きなものについては永遠に口が回るタイプの人間でござるね。」


昆布の発言にネネはうなずいた。


「そうね。何言ってるのか途中から分からなくなったけど、本人は楽しそうだものね。なんだかレイジと似ているところがあるわね。」


あんこは不思議に思った。


「ええー?レイジと似てる?どこら辺が?」


ネネは答えた。


「そうね。好きな物にはとことん突き詰めるタイプなところかしら?レイジは知識欲を深めるために、扉の向こうの彼女は機械のことを知るために、周りの目も気にせずに没頭する感じかしら?うらやましいわ。」


昆布はうなずいた。


「確かに!兄貴もそういう所あるでござるね!興味ないときは冷静なのに、興味ある時は興奮して活発になるところ。確かに似ているでござるね!」


あんこはネネと昆布に言われて気づいた。


「確かに―!レイジも昔からそうだったね!」


3人がそんなことを話しているときにも壁の向こうの少女は話し続けていた。それを真面目に聞いていたのはレイジと姉御だけだった。そして壁の向こうの少女はハッと気づいて話すのをやめた。


「...ごめん。ウチ、一人で永遠にしゃべってた。」


少女はそう言って沈黙した。レイジは首をかしげた。


「ん?そうか?俺はすごく面白いと思って聞いていたがな。もっと話を聞きたいんだけどな。」


レイジは本心からそう思って言った。少女はその言葉に驚いた。


「...う、うちの話を、聞きたいの?」


「ああ。とても興味深い内容だった!俺もこの船のことを知りたいと思っていたから、聞いていてとても面白かったぞ?だからもっと話してくれないか?」


レイジはそう言った。すると少女は照れくさそうに言った。


「そ、そうなの?ウチの話、面白いの?」


「ああ!聞いていてワクワクする内容ばっかりだったぞ?だから途中でやめないで最後まで話して欲しい。」


「そ、そう?そうなの?...そんなこと言われたの、生まれて初めてだよ...」


少女は小声でそう言った。レイジは聞き取れなかったので聞き返した。


「ん?なんだって?」


「ああ!いや!な、なんでもないよ!うひひ。」


少女は気味の悪い笑い声をあげた。それを聞いてレイジは姉御に聞いた。


「なあ?姉御?この笑い声は本心からの笑い声って事か?」


「ああ。あたしには分かるよ。これは本心からの笑い声だね。きっとレイジがその子の話を面白いって言ってくれたのがよっぽど嬉しかったみたいだね。」


姉御はそう言ってレイジの頭を撫でた。レイジは疑問に思った。


「なんで頭をなでるんだ?」


「そりゃ、あんたが人の気持ちをきちんと知ろうとしている姿勢を見せたからだね。あんたの精神的な成長を感じられてあたしは嬉しいのさ。」


「なるほど。...だが、恥ずかしいからやめてくれよ。みんなが見ているから。」


レイジは後ろをチラッと見て言った。姉御はフフッと笑って撫でるのをやめた。


「ああ!ごめんごめん!そういえばあんたはそうだったね。もう子供じゃないものね。」


姉御は楽しそうに笑った。そんなことをしていたらエンジンルームの扉がキイィっと開いて、中から少女が出てきた。


「あ、あの...こ、こんにちは...」


少女は黒と紫のローブを着て出てきた。その顔は真っ白の肌にそばかすと丸い眼鏡、三白眼の黒い瞳、そして毛量の多い癖っ毛ロングだった。レイジはそれを見て思った。


『なんだか気弱そうな子だな。目が泳ぎまくっているし、目を合わせようとしない。チラチラとこちらの様子をうかがっているみたいだ。こんな感じの子には、敵意が無い事を証明するために...』


そう思ってレイジは優しい笑みを浮かべてゆっくりと手を挙げた。


「こんにちは。驚かせてごめん。君を傷つける気は無いから安心してね。とりあえず、自己紹介からしてもらってもいいかな?」


レイジは他の仲間たちが驚くほどの優しい声と態度で言った。それを聞いて少女は指と指をもじもじさせながら言った。


「あ、あの...ウチの名前は『ヤミナ』。へ、へへ。あのー、年齢は23歳、女です...。えっと...機械が好きです...あのー。よ、宜しくお願いします...」


ヤミナはヘラヘラとした笑みを浮かべて小刻みにペコペコとお辞儀をした。レイジは優しく微笑んで答えた。


「ヤミナっていうのか。可愛い名前だな。俺はレイジ。こっちがあんことネネと昆布。そして姉御の『アネッサ』。みんなからは姉御って呼ばれてる。」


姉御たちはそれぞれ挨拶をした。ヤミナはペコペコとさっきと同じようにお辞儀をした。そしてレイジは聞いた。


「ところで、ヤミナはどこから来たんだ?」


「あ、あの、えーっと...」


ヤミナが答えようとしたときに、入り口からゴゴが大声を出しながら入ってきた。


「うおおおおおおおお!!!俺の予想通りだあああああああああああ!!!」


その大声にびっくりしたヤミナは再びエンジンルームに閉じこもってしまった。それを見た姉御はムッとした表情でゴゴを見た。ゴゴは気にせずにガッハッハと笑った。


「この飛行船は歩けるぞー!!飛べないけどな!!ガッハッハ!!!」


ゴゴは楽しそうに笑った。そして姉御はため息をついた。


「ゴゴ...せっかくあの子が出てきたところなのに...」


姉御はそう言ってゴゴに殺意を向けた。ゴゴは「なんだー?修行か!?」などとポジティブな発言をした。姉御はゴゴを連れて外に出て説教を始めた。


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