ドラゴンフライ墜落地点に到着
レイジたちは姉御に稽古をつけてもらいながらドラゴンフライが不時着した場所まで歩いてきた。そこは木々が生い茂る山の中だった。
「ほんとにこんな場所にあるのかー?行けども行けどもおんなじ景色ばっかりなんだがー?」
ゴゴは体がデカいため、木の枝や葉に体をぶつけながら言った。レイジは振り向いて答えた。
「もうすぐだ。光学迷彩ステルスで隠してるから見つかりにくいけどな。けど、このリモコンでステルスを解くから安心しな。」
レイジはそう言って懐からリモコンを取り出しスイッチを押した。しかし周りの景色に変わりはなく、ゴゴは不思議に思った。
「何にも変わんねーぞ?ほんとにこの辺りなのかー?」
「まあそう焦るなって。この先にあるから!」
レイジはそう言って草木の生い茂る場所を突っ切って行った。するとそこには銀色に輝くとても大きな物体がツタに覆われている状態であった。それを初めて見たゴゴたちは息をのんだ。
「これが...『ドラゴンフライ』!?」
ゴゴはそう言って全体を見てみた。その大きさはまさに大型の旅客機ほどの大きさで、頭の方に昆虫の複眼と思わしきものが2つあり、口はドラゴンのようなギザギザの牙を生やしたものだった。腕は爬虫類のようなたくましい腕が2つと反対側にも同じものが2つ付いていた。そしてその後ろには爬虫類の足が1つずつ左右についていた。胴体はトンボのような胸が大きく、尻尾にかけて細くなっていく形だった。そして羽は上下に2枚セットのものが横に3セット並んでおり、反対側も同じだった。
「ああ。このやべー見た目のものがドラゴンフライだ!まさにトンボとドラゴンの中間地点って感じだな!さいっこーにカッコいいだろ!?」
レイジはみんなに聞いた。昆布はウッキウキで興味津々に見ていた。ネネも興味を抱いていた。そしてゴゴはなにか考えていた。それに気づいたレイジはゴゴに聞いた。
「ゴゴ?どうかしたか?」
レイジに聞かれてゴゴはドラゴンフライをじっと見ながら答えた。
「...これ、見たことがあるぞ?」
「なに!?それは本当か!?いったいどこで見たんだ!?」
レイジは意外な発言に驚き、すぐにゴゴに聞いた。ゴゴはうなずいてから答えた。
「これ、うちのパパが造ったやつだ。脱走するときにこれの小型の奴を使ったから覚えているぞ」
ゴゴの発言にレイジは驚いた。
「なに!?お前のパパだと!?それって、お前が施設で育ったって言ってた時の育ての親か?」
「ああ。そうだ。納豆丸と俺の育ての親だ。まさかこんなところにあったとはな。」
「こんなところ?」
レイジは聞いた。
「ああ。納豆丸たちが幻獣退治に向かったときに乗ったんだが、無くしちまったらしくてな。あん時はさすがにびっくりしちまったぜ。」
「いや、ビックリって...そんな次元の話じゃねーだろ...」
レイジは冷静にツッコんだ。ゴゴはガッハッハと笑った。
「なるほどな!その時盗んだのが姉御って訳か!?」
ゴゴはそう言って姉御を見た。レイジたちも姉御の方を見た。姉御は珍しく冷や汗を流していた。
「い、いやー?よ、よく、わかんないなー?違うと思うけどなー?」
姉御は明らかに挙動不審な態度で言った。ゴゴはガッハッハと笑った。
「そうか!違うか!じゃあ俺の予想は外れたって訳だな!」
ゴゴは明らかに怪しい姉御の言葉を信じて笑った。レイジは再びツッコんだ。
「いやいや!明らかに嘘ついてるだろ!」
「なに!?嘘なのか!?姉御...俺を騙すとは、嘘が上手いんだな!」
「いやー?明らかにヘタだったぞ?むしろゴゴを騙せない嘘って無いんじゃないかー?」
レイジはツッコんだ。そして姉御は苦笑いをしながら話し出した。
「まあ、冗談は置いといて、本当にあたしは盗んでないよ。ただ、あたしが前に所属していたチームが持っていたね。それをあたしが今使っているってことさ。」
姉御はそう言った。レイジはうなずいた。
「ああ。前に聞いたな。それ。たしかあんまりいい思い出のないチームだったんだっけ?」
「そうさ。だからあんまり話したことは無かったが、その時のものさ。」
姉御はそう言った。ゴゴは納得した。
「なるほどな!よくわかった!じゃあとりあえず中に入ろうぜ!」
ゴゴはそう言ってドラゴンフライの脇腹に手を当てた。するとそこにあった扉がスライドして開いた。それを見たレイジはうなずいた。
「そうだな。早速入るか。それにしてもゴゴ。お前は本当にこの飛行船のことを知ってんだな。」
「ん?そうだが、なんで今更?」
「いや、この扉は一見すると扉には見えないだろ?だけどお前は迷いなくこの扉を開いた。それは知っている者じゃないとその行動は出来ない。だろ?」
「はえー!そうなのか!よく観察してるなー!レイジ!」
ゴゴは感心した様子で言った。レイジはフフッと笑った。
「まあね。相手のことを観察するのはもう癖だからな。無意識にやっちまうんだよ。」
レイジは少し誇らしげに言った。昆布は褒めた。
「さっすが!兄貴でござるね!拙者はそんなところまで気が回らないでござるよ!」
昆布はニッコニコで言った。レイジは褒められすぎてなんだか照れくさくなってきた。
「ま、まあ!そんなことはいいから!早く入ろうぜ?」
そう言ってレイジはスタスタとドラゴンフライに入って行った。それに続くように昆布たちも入って行った。
「えーっと、明かりはーっと...」
レイジはドラゴンフライの中にあるスイッチを押して電気をつけた。すると内装が昆布たちの目にも入ってきた。それはとてもシンプルな内装で、キャンピングカーのような内装だった。向かい合った席が何セットもあり、キッチンが入って左側にあった。そして色は外の銀色一色とは違い、オレンジ色やこげ茶色を基調とした、明るい色で構成されていた。さらに窓があり、そこからは外の様子が見えた。昆布はそれらを見て驚いた。
「すっげー!中は普通の家みたいな内装なんだなー!しかも窓までついてるし!」
昆布は窓に近づいてみた。レイジはそんな昆布に声をかけた。
「ああ。窓はどうやら外の映像を映し出すものらしい。外側にカメラかなんかがついてて、それを窓みたいにしてるんだ。」
レイジは説明した。昆布は「へえー!」と言って興味津々にいろんなところを見ていた。そして一通り見終わった後に昆布は次の部屋へと向かった。
「じゃあ次は前の方を見たいでござるよ!」
「ああ。前の方には操舵室があるぞ。」
「操舵室!?なんだかワクワクするでござるね!」
昆布はルンルンと小躍りをしながら前の扉を開けた。そこには長い廊下と左右に扉が合計で8つ付いていた。
「ここが...操舵室?」
昆布は思っていたものと違うのでレイジに聞いた。レイジは首を振った。
「ああ、ここは違うんだ。ここはただの個室部屋だ。」
そう言ってレイジは個室の扉を1つ開いた。昆布は中をのぞいた。そこには白いベットと茶色のデスクと椅子があるだけの簡素な部屋だった。
「ほえー!これが個室でござるか。必要最低限のものしかないでござるねー。」
「そうなんだよな。まあ、俺はこれだけあれば十分だけど、あんこはつまんないからあんまり使ってないな。」
「そうなんでござるか...ちなみにここは誰の部屋でござるか?」
「ここは空き部屋だ。俺の部屋は一番前の右側だ。左側が姉御、その後ろがあんこだ。昆布たちはそれ以外の部屋を適当に使ってくれよ。...ドラゴンフライが動かせるようになったらの話だが...」
レイジはそう言って扉を閉めて廊下を渡り前の扉を開いた。そこが操舵室となっていた。
「なるほど!これが操舵室でござるか!」
昆布はじっくりと見た。先ほどとは違い、壁も床も天井も白一色で、目の前には席が2つあり、その周りには訳の分からないレバーやスイッチが沢山あった。
「ああ。この操舵室で色々操作してこの飛行船を動かすんだ。」
そう言ってレイジは左の席に座り、赤色のスイッチを押した。すると周りの景色が一瞬にして外の景色を映し出すものに変わり、音声が鳴った。
『ドラゴンフライ、起動。』
それは女性の声だった。その声はまさに機械のような冷たく淡々とした印象を与える声だった。昆布は驚いた。
「うわぁ!?なんか、音が鳴ったでござるよ?」
「ああ。これは俺もよくわかんないが、まあただの音声アナウンスだ。別に誰かが話しかけてるわけじゃない。」
「そ、そうなのでござるか?つまり、録音した声を再生してる...みたいなことでござるか?」
「まあ、そうなんじゃないか?よくわかんないから調べたいんだがな。この船一回壊したしな。これ以上は余計なことしないって誓ったんだ。だから調べない事にしてる。」
レイジはほほを指でかきながら言った。そして昆布はうなずいた。するとビービーと警告音が鳴ると同時にさっきの女性の声が鳴った。
『警告、エンジンルームに異常を確認。これではフライト出来ません。修理に必要なパーツを表示します。』
アナウンスの声はそう言って目の前のモニターにパーツを映し出した。レイジはため息をついた。
「ああ。これが俺が壊したパーツだよ。」
「はえー!だから兄貴は修理に必要なパーツが分かってたんでござるね!拙者はてっきり兄貴が自分で調べて導き出したものかと思っていたでござるよ。」
「まあ、一応自分自身でも確かめたが、壊したパーツは俺自身がよくわかってるからな。それを表示されたらもう確定だろ。」
「そうでござるねぇ。」
昆布はそう言ってレイジの顔を見た。レイジは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「...まあ!とにかく、修理に必要なパーツは変わってないことが分かった。だからまあ、サンシティに戻らなくて済んだな。これからどうするか、まだ決まってないが...」
「...じゃあ!せっかくだからエンジンルームも見せて欲しいでござるよ!」
昆布はそう言った。レイジはうなずいた。
「ああ!そうだな。きっとエンジンルームを見れば昆布も興奮すると思うぞ!」
「じゃあ早速行ってみるでござるよ!」
レイジと昆布はそう言ってエンジンルームに向かった。姉御とあんことネネはリビングダイニングルームでお菓子を食べながら談笑していた。そしてゴゴの姿が見えなかったのでレイジは姉御に聞いた。
「あれ?ゴゴは?」
姉御は答えた。
「外にいるよ。ドラゴンフライの外見が気になったって言ってたね。」
「ふーん。そうか。」
レイジはゴゴの行動が少し変だと感じながらもまずはエンジンルームに向かった。エンジンルームは一番後ろにあるのでレイジは後ろの扉を開こうとした。
「ん?あれ?」
レイジはその扉がカギがかかっていることに気づいた。そしてレイジはすぐにそのおかしさに気づいた。
『この扉...カギなんかついてないぞ?どういうことだ?』
レイジはなにか嫌な予感がした。なので姉御たちにそれを伝えた。すると姉御はいぶかしげにその扉のドアノブに手をかけた。やはり扉には鍵がかかっていた。
「...おかしいね。明らかにおかしいよ。ここにカギなんかないものね。もしかして、侵入者?」
姉御はレイジに聞いた。しかしレイジは首を振った。
「いや、光学迷彩ステルスを常に張っていたんだ。見つかる事なんかないだろう。それにもし見つけたとしても扉に気づくとは思えないし、さらにエンジンルームにカギをかける必要性を感じない。カギをかけるならまず入口の扉だろ?」
「...確かにね。まあなんにせよ、警戒はしておいた方がいいね。」
そう言って姉御は薙刀を取り出し、その扉を破壊しようとした。その時、扉が開いた。
「...なーに?また音楽でも流してんの...?」
中から出てきたのはパンツ一丁のぽっちゃり体系をした女の子だった。レイジたちは呆気にとられた。そして女の子はレイジたちを確認すると胸を隠して叫んだ。
「...キャー―――――――!!!!だ、誰よあんた達!!?」
女の子はそう言ってしゃがみこんだ。そしてレイジが言った。
「お前こそ、誰なんだ!?」