元々の旅の目的『ドラゴンフライ』
レイジたちは何事も無く夜を過ごして日が昇った。レイジはテントから出て伸びをした。
「うぅーん。結局襲撃者たちは襲って来なかったな。さすがにここまでは追って来られなかったのか?それともまだ潜伏しているのか?」
レイジはそう不安に思った。そしてゴゴが夜の見回りから戻ってきた。
「おう!レイジ!夜の襲撃は来なかったぜ!俺の目には人影ひとつ見えなかったぜ!」
ゴゴはそう言ってニッコリと笑った。それを見たレイジは少し気まずかったが愛想笑いをした。
「そ、そうか。ありがとな。」
レイジは避けるようにゴゴの元を離れていった。
『うぅ。気まずいなー。ダンたちを殴り殺した件が寝ても忘れらんねーよ。ゴゴの方は全く平気そうだしなー。それが逆に怖いんだよなー。あいつの頭の中がわかんねー。』
レイジはそう思った。そしてレイジが辺りを見回している間に全員が起きてきた。レイジは周りの安全を確認してからみんなのもとへと行った。
「姉御。今周りを見たが人の気配は無かった。」
「そうかい。ありがとね。レイジ。」
姉御はレイジに礼を言った。そしてレイジが聞いた。
「これからどうするんだ?行く当てがあるのか?」
姉御はうーんとうなってから言った。
「とりあえず魔王城の場所を記した紙をサンシティの王様に報告しに行こうか。」
姉御はそう言った。レイジたちは頷いた。
「そうだな。それが最初にやるべきことだな。じゃあサンシティに行こう!」
レイジはそう言ってサンシティに向けて歩き出した。そしてドナルドはレイジに言った。
「レイジ。俺たちも一応サンシティまでは付いて行く。だが、そこからは別行動になる。」
「そうか...わかった。じゃあもしマフィアタウンを取り戻したらサンシティの王様に伝えてくれ。俺たちもどこにいるのかを旅の前にサンシティの王様に言っておくから。」
「ああ。わかった。」
レイジとドナルドはそう言ってお互いに笑顔で会話した。そしてレイジたちはサンシティに向けて歩き始めた。
「いやはや、昨晩は襲撃のチャンスがありませんでしたねぇ。まさか一睡もせずに見張りを続けるとは...筋肉だるま君は本当に変わった生き物ですねぇ。」
レイジたちの動向を透明になって見張っている者がいた。それはユダだった。ユダはレイジたちの様子を離れたところから距離を保って追いかけていた。
「襲うのなら寝込みが一番だと思っておりましたが...これは面倒なことになりましたねぇ。しかし、せっかくのチャンスですから慎重に行動したいですねぇ。今のうちにブレイブ殿を狙うのもありではありますが...キングナイト家にいるのでしたら襲撃は難しいでしょうしねぇ。」
ユダは不気味な笑い声を出しながら言った。そしてユダは頭がフラフラとし始めた。
「おっと、さすがに一晩中起きていたために睡眠不足で倒れそうですねぇ。一休みしましょうか。」
ユダはそう言ってレイジたちが野宿した場所で寝始めた。
「わたくしの目的を達成するために...彼らには死んで頂かねばなりませんねぇ...」
ユダはそう言ってアイマスクをして眠りの世界に入っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイジたちはサンシティへの道中にいた。
「やっぱり歩きは疲れるなー。はやくドラゴンフライに乗りてーなー。」
レイジはボソッと言った。それを聞いたネネはレイジに聞いた。
「ドラゴンフライ?なに?それ?」
ネネは不思議そうな顔で言った。レイジはネネの方を向いて言った。
「そうか。ネネ達はドラゴンフライを知らないのか。俺たちが歩いて旅してんのはドラゴンフライっていう空飛ぶ機械の修理パーツを探してるんだよ。なんでも神のへそくりのような謎の化学兵器らしくて、とんでもない高値か謎の遺跡にしかないんだってよ。」
レイジの説明にネネはフーンと言った。
「空飛ぶ機械...飛行機とかじゃないって事?」
「そうそう。飛行機とかの機械よりも断然ヤバいんだよ。まず機動性が段違いなんだ。ドラゴンフライって名前の通り、トンボのような動きをするんだよ。直線的な動きじゃなくてホバリングしたり急発進したり急停止したり。おまけにシールドが内蔵されてるから敵の攻撃を防いでくれるんだよ。」
レイジは説明した。ネネは興味なさそうにフーンと言った。
「レイジ。なんだか楽しそうね。」
ネネの言葉にレイジは照れながら言った。
「わかっちまうか?俺はそういう謎の化学兵器が大好きなんだよ!これはいったい誰が、いつ、何のために作ったのかってことを考えるだけでウキウキしちまうんだよ!」
レイジは興奮気味に言った。ネネは相変わらず冷めた感じだった。
「...そう。レイジがこんなに興奮するなんて、よっぽど好きみたいね。そのドラゴンフライが。」
「ああ!そうなんだよ!子供の頃は不思議に思わなかったが、今になって考えてみると不思議な性能が盛りだくさんなんだよ!俺の想像の10倍は謎だらけなんだよ!」
レイジは興奮で鼻息を荒くしながら言った。ネネはそんな意外なレイジの一面を見れてフッと笑った。
「レイジ。なんだか子供みたいね。楽しそう。」
ネネは口角を上げながら言った。レイジは照れくさそうに頭をかいた。
「あ、ああ!わりぃ!つい興奮しちまってな。」
レイジは少し頬を赤らめながら言った。そしてその話に昆布も参戦した。
「兄貴ぃ!その話。拙者にも聞かせてくれでござるよぉ!」
昆布はレイジの肩に手を回して言った。レイジは嬉しそうに語り出した。
「おう!そんなにドラゴンフライの話が聞きたいか!?いいだろう!徹夜で語ってやる!」
レイジはそう言ってドラゴンフライのことについてペチャクチャ喋りだした。昆布はそれを目をキラキラさせながら聞いていた。その二人の様子を見たあんこと姉御は意外そうに見ていた。
「...まさかレイジのあの変な話を熱心に聞く人が現れるなんて...昆布ってすごいね!あたしはまったく理解できなかったよ!」
あんこはそう言った。姉御もうなずいた。
「ああ。あたしもレイジがドラゴンフライにあそこまで熱意を持ってることに不思議だったが、それを分かち合える友達ができてよかったと思うよ。まあ、あたしもドラゴンフライの魅力は全くわかんないけどね。」
あんこと姉御はそう言った。それにネネもうなずいた。
「私も。機械がそんなに珍しいのかしら?それなら道端に廃棄されている苔むした機械とか、いっぱいあるじゃない。それには興味ないのかしら?」
ネネはそう言った。ネネの発言に姉御は言った。
「たしかに、レイジが小さい頃はそういうのにも興味があったけど、今は全く見向きをしないね。さすがに見慣れたのかねぇ?」
姉御はレイジの親目線から言った。そしてレイジたちの話にドナルド達も混ざってきた。
「レイジ。おめー、そんな面白そうなもん持ってたのか。」
ドナルドはそう言った。アルバーニもうなずきながら言った。
「俺たちにも見してくれよ!なんだか、ロマンを感じる話じゃねーか!」
アルバーニの発言にフォルキットもうなずいた。
「そうですね。ロマンがありますね。わたくしも興味がありますよ。」
アルバーニ、フォルキットの発言にゴゴが食いついた。
「なにぃ!!?ロマンだとぉ!!?どこだ!どこにいやがる!!?」
ゴゴは必死になってロマンを探し始めた。そのバカな行動にドナルドがツッコんだ。
「いや、そこら辺に生えてるわけじゃねーよ。レイジの話の中にあるんだよ。」
ドナルドの冷静な発言にゴゴはギュイーンと首を勢い良く動かして振り向いた。
「なにぃ!!?そうなのか!?レイジ!俺にも詳しく聞かせてくれ!!?」
ゴゴはそう言ってレイジに近づいた。レイジは少し恐怖を感じながらも、それをゴゴに悟らせないように笑顔で接した。
「あ、ああ!いいぞ!ドラゴンフライの話をしよう!このロマンをわかる奴がたくさんいてくれれば俺も嬉しいからな!」
レイジはそう言って男たちに話し始めた。男たちはまるで子供のようにはしゃぎ、レイジの話を夢中で聞いていた。それを見たあんこ、姉御、ネネは冷めた目で見ていた。
「ねえ、姉御ちゃん。ネネ。男の子って、なんでそういう話が好きなの?」
あんこの質問に姉御もネネも首をかしげた。
「さぁねぇ。なにが楽しくて機械の話をするんだか、あたしには理解できないよ。」
「そうね。私もわからないわ。ただ、本人が楽しそうならそれでいいんじゃないかしら?無理に理解しようとしなくても。」
ネネの言葉にあんこは大きくうなずいた。
「そうだね!ネネの言うとおりだよ!ネネは頭がいいね!あたし納得しちゃったよ!」
あんこはそう言った。そのまっすぐな誉め言葉にネネは少し恥ずかしそうに眼をそらした。
「そ、そうかしら?まあ、納得してくれたんなら、私はそれでいいけど...」
ネネはほほを赤らめた。そしてあんこはニコニコと笑った。