納豆丸の報告&幻獣たちの会議
納豆丸は作戦を成功させてパパのもとへと帰ってきた。
「ただいま。パパ。」
納豆丸は最上階の部屋で優雅に座るパパに言った。パパは椅子を回転させて振り返り、納豆丸の方を見た。
「帰ったか。よくやったな。」
パパは早速納豆丸をねぎらった。納豆丸はニッと笑った。
「まあね。レイジたちが万全の状態じゃなくてよかったよ。万全だったらめんどくさかったと思う。というかワンチャン負けてたかも?」
納豆丸は首をかしげながら言った。パパは無言で聞いていた。そして納豆丸は話を続けた。
「それにしても、マフィアタウンを実質俺たちのものにするってのは、最初はどうかと思ったよ。でも面倒な運営はマルテーゼとニッコリーニに任せて、武力だけを与えるのは最高だね。これで俺たちの兵隊の経験も積めるし、安全な領地を確保できるし、何よりあいつらは俺たちに反抗する力を持たないから上下関係がはっきりしてる。さすがはパパだね。いい作戦を思いつく。」
納豆丸はパパを褒めた。パパはフッと笑った。
「そうだな。復讐に燃える人間の心なんて、簡単に操れる。それにマフィアタウンは昔から欲しかった土地だ。それをマフィア同士の戦争って建前で取れるのは嬉しい事だったからな。少し予定が早まったが、まあいい。」
パパはそう言った。納豆丸は話し始めた。
「でも予想外だったのは先輩だね。先輩はどうやら魂の力を使えなくなってるみたいだよ。」
「...そのようだな。」
「どうすんの?助けるの?」
納豆丸の質問にパパは少しの間考えてから答えた。
「...まあ、放っておけ。私の予想以上にアレは強くなっていた。これ以上強くなられると面倒だ。いつでも簡単に殺せるような弱さでないと困る。かといって弱すぎて私たち以外の者に殺されるのも困るが...まあ、そうなったらまた考えるさ。今はアレを強くさせない事が優先だ。」
「ふーん。わかった。」
納豆丸は無表情のまま言った。そしてパパは椅子を回転させて納豆丸に背を向けた。
「話は以上だ。次の作戦まで自由に行動していてくれ。」
「ういーっすー。」
納豆丸は適当な返事をしてからその場を去った。そして納豆丸がエレベーターに乗っている最中に独り言を言った。
「...先輩。魂の力が使えなくなるって、どういうことなの?これは、なにかの前兆ってやつ?それともただ単に先輩がバカすぎるだけ?」
納豆丸はゴゴのことが気になって仕方がない様子だった。
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ビャッコは色が反転した謎の世界に来ていた。そこにはセイリュウとゲンブと幻獣の王がいた。
「おおおおおお!!?こんなに揃ってやがったのかよ!!?」
ビャッコは驚いた。だがセイリュウたちの方がもっと驚いていた。
「ね、猫ぉ!!?なんでお主がここにいるのじゃ!?あと1000年は目覚めぬはずじゃなかったのかのぅ!?」
セイリュウは驚きの声を出していた。ゲンブは口をポカーンと開けたまま目をパチクリさせていた。そして幻獣の王も驚いていた。
「ビャッコ...もう目が覚めたのかい?」
幻獣の王の問いかけにビャッコはニヤリと笑った。
「おうよ!俺様は無事に刑期満了してこの姿で戻ってきたぜ!!」
ビャッコはギラリと光る牙を見せながら笑顔で言った。幻獣の王は少し考えてピンときた。
「そうか。あの一族の末裔に出会ったんだね?」
幻獣の王の質問にビャッコは嬉しそうに答えた。
「そう!その通りだ!さすがは王。分かってんじゃねーか!」
ビャッコは高笑いをしながら言った。幻獣の王はフフッと笑った。
「そうか。だが1000年分の力をもらったということは、あの一族は覚醒者かな?」
「いや、まだその域には達してなかったぜ。それより、レイジとかいう奴らの力をもらったのがでかかったな。 あいつらの力は勇者の力そのものだったな。何者なんだ?あいつら?」
ビャッコは幻獣の王に聞いた。幻獣の王は答えた。
「彼らは、恐らく勇者の力を受け継いだ者たちだよ。しかも一人一人は対して強くない。彼らを殺して魂を喰らえば我々のひとつの目的は果たされることになるね。」
「そうかい!やっぱりあいつらが先代勇者の力を持った奴らだったのか!?どうりでその力を強く感じたわけだぜ。まあ、俺はその力を少しだけ吸収したが、俺の力に変化はねーな。やっぱり魂を喰わねーとダメっぽそうだな!」
ビャッコはニヤニヤと笑った。そしてセイリュウが話に加わった。
「なんじゃ、猫。お主、レイジたちに会ったのか?」
「ん?ああ。そうだが?」
ビャッコが答えるとセイリュウはパアッと明るい表情を浮かべた。
「そうか!?お主、レイジたちに会ったのか!?あぁー!また会いたいのぅ!レイジはわらわが一目惚れした男じゃからのぅ!種族の壁を越えた愛!あぁーーー、妄想が膨らみよるわ!」
セイリュウはとろけるような表情を浮かべた。それを見てビャッコはため息をついた。
「はぁ、またかよ。お前、恋しやすすぎるだろ。これで何人目だ?相手がちょっとでもタイプならアタックしまくるからな。」
「失礼な!今回はビミョーに違うんじゃ!なんというか...なにかが違うのじゃ!」
「全然わかんねーよ。」
「うっさい!とにかく!今回だけは特別なのじゃ!」
「はいはい。それいっつも言ってるぞ?」
ビャッコは適当にあしらった。セイリュウはぐぬぬっという顔をした。そして幻獣の王は言った。
「ビャッコ。セイリュウ。色々と考えるところはあると思うが、余計な行動はしないでくれよ?我々の復活をあいつらにバレたくないからね。せっかく神が死んだ時なんだ。このチャンスは逃したくないだろう?」
幻獣の王の言葉にふたりは黙った。そしてビャッコが口を開いた。
「...たしかにそうだな。千載一遇のチャンスってやつだな。復活したことで、はしゃいでたぜ。」
「そうじゃのう。わらわたちが地上に出られるなんて夢にも思っておらんかったからのぅ。...じゃが、本当に殺すのか?返り討ちに遭う可能性は無いのかのう?」
セイリュウの質問に幻獣の王は顎に手を当てて考えてから言った。
「確かに、油断はできない相手だね。だけど君たち四幻獣とわたしが加われば何とかなるはずさ。」
幻獣はそう言った。ビャッコはボソッとツッコんだ。
「四幻獣の1人のスザクはいねーけどな。」
その言葉に幻獣の王は困った顔で笑った。
「フフフ。確かにそうだね。彼がレイジの中にいることは明白だ。なぜ彼がレイジに協力しているのかは謎だが、レイジはまだ彼の力を引き出しきってはいない。まだ体を炎にするまでしかいってないんだろう?」
幻獣の王はビャッコに聞いた。ビャッコは頷いた。
「ああ。しかもどうやら初めてみたいだぜ。魂の力の燃費が悪すぎた。全然使いこなせてねー証拠だ。」
ビャッコは答えた。幻獣の王はニッコリと笑った。
「じゃあ大丈夫だ。きっとスザクもいやいや協力したんだと思う。それか、彼の性格上不器用な人間を放っておけなかったか。そのどちらかだと思うよ。スザクは我々を裏切ったわけじゃないと思う。だから心配しなくてもいい。」
幻獣の王はそう言った。ビャッコはフンッとそっぽを向いた。
「別に俺はあいつのことなんか心配してねーよ!それに、もしあいつが裏切ってたとしたら、それこそ俺にとってはありがてぇ状況だぜ。なにせ長年の恨みをぶっ殺して晴らせるんだからな!」
ビャッコは悪い笑みを浮かべた。そしてようやくゲンブが口を開いた。
「ビャッコ!?...いーーーつ来たのーーーーー?」
ゲンブは今まで驚いて思考が止まっていたので今になって聞いた。ビャッコは呆れて強く言い返した。
「お前はほんっっっとおおおおおおおおにトロイなぁ!!!」
そう言ってビャッコはゲンブの頭をポカッと殴った。しかしゲンブは全くものともせずにボケーッとした表情でビャッコを見ていた。ビャッコは逆に殴った手が痛くなった。あまりにもゲンブが固いせいだった。
「いってーーーーーー!!!ゲンブ!!!てめぇ!!!いてぇじゃねーーーかよーーーーーーー!!!!」
ビャッコは逆切れした。ゲンブは何のことかさっぱり分からず、首をかしげた。