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星の勇者  作者: アシラント
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マフィアタウンの戦争⑤

レイジたちはユダとにらみ合ってから三人で一斉にユダに戦いを挑んだ。ユダはゆったりと大剣を構えてそれを迎え撃とうとした。


「ゴゴ!あんこ!いまは倒すことが目的じゃない!足止めしてルドラータが勝つことが大事だ!分かってるな?」


レイジはゴゴとあんこに聞いた。あんこは頷いた。


「もちろん!そのために来たんだもんね!」


あんこはそう言った。ゴゴはしぶしぶ頷いた。


「しょーがねーなー。俺は勝つつもりで来てんだが、協力して闘うのは初めてだしな!それを学ぶのも面白そうだ!」


ゴゴは結果的には納得してユダに襲い掛かった。ゴゴは右ストレートを地面に打ち、ユダの立っている場所にひびを入れて砕いた。ユダは体勢を少し崩した。その隙をレイジは逃さずに左側から走り抜けるように名刀『憤怒の魂』をユダの足めがけて切り抜けた。ユダはそれを体勢が崩れた状態から軽々と大剣でガードした。そしてあんこがユダの背後から一気に近づき背中をめがけて切り込みにかかった。それをユダはバク宙であんこの頭の上を飛び越えながら避けた。


「ケッケッケ!素晴らしいチームワークでございますねぇ。それぞれの得意なものをぶつけていく形。これはレイジ殿の発案でしょうかねぇ?」


ユダは余裕そうに言った。レイジは答えた。


「ああ。そうだ。もともと俺とあんこは小さい時から二人チームで行動することが多かった。だからあんこのやりたいことは手に取るようにわかる。そしてゴゴは単純な男だからまだそれほど一緒に過ごしていないが、どう動くのかがわかる。だから俺はその二人に合わせて動くだけでいい。そう言う作戦だ。」


レイジはきちんと答えた。そう丁寧に答えるのは、ユダとの戦闘で少しでも戦闘の時間を減らして安全な時間稼ぎをする為だった。それはユダもわかっていた。わかっていながら、ユダ自身もレイジを殺すことをためらっていたためにレイジの作戦に乗っかっていた。


「ケッケッケ!そうでしたか...それではレイジ殿が倒されれば、その作戦は崩壊することになりますねぇ。」


「...そうだな。」


「ええ。なにしろレイジ殿がお二人をつなぐ潤滑油のような役割となっていますからねぇ。そこが崩壊すれば、あとに残されているのは気の合わない二人だけ。チームワークは乱れ、逆にお互いの存在が邪魔になってしまう。そう言う風になってしまいそうですねぇ。」


ユダは的確に今の3人の状況を把握していた。レイジはユダの言うことすべてが正論で、何も言い返すことができなかった。しかしゴゴは反論した。


「それはよぉ。お前がレイジを倒せたときの可能性だろ?そんなの無理無理!何しろレイジはこの俺よりも強ぇーんだぞ!!そんなレイジが一番先に倒されるわけねーだろ!一番先に倒されるのはこの俺に決まってんだよ!」


ゴゴは自信満々にユダに指をさして言った。その情けない自信にユダは笑った。


「ケッケッケ!これは予想外!てっきり筋肉だるま君は自分の実力を全く理解していない阿呆(あほう)かと思っていましたが、自身の実力をしっかりと理解していますねぇ。...ならば、なぜ圧倒的に実力差のあるわたくしに戦いを挑んでくるのでしょうか?もしや、わたくしを弱いと思っていらっしゃる?」


ユダは眉をひそめて言った。ゴゴは高笑いをした。


「そんなもん、お前がめっちゃくちゃ強いからに決まってんだろ!」


ゴゴの返答にユダはさらに眉間にしわを寄せた。


「...ならなぜ?なぜわたくしに戦いを挑む?勝ち目なんてありませんよ?先ほども腕を切り落としたように、今度は体を真っ二つにしますよ?」


「ハッ!できるもんならな!お前だって、俺のくっつく能力が厄介だって事にうすうす気づいてんじゃねーのか?」


そう言われてユダは少し黙った。


「...確かに、そうですねぇ。あなたの首を斬り落とそうとしたとき、それを止められて厄介だとは思いましたよ。しかし、たとえ刃が通らなくとも、あなたを殺す手段はたくさんあります。毒や出血や圧殺、絞殺、パッと思いつく限りでもこれだけある。」


「確かに、それは効きそうだなー。さすがの俺も死ぬかもな。」


「そうでしょう?ゆえに、わたくしがあなたに負ける要素は一つもない。それでも挑むのは何故なのでしょうか?あなたの戦い方から察するに、全く勝機がないようには思えないのですが。」


ユダは聞いた。するとゴゴは笑って答えた。


「ああ!正直、全く勝機は無いと思うぞ!」


予想外の答えにユダはさらに困惑した。


「...はあ。ん?では、なぜ?なぜ戦いを挑むのでしょうか?そこが全く答えになっていないのですが...」


「そんなもん、わかんねーよ。」


「わからない?」


「ああ!ただ、強い奴を見ると、どうしよーも無く闘いたくて仕方なくなるんだ!勝てるかどうかなんかわかんねー。そんなもん、やってみるまでわかんねーだろ?それにな、俺は勝ちそうだから闘うとか負けそうだから逃げるとか、そういうことは考えてねーんだ。ただただ、俺の全力をぶつける!それがしたいだけなんだよ!」


そう言ってゴゴは地面を勢いよく蹴り出し、ユダに向かって一直線に向かっていった。ユダはゴゴが大剣の間合いに入るタイミングをじっと待ってから、大剣を勢い良く振った。


『これなら、あなたの能力でくっつけられようとも、衝撃で首の骨が折れますねぇ!』


ユダの狙いは初めからゴゴの首の骨を折る事だった。そのためにユダは力いっぱい大剣を振った。しかしユダの狙いは外れた。ゴゴはその大剣を下に潜って避けたのだ。


「なんと!?」


ユダはゴゴが避けてくることを予想していなかった。なぜなら、今振った大剣の速度はゴゴの右腕を斬り落とした時と同じスピードだったからだ。それを見切られるとは思いもしなかった。そしてゴゴは潜ってかわした後に、勢いよく地面に右足を踏みしめて、そこから全力のアッパーカットを繰り出した。しかしユダはそれを後方へと宙返りをすることで避けた。


「いまだ!!」


ゴゴは大声でそう言った。するとレイジとあんこはふたりとも最後の魂の力を振り絞って空中にいるユダに向かって斬撃を繰り出した。ユダは2つの方向から同時に繰り出された斬撃に対応するために両手に魂の力を解放させてそれぞれの刃を大剣と腕で受け止めた。


「なに!?防いだだと!!?」


レイジは確実にどちらかが当たると思っていたが、両方を防がれて驚いた。そしてユダはさらに両腕に魂の力を集中させ、2人を弾き飛ばそうとした。しかしその隙をゴゴが見逃さず、ゴゴは自身のおでことユダのおでこを思いっきりぶつけた。


「食らえ!!!ヘッドバンキング!!!!」


ユダはゴゴへの意識が薄れていたために、その攻撃をもろに食らってしまい、痛みで顔をゆがませた。そのままユダはレイジとあんこを弾き飛ばした。


「ウオッ!」


「キャア!」


レイジとあんこは弾き飛ばされて建物に激突した。そしてゴゴは追撃の右ストレートを放とうとした。しかしユダはグイッとゴゴの方へと顔を向けてから右足でゴゴの顔面を蹴り飛ばした。ゴゴは後方へと勢い良く飛ばされた。3方向に飛ばされたレイジたちはそれぞれ建物の中へと吹き飛ばされ、ほこりが舞っていた。そしてユダは怒りをあらわにしていた。


「くそっ!あんなゴミに傷を負わされるとは!わたくしはまだまだ弱いな!!こんなんじゃ、いつまでたっても勇者にはなれないぞ!!それだけがわたくしの目標なのに!」


ユダはおでこから流れる血を手で拭きながら言った。そしてユダは思わず出てきてしまった怒りに対して、冷静さを取り戻すために深呼吸をした。そして状況を確認した。


「...どうやら、今の一撃でレイジ殿もあんこ殿もあの筋肉だるまもダウンしてしまったようですねぇ。それにしても、まさかわたくしが血を流すとは...魂の力を腕に使っていたために無防備だったとはいえ、これでは先が思いやられますねぇ。」


ユダは格下相手に傷を負ったことを反省していた。そんな反省会中にいきなり地面が割れ、中から現れたのはゴゴだった。


「ハッハッハーーーー!!痛いじゃないか!」


ゴゴは鼻から血を出しながら自身をドリルのように回転させて地面を掘り進み、ユダの足元から出てきた。ユダはまた反省点が増えた。


「...反省点その2。筋肉だるま君をダウン出来ないほどの貧弱な蹴り。」


ユダはそう言ってゴゴとの1対1を受けた。

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