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星の勇者  作者: アシラント
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マフィアタウンの戦争④

ゴゴはユダに向かってまた襲い掛かった。それを見た納豆丸は目を細めて言った。


「ふーーん。先輩は俺じゃなくてそっちに行っちゃうんだ...」


納豆丸はそう言って少しイライラしていた。そんなことはお構いなしにゴゴはレイジとあんこに合流してからユダに一直線に突撃して行った。


「うおおおおおおおお!!!」


「待て!ゴゴ!むやみに挑めばまたさっきみたいに...!」


レイジの制止も聞かずにゴゴは突撃して行った。その様子を見たユダは呆れて鼻で笑った。


「これはこれは、どうやら脳みそまで筋肉に(むしば)まれているようですねぇ。...やっぱり、次は首を狙いましょうかねぇ。」


ユダはそう言って右手の大剣を握りしめ、ゴゴが近づいてくるのを待ち、今度は首をめがけてその大剣を振った。しかしその大剣はゴゴを首をはねることなく、首に少しめり込むほどで止まった。


「...?なぜ切り落とせない?」


ユダは不思議そうに見た。ゴゴはニヤリと笑った。


「そう何度も死にかけてたまるかってんだよ!」


ゴゴはそう言って右手を振りかぶり、そのままストレートを放った。しかしユダは大剣を手放して距離を取り、その攻撃をかわした。そして遠くから見て気づいた。


「なるほど。それが筋肉だるま君の幻獣使いの能力ですか...瞬間接着剤のように自身に触れたものをくっつける能力。あるいは自身の体を硬質化させる能力でしょうか?しかし剣の感触から見てそれはなさそうですねぇ。やはり前者の能力か、それに似たような能力でしょう。」


「おお!!ユダはやっぱりすげーな!たった1回の攻撃で分かっちまうのか!?へへへ!!そう来てくれると、俺も盛り上がってくるぜえええええ!!!」


ゴゴはユダの勇者の大剣を首から外しながら言った。勇者の大剣は神のへそくりなので幻獣使いのゴゴの触れていた場所はやけどのような跡になっていた。そしてゴゴは勇者の大剣をユダに放り投げた。


「ほら!忘れもんだ!」


ユダはいぶかしげにそれを受け取った。


「...いったい何のマネです?敵の武器を素直に返すとは...」


「そりゃ返すだろ!だって、その方がお前の最高の力が発揮されるんだろ?だったら返した方がいいに決まってんじゃねーか!」


ゴゴは当たり前のことのように言った。その言葉を聞いたレイジとあんこはツッコんだ。


「ゴゴ。お前はほんっとーーーにバカなんだな!!せっかく勝てるかもしれないチャンスを、みすみす逃すなんて!」


「そうだよ!姉御ちゃんは相手の武器は破壊するか自分が使えって、そう教えてくれたよ?それじゃ姉御ちゃんに怒られちゃうよ?」


あんこに言われて、ゴゴはケタケタと笑った。


「そうだったのか!?確かに、その方が戦いやすいかもな...じゃあユダ!その剣俺に返してくれ!」


ゴゴは手を出して言った。ユダはあほらしすぎて笑った。


「ケッケッケ!それは、無理な相談ですねぇ。あなたが自分から差し出したのですから、わたくしはありがたく受け取らせていただきますよ?」


そう言ってユダは今度は自分から距離を詰めてゴゴに襲い掛かってきた。ゴゴはその動きが全く見えず、いきなり視界からいなくなったユダを探してキョロキョロと辺りを見回していた。


「見えないのですか?それほどまでに雑魚だったとは...いささか驚きですねぇ!」


ユダはそう言ってゴゴの顔面目掛けて大剣を振り下ろした。ゴゴがそれに気づいた時にはガキィンという音が鳴り響いていた。その音の正体はユダの大剣と、それを防いだレイジの刀がぶつかる音だった。


「ユダ。俺にはお前の動きが見えていたぞ。そして俺たちは3人で相手させてもらう。お前はそれほどまでに脅威だからな!」


レイジはユダの大剣を押し返しながら言った。ユダは少し距離を取った。そこに上空からあんこが『斬』のヒシちゃんを銀の指揮棒にセットして刃を出した状態の剣を勢いよく振り下ろした。ユダはそれをまた、かわした。


「ケッケッケ!3人でお相手とは...わたくしもなかなか過大評価されたようですねぇ。...いえ、今のレイジ殿の状況を見れば、正当な評価でしょうか?しかし、そこの筋肉だるま君は全く戦力になっていないようでございますがねぇ。」


ユダはゴゴの方を見た。しかしゴゴはそんな挑発に乗るほどの理解力がないため、それが挑発だという事すら分からなかった。そして意外なことに、そんな挑発をしたユダを攻撃したのは、なんと納豆丸だった。納豆丸はユダに蹴りを入れ、ユダはそれを大剣でガードした。


「...なんのマネですか。あなたはニッコリーニファミリーに雇われた者。わたくしとは敵対する理由がないはずですがねぇ?」


「...お前、あんまり先輩の悪口言ってんじゃねーよ。先輩のことからかってもいいのは俺だけなんだよ!」


納豆丸は様々なイライラが重なって、ユダに八つ当たりをしてしまった。そのことに自分で気づいた納豆丸は、クルッとユダに背を向けて元の持ち場に戻っていった。


「...とりあえず、お前じゃ先輩には勝てねーよ。先輩は本当はスゲー奴なんだから。」


そう言ってクールに去ろうとしたとき、それをゴゴが呼び止めた。


「でもよ、納豆丸。俺今は魂の力を解放できなくなっちまったんだけど、それでも勝てると思うか?」


「なにーーーーー!!?なんで!!?」


納豆丸は目玉を飛び出して驚いていた。ゴゴは恥ずかしそうに言った。


「まあ、なんというか...悩み?みたいな?」


「で、でも先輩。俺と闘ったときはちゃんと出てたっすよね?なーんででなくなっちゃったの?」


「それが俺にも謎なんだよ!お前と闘ったときは『勝ちたい!』って思うと発動したんだが、ガイアと闘ったときにそいつからいろいろ言われて、自分のことを探ろうとしてみたら、魂の力が解放できなくなったんだよ!どうすればいいと思う?」


ゴゴは聞いた。納豆丸は頭を抱えた。


「そんなの、わかんねーっすけど、先輩のことだからどうせロマンを追い求めてるんじゃないっすか?だからそれが魂の力の開放のカギになるかも知れねーっすね...」


「そうか!ロマンか!確かになー!あの施設を抜け出したのも、ロマンを魂に感じたからだったしなー!それはありかもな!ありがとよ!納豆丸!」


「へっへへへ!まあ、こんな事でいいんならまた相談に乗るっすよ!じゃあ俺はルドラータファミリーを蹴散らしているんで、ユダとの闘いが終わったら俺との勝負、受けてもらうっすよ!」


納豆丸とゴゴは互いにグッと握手をしていた。それは奇妙な友情だと、レイジは思った。


「ゴゴと納豆丸。殺し合ったり助言したり、変な関係性だな。敵とも味方とも言えない、それでも友情らしきものがある感じ?」


レイジの発言にあんこもウンウンとうなずいた。


「そうだねー!ゴゴと納豆丸は変だね!どうせなら味方同士になればいいのに...これが、男の友情ってやつなのかな?」


あんこは不思議そうにゴゴと納豆丸を見ていた。そしてユダは咳払いをしてレイジたちの気をこちらに向けた。


「レイジ殿。わたくしを忘れてはいないでしょうか?」


「ああ!ユダ!すまん。納豆丸の行動が予想外過ぎてそっちに気が逸れてしまった。...だが、その隙をついてこないってのは、余裕の表れか?」


レイジの質問にユダは不気味に笑った。


「ケッケッケ!それは違いますよ。わたくしだってレイジ殿を殺したくはありませんからねぇ。なにせレイジ殿は勇者の力を受け継いだ者!なのでわたくしは最大限の敬意を表しているのですよ。それに、わたくしはただの傭兵。依頼はルドラータファミリーの全滅です。なのでルドラータファミリーではないレイジ殿はわたくしの殺しの対象外という事ですよ。」


「そうか...それはありがたい。が、それなら、ルドラータファミリーに所属しているドナルドはどうなんだ?あいつは殺すのか?」


その質問に、ユダの薄ら笑いは消え、真顔になっていた。


「そうですねぇ...それが依頼なら、仕方ありませんねぇ。特にドナルド殿はルドラータファミリーの戦闘隊長でございますから、それを取り逃がしたとあっては、わたくしの信用にも傷がつきます。なので、殺すしかないでしょうねぇ。まことに残念なことに...」


ユダは左手で顎をさすりながら言った。レイジはそれを聞いてうなずいた。


「なるほどな。じゃあ、俺にもお前を止める理由があるんだな。ユダ!悪いが、俺はドナルドを死なせたくない!だからお前をなんとしても止める!ゴゴ!あんこ!手を貸してくれ!」


レイジに言われてゴゴとあんこは力強くうなずいた。


「おうよ!ユダと闘うんなら、俺が闘わなくちゃいけねーだろ!こんなに強い相手と闘えるんだ!ワクワクしてしょうがねーよ!」


「うん!あたしもドナルドは絶対に死なせたくない!だからレイジがあたしとおんなじ気持ちで嬉しい!一緒にこの状況を何とかしよう!」


そう言ってレイジ、ゴゴ、あんこは3人とも武器を構えた。それを見たユダは不気味に笑った。


「ケッケッケ!そう来なくては、面白くありませんよねぇ!しかし、たった3人で私を抑えられるでしょうか?」


ユダの質問にレイジは答えた。


「たとえお前に勝てなくても、足止めぐらいはできる!」


そう言ってレイジたちとユダは互いににらみ合い、互いに距離を詰めて戦い始めた。



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