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星の勇者  作者: アシラント
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マフィアタウンの戦争③

レイジとあんこはユダと見合っていた。


「ユダ、なんでお前がマルテーゼの味方をするんだ?」


レイジは聞いた。ユダはうすら笑いを浮かべたまま答えた。


「ケッケッケ!特別な理由ではありませんよ。ただの雇われ兵ですからねぇ。」


「雇われ兵?」


レイジは聞き返した。ユダは丁寧に答えた。


「ええ。わたくしは、マルテーゼの方から金で雇われただけです。なにやら近々大きな戦いが起きるのでその手助けをして欲しいとのことでした。わたくしとしても、大金を積まれてしまっては断ることができないですからねぇ。」


「金か...」


レイジは少し残念そうに言った。ユダは不気味に笑った。


「そう肩を落とさないでくださいよ。金さえもらえれば何でもやるのが傭兵というものです。まあ、わたくしは贅沢な暮らしがしたいわけではありませんが、それでも生きていくためには金がいる。そうでしょう?」


「まあ、そうだな。それだけの強さを持っていれば、雇いたい組織なんてたくさんありそうだしな。」


「その通りですよ。レイジ殿。わたくしとしてはこの戦争はどちらが勝ってもどうでもいいものですからねぇ。できればあなた方とは対立したくありませんねぇ。どうでしょう?降伏して下さらないでしょうか?そうすれば、わたくしはレイジ殿を殺さずに済むのですが...」


ユダは真面目に言った。レイジは少し考えた。しかしそれを断ったのはあんこだった。


「ムリ!だって、助けるために来たんだもん!そっちこそ、降参するなら今のうちだよ?」


あんこはビシィッと言った。レイジは即決したあんこにフフッと笑った。


「ああ、そうだな。あんこは正義感が強いからな。俺はもしかしたら有りかもなって思ったが、あんこがそう言うんだったら、俺も付き合うぜ?」


あんことレイジはお互いに武器を握って闘う姿勢を見せた。ユダは残念そうにため息をついた。


「そうですか...それはまことに残念で仕方ありませんねぇ。お二人は...いや、レイジ殿のチームは皆、ボロボロの状態で、私に勝ち目なんてありはしなかったので善意で言ったのですが...まさか断られるとは。残念で仕方ありませんよ。」


ユダはそう言って大剣を右手で持ち、自身の方に乗せて構えた。お互いににらみ合いが続く。その間、姉御たちは順調にマルテーゼのマフィアたちを減らしていった。そして昆布は姉御に言った。


「なあ姉御!兄貴たち大丈夫でござるかなぁ?あのユダって人、驚くほど強そうでござるよ?」


昆布は不安そうに言った。姉御はマルテーゼを蹴散らしながら言った。


「...おそらく、負けるだろうね。」


「ええ!?じゃあ今すぐ助けに行かないと...!!」


昆布はゴゴを置いて行こうとした。しかしそれを姉御は止めた。


「待ちな!あんたはゴゴの面倒を任されたんだろう?だったら、レイジを信じて待っていな。もし本当にヤバくなりそうだったら、あたしが助けに行く。だから安心しな。」


姉御は昆布の顔を見ながら言った。昆布はそれでも不安そうだった。そしてそれはネネも同じだった。


「私も、レイジたちが心配。ユダの強さはほとんどわからないけど、それでもあたしたちよりも強いと思う。それに、レイジたちは害鼠の兄弟たちとの闘いで疲労してる。レイジとあんこだけじゃ心配。それに、ファーザーたちは加勢しなくても自分の身は自分で守れる人たち。それに、マルテーゼのマフィアたちは結構片付いた。だからレイジたちの援護に回る方がいいと思う。」


ネネの提案に姉御は首を振った。


「あたしも援護には行きたいけど、なんか、嫌な予感がするのさ。」


「いやな予感?」


「ああ。ルドラータに戦争を挑むって事は、勝算があるって事だろう?それなのに、戦況はずっとこっちが優勢で進んでいる。あのユダがいるから仕掛けたとも考えられるけど、いくらユダでもあたしたち全員を相手に必ず勝てるとは思えない。なにか、まだなにかがあるとしか思えないんだよ。」


姉御は周囲の警戒を一層高めて言った。昆布は聞いた。


「なにかって、何が?」


「それは...」


姉御は答えようとした。しかしその瞬間、状況は一変した。なんと、ここに来る道の途中で争っていたルドラータとマルテーゼのマフィアたちは決着が付いた様子で、ルドラータのマフィアたちがぞろぞろと集結してきた。


「ファーザー!ご無事で!?」


ルドラータのマフィアの1人がボスに話しかけた。ボスはニヤリと笑って「おう!」と答えた。そしてその状況でマルテーゼの屋敷から数人が出てきた。


「やれやれ、やはり武闘派集団のルドラータは手ごわいな。しかも強力な助っ人まで連れてくるとは...これは予想外だったな。」


そう話し始めたのは背が小さく、丸いサングラスをかけ、白いスーツに身を包んだ小太りのおじさんだった。それを見たファーザーはボソッとつぶやいた。


「ようやくマルテーゼのボスが登場か。おとなしく投降しても無駄だぞ?バルトロさんよぉ?」


バルトロと言われたものは優雅に葉巻を吸いながら笑った。


「久しぶりだな。ルドラータのファーザー、ジェラルドよ。お前はいつまでたってもそのフィジカルで何とかしようとしているな。全く呆れたものだ。人類がここまで発展してきたのは、知能が発達したおかげだというのに...」


マルテーゼのボス、バルトロは葉巻を地面に捨てて足で火を消した。そしてルドラータのファーザーのジェラルドは互いににらみ合っていた。そしてレイジとあんことユダは互いに警戒しながらも周りの状況が変わったことにより、一旦休戦とした。


「レイジ殿、一旦殺し合いはやめましょう。どうやら、風向きはあっちにあるようですねぇ。」


「...ああ。そうだな。」


レイジはユダから目は離さなかったが、耳だけはファーザーたちの会話に集中していた。そしてジェラルドとバルトロはまた話し始めた。


「まあ、この戦争は私たちマルテーゼファミリーが起こしたものだ。非はこちらにある。」


「なんだ?今更反省会か?」


ジェラルドが皮肉を言っている間に、ルドラータのマフィアたちは続々と現れ、そしてマルテーゼのマフィアたちは屋敷の前に集まった。その数はルドラータの5分の1程度しかいなかった。それでもバルトロは余裕の表情を浮かべていた。


「まあ、このままでは私は確実に死ぬでしょうね。それを覆す出来事でもない限りね...」


そう言った瞬間、ルドラータファミリーの後ろから続々と人間が現れた。それはニッコリーニファミリーの人間だった。


「なに!?ニッコリーニファミリーだと!?なぜここに...まさか!?」


ルドラータのファーザーであるジェラルドはバルトロの方を見た。バルトロはフッフッフと怪しい笑いをしたのちに言いだした。


「そうとも!貴様の思った通り!!我らマルテーゼファミリーとニッコリーニファミリーは手を組んだのさ!このマフィアタウンを牛耳るためにな!そのために、お前らルドラータファミリーには消えてもらうことにした!!!」


そう言ってバルトロは指揮をした。


「全軍、突撃ィィィぃィィィィィィ!!!」


その言葉でマルテーゼとニッコリーニはルドラータに向けて襲い掛かってきた。ジェラルドは恨みのこもった声で叫んだ。


「バルトロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!?」


ジェラルドは怒りのあまり、一直線にバルトロに向かって殴りかかった。しかし、それを阻んだのは高速で動く何かだった。その何かはジェラルドを蹴り飛ばしてドナルドとアルバーニとフォルキットのいる場所に飛ばした。


「グフゥ!!?だ、誰だ!?」


「おやおやぁ?俺のことをご存じでない?そりゃ悲しいじゃないの!」


レイジはその声に聞き覚えがあった。


「その声...納豆丸か!?」


レイジは思わず後ろを振り返った。そこにいたのはまさかの納豆丸だった。


「あれぇぇぇ!!?レイジたちじゃん!?なーんでこんなところにいるんだぁ?...って!!!先輩までいるし!?ってか、先輩!ボッロボロじゃないっすかー!ギャハハハ!死にかけてるし!?」


納豆丸はボロボロのゴゴを見てゲラゲラと笑った。ゴゴは蒼白な顔を上げて納豆丸を見た。


「な、納豆丸?なんでお前がここに?」


「そりゃー、ニッコリーニファミリーさんは、うちのお得意様っすからねー!違法薬物を大量に買っていって下さるありがたーーーいお方っすから!そんなニッコリーニさんに、『一番強い傭兵を派遣してほしい』なーんて言われたら、俺が出てくるしかないっしょ?」


納豆丸は得意げに言った。ゴゴはフッと笑った。


「一番強いんだったら、俺を呼ぶべきだろ?俺は将来は最強の男になるからな!」


「ギャハハハ!!せんぱーい、まーだそんなこと言ってんすか?調子いいんすからー!...っとそうだ!そんなボロボロな先輩に俺からの愛の贈り物があるんすよ。ほーら!あげますよー!」


そう言って納豆丸はポケットから小さい箱を取り出した。それをゴゴに向かって投げた。ゴゴはそれをキャッチした。


「これは...ばんそうこうか?」


「そうっすよ!これでその傷を治してくださーい!」


納豆丸はゲラゲラと笑いながら言った。昆布はため息をついた。


「ゴゴ、お前、確実にバカにされてるぞ?そんな絆創膏(ばんそうこう)で治るような傷じゃないでござるよ!」


昆布はそう言った。しかしゴゴはニヤリと笑った。


「そうそう!これが欲しかったんだよ!」


「え?いやいや、そんな絆創膏ごときじゃ治らないって!ゴゴはついにそこまで知能が落ちてしまったでござるか?」


昆布のツッコミを全く気にせずに、ゴゴは絆創膏の箱を丸ごと口の中に入れてバリボリと音を立てながら食べた。その行動に昆布は驚きのあまり言葉を失った。


「...え?な、なにしてるでござるか?」


昆布の発言にゴゴは当たり前のことを話すように言った。


「なにって、食ってる。」


「いやいやいや!それはわかる!それはわかるでござるよ!」


「じゃあ、なんなんだ?なんでそんなに不思議そうに見てんだ?」


「なんで不思議そうって...そんなの当たり前じゃねーか!えっ?絆創膏って、傷に貼って使うものでござるよね?なんで食ってるんでござるか?」


昆布は困惑のあまり顔が真顔になっていた。ゴゴは口から流れる血を腕で拭きながら答えた。


「まあ、あれだ。ゲームとかでもよ、絆創膏使うと一瞬で傷が回復したりするだろ?あれと一緒だ。」


「いやいやいやいや!!同じじゃないから!ここ、現実!ゲーム!違う!食べる!治らない!現実だから!!」


「まあ、細かい事は気にするな!」


「いやー、細かい事では、ねーと思うが?」


「ハッハッハ!!よーーーーし!ふっかーーーーーーつ!!!」


ゴゴはそう言って筋肉に力を入れてポーズをとった。そして昆布の背中から降りた。


「ありがとよ!昆布!お前のおかげで俺は復活できたぞ!」


昆布はポカーンと口を開けたまま言った。


「...いや、俺、なんもしてない...」


ゴゴはそんな困惑中の昆布は放っておいて、納豆丸に言った。


「納豆丸も、サンキュー!絆創膏で治ったぜ!」


「ああ!またピンチの時は持ってくるっすよ!だからたまには家に帰ってきてくださいよー!?」


「ああ!死にたくなったら行くわ!」


ゴゴと納豆丸は互いに絆創膏を食べたことを疑問に思うことなく会話をしていた。それを見た昆布は自分の常識が信じられなくなってきた。


「な、なあ、姉御とネネ。絆創膏って、食べると傷が治るのでござるか?」


姉御とネネは二人とも汗をかきながら言った。


「いいや、あたしもびっくりしてるよ。これって、プラシーボ効果ってやつ?あの、思い込むと本当にそうなるーみたいな。」


姉御は首をかしげながら言った。そしてネネもゴゴのことを信じられない化け物のような目で見た。


「ゴゴって...本当に何者なの?本当にピンピンしてるし...あれだけ顔色悪かったのに、今は戻ってるし...あれって人間なの?」


ネネはゴゴが人間であるかすら疑った。ゴゴはそんなこと全く気にせずにユダの方を向いた。


「ユダアアアアアアアアア!!!もう一度、俺と勝負しろおおおおおおおおおおお!!!」


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