マフィアタウンの戦争②
レイジは覚悟を決めたがあんこは嫌がった。
「えええええ!!?人殺しなんかやりたくないよー!どんなに悪い人でも同じ命なんだよ?それを自分たちの身勝手で奪うなんてダメだよ!そんなことしたら悪いことしてるあいつらと同じになっちゃうんだよ?」
あんこの質問にレイジは困った表情を浮かべた。
「まあ、そうだな。俺だってできることなら人殺しなんてしたくないよ。でも、殺さなきゃ殺されるんだったら、俺は生きるために人を殺すよ。殺さずに済めば一番いいんだけどね。」
レイジはあんこの気持ちを汲み取りながら自身の考えを言った。あんこはそれを聞いて何も言い返せなくなった。
「そう、だね。レイジも辛いんだね...。でも、あたしは絶対に人を殺したりしないからね!倒すのに時間掛かっても文句言わないでよ!?」
あんこはそう言って襲い来るマルテーゼのマフィアたちを気絶させていった。それを見てレイジはフッと笑った。
「よし、じゃあ、行こうか!」
レイジはそう言ってマルテーゼの領地の一番奥を目指して進み始めた。その道中で何人ものマルテーゼのマフィアが襲い掛かってきたが、レイジたちはそれぞれ返り討ちにした。そして目的の場所にたどり着いた。
「ここは...豪華な場所だなー。」
レイジは目の前に広がる地獄のような状況でも分かるほどに奥にはバカでかいお屋敷が建っていた。それはマルテーゼファミリーの本拠地だった。そして目の前は開けた広場になっており、その中央に向かってマルテーゼのマフィアたちが何人も襲い掛かっていた。それを見た瞬間ドナルドは直感した。
「あそこだ!あの真ん中にファーザーがいるはず!」
ドナルドはそう言うとレイジたちの返事も待たずに一直線にそこへ向かった。そしてマルテーゼたちをバッタバッタと薙ぎ払いながら進んでいった。レイジはその様子を見てみんなに言った。
「よし、俺たちも加勢するぞ!」
レイジたちはボロボロの体に鞭打って戦いだした。その実力は魔族との闘いで疲労しているにもかかわらず、他のマフィアたちが束になっても全く歯が立たないほどに強かった。そしてレイジたちは中央にいるファーザーたちを見つけた。
「ファーザー!援護に来ました!」
レイジがファーザーに声をかけるとファーザーはとてもうれしそうに答えた。
「おお!!レイジか!助けに来るタイミングとしては、素晴らしいな!」
ファーザーは心底嬉しそうに言った。そしてレイジたちに気づいた筋肉ムキムキのアルバーニと、いっつも笑顔なフォルキットがレイジに声をかけてきた。
「ここで援軍が来るか!?最高だな!!」
「本当にそうですねぇ!ほんの少ししか関わっていないのに、命をかけて助けに来て下さるとは...この借りは必ず返させていただきますよ!」
アルバーニは素手で、フォルキットは様々な刃物で闘っていた。そしてマルテーゼのマフィアたちはレイジたちが集まったことにより、少しばかり戦意を失い、レイジたちを囲むようにして立ち止まっていた。するとそこに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ケッケッケ!おやおやおやおや!まさかレイジ殿まで来てしまうとは...わたくしはやはり運がないですねぇ。」
その声を聞いた瞬間、レイジは全身に寒気が走った。そしてその声の方向を向くと、マルテーゼのマフィアたちが道を開けていて、そこから見覚えのある姿が現れた。それはユダだった。
「ユダ!?なぜ...ここへ?」
レイジは驚きのあまり目を疑った。そして同時に質問をした。ユダはずっとニヤニヤとうすら笑いをしながら言った。
「いえいえ、特別な理由なんてございませんよ。わたくしはただ、雇われただけでございますからねぇ。」
ユダは深々とお辞儀をしながら言った。そしてゴゴはユダの姿をその目にとらえた瞬間、考えるよりも先に体が動いた。
「ユダアアアアアアアアアアアア!!!?俺と勝負しろおおおおおおおおおお!!!?」
ゴゴはそう叫んで右手を握って振り抜いた。ユダはそれを難なくかわしてゴゴを蹴り飛ばした。ゴゴははるか上空に飛ばされた。
「ケッケッケ!まだあんな野獣を仲間にしていたのですか。もし処分に困っているのであれば、わたくしが殺して差し上げますよ?」
ユダはニヤニヤと笑いながら大剣を抜いて言った。その言葉は冗談でも何でもなく、本当に善意で言っているものだとレイジは思った。
「いや!待ってくれ!ゴゴは一応仲間だ。死んでもらったら困るんだ。」
レイジはそう言った。ユダはそれを聞いて「ふむ。」と言い、大剣を納めた。ゴゴは上空から勢いよく落ちてきた。レイジはそれを心配して叫んだ。
「ゴゴ!?」
「安心してください。殺してはいません。ただ、もう一度襲い掛かって来られたら、わたくしも反撃をしなければなりませんね。それは正当防衛でしょう?」
ユダはレイジに言った。レイジは汗を流しながら答えた。
「ああ。そうだな。でも、今の一撃でさすがのゴゴもダウンしたんじゃないかな?」
レイジはそう言った。その瞬間ゴゴは何事も無かったかのように起き上がり、再びユダに攻撃を仕掛けてきた。
「まだまだぁ!!?」
ゴゴが襲い掛かってきたのでユダは大剣を抜いた。それを見たレイジはゴゴに言った。
「ゴゴ!!やめろ!!殺されるぞ!!!」
ゴゴはそう言われても止まることを知らず、ユダに闘いを挑んだ。そしてユダはゴゴが近づいてくるのをじっと待って、間合いに入った瞬間に目にも止まらぬ速さでゴゴの背後に立っていた。ゴゴが後ろを振り向こうとした瞬間、ゴゴの右腕が地面に落ち、胸から大量の出血をした。
「...なんだ?なにをされたんだ?俺は?」
ゴゴはユダの動きが全く見えず、ただ自分の右腕が地面にあることを認識した。そしてようやく気付いた。
「ああ!俺は斬られたのか!!どうりで...痛いと...思っ...」
ゴゴは言葉を最後まで言う前に地面にうつ伏せに倒れた。地面にはゴゴの血が大量に流れていく。そしてゴゴの体は自身の血で真っ赤に染まっていった。
「ゴゴおおおおおおおおおおおお!!?」
レイジは叫んだ。そしてマフィアたちの首を跳ね飛ばしながら必死にゴゴの方へと駆け寄った。そしてレイジはゴゴの上体を起こして語り掛けた。
「ゴゴ!?おいゴゴ!!しっかりしろ!!!」
レイジの呼び声にゴゴはゆっくりと目を開いた。そしてゴゴは自身の切り落とされた右腕を掴んでくっつけようと、断面を合わせていた。
「ああ、レイジ。ちょっと手を貸してくれないか?視界が...ぼんやりしてて...うまく...くっつけられない...んだ。」
ゴゴは顔面蒼白の状態でくっつけようとしていた。レイジはその手伝いをした。するとゴゴの右腕はキレイにくっついて元に戻った。そしてゴゴは笑った。
「よーし!これでもう、大丈夫だ!ありがとな!レイジ!」
そう言ってゴゴはフラッフラの状態で立ち上がった。そしてゴゴは胸に力を入れて傷をくっつけた。すると血が止まった。そして再び右手を握って力を入れ始めた。
「ユダアアアアアアアアア!!!俺と、勝負!しろおおお!!」
ゴゴは今にも倒れそうな状態で勝負を挑んだ。レイジはさすがにそれを全力で止めた。
「バカ!!そんなことしたらお前、確実に死んじまうだろうが!!」
レイジはゴゴの頭をはたいた。するとゴゴは地面に倒れこんでうつ伏せになった。
「く、くそー!血が、足りねぇ!目の前に、闘いたい、奴が、いる、のにぃ!」
ゴゴは倒れてもまだユダから目を離さずにいた。そしてレイジはゴゴを投げ飛ばした。
「昆布!ゴゴの介護を頼む!お前はあんまり闘いたくないっぽいからな!」
レイジはそう言った。昆布は投げ飛ばされてきたゴゴをキャッチした。
「せ、拙者に気を遣って言ってくれたでござるかぁ!?か、感激で涙がああああ!!!」
昆布は涙をダバダバ流しながらゴゴを背負った。そしてレイジは名刀『憤怒の魂』を抜いて構えた。
「ユダ、お前は俺たちと闘うっていうのか?なら、容赦はしないぞ?あいにく、俺より強い奴に手加減できるほど、俺はバカじゃないからな!」
レイジはさっきのゴゴを一瞬のうちに斬った攻撃を見て自身よりも格上だと認識した。ユダは不気味に笑った。
「ケッケッケ!それはこちらも同じでございますよ。あの筋肉だるまなら殺さずに斬れましたが、レイジ殿が相手では、わたくしも手を抜く気はありませんから。」
ユダは大剣を構えた。そしてレイジは姉御たちに言った。
「姉御!そっちは任せた!俺とあんこでなんとかユダを足止めして見せる!その間にマフィアたちを片付けてこっちの応援に来てくれ!」
「ああ!分かったよ!」
姉御はそう言ってあんこをレイジの方へと放り投げた。あんこは空中にプカプカ浮かんでヒシちゃんたちを構えようとしたが、ヒシちゃんたちはエネルギー切れで、唯一使えるのが『斬』のヒシちゃんだけだった。
「レイジ!あたしのヒシちゃん、斬しか使えないよ!」
「まじかよ...それはヤバいな...逃げる?」
「逃げないよ!なんのためにここまで来たの!?」
あんこはレイジにツッコんだ。