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星の勇者  作者: アシラント
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ガイアvsレイジたち

レイジはガイアと牛鬼に怒りの感情を刃に宿して振り回した。勇者の刀には炎は宿らなかったが、憤怒の魂の方には炎が激しく燃え上がっていた。その炎はより一層の荒れ狂う怒りを燃やしていた。


「だぁらああああ!!!」


レイジの刀から踊る炎は周囲の木々に引火し、山火事を起こしていた。それほどまでにレイジは周りのことを考えられずにいた。


「レイジ!おめー、森がなくなるぞ?」


ボロボロで全身から血を垂れ流しているゴゴは片腕をブラーンとさせていた。それはガイアの攻撃で腕の骨が折れ、肩を外したせいであった。


「うるせぇ!姉御が!姉御があああ!!!」


レイジは悲痛な叫び声をあげて無我夢中で刀を振り回し、炎をばらまいていた。ガイアと牛鬼はレイジの攻撃をいともたやすくよけていた。


「牛鬼。」


「おう!」


ガイアと牛鬼は互いにそれだけの言葉で意思疎通しあい、牛鬼が背を向けて逃げ出した。


「待て!!!」


レイジは血眼になって姉御を担いでいる牛鬼を追いかけようとした。しかしそこでガイアが立ちはだかってきた。


「残念。通さない。」


ガイアはそう言ってレイジの腹を蹴り飛ばした。レイジは頭に血が上っていたせいで、いつもなら避けられる攻撃をまともに食らってしまった。


「ガフッ!?」


レイジは吹き飛ばされ、ゴゴがレイジの体をキャッチした。


「レイジ。お前らしくないな。冷静になって考えれば、取り戻せる!」


「うるさい!!」


ゴゴの助言が頭に入らないほどにレイジは焦っていた。姉御というレイジにとって最も失いたくない人のひとりである存在だったから、レイジは全く冷静になれなかった。そしてレイジはゴゴを踏み台にしてガイアに真正面から突っ込んだ。


「レイジ!」


ゴゴはレイジを追いかけたがボロボロの体は言うことを聞かず、左足を引きずりながらでしか動けなかった。そしてレイジは案の定ガイアに返り討ちにあって再びゴゴの体に飛ばされてきた。


「お前、バカ?正面からの勝負なら、手負いのお前と無傷の俺。どっちが勝つか明白。」


「なんだとぉ!!?」


レイジはそんな安い挑発にも乗ってしまうほどに激昂していた。それをゴゴは自身のくっつく能力を使って自身の手のひらとレイジの服の背中部分をくっつけた。


「放せ!!!姉御が!!!」


レイジは牛鬼の姿がだんだんと見えなくなることに底知れない恐怖を覚えた。そして救出を邪魔するゴゴにその矛先が向いた。


「ゴゴ!!何してんだ!!放せ!!ぶっ殺すぞ!!!」


レイジは怒りの感情を乗せた言葉をゴゴに放った。ゴゴはレイジの頭に頭突きをかました。


「今はガイアを倒す。それしか姉御を救う道はない。」


ゴゴは額から血を流しながら言った。レイジもゴゴの頭突きによって額から血を流し、冷静さをゆったりと取り戻した。


「...そうだな。わりぃ。」


「わかればいいんだ。とりあえず、2人で協力してガイアを倒すぞ!」


「...ああ!」


レイジは冷静さを取り戻した。そしてゴゴはボロボロになった体に自身のくっつく能力を使って無理やり直した。そしてレイジは冷静にガイアを見てゴゴに聞いた。


「...でもよ。実際ガイアを倒すにはどうしたらいい?俺は正直魂の力が残りわずかだ。すべてを一撃に賭けたとしても、絶対に倒せないと思うぞ?」


「おう!その通りだな!しかも俺も魂の力を解放できなくなっちまった!」


ゴゴはケタケタと笑いながら言った。その言葉にレイジは思わずゴゴの方を向いた。


「ええ!?そんなに魂の力が残ってるのに使えねーのか!?...じゃあどうする?体がボロボロで、正直生きてるのも不思議な状態のお前と、魂の力がほとんどなくて勝ち目のない俺で勝てるのか?」


レイジは不安になりゴゴに聞いた。ゴゴはケタケタと笑いながら言った。


「心配するな!こんな傷、大したことねー!俺のくっつける能力で無理やり人間の形にはできるからな!それに、どうやらここにたどり着いたのは、レイジだけじゃねーみてーだ!」


「えっ?」


レイジはゴゴに言われて周囲を見渡した。するとドナルド、あんこ、ネネ、昆布が集結してきた。


「なんだ?俺が一番乗りかと思ったが...というかゴゴ。お前解放されたのか?」


ドナルドは平気そうに振舞いながら言った。実際には魂の力がほとんどなく、体もボロボロだった。そしてゴゴはその質問に答えた。


「ああ!なんというか、急に地面が無くなって、外に出やすくなったというか...」


ゴゴは説明が難しく、言葉に詰まっていた。そしてゴゴの無事の姿を喜んだあんこが話しかけてきた。


「ゴゴ!生きてたんだねー!よかったー!...あれ?姉御ちゃんは?」


あんこはいるはずの姉御と牛鬼の姿がない事をレイジに聞いた。レイジは苦しそうに口を開いた。


「姉御は...連れ去られた。だから今はガイアを倒して姉御を連れ去った牛鬼を追う!」


「そんな...姉御ちゃんが、負けたの?あんなに強い姉御ちゃんが!?」


あんこはレイジの言葉が信じられず、放心状態になっていた。それを聞いたネネも驚いた。


「嘘...姉御さんが...でも、姉御さんは言ってたものね。自分は負けるかもしれないって...」


ネネはうつむいて言った。そして昆布はヘラヘラと笑っていた。


「大丈夫でござるよ!姉御はおとなしく従うような人間じゃないでござる!拙者たちが急いで救出に向かえばまだ間に合うでござるよ!...というか、兄貴!拙者がなんと!魔族の1人を倒したでござるよ!!自分でもびっくりでござる!!」


昆布は底抜けに明るい性格をしていた。その言葉にレイジとあんことネネは救われた。そして全員の目的が明白になった。


「...そうだな。昆布。お前の言うとおりだ。ありがとう!お前がいてくれてよかった。」


レイジはガイアを倒すという目的を再確認させてくれた昆布に最大限のお礼を言った。昆布は舞い上がって踊っていた。


「うっひょーーー!!兄貴が拙者にお礼を言ってくれたでござるぅぅぅ!!!これは最高の気分でござるなぁ!!」


昆布はそう言って舞い踊りながらレイジの近くに歩み寄った。そしてレイジ、ゴゴ、ドナルド、あんこ、ネネ、昆布が揃ってガイアと戦闘する姿勢を見せた。さすがのガイアもフッと笑ってドナルドに聞いた。


「ドナルド。害鼠は倒したのか?」


「ああ。木っ端みじんだった。約束通り、魔王城の場所を教えてもらうぞ?」


「そうか。...害鼠。お疲れさん、だな。」


ガイアは害鼠のことを思って悲しそうに、そして感謝の心を込めた言葉でねぎらった。そしてガイアは深呼吸をして腰を落とし、戦闘態勢に入った。


「お前ら6人が相手か...構わない。全力でかかってこい!」


ガイアはそう言ってジッと動かなかった。レイジたちも相手の実力が分かっているうえに自身の体がボロボロだということもわかっていた。だから動きたくても動けなかった。そんななか、無鉄砲にも挑んでいったのはゴゴだった。


「行くぞおおおおおおお!!!」


ゴゴは狂った笑顔でガイアに突っ込んでいった。それを見たレイジたちはゴゴに続こうと一斉にガイアに襲い掛かっていった。


「うおおおおおおおおおおお!!!」


ゴゴの一撃はかわされ、反撃の回し蹴りを食らい吹っ飛ばされた。

そして次にレイジの2本の刀での攻撃をガイアは両手で受け止めながらレイジの腹を蹴り飛ばし、吹っ飛ばした。

そしてドナルドがガイアの頭を狙って回し蹴りをした。ガイアはそれをしゃがんで避けてドナルドの腹に殴りかかって吹っ飛ばした。

そしてあんこは上空からレーザー攻撃をした。ガイアはそれをかわして一瞬のうちにあんこの背後に回り込んであんこに回し蹴りをして地面に叩き落した。

そしてネネはガイアの足をマントで掴んで地面にたたきつけた。しかしガイアは全くダメージを受けておらずそれどころかそのマントを腕で掴んで引き寄せてネネの腹を殴って吹っ飛ばした。

そして最後に残った昆布は次々に倒されていく仲間を見て、恐怖で動けない様だった。


「ひえーーーー!!み、みんな、やられちゃった...」


昆布は死んだふりでやり過ごそうとした。そんなばかばかしい行為にガイアは呆れて無視した。レイジは口から血を垂れ流しながら腹を抑えていた。


「ぐぅ...け、ケタ違いだ。俺が戦ったチュー五郎とは、まったくもってケタ違いだ!強さの次元が違う!今の、一撃だけで、分かる。今の俺たちが束になっても、絶対に勝てない...」


レイジは心が折れかけていた。四天王の強さを誤認していた。魔族が強いのは理解していたが、人間であるはずのガイアがそれ以上の強さなのは予想だにしていなかった。それはレイジ以外の者もそうだった。しかしそんな中でただ一人、立ち上がる男がいた。


「へっへっへ!さっすがぁ!やるじゃない!」


それはゴゴだった。ゴゴはこの中の誰よりも重症な怪我だったが、心は全く折れていなかった。それどころか楽しくてしょうがない様子だった。それを見たガイアは嬉しそうにしていた。


「まだ。立ち上がるか...フフ。そういう所は...評価できる。」


そう言ってガイアは再び戦闘態勢に入った。ゴゴは息を切らし、全身から血を流し、左手を動かせず、左足を引きずりながら、それでも狂った笑顔で戦いを挑んだ。勝ち目なんか全くない中でも、ゴゴは諦めずに闘いを挑んでいけた。


「ハッハッハッハッハァーーーーーーー!!!」


ゴゴは笑いながらジャンプしてガイアに右ストレートを仕掛けた。ガイアは当然のようにそれを避けてわざと力を抜いて腹を蹴り上げた。ゴゴは痛みに顔をゆがませて腹を抑えて地面にうずくまった。しかしすぐに立ち上がった。それを待っていたかのようにガイアはゴゴの顔面を何十回も何十回もわざと力加減をしながら殴りまくった。


「ゴハァッ!ぐふぅ!グヘェ!ぎえぇ!ドゥッハァ!!?」


ゴゴは殴られるたびに変な声があふれ出た。それでもゴゴは決して引き下がろうとしなかった。それを見ていたレイジは心が張り裂けそうだった。


「...もういい。もういいよ!ゴゴ!お前が死んじまったら、姉御を救出しても意味ないだろ!?もう下がれよ!」


レイジの悲痛な叫びはゴゴに届いていた。しかしゴゴは殴られながらもフッと笑った。


「お、俺が、死ぬ、だと...?どうでも、いいこと、だろ?」


ゴゴはヘラヘラと笑った。そしてガイアは言った。


「殺す?まさか。死なないギリギリを攻めている。より痛みを味わってもらうために。」


そう言ってガイアはゴゴを殴り続けた。ゴゴはどんなにボロボロになっても諦めなかった。それは姉御を救うためではない。ただただ単に、ゴゴはガイアとの闘いを終わらせたくなかった。ゴゴの心をこの上なく揺さぶる闘いを、ゴゴはやめたくなかった。


「俺は、必ず!!!」


そう言ってゴゴは自身のくっつく能力を使った。自身のほっぺたと、ガイアのパンチをしてきた腕をくっつけた。ガイアはくっついたことに驚いた。


「これが、くっつく能力か...確かに、どうやっても離せない。...!!?」


ガイアは驚いた。そしてゴゴの顔を見た。ゴゴはニヤリと笑って右手を天にかざしてすべての力を込めた。するとその右腕はゴゴゴゴゴっという音とともに筋肉が肥大化していき、その大きさはゴゴの身長を追い越すほどのデカさになった。


「これが!力技拳(りきぎけん)奥義!!!ビィィィッグ!!!ボンバァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


ゴゴはそう言うと同時にその恐ろしい右腕をガイアに振りかぶった。ガイアは一瞬でその一撃を食らってはいけないものだと理解して、魂の力を全開放した。そしてゴゴのほっぺたをえぐり取ってその場を一瞬のうちに離れた。ゴゴは右ストレートを振りぬいた。その威力は空振りをしたものの桁違いの風、音、振動にその場が包まれた。


「はぁ、はぁ、は、外したかぁ...」


ゴゴは残念そうに言ってその場にうつ伏せに倒れこんだ。ガイアは木の上に避難して、冷汗を流していた。


「...あの威力。当たっていたらタダでは済まなかった...本当にあいつがこのチームの中で最弱なのですか?魔王様?」


ガイアはそうつぶやいた。そしてゴゴの方を見た。ゴゴは右腕から大量の出血をし、右肩はビリビリに破かれたような裂傷が走っていた。


「おそらく、空振りによる反動に肩がこらえきれず、筋肉が露出したんだろう。」


そう言ってゴゴの空ぶった先を見た。そしてガイアは驚いた。空ぶった先の木々がまっさらな状態になっていた。まるで巨大生物が這いずった後のように、その部分だけがトンネルのように無くなっていた。


「その威力を、人間が出せるものなのか...いや!まずい!その角度は!」


ガイアはさらに驚いていた。なぜならゴゴの吹き飛ばした場所は、姉御を連れ去った牛鬼がいた角度だったからだ。


「それを、計算しての攻撃か!?それともたまたまか...?いずれにしても、面倒なことになったな。牛鬼の姿がよく見える。あんなに遠くにいるのに、牛鬼も背中にダメージを受けているのか?」


ガイアは目を凝らして牛鬼を見た。牛鬼は背中を丸めてその攻撃を受けたせいで、背中から少し出血をしていた。


「ゴゴ...魂の力なく、その強さ...さすがに最強兵士プロジェクトのひとりか...」


ガイアはそう言って木から降りてゴゴのもとへと歩み寄った。


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