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星の勇者  作者: アシラント
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ゴゴvsガイア

地面から出てきたゴゴは一直線にガイアに向かって攻撃を仕掛けた。ガイアは何一つ動じることなくその攻撃を避けた。ゴゴは地面に頭が突き刺さった。


「んんんん!!んんんんーーーーー!!!」


ゴゴは何かを言っていたが地面に埋もれていて全く聞こえなかった。ガイアはとりあえず転送しようと腕につけた装置を起動した。しかしゴゴが地面に潜っていったのを確認して不思議に思った。


「...なんで潜った?」


あれだけ戦いたいと言っていたのに頭を引っこ抜くのではなく体全部を地面に入れたことにガイアは戸惑った。そして次の瞬間、ゴゴは地面からドリルのように回転しながらとんがった頭でガイアに攻撃をしてきた。ガイアはそれをサッと避けた。そのせいで転送システムは中断された。


「おいおいおい!俺から逃げようってかぁ!!?そんなの許すわけねーだろ!!」


ゴゴはガイアに猛攻を仕掛けた。すべてのパンチがガイアには避けられて空を切っていたが、それでもゴゴは楽しそうに笑いながら猛攻を仕掛けていた。


「ははははは!!!ガイア!!お前も強ぇーなぁ!!!」


ゴゴはガイアの実力が自身よりも相当上であることを認識して喜んでいた。ガイアは面倒くさそうな顔をした。


「...お前にストーカーされるのは、ヤダ。」


「そんな連れねーこと言うなよ!俺はお前のこと大大大好きだぜ!!!」


ゴゴは投げキッスを送りながら言った。ガイアはその投げキッスを避けるのに必死になって体勢を崩した。


「今だああああああああああああああ!!!」


ゴゴは予期せぬチャンスに右腕で全力の一撃を放った。ガイアは腕をクロスさせてガードした。ゴゴのパンチはガイアの予想以上に威力があり、腕は押し出されて体にくっつき、そのまま胸へと衝撃が加わってガイアの体ははるか後方へと吹っ飛んだ。


「グググッ!!意外と!!!」


ガイアは最後まで言い切る前に地面に手足4本をつけてブレーキをかけ、反撃の為にダッシュしてゴゴに近づいて行った。ゴゴはそれを避けることができないほどの速さだと一瞬で理解し、脚を踏ん張って受け止める体勢をとった。


「おっしゃあ!!!かかって来おおおおおおおい!!!」


ゴゴは両腕を前に突き出した。ガイアはその両腕ごとゴゴを破壊しようとその腕に全力のタックルを仕掛けた。両者が衝突した際に発する衝撃と爆音は森全体を揺るがした。そしてゴゴは後方へと大きく引きずられ、大木を背中でなぎ倒していった。それでもガイアのタックルはとどまるところを知らず、ゴゴはさらに前傾姿勢になってようやく止めることができた。それにはガイアも驚いた。


「...止めるか。なかなか。」


ガイアは全力のタックルを止めたゴゴを内心でほめていた。だが言葉に表すことができなかった。ガイアはゴゴとの戦闘を楽しんでいたために意識が闘いの方へと向いていた。


「フゥー――。いってええええええええ!!!腕が折れるううううううう!!!」


ゴゴはジンジンと響く両腕に痛みを感じながら(もだ)えていた。ガイアはその大きな隙を逃さず、ゴゴにアッパーカットをくらわした。ゴゴはあごを粉砕されるほどの衝撃を食らった。


「ゴッフゥッ!!?」


ゴゴは上空に吹っ飛ばされるほどのアッパーを食らって一瞬何が何だかわからなかった。だが上空にいることを認識すると、腰につけていたハンマーのアクセサリーを巨大化させて自身の体よりも大きなサイズにした。そしてそのまま加速をつけて地面に落下した。空中から落ちてくるところを狙っていたガイアはその予想外の出来事に一旦離れてゴゴが落ちてきた場所を覗き込んだ。


「...自殺?」


ガイアは一瞬そう思った。それほどの加速度と、衝撃が地面を伝ってガイアに届いていた。しかしゴゴはそんなことはしておらず、またまたガイアの足元からドリルのような回転をしながら出てきた。今度はゴゴの足がドリルの先端だった。


「ハッハァ!!どうよ!普段とは逆の回転をすることによって、脚が先端になるって技!俺は狙いがつけにくいからこっちの方が不便だぞ!!」


「...じゃあダメじゃん。」


「ハッハッハ!!ダメだな!!!」


ゴゴとガイアは独特の空気間の中話し合っていた。そしてゴゴは一旦冷静になってガイアに話を聞いた。


「...そういえば!姉御が担がれてたけど、あれなんで?」


ゴゴの質問にガイアは話した。


「...魔王様からの命令。勇者レイジの一行にいる女を誰でもいいから連れてこいって。何のためかは知らない。」


「知らないー?それ本当か?」


「...まあ。どっちだっていい。お前をさっさと倒して俺たちは帰る。姉御は貰っていく。」


「まあ、俺としてはお前と闘えるだけで十分だから、姉御を持ってってもいいけどよ。でもあの牛鬼ってやつ?あいつとも闘いてーんだ!だから逃がすわけにはいかねーよ!!」


「...姉御はいいのかよ。」


ゴゴの予想外の返答にガイアはツッコんだ。そしてゴゴはガイアに向かってドロップキックを仕掛けた。ガイアはそれをサラリと(かわ)して思いっきりゴゴの腹を蹴り飛ばした。ゴゴは痛みに顔をゆがませながら吹っ飛んだ。さらにガイアは吹っ飛んで行ったゴゴに追撃するためジャンプをして自身の体をグルグルと回転させながら、上空からのかかと落としをゴゴの顔面に食らわせた。ゴゴはそのガイアの攻撃を食らったうえでガイアの足を掴んだ。


「...なに?」


ガイアはかかと落としを顔面に受けたにもかかわらず反撃するほどの余裕があることに驚いた。そしてゴゴはその足を振り回してガイアを地面へと叩きつけてその上に自身のハンマーを振り下ろした。ガイアは地面に背中が付いた瞬間に避ける体勢を取っていたため余裕をもってゴゴのハンマーを避けた。


「まあ、そう来る。知ってた。」


ガイアは肩に付いた土を払って言った。ゴゴは地面からハンマーを引っこ抜いた。


「やっぱりこの程度の速さじゃお前を捉えらんねーか。まあ、俺の長所は最高のタフネス!!だからスタミナ勝負に持ち込めばギリギリ勝てる可能性が1パーセントぐらいはあるかもなー。へっへっへ!楽しくなってきたぁ!!?」


ゴゴは絶望的な実力差を感じて魂が震えあがった。それを見たガイアはゴゴの本当の長所に気づいた。


『そうか。この筋肉男の強さは筋肉でもタフネスでもない。その壊れた精神なのか。まともじゃない。生きることを考えていない。楽しむことしか頭にない。だから強い。...面倒だな。ここで処理したいが、それだと計画が...』


ガイアは初めてゴゴのことをきちんと見た。


「お前、なぜそこまで格上と闘いたい?」


ガイアはそう言った。ゴゴはウッキウキで小躍りをしているところに聞かれたので一旦動きを止めて真面目に答えた。


「なんで?...なんでなんだろうな?...勝ちたいから?」


「勝ちたいなら、弱い奴と闘えばいい。」


「弱い奴と闘っても面白くねーだろ!」


「なぜ面白くないんだ?」


「なんでって...うーん。勝負が一瞬で決まっちまうからかなー。俺の全力をぶつけて―じゃん?それができねーのが面白くねーんだ。」


「なるほど。なら、闘いだけじゃなくても良くないか?」


「それはダメだ!」


「なぜ?」


「なぜって、そりゃー、まあ、あれだよ...俺は闘ってる時しか、生きてないからな。」


「生きてない?」


「ああ。ほかのことしてる時はぜーんぶ死んでるんだ。闘ってる時だけが生きてるんだ。そんな感じ?」


「...なるほど。」


ガイアはなにかに納得すると質問をやめた。ゴゴは自己完結したガイアに疑問を投げかけた。


「おいおいおい!今の質問なんだよ!?スタミナ回復のための時間稼ぎかー?」


ゴゴの戦いしか頭にない発言を聞いてガイアはフッと鼻で笑った。


「まあ、そんなところだ。...そろそろ本気を出せ。俺も少しは本気を出す。」


ガイアはそう言って魂の力を少しだけ開放した。ゴゴはそれを見てニタァッと気味の悪い笑みを浮かべた。


「いいねえ。いいねえ!そう来なくっちゃ!!これからが本番ってやつだな!!!」


ゴゴはそう言って魂の力を解放しようとした。しかしそこで一つの疑問を抱いた。


『...あれ?そう言えば、俺の魂の力の開放条件は、自身の欲望だったよな?俺は勝ちたい!って思うと魂の力を解放できるけど、さっきあいつは勝ちたいだけなら弱い奴と闘うって言ってたな。でも俺は弱い奴と闘って勝つことに何一つ満たされねぇ。...どういうことだ?勝ちたいんじゃないのか?つえー奴に勝ちて―ってのは変わんねーけど、もしかして、俺は勝ちたいんじゃなくて、格上と闘いて―って事か?じゃあ、それってなんでだ?...うーーーーん。分からん!!!』


ゴゴはさっきの質問で自身の本当の欲望が分からなくなった。そのせいでゴゴは魂の力を解放できなくなった。それを見たガイアは聞いた。


「...どうした?本気で来ないのか?」


「ちょ、ちょっと待てよ!俺だって本気でいきてーけど、なんか魂の力をうまく開放出来ねーんだよ!」


それを聞いてガイアは「やっぱりか。」とつぶやいた。


「やっぱり?どういうことだ?」


「...お前は、今まで勘違いをしていた。自身の欲望の正体に気づいていなかった。だからコントロールが全くできていなかった。昨日の戦いで分かった。」


「んんん?どゆこと?」


ゴゴは全く理解できなかった。魂の力に関してはゴゴは全く触れてこなかったため、聞いただけでは分からなかった。


「...つまり、お前の本当の欲望は他にあるってことだ。」


「それってなんだ?」


「...教えてやってもいいが、教えたら俺たちに闘いを挑むのはやめろって言ったら?」


「じゃあ聞かねー!!お前と闘えないなら強くなっても意味ねーからな!!!」


そう言ってゴゴは魂の力なしでガイアに戦いを挑んだ。ガイアはフッと笑った。


「...そうだな。それが答えだな。」


そう言ってガイアはゴゴを一瞬でぶっ飛ばした。その威力は今までのものとは比較にならないほどの威力だった。ゴゴの体は地面を削りながら牛鬼の足元まで飛ばされた。そしてガイアはゆっくりと牛鬼とゴゴのいる場所に歩いて行った。


「ガイア。なしてこの筋肉男にそげな『あどばいす』をすったんだ?おめーさんにとって、こげな人間は嫌いな『たいぷ』じゃねーのかのぅ?」


牛鬼はガイアに聞いた。ガイアはニヤリと笑った。


「まあ、そうだが。こいつの過去を知っているからな。」


「...同情ってやつけ?」


「そんなんじゃないさ。ただ、なんというか...素直だったからかな?」


「ほーん。ま、おめーさんが人間に対してそこまで興味を持つなんてのぅ。めんずらしいから聞いてみただけじゃけのぅ。」


牛鬼はガイアの意外な反応に驚いていた。


「...うぅ。」


その一言が聞こえた瞬間、牛鬼とガイアは一瞬でその音の場所から離れた。そしてそこを見ると、なんとゴゴが立ち上がってきた。


「...バカな。」


「ああ。ありえねーべよ!ガイアの攻撃を、魂の力なしで受けて、まだ立ち上がれるなんてよぅ!」


牛鬼とガイアは心底驚いていた。ゴゴはイカれたスマイルを見せた。


「へ、へへ!なんだぁ?もう、ギブアップかぁ?」


ゴゴはフラッフラの状態でも闘いの意思を見せた。ガイアと牛鬼はそれに驚いて一瞬判断が遅れた。その瞬間、ガイアめがけて赤いなにかが襲い掛かっていった。


「姉御を...返せええええええええええ!!!」


怒り狂う炎をまとったのはレイジだった。レイジは2本の刀を怒りのままに振りまくり、ガイアと牛鬼に襲い掛かっていった。そしてガイアは後悔と恐れと称賛をゴゴに向かって言った。


「くぅー。お前があの時立ち上がりさえしなければ、転送できたものを!」


ガイアは初めてゴゴに対しての感情を表に出した。

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