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星の勇者  作者: アシラント
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姉御vs牛鬼

姉御は牛鬼と激戦を繰り広げていた。


「はぁぁぁぁ!!」


姉御はジャンプして体をねじらせ、上から薙刀を叩きつけるように牛鬼に向かって振り下ろした。牛鬼はそれを避けることもせずに両刃の斧の持ち手でガードした。


ガイィィィィンッ


ふたつの武器が衝突した際に発する音は森全体を揺るがすほどの大音響となって鳴り響いた。牛鬼は相変わらず余裕の笑みを浮かべていた。


「なんだぁ?まるで本気を出しちゃいないのぉ。そんなんで、わしが倒せると思っとんのか?」


「まさか!そんなわけないでしょう。これはただのあいさつ。あんたが簡単にくたばったら、面白くないでしょう?」


「かっかっか!そげな心配は無用っちゅー話。わしもまだまだ甘さが抜けておらんのぉ。こげなやっすい挑発に、いちいち真剣に答えちょる。そげな甘さがあるっけ、わしは先代の勇者に敗れてまったっちゅーに。」


牛鬼は姉御の薙刀を押し返した。姉御は空中で一回転して体制を整え、地面に着地した。牛鬼はその着地の隙を狙わなかった。


「...?なんであたしの隙を狙わないんだい?あんたがそれを見逃すほど馬鹿じゃないってのはあたしが一番わかってるんだけどね。」


「なんでって、あったりまえじゃろうがい。おめーさんに隙が無いっちゅーだけの話じゃ。そげなわざとらしー隙に突っ込むほど、わしもバカじゃないっけーの。」


牛鬼は方眉を上げながら自信満々に言った。姉御はフッと鼻で笑った。


「相変わらず、戦闘に関しては一番厄介だね。あたしが出会ってきた中でも、群を抜いて強いよ。あんたは。」


「そりゃありがとね。おめーさんは期待外れじゃったがのう。」


「なに?」


姉御は眉をひそめた。牛鬼は話をつづけた。


「なにせ、おめーさんは今27か28じゃろ?だすけ、もっとえぐい強さになっとるか思っとったらぜーんぜんあの頃と変わっとらん!筋肉だけはマシになったって程度の差しか感じん。だすけ期待外れっちゅ―話。」


牛鬼に言われて姉御は返す言葉が出なかった。


『確かにその通りだ。あたしはあの時から何も変わっちゃいない。人間たちの世界では、あたしは上澄みの強さだった。だから努力なんてしてこなかった。これ以上強くなる必要が無かったから。それが自分よりも強い相手と闘って、自身が変わっていないって事をイヤというほど痛感している。これじゃ、あたしはレイジたちを守れない。それだけは絶対に嫌だ!』


姉御は心の中で自身に叱咤激励をし、強くなる為に頑張ることを決意した。


「そうだね。あんたの言うとおりだよ。あたしは何にも変わって無かった。だから、今から変わるさ。あんたを倒して、魔王も倒して、あの子たちに平和な世界を生きていってもらうためにね!」


姉御はそう言って魂の力を解放した。そして薙刀を右から左に薙ぎ払い、牛鬼の首を狙った。牛鬼はそれを斧の持ち手でガードしたが、威力がありすぎて地面をガガガッっと削ってブレーキをかけた。


「ぬぅ。なかなか。」


牛鬼はボソッとつぶやいた。そして姉御は反撃の隙を与えぬ連続の突き攻撃を仕掛けた。薙刀が100本に見えるほどの高速の連続突きに牛鬼はそれらすべてを斧の持ち手でガードした。


「速さは、すさまじい。だが!」


牛鬼は斧を右から左へと薙ぎ払って姉御の薙刀をはじいた。姉御は体勢を崩され、牛鬼はその隙を逃さずに右足で姉御の腹を蹴った。姉御はとっさに魂の力を腹に集中してガードした。そして姉御は後ろへと吹き飛ばされた。


「...単純に威力が小さい。だすけ、こげな簡単な攻撃ですーぐ体制を崩しちまう。おめーさんの弱点は、早期決着を求めすぎっちゅ―とこじゃな。...まあ、それがおめーさんの戦い方なら文句はねーっけど。んでも、それじゃわしのような防御型の戦いを得意としとる者は倒せん。むしろわしはおめーさんの動きのくせを見切る時間ができる。相性としては最悪ってところだな。」


姉御は土煙が立ち上る中、ゆったりと立ち上がった。腹には鈍い痛みがあったが、それでも魂の力でガードしたおかげで軽傷で済んだ。


「アドバイスかい?そいつはどうも。敵に塩を送るなんて、あんたも相当余裕があるじゃないか。まあ、そのおかげで、あたしは死なずに済んだけどね。もしあんたの性格が、冷徹無慈悲な殺戮マシーンだったら、勇者すら倒して人類絶滅だっただろうけどね。」


姉御はまだまだ余裕があると言わんばかりに牛鬼を煽った。牛鬼はかっかっか!と高笑いをした。


「全くそのとおりだのぅ!いかんいかん!わっしはつい敵に『あどばいす』しちまうのぅ!そげなこと言うても、仕方なかっぺーよ。わしは相手のここを直しとったらもっと強うなるっちゅーのにって思ってまうのよ。だすけ、魔王様からは『あんまり敵と話すな』って言われちまってのぅ!」


牛鬼は頭に手を抑えながら笑った。姉御はその間に少しでもスタミナを回復させようと息を整えていた。それを牛鬼は分かっていながらあえて見逃していた。


「さて、そろそろわっしも本気を出すかのぅ。なーに安心せぇ。殺しまではやらん。そういう約束じゃったな?ガイア?」


牛鬼は木の上に座ってみていたガイアに言った。ガイアは頷いた。


「そう。魔王様、そう言ってた。生け捕りで連れてこいって。」


「っちゅーことじゃけ、安心して負けちょくれ。」


牛鬼はそう言ってドシンドシンと地面を揺らしながら走ってきた。姉御は木の上に逃げた。


「ふざけんじゃないよ。あたしはあんたに勝ちに来たんだ!負ける理由なんか必要ないね!」


姉御はそう言って木の上から降りながら薙刀を牛鬼の脳天めがけて思いっきり振り下ろした。牛鬼はそれを持ち手でガードした。


ドッッゴオオオオオオオオンッッ


爆発したかのような低い音が鳴り響き、地面が衝撃でえぐられ、亀裂が入った。木々の根っこが顔をのぞかせ、周りの何本かは音を立てて崩れていった。


「ぐぐぐ!重い!」


牛鬼は姉御の薙刀を、歯を食いしばって受け止めた。姉御は押しきれないと判断してそのまま前に一回転して地面に着地した。


「はぁ、はぁ、これでもダメか。」


姉御は全身の力を込めた渾身の一撃でも牛鬼の防御を突破できなかった。牛鬼はゆっくりと振り向いた。


「今の一撃。なかなかの威力じゃったのぅ!一瞬じゃったが、あのときの勇者を思い出したわい!」


牛鬼は嬉しそうに言った。姉御はもはや最後の一撃にすべてをかけるしかないと思った。


「このまま80パーセントの魂の力で闘っても、あたしに勝機なんかないね。じゃあ、一気に決める!!!」


姉御はそう言って全身に力を溜め始めた。魂の力を全身にまとわせた。すると姉御は金色のオーラをまとい、そのオーラがうっすらと金色の猫のように見えた。


「ぬぅ、この力、油断できんな。」


牛鬼は今まで余裕の表情だったのが、姉御の本気を見てさっきまでの余裕がスッと消えた。


「はああああああ!!」


姉御は完全に魂の力を解放した。すると姉御の背後に金色のトラ模様の猫が半透明の姿で現れた。牛鬼はそれを見てニヤリと笑った。


「懐かしいな。その姿!」


牛鬼はそれだけ言って姉御に斧を叩きつけた。姉御は消えるような速さでそれを避けると一瞬で牛鬼の後ろに回り込んだ。そして右手を振りかぶると背後の金猫も姉御の腕からオーラで一回り大きい腕を作ってひっかいた。


「むっ!?」


牛鬼は背中を引っかかれて、後ろへ向いた。姉御は向いてきた牛鬼のあごをめがけてアッパーカットをした。牛鬼はあごにもろに食らって口から血を吐いた。姉御は続けて左手で牛鬼の腹めがけて渾身の正拳突きをくらわした。牛鬼は再び血を吐いてはるか後方まで吹き飛ばされた。


「ぐわぁ!?」


牛鬼は踏ん張って地面から足を放さないようにしてブレーキをかけた。姉御はまた目にも止まらぬ速さで近づき、薙刀で牛鬼の首をめがけて左から右へ薙ぎ払った。牛鬼はそれを持っていた斧でガードした。しかし威力が大きすぎたため、受けきれずに吹っ飛ばされた。


「がはぁっ!?」


牛鬼は思いっきり地面に片足を叩きつけて足を地面に突っ込んでブレーキをかけた。そして止まったところで姉御が上空から薙刀を振り下ろしてきた。牛鬼は片足を突っ込んだせいで動けず、姉御の全力の一撃を防御するしかなかった。


「かかってこい!!」


牛鬼は斧の持ち手で姉御の全力の一撃を受けた。その重さで地面は消し飛んだ。そして牛鬼はバカでかいクレーターとなった地面の一番深い場所で姉御と競り合っていた。


「はあああああああああああああ!!!」


「ぐおおおおおおおおおおおおお!!!」


姉御と牛鬼は互いに全力でぶつかっていた。その衝撃は森全体を揺るがし、近くの大木が木っ端みじんになるほどの衝撃だった。そして牛鬼は姉御の一撃を防ぎきれず、額に姉御の薙刀の刃が突き刺さった。


「ぐあああ!!?」


牛鬼はそんな状態になってもいまだに力が弱まることは無く、むしろその状態からどんどんと姉御を押し返していった。


「まだまだだあああああああああああああ!!!」


牛鬼は叫んだ。そして姉御の全力の一撃をはじき返した。


「はああぁぁ!!?」


姉御は牛鬼にはじき返されて飛ばされて、地面に仰向けになった。


「う、嘘。あたしの全力が、はじき返された...!?」


姉御はもう魂の力がすっからかんになっており、身動きすら取れなかった。牛鬼は額から血を流しながら一歩ずつ姉御へと近づいて行った。


「はあ、はあ、さ、さすがに今の一撃は驚いたぞ。じゃが、やっぱし、おまえさんのスタミナ不足じゃったようだのぅ。最後の最後に力が弱まっていくのを感じたぞ?」


牛鬼は息を切らしながらそう言った。そして姉御を担ぎ上げた。


「はあ、はあ、さあ、ガイア。こやつを魔王様ん所まで送るんじゃろ?はよ行こうや。さすがに疲れたわ」


牛鬼はそれでもまだ余裕があるのか、姉御のかすかな抵抗もものともせずに言った。ガイアは木から降りてきた。


「ああ。そうだな。早くしよう。なにせ、お前らが地面を吹き飛ばした場所には...」


「ううううううううううううううううういやっほおおおおおおおおおおおお!!!やあああああああっと出られたぜ―――――――――!!!」


牛鬼と姉御の衝突により作られたクレーターからテンションがとてつもなく高い男が現れた。それはゴゴだった。


「なにぃ!!?なしてそげな所にいたんじゃ!?」


「...地面にゴゴを入れた箱を埋めといた。拘束してたはずだが...破った?」


ガイアは困った表情を浮かべた。そしてゴゴはその二人に気づいた。


「ああああああ!!!ガイアじゃん!!!しかも牛鬼ってやつに似てるのもいる―!しかも姉御を担いでる!!!...まあ、なんだかよく分かんねーけど、とりあえず俺と勝負しろおおおおおおお!!!」


ゴゴはガイアたちに突っ込んでいった。

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