昆布vsチューヤ②
昆布はチューヤと闘っていた。
「うわぁ!?あっぶね!」
昆布は身をかがめた。昆布の上すれすれにチューヤの爪による斬撃が走った。昆布はチューヤの腹を蹴り飛ばした。チューヤはそれを受け止めた。
「ええ!?避けるまでもないってこと!?」
昆布は驚いた。チューヤはニターっと笑った。
「そんな攻撃、オイラにとっては猫だましにもならないッチュね!」
チューヤは昆布の脚を掴んでグルグルと回転してハンマー投げのように昆布を投げ飛ばした。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
昆布は後頭部を大木に強打した。大木は大きな音を立てて揺れ、木の葉が舞い落ちる。昆布は後頭部を手で押さえた。
「いってぇ!!」
昆布はその痛みを気にする時間も与えられず、チューヤの追撃をその目で確認した。チューヤは膝蹴りをくらわせようと膝を突き出して飛んできた。昆布は右に飛んで避けた。チューヤの攻撃は大木に当たり、大木の幹はトンネルのような丸い穴を開けて崩れていった。
「ひえーーー!!そんな威力!この鎧じゃ耐えられるわけないでござるよ!?」
「チュッチュッチュ!当たり前だッチュ!オイラの膝蹴りは人間が当たれば即死は免れないッチュよ!」
「はえー。じゃあ鎧脱いだ方がいいのか?...でも無くすと困るしなー。身に着けてれば無くす心配なし!...だけどそれじゃ勝てなさそー。もーう単純に強い!強すぎ昆布はチューヤと闘っていた。
「うわぁ!?あっぶね!」
昆布は身をかがめた。昆布の上すれすれにチューヤの爪による斬撃が走った。昆布はチューヤの腹を蹴り飛ばした。チューヤはそれを受け止めた。
「ええ!?避けるまでもないってこと!?」
昆布は驚いた。チューヤはニターっと笑った。
「そんな攻撃、オイラにとっては猫だましにもならないッチュね!」
チューヤは昆布の脚を掴んでグルグルと回転してハンマー投げのように昆布を投げ飛ばした。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
昆布は後頭部を大木に強打した。大木は大きな音を立てて揺れ、木の葉が舞い落ちる。昆布は後頭部を手で押さえた。
「いってぇ!!」
昆布はその痛みを気にする時間も与えられず、チューヤの追撃をその目で確認した。チューヤは膝蹴りをくらわせようと膝を突き出して飛んできた。昆布は右に飛んで避けた。チューヤの攻撃は大木に当たり、大木の幹はトンネルのような丸い穴を開けて崩れていった。
「ひえーーー!!そんな威力!この鎧じゃ耐えられるわけないでござるよ!?」
「チュッチュッチュ!当たり前だッチュ!オイラの膝蹴りは人間が当たれば即死は免れないッチュよ!」
「はえー。じゃあ鎧脱いだ方がいいのか?...でも無くすと困るしなー。身に着けてれば無くす心配なし!...だけどそれじゃ勝てなさそー。もーう単純に強い!強すぎでござるよ!?」
昆布は魔族の桁違いの筋肉量を嘆いた。チューヤは笑った。
「そりゃそうッチュよ!もともと、人間が魔族に勝てる要素なんか1ミリもなかったッチュよ!それなのに、勇者とかいう頭のおかしい強さの人間が現れたから、魔族は人間と不可侵条約を結んだッチュよ!」
チューヤは恨みがあふれた表情をした。昆布は緊張感がない返事をした。
「はえー。勇者ってそんなに強かったんでござるか?歴史の教科書には顔しか映って無かったでござるから、実際の強さは知らないんでござるよねー。」
昆布はあほみたいに緊張感のないしゃべり方で言った。チューヤはまるっきり逆の、苦しさに顔をゆがませていた。
「強いなんてもんじゃないッチュよ!あいつはオイラたちの父ちゃんでもある15代目害鼠の首を取ったおぞましい存在ッチュよ!オイラたちの父ちゃんは今の害鼠兄ちゃんよりも強かったのに、それでも負ける程だったッチュ!」
「へえー。」
昆布は興味なさそうに言った。それでもチューヤは白熱していった。
「あの時の顔は忘れられないッチュ!まるで心の底から殺しを楽しんでいるような、残虐な目!それに睨まれたときは死を予感したッチュ!でも、あいつが言った言葉は『強くなって俺を殺しに来い』だったッチュ!だからオイラはその時の言葉を返すために強くなろうって決めてたッチュよ!...まあ、その時の勇者はいなくなったッチュけど。」
「ふぁー。」
昆布はあくびをした。それに気づかないほどにチューヤは白熱した過去話をしていた。
「まあ、そんなわけッチュから、今勇者を名乗っている5人にはオイラたち魔族の恨みをぶつけさせてもらうッチュよ!」
そう言ってチューヤはいきなり昆布に襲い掛かってきた。昆布ははっと気がついた。そして右手の武器でチューヤの膝蹴りをガードした。その衝突によって周囲に衝撃波が走る。木々が揺れ、木の葉が吹き飛び、地面が驚いた。
「うぐギギギ!」
昆布は膝蹴りを耐えていたが、徐々に押され始め、最終的には吹き飛ばされた。昆布は大木に体を打ち付け、ズルズルと落ちていった。
「まあ、お前は勇者じゃないッチュけど、勇者の仲間なら容赦しないッチュ!」
チューヤはそう言って大木に寄りかかっている昆布の腹に膝蹴りを食らわせた。昆布はそれをまともに食らってしまい、激痛のあまり口から声が出なかった。そして後ろの大木は一瞬にしてトンネルのような穴ができ、大木が昆布の方に倒れてきた。チューヤはそれを避けたが、昆布は激痛で動けずに大木の下敷きになった。
「...これでおわりッチュか。まあ、人間にしては腹に穴が開かなかっただけ頑丈だったんじゃないッチュかね?とりあえず、牛鬼様のところに戻るッチュか。」
チューヤはその場を後にして去ろうとした。しかし後ろの大木が吹き飛ばされた音を聞いてチューヤは驚いて足を止めた。
「...なに?」
チューヤは恐る恐る後ろを振り返った。そこには口から血を吐きながら大木を押しのけて立ち上がる昆布の姿があった。
「はぁ、はぁ、に、逃げるなんて、卑怯でござるよ?チューヤ。」
昆布はフラフラの状態で立ち上がった。チューヤはそれを見て小さく「バカな...」とつぶやいた。
「なんでまだ息があるッチュか!?オイラの膝蹴りをまともに受けたはずッチュよ!?」
「ああ。痛かったで、ござるよ。」
昆布は口を拭って言った。チューヤは昆布が生きていることをまだ信じられない様子だった。
「そ、そりゃ、痛いなんてもんじゃないッチュよ。本来だったら死んでるッチュから...」
チューヤの返しに昆布は笑った。
「フッフッフ。ああ。そうでござるな。拙者も、本気は出さないでもいいかなーって、思っていたでござるよ。でも、今の膝蹴りを食らって、ようやく本気を出す気になったでござる!」
そう言って昆布は懐からひとつの面頬を取り出した。チューヤはそれに見慣れておらず、聞いた。
「それはー、なにッチュか?」
「これは面頬って言って、まあ、顔の下半分を隠すお面みたいなもんだ。」
昆布の取り出した面頬は真っ赤な色のお面で、口が大きく、金色の歯が並び、怒り上がった下あごの八重歯が印象的だった。
「その面頬は、なにか怖いものを感じるッチュな。」
「へへ。よくわかったでござるな。拙者の面頬は、真っ赤に、染まった、鬼の面でござるよー。」
昆布は鼻歌を歌うようなテンションでそう言ってその面頬をつけた。すると昆布はシュンッと体の力を抜いてうつむいた。そして再び顔を上げるとギラリと光る眼でチューヤを見た。
「...なんだか、だいぶ雰囲気が変わったッチュね。...真面目モードってやつ?」
「へへへ。血の匂いだ。」
昆布は口の中の血を飲み込んで言った。そして昆布は目にも止まらぬ速さでチューヤに近づき右手の武器で攻撃をした。チューヤは一瞬反応が遅れ、後ろに距離を取ろうとしたが間に合わず、腹に軽い切り傷を負った。
「へへへ。油断してんじゃねーよ。」
昆布はそう言って再び右手を振ってチューヤに切りかかった。チューヤは2度目は食らわずに距離を取った。
『いきなり変わったッチュ!?あいつ自身の動きも、技のキレも、口調も!面頬って、そんなつけるだけで強くなれるものッチュか!?ただのお面じゃないッチュか!?わかんねー。分かんねーッチュけど、オイラも本気でやらないとまずいって事だけは分かるッチュ!』
チューヤはそう思って全身の筋肉に力を入れた。血管が浮き上がり、皮膚が硬質化していく。そしてチューヤの姿は一回りデカくなった。
「これがオイラの本気の姿ッチュ!さあ、かかってくるッチュよ!」
チューヤがそう言うと昆布は右手の武器に語り掛けた。
「じゃあ、俺たちも本気を出そうか?なあ、『ホワイト』?」
ホワイトと呼ばれた武器は勢いよく飛び出し、その姿が天に昇る龍のように上へと伸びた。
「ホワイト?それがその武器の名前ッチュか?」
チューヤの質問に昆布は耳も貸さなかった。
「俺たちなら、あんな敵余裕だろ?」
昆布はそう語り掛けた。するとホワイトはチューヤに襲い掛かった。空気を切り裂いて一直線にチューヤを貫こうと伸びていった。チューヤはそれを右に避けてかわした。すると昆布が右手を左に引っ張ってチューヤの脇腹を削り取ろうとした。チューヤは空中を泳ぐように昆布に突っ込みながらそれをくぐってかわした。
「そんな直線的な当て方じゃ、一生オイラは捉えられないッチュよ!」
チューヤはそう言って昆布の腹めがけて右足で膝蹴りをした。昆布は左手で受け止めた。
「なにぃ!!?ばかな!?」
自身の筋肉を最大限に開放した自慢の膝蹴りを難なく受け止められてチューヤはショックを受けた。そして昆布はホワイトを引き戻しながらチューヤの首元をえぐった。チューヤの首から血が噴き出る。
「ぐわあああ!!?」
チューヤはすぐにその場から離れようとしたが、昆布に捕まれた膝が全く動かず、仕方なく昆布のエグリ攻撃を素手でブレーキをかけた。手からも血が噴き出す。そしてその攻撃を止めた。
「はあ、はあ、はあ、はあ。」
チューヤは自身の首から流れ落ちる血液をそのボロボロになった両手で押さえながら左足で昆布の顔面を蹴ろうとした。昆布はそれをかがんで避けて、さらにチューヤが掴んでいる部分の刃を切り離した。
「ええ!?」
チューヤは驚いた。そしてその隙を逃さず、昆布はホワイトを伸ばして心臓を一突きした。チューヤは確実な死を全身に感じた。そして昆布はホワイトを引き抜き、チューヤの手に持っていた部分の刃を奪い取り、またくっつけた。そして昆布はフーッと息を吐いて面頬を取った。
「...遺言はあるでござるか?」
その質問にチューヤは乾いた笑いを出しながら答えた。
「害鼠の兄ちゃんに、不甲斐ない兄弟でごめんって、伝えて欲しいッチュ...」
そう一言言ってチューヤは死んだ。それを聞いた昆布は物悲しそうな表情を浮かべた。
「...綺麗な兄弟愛でござるな。拙者も、そんな兄弟が欲しかったでござるよ。だから、レイジのことを兄貴って言ってるんでござるよね。レイジは、拙者の理想の兄貴でござるからな。」
昆布はそう言って姉御のもとへと歩き出した。