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星の勇者  作者: アシラント
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旅の始まり

「それで、ゴゴはどこの生まれなんだ?」


四人はサンシティに向けて歩き始めた。道中はボロボロに壊れた高速道路を歩いて行くことになった。歩き始めてすぐに、レイジはゴゴのことを知るために色々と質問をしようとしていた。


「俺の生まれ?そうだなぁ、親のいない奴らがめちゃめちゃ集まってて、人種も色々いて、いっつも喧嘩ばっかりしてたなぁ。」


「ヘぇー。戦災孤児が集まった場所ってこと?」


あんこはふわふわとゴゴの横に移動して聞いた。


「まぁ、そんな感じだなー。みんながみんな感情を失ったみたいな顔してて、誰と話してもつまらなかったなぁ。」


ゴゴは苦い思い出に顔をしかめた。その顔がいきなり明るくなった。


「だがな!一人だけめちゃめちゃおもしれーやつが居たんだよ!ニパッチっていうやつなんだけどよぉ、そいつだけは喜怒哀楽がしっかりとしていてよぉ!おまけに人を笑わせるのが大好きでな!いっつも笑わせてもらってたぜ!」


ゴゴはとても楽しそうに唾を飛ばす勢いで話した。その話にレイジは興味を惹かれ、続けて質問をした。


「そのニパッチって人は男?女?」


「もちろん男だぞ!俺の施設は十七年前の魔王軍と戦うために訓練する場所だったからなー。男の方が都合がいいらしくて男しかいなかったな。だから初めて施設の外に出たときに女を見たんだけどよ、弱っちい男だと思ってよぉ、胸を触って『これは敵から心臓を守る新しい防具ですか?』って聞いたんだよ。そしたら顔に思いっきりビンタくらってよ!街の人たち大笑いしてたぜ。」


ゴゴはガハハと大きく口を開けて笑いながら喋っていたが、他の三人は愛想笑いをするしかなかった。


「そ、そうか。まぁ、少ししかゴゴと一緒にいないけど、なんとなく想像つくなぁ。今の常識はずれなところもそういう理由があったのかって納得がいくなぁ。」


レイジは腕を組んでうんうんと頷いた。あんこは再びゴゴの横につき顔を覗き込んだ。


「それで、ゴゴとお姉ちゃんはどこで出会ったの?相当お姉ちゃんの恨みを買ってたみたいだったけど。」


あんこは純粋な目で聞いた。ゴゴは浮気がバレた夫のように挙動不審になり、目を泳がせ顔を振りまわし痒くもない頭をかきながらうーんと唸った。


「あんこ、それは秘密。前も言ったけど私たちの関係はとても複雑なの。それに、私があんた達に聞かせたくないからゴゴには口止めをしているのよ。」


姉御はあんこの肩に手を置いて真剣な眼差しで注意した。あんこは「そうだった。ごめんなさい。」と素直に謝った。


「...ああ!そういうことだ。もし俺が喋ったら、俺は姉御に殺されることになる。比喩表現じゃなくて、マジの方でな。」


ゴゴは姉御の意見に乗っかり、汗をかきながら必死で言えない理由を話した。そのあとゴゴは乾いた笑いを発しながら足速に歩き出した。



よくある世間話を交えながら四人は楽しそうに歩き続けて、いつの間にか太陽が赤く染まりだし空には小さな光が灯りだした。


「よし、じゃあそろそろテントを張ろうか。」


姉御は背負っていたリュックの中から緑色の紐がついた小さな袋を取り出した。そしてその紐を引っこ抜くと、途端に空気を吸って大きくなり、ピラミッド型のテントに早変わりした。


「うぉぉ!?なんだこれぇ!?」


ゴゴは初めて触れる文明に興味を惹かれた。姉御はゴゴに振り向いた。


「ん?ゴゴは簡易型テントを初めて見るのか?こいつは前の戦争中に発明された小型で軽量のテントなんだ。安くて軽くてまあまあ丈夫だから兵士たちの間でも凄く評判が良かったんだよ。まぁ、使い切りってところが唯一の不満点かなぁ。」


「なるほど。つまり俺には必要のないものってことだな。」


ゴゴはニッコリと笑い頷いた。姉御は愛想笑いをして、立ち上がった。


「よし、じゃあ晩御飯の用意でもしようか。レイジ、お願いね。」


姉御はレイジの方を向いて目線を送ると、レイジは頷き右手に力を込めてパッと開くと、その右手に炎を生み出した。ゴゴは驚き、思わず二度見した。


「ええぇ!?炎が出たぞ!昔見たマジックと同じじゃん!すげぇぇぇぇ!」


ゴゴは興味津々にレイジの右手を凝視した。


「あれ?言ってなかったっけ?俺は幻獣使いなんだよ。見ての通り、火の幻獣を俺の魂に封じ込めたんだよ。」


「ほぉぉ、そうかぁ。ん?待てよ、レイジが幻獣使いだとしたら、幻獣を殺すための武器である、神のへそくりを持てるのはおかしくないか?触っただけで大火傷じゃなかったか?」


ゴゴはレイジの右手と左腰に携えている勇者の刀を交互に見ながら言った。ゴゴの言葉に姉御が反応した。


「そうなんだよ。なんで持てるのか全然わかんないんだよ。やっぱり神のへそくりじゃないのかもね。まあ調べようにも、あたしとあんこは幻獣使いじゃないから調べようがないけどねー。」


姉御は肩をすくめて言った。


「じゃあ俺がちょっと持ってみようかな!」


ゴゴは勇者の刀をガッチリと握った。すると、ゴゴの手のひらから白い煙が上がり、「アッチィッ!?」と大きな声を出して手を離した。ゴゴの手のひらはまさに幻獣が神のへそくりに触れた時の焼け方と同じ焼け方をしていた。


「ぐあぁ。やっぱりそれは紛れもなく神のへそくりだあぁ。」


ゴゴは焼けた手のひらに何度も息を吹きかけながら話した。


「「「ええぇーーー!?ゴゴ!あんたも幻獣使いだったの!?」」」


姉御とレイジとあんこは三人とも声を揃えて驚いた。


「え?ああ、そうだよ。そーいや言ってなかったなあ。」


ゴゴは照れているのか右手を頭の後ろに置いてニコニコと笑った。


「えー!何の能力なのー?」


あんこはふわふわと近づいて上目遣いに聞いた。ゴゴはフフッとカッコつけた笑いをした。


「聞いて驚けぇ、俺の能力はなんと!?」


ゴゴは高速道路の壁に左の手のひらを高いところにピタッとくっつけた。そしてそのまま自身を持ち上げた。


「なんと!くっつく能力なのです!どうだーすごいだろぉ!」


ゴゴは満足そうな笑みを浮かべながら懸垂をするように上下に動いた。それを見た三人は、ぽけーっとその様子を見ていた。


「な、なんだよ、もうちっといいリアクションないの?なんか、期待外れみたいな眼差しで見られてるけど...」


ゴゴが三人をチラチラと見ていた。三人はため息をつき晩御飯の準備を始めた。


「おぉい!なんかもっとこう、すごーい!とかかっこいい!とか、そういうの無いのー?この能力は最強の能力なんだぞぉ!?」


ゴゴの大きな声は三人の心には響かなかった。姉御はため息をつき、ゴゴの方を向いた。


「まぁ、座りなよ。たまにあるよね、ハズレ能力って。まあそんなに気にすることないよ、全然。あんたには力があるんだからね。」


姉御はレイジの生み出した炎に鍋を置き、水を入れた。あんこは具材を切り分けてその鍋の中に入れた。


「そうだよ。当たりの幻獣の方が珍しいんだから。というか、幻獣を倒すこと自体が凄いことなんだよ!」


あんこは鍋をかき混ぜながら言った。レイジがうんうんと頷いて口を開いた。


「その通り。俺たちも依頼で幻獣退治に出かけたけど危うく全滅しかけたからなぁ。まさか姉御の力を持ってしても逃げるのがやっとだったしな。そんな幻獣を倒せるなんて相当凄いことだぞ!」


レイジは道中に狩ってきた猪の肉を切り分けて鍋に入れた。レイジは鍋の中を見て少し驚いた。


「おお、今日は豪華だなぁ。野菜がいっぱい入ってるよ。」


「町長さんがシールドのお礼にって無理矢理渡してきたんだよ。まったく、お礼なんていいって言ってるのに、受け取ってくれなきゃ気が済まないって言われて、しかもあんた達さっさと歩いて行くから少しだけ分けて貰ったってこと。」


姉御は嬉しそうに文句を言った。そして、仕上げに調味料を鍋に入れた。


「よし、今日のスープ完成!適当に入れた割には美味しそうな匂いじゃないか。さあ、お椀を出して。」


姉御はレイジ達のお椀にスープを盛った。レイジ達は美味しそうにそのスープを食べ始めた。特にゴゴは感動していた。


「おおぉ!美味い!今まで腹に入れるだけの食事しかしてなかったから、味を楽しむことがこんなにも幸せな事だとは思わなかった!」


そう言ってゴゴは結局喉に流し込むように食べた。


「やったね!今日は当たりだよ!適当に入れると大体美味しくないスープができるんだけど、今日はラッキーだね!」


両頬にはスープの具材を詰め込んだまま、あんこも満足した笑みを浮かべた。


四人はスープを平らげて地面に寝っ転がった。あんこはふわふわと浮いていた。


「ところで、三人はもうずっと旅をしているのか?」


ゴゴは上半身だけ起こして聞いた。すると、姉御も上半身だけを起こしてゴゴを見つめた。


「まあ、そうね。ここ最近はずっと歩いて旅をしているわね。前まではいい乗り物があったんだけど、幻獣から逃げるときに壊されて、その部品を集めることも目的の一つとして旅をしているわ。」


「なるほどねー。」


「まあ一番の目的は、この世界を変えたいから、だけどね。」


「この世界を変えたい?」


「そう。今の世界って、お世辞にも平和とは言えないでしょう?ほとんどの人が幻獣たちから身を守ろうとして、神のへそくりを奪い合ったり、幻獣使い同士で殺しあったり、都市と都市で戦争したり、魔族の末裔を奴隷のように扱ったり、もう世界は傷つきすぎてるのよ。だから、私たちが幻獣を倒してこの世界に平和を蘇らせようって思ったのよ。」


姉御は少し恥ずかしそうに髪の毛を指でクルクルさせながら言った。ゴゴは星空を見上げた。


「そうかー。本当に強いんだなぁ、姉御。あの人みたいだな、俺を許してくれるなんて。」


「別に、許したわけじゃない。ただ、あんたは変わったと思うから、少し信じてみようと思っただけ。もし変わってなかったってあたしが思ったら、いつでも殺せるしね。」


姉御は屈託のない笑みを浮かべた。ゴゴは少し驚きながら優しく微笑んだ。


「ありがとう。いつでも殺していいよ。」


二人にしかわからない謎の空気にレイジとあんこは戸惑いながら見守っていた。


「さて、じゃあ今日はもう寝ようか。ゴゴ、夜の見張りお願いね。」


姉御は立ち上がり、テントの中に入っていった。レイジとあんこも困惑しながらテントの中に入っていった。


「おう!任せろ!」


ゴゴは白く綺麗な歯を輝かせながら親指を立てた。そしてレイジの生み出した炎が消えて、あたりは真っ暗になった。




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