害鼠戦、決戦準備
レイジは無線機を使って姉御にゴゴがさらわれたこと、自分も闘わなければゴゴを解放しないと言われたこと、死の森が決闘の場であることを伝えた。
「なにー!?ゴゴが四天王に手を出して連れ去られた!?あのバカ!何やってんだか!」
姉御は寝不足のイライラに加えてゴゴの勝手な行動に怒りがフツフツと湧き上がってきた。あんこもネネも同感だった。
「ゴゴ―、バカすぎるよー。」
「同感ね。四天王に1人で挑むなんて、自殺行為だわ。ここに来る途中でファイアにやられたことを覚えてないのかしら?」
あんことネネは互いにゴゴの行動にあきれていた。そして姉御は面倒さそうに頭をかいた。
「もーうしょうがないわね!仕方ないからあたしたちも行くよ。あいつに逃げられたら、あたしが困るからね!」
姉御はあんことネネにそう伝えた。レイジにも伝えたかったが、無線機はレイジの一方通行なため伝えることができなかった。そしてあんこは頷いた。
「そうだね!ゴゴはバカで面倒おこすサイテーの人間だけど、一応仲間だからね!それに、あたし誰かを助けるために動くの好きだもん!」
あんこはゴゴの救出に向けてやる気を出した。ネネは頭を抱えていた。
「はあ、なんでこんな面倒なことになるのかしら。てっきり私はドナルドの戦いを見るだけかと思っていたのに、これじゃ私も闘わないといけないみたいね。」
ネネはため息をつきながら仕方なしにやる気を出した。そんな二人を見て姉御は申し訳なさそうにした。
「ごめんねー、2人とも。ゴゴのバカが事態を面倒にさせて...もしかしたら四天王の1人と闘うことになるかもしれないけど、覚悟しておいてね。」
姉御はそう言った。あんことネネは力強くうなずいた。
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そしてレイジは姉御たちに伝え終わったときに、ルドラータファミリーの家に行き、今起きた出来事を伝えた。ボスは笑っていた。
「ハッハッハ!ゴゴのやつ、血の気が多くて困るなー!ますます好きになってきたじゃないか!」
ボスはゴゴの行動に好感を抱いた。レイジは申し訳なさそうに言った。
「というわけで、申し訳ないのですが、自分たちの仲間を取り戻すために協力をお願いしてもよろしいでしょうか?」
レイジの要望にボスは考えた。
「まあ、協力してやりたいのは山々だが、あいにくこっちも気が抜けない状態でね。ドナルドの部隊しか自由に動かせないんだ。」
「気が抜けない状態?」
レイジは聞き返した。ボスは軽くうなずいた。
「うむ。マフィアタウンの三大マフィアは知っているかな?」
「はい。ルドラータ、マルテーゼ、ニッコリーニですよね?」
「そうだ。そのマルテーゼとニッコリーニがなにやら怪しい動きをしているらしくてな。このマフィアタウンから人数を減らすわけにはいかないのだ。」
「なるほど、そうでしたか。」
レイジはそれを聞いておとなしく引き下がった。そしてボスはレイジの肩にポンと手を置いた。
「すまんな。私たちも闘いたいのは山々だが、守るべきものがある。だが、もしもこの先なにか困ったことが起きたらルドラータを頼ってもいい。必ず力になるぞ。」
ボスはそう言った。レイジは一礼をして部屋から出て行った。そして昆布がレイジに話しかけた。
「兄貴!ど、どうするでござる?やっぱり、闘うんでござるか?」
昆布はビクビクとおびえながら聞いた。レイジは少し残念そうに肩を落とした。
「そうだなー。四天王と闘うってのに、戦力が足りねーからなー。」
レイジがそう言うとドナルドはレイジの背中を叩いた。
「俺がいるだろ?安心しろ。」
「ドナルド...そういえば俺はドナルドの強さをほとんど知らないんだよな。幻獣討伐の時も魂の力を使ってなかったし。」
「そうだな。俺はお前らを疑ってたからな。だから力を隠してたが、ボスに認められたお前らなら力を見せてやってもいい。だから安心しろ。全力の俺はボスぐらい強いぞ?」
ドナルドはニイッと笑った。レイジは絶望感が少し薄れた。
「ありがとう。ドナルドがいてくれてよかったよ。」
「ああ!俺はボスに認められた奴なら仲間だと思ってる。だから遠慮するな。俺を頼れ。」
ドナルドはレイジを励ました。昆布はそれに乗っかった。
「じゃあ拙者も守って欲しいでござる!」
「お前は...認められたのか?あんまりボスと話してなかったが...」
昆布は痛いところを突かれて笑顔がぎこちなくなった。
「な、何を言ってるでござるかー!きっと認めてくれたでござるよ!...たぶん」
「...まあ、いい。とりあえず自分の身は自分で守れ。俺ができるのは敵を殺すことだけだ。誰かを守るのは得意じゃない」
「そ、そんなぁ!悲しいでござるよー!」
昆布は目から涙をドバドバ垂れ流しながらドナルドの足にしがみついた。ドナルドは昆布を蹴り飛ばした。
「うわ!気持ちわりぃ!いきなりしがみついてくんな!蹴っ飛ばすぞ!」
「も、もう蹴られたでござるよ...」
昆布は蹴られたほっぺたをさすりながら言った。そのやり取りにレイジは緊張がほぐれた。
「ハハ、昆布は相変わらず面白いな。見ていて飽きないな。」
レイジは笑いながら言った。レイジに笑われて昆布も楽しくなってきた。
「ちょっとちょっと!兄貴ぃ!少しは拙者の心配をしてくれでござるよー!」
レイジと昆布はいつもの調子に戻って仲のいい兄弟のようなやり取りをした。それを見たドナルドは不思議に思った。
「お前らは、兄弟なのか?」
その質問にレイジが答えた。
「いや?違うけど?どうしてそう思ったんだ?」
「ん?そうだなー。なんていうか、顔や性格は全く似てないんだが、雰囲気っていうのか?それが似てるように見えたんだ。」
そう言われて昆布は喜んだ。
「それって!拙者と兄貴が、本当の兄弟になれたって事なんじゃ...!?」
昆布の喜びようとは裏腹に、レイジはいたって冷静に答えた。
「いや、雰囲気が似てる奴なんてほかにもたくさんいるだろ。ボスとゴゴとか、あいつらの方がよっぽど似てるけどな。」
レイジの発言にドナルドは頷いた。
「確かにな。あの2人は親子みたいに似てるからな。確かボスにも息子がいたはずだ。旅に出かけてて帰ってこないって言っていたが、それがゴゴって事はないだろう。まあ、息子が帰ってきたみたいで嬉しいんだろうな。ボスがここまで気に入るって事は。」
ドナルドはそう言った。そして昆布は悲しそうにした。
「兄貴ぃー。拙者との兄弟説はー?もっと語って欲しいでござる―。」
昆布はレイジの袖をつかんでブンブンと振った。レイジは冷静に言った。
「だって顔がこんだけ違うし、性格も正反対じゃん。まあ、でも雰囲気が似てるって事は俺たちがヒノマルの生まれって事が影響してんだろうな。」
レイジの言葉にドナルドは反応した。
「へえー!お前らヒノマルの出身だったのか。」
「ああ。だが、俺は確証はないんだ。ヒノマルの街で姉御に拾われたからヒノマルの出身って言われてるだけで、DNAを調べたわけじゃないんだ。」
「なるほどなー。だから似てんのか。納得した。」
ドナルドとレイジはそう言って互いに納得してその話を終わらせた。昆布は寂しそうにした。
「えー!それで終わりでござるかぁ!?もっとこう...なんか無いのでござるか?」
粘る昆布にドナルドがバッサリと切り捨てた。
「どうでもいいだろそんな事。今は決戦に向けての準備をしなきゃならねえ。さっさと支度しろ!」
「やだやだやだ!拙者のあこがれの兄貴と同じになりたいでござるー!もっとそう言う褒め方してくれでござる―!」
昆布は完全に駄々をこねる子供になってしまった。それを面倒くさく感じたドナルドは言った。
「あー!うるせえな!レイジはそんな駄々こねるマネしねーよ!その行為がレイジに似てねーんだよ!」
それを言われた昆布はハッと気づき、冷静を装って言った。
「さあ、準備をするでござる。」
レイジのような言い方をして昆布は死の森へと歩き出した。それを見たレイジとドナルドは『単純な奴だなー。』と心の中で思った。