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星の勇者  作者: アシラント
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レイジたちの前夜の様子

「おいゴゴ!どこ行くんだよ?」


レイジは走っていくゴゴを追いかけながら呼んだ。ゴゴは夜空に輝く星たちを眺めながら答えた。


「なんだよレイジ。ついてきちまったのか?」


「そりゃそうだろ?お前がこの町で何もしないなんてこと無いんだから。喧嘩でもおこされたらたまったもんじゃねーからな。」


「なんだよ、俺の心配じゃなくてそっちの心配かよ。なら安心しろ!俺は闘う気はねーからな!」


「安心できるわけねーだろ!ゴゴの性格ならよくわかってんだから。」


「ハッハッハ!そりゃ頼もしいねー!」


ゴゴとレイジは互いに会話を楽しみながら追いかけっこをしていた。そしてゴゴは家の屋根に飛び乗ってそこで止まった。レイジもそこに飛び乗った。


「ゴゴ、こんなところに何か用なのか?」


「いいや、何にも用は無いけど?」


「じゃあなんでここに来たんだ?」


「そりゃ、修行の為さ!」


「修行?」


レイジは昼間のことを思い出した。ゴゴが熱心に姉御の勉強を受けていたことを。そしてゴゴは話をつづけた。


「そう!魂の力をコントロールするのは理性だって言ってただろ?だから瞑想でもして理性を高めようかと思ってな!」


ゴゴは笑顔で話した。その笑顔には期待と喜びが一目見ただけで分かるほどにあふれていた。レイジはその笑顔を見て聞いてみた。


「そんなに強くなれることが嬉しいのか?」


ゴゴは「うーん」と言って考えた。


「どうなんだろうな?俺にもよくわかんねー。けどよ!俺が強くなればそれだけ面白れぇ闘いができるようになるって事だろ?今まで手も足も出なかった相手に勝てるかもしれねー。そう思うだけでワクワクしてくるんだ!」


ゴゴは魂の奥底から湧き上がる喜びに全身を震わせていた。レイジにはあまり理解できなかった。


「俺にはわかんねーよ。確かに強くなることは生きていくうえで大事だとは思うけど、そのために自分の身を死の危険にさらすなんて、本末転倒じゃないか?だって、生き残りたいから強くなるんだろう?それなのに死ぬかもしれない闘いをするなんて...」


レイジがそう言いかけたときに昆布がレイジたちに追いついた。


「兄貴ぃーーーー!!待ってくれでござるよーーーー!!!」


昆布はレイジたちに追いついた。そして息を整えて言った。


「兄貴!ゴゴは見つかったでござるか。それは良かったでござるよ!じゃあさっそく連れ帰って部屋に閉じ込めておくでござる!」


昆布はそう言ってゴゴの体をひもで縛ろうとした。しかしそれをレイジが止めた。


「待て昆布。その前に聞きたいことがあるんだが...」


「ん?何でござるか?」


「昆布は強くなりたいと思うか?」


レイジの質問に昆布は素直に答えた。


「そりゃもちろん。強くなりたいでござるよ?」


「それは、どうしてなんだ?」


「どうしてって、それは強くなった方が生きやすいからでござるよ!弱いままなら誰かに支配される人生のままで終わってしまうでござる。でも強くなれば、自由を手に入れられるでござる!だから強くなりたいでござるよ!」


昆布は夜空を見ながら自身の理想を語った。レイジはまた聞いた。


「そのために自分の命が危険にさらされても、強くなりたいか?」


「うーん、そうでござるねぇ。」


昆布は腕を組んで頭をひねりながら考えた。そして結論が出た。


「命の危険が全くないまま生きるのは不可能でござるよ。そんなぬるい人生でなにかを得ようとしても、結局はもっと厳しい人生を歩んできた者に先を越されるでござる。そうなりたくないからみんな必死で頑張るんじゃないでござるかなぁ?」


昆布の真面目な発言にレイジは心に突き刺さった。


「そうか...何かを手に入れるには危険を冒す必要があるか...」


「ああ!でも、時と場合によるでござるよ?兄貴はきっと、自分の知的好奇心を満たすために生きてるって感じでござるから、死の危険に足を踏み込まなくても大丈夫だと思うでござるよ。拙者は兄貴に死んでほしくないでござるからね!」


昆布は深刻に悩むレイジに対して精一杯のフォローを入れた。レイジも昆布の気遣いに気づき、フフッと笑った。


「ありがとな、昆布。ゴゴがあまりにも自分の命を大切にしないから、俺が臆病すぎるのかと思っていたところだったんだ。」


レイジと昆布はゴゴを見た。ゴゴは瞑想をして精神を集中させていた。


「なるほど。確かにゴゴは戦闘狂でござるからねぇ。あんなのと一緒にいたら逆に自分がおかしいのかと思うでござるよねぇ。」


レイジと昆布は互いに共感しあった。そしてレイジが昆布に言った。


「昆布は、死ぬのが怖いか?俺はすごく怖い。このまま死んだら、俺の知りたいことが分からないまま死ぬことになる。勇者の力とか、勇者の装備とか、魔族とか、幻獣とか、幻獣使いとか、ゴゴの正体とか、俺自身の正体とか、あんこがなんで浮けるのかとか、そういうことを知る前に死ぬのがイヤなんだ。」


レイジは自身のうちに秘めていた死への恐怖を昆布に吐露(とろ)した。昆布はそれを聞いてますますレイジが好きになった。


「兄貴!やっぱり拙者は兄貴が大好きでござるよ!」


「な、なんだぁ?いきなり?」


レイジは急にはしゃぎだした昆布に困惑した。昆布は興奮した様子で言った。


「悩みを拙者に話してくれたことがほんっとーに嬉しいんでござるよぉ!なんか、頼られてる感じがあって嬉しいでござるぅ!」


昆布はレイジに抱き着いてきた。レイジは恥ずかしくて昆布を引きはがした。


「わかった!わかったから!一旦離れてくれよ!」


「おおっと!申し訳ないでござる。拙者、少し興奮しすぎたでござるね!」


昆布はレイジに言われてササッと身を引いた。そしてゴゴが冷静に言った。


「おいおい、うるさくて瞑想出来ねーぞ。はしゃぎたいんだったら俺はここから離れるぞ?」


ゴゴの普段見ることのない冷静なツッコミにレイジと昆布はキョトンとした。それを不思議に思ったゴゴは二人に聞いた。


「な、なんだ?なんでそんなに俺の顔見るんだ?」


ゴゴに言われてレイジと昆布は口を開いた。


「いや、ゴゴに注意されたの初めてだったから...お前、一応常識は持ってるんだな。」


「うん。意外でござる。ゴゴに正論を言われるなんて...」


二人はそう言ってゴゴに謝った。ゴゴは言った。


「まあ、俺だって常識は持ってるが、それ以上に闘いに対して真剣なだけだ。闘わねーと生きてる意味がねーからな。それを邪魔するのはやめて欲しいってだけの話だ。...もしかしてまた変なこと言ってるか?俺は人間の気持ちがよくわかんねーからな。間違ってたら遠慮なく言ってくれよ!」


そう言ってゴゴはいつものバカさを取り戻した。レイジと昆布はほっとした。


「やっぱりゴゴはそのバカな感じがちょうどいいな。そのほうが安心できる。」


「そうでござるねぇ。ゴゴはバカじゃないと落ち着かないでござるよ!常識なんか語ったら病気を疑うでござる!」


レイジと昆布はそれぞれ思っていることをゴゴに言った。ゴゴは眉をひそめた。


「それって、褒めてんのか?バカにしてんのか?まあ、どっちでもいいけどよ。とりあえず!レイジと昆布にはお詫びとして、俺に理性の力で魂の力をコントロールするコツを教えてくれよ!」


ゴゴはいつもの調子に戻り、レイジたちに頼んだ。レイジたちもいつものゴゴを見ることができて安心した。


「ああ。そうだな。瞑想の邪魔したお詫びに、俺たちが教えてやるよ!」


「そうでござるね!拙者たちにかかれば、ゴゴを強くすることなんて楽勝でござるよ!」


そう言ってレイジと昆布はゴゴにコントロールするコツを教えることにした。


「まずは理性の前に本能の話からだな。ゴゴは『勝ちたい』って思うことで魂の力を解放してんだったな。それはなんで勝ちたいんだ?その理由が分かればコントロールは簡単なんだ。」


レイジに言われてゴゴは考えてみた。しかし、全く心当たりがなかった。


「なんで勝ちたいのか、だって?それは...俺には全くわかんねー!!!ちなみにレイジはどういう気持ちで魂の力を解放したりコントロールしたりしてんだ?」


ゴゴに聞かれてレイジは答えた。


「俺か?俺の場合は『知りたい』って思うと魂の力が解放されるな。それで、何で知りたいのかって聞かれたら、『知ることで自分の世界が変わるのが楽しいから』って思うんだ。」


「なるほど、じゃあ俺もそう思えばコントロールできるのか?」


「いいや、コントロールのコツは人それぞれ違うからな。俺のやり方を真似しても出来ないと思うぞ?」


「そうか...難しいな!」


ゴゴは難しいと言いながらも楽しそうに笑った。


「まあ、前にも言った通り、すぐに変わる必要はないと思うぞ?むしろ今まで魂の力を解放せずに闘ってきたことの方が驚きだからな。焦らずにじっくりと自分と向き合えばいずれ答えが見つかると思うぞ。」


レイジはアドバイスをした。ゴゴはそのアドバイスを素直に聞き入れた。


「そうだな。なんたって俺にはこの無敵の筋肉があるからな!ここまで筋肉を育てるのは簡単な事じゃなかったぜー?それに比べれば、魂の力をコントロールなんて、楽勝楽勝!」


ゴゴはガッハッハと笑った。レイジはそのゴゴの元気さに笑った。


「そうだな。ゴゴならできるようになると思うぞ。」


レイジはそう言ってゴゴを肯定した。





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