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星の勇者  作者: アシラント
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お勉強会

姉御の授業は30分ほど続いた。その間にゴゴは他の誰よりも真面目に聞いていた。


「せんせー!闘いの基本はだいたいわかったので、魂の力について詳しく知りたいです!」


ゴゴは元気よく手を上げて言った。姉御もその誠実な態度に答えた。


「そうね、じゃあ魂の力について勉強しようか?」


「ぃやったーーーーー!!」


ゴゴとダンは二人でハイタッチをして喜んだ。ジャックとルーシーも徐々にゴゴに対する警戒心を解き始めていた。


「ゴゴ、お前、俺たちと一緒に住まないか?お前ならジャックとルーシーも歓迎してくれそうだぞ!」


ダンはゴゴの肩に手を乗せながら言った。ゴゴはデヘヘと照れた。


「そりゃあ、嬉しい相談だけどよ!残念ながら俺は姉御に命を預けたから、一緒には住めねーよ。」


「そうか...そりゃ残念だな。じゃあさ!今度暇な時とかは遊びに来いよ!いつでも歓迎するぜ!なあ?ジャック?」


ダンはジャックに聞いた。ジャックは少し戸惑っていた。


「え?...そうだな、ゴゴならいいかもな。ルーシーもいいか?」


「う、うん。ゴゴ君とは友達になれそう...かな?」


ルーシーは自信無さげではあったがゴゴのことを認めていた。それを見て姉御は笑顔があふれてきた。


「ゴゴ、あんたは子供に好かれる才能があったんだね。すごいじゃないか!あんたも成長してるんだね。」


「そんな事いいからさ!せんせー!速く魂の力について教えてくれよー!俺!強くなることに関しては誰よりも知りたいんだ!」


「はいはい。分かっているわ!」


姉御は小学生の様に興奮するゴゴに笑顔で答えて、そのまま話をつづけた。


「魂の力っていうのは、言葉の通りの意味で、その人の持つ魂が肉体に力を与えてくれるの。多くの場合が筋肉量の増加、もしくは皮膚の硬質化。その二つが主な魂の力の使い方になるわ。」


姉御の説明を受けて、ダンがゴゴに聞いた。


「へえー!じゃあゴゴの筋肉も魂の力でそんなにムキムキになってるの?」


ゴゴはフッフッフと怪しい笑いをした後に白い歯を見せながら笑った。


「ブッブー!俺の筋肉は魂の力で強くしてませーん!18年間ずーっと筋トレした結果でーす!」


「マジかよー!筋肉ってそんなにでっかくなるもんなのかー!?」


「そうだぜぇ?俺も始める前はヒョロッヒョロのガーリガリだったが、今じゃこんなにもムッキンムッキンになったんだぜ!...まあ、魂の力を扱えたらヒョロッヒョロの男でも俺と力比べでおんなじ筋肉量だったけどな...」


「なーんだ、じゃあ魂の力を使えた方が全然強いんじゃん!」


ダンは子供特有のデリカシーのない発言をした。ゴゴはヘラヘラと笑った。


「そうなんだよ!だから俺は今こんなにも必死でせんせーの話を聞いてるんだよ!一緒に強くなろうぜー!ダン!ジャック!ルーシー!」


ゴゴはキラーンと輝く歯を見せながら笑った。三人は頷いた。生徒たちの話が終わったところで姉御が手をパンと叩いて注目を集めた。


「それじゃ、話を続けるわよ。この魂の力を使いこなすには、どうすればいいでしょうか!?」


姉御は生徒たちに聞いた。ダンたちはうーんと言って考えていた。ゴゴは元気よく「はいっ!」と言って手を上げた。そして姉御がゴゴを指名した。


「勝ちたいって本気で思う事!」


「うーん!惜しいね!確かにゴゴにとってはそれが魂の力を解放するトリガーなのかもしれないわね。でもあたしが言いたいのはその本質のところよ。」


「本質?」


ゴゴは首をかしげた。姉御は頷いて話をつづけた。


「そうね、魂の力を解放するには、自分が一番欲しいと思った欲望を強く意識することが大事なの!例えば、勝ちたい!とか、腹が減った!とか、眠い!とか、死にたくない!とか、そういう欲望が魂の力を解放するトリガーになるの。」


「へえー!そうだったのか!」


姉御の説明にゴゴは納得した。ダンたちも聞き入っていた。


「そう!そして魂の力を解放するのは分かったと思うけど、肝心なのはこの魂の力を思い通りに操るコツ!これがわかったら闘いにおいて魂の力で負けることは無いわ!」


「なにーーーーー!!?負けることがないだってーーーーーーー!!?」


ゴゴは目玉とベロを飛び出させて驚いた。そしてダンたちも興奮してきた。


「そうだよ!そういうのが知りたかったんだよ!せんせー!速く教えてよー!」


ダンは姉御に言った。姉御はフフッと笑った。


「わかったわ。じゃあ、さっそく言うけど、そのコツとは、ずばり!『目的』よ!」


「「「「目的ぃ??」」」」


ゴゴたち四人は同じ言葉を発して、同じように首をかしげた。姉御は頷いて話をつづけた。


「そう!どうして勝ちたいのか、どうして死にたくないのか、どうして眠りたいのか。そういう自分の欲望に対してなぜ?という疑問を持つことが魂の力をコントロールするコツなの。例えば勝ちたいに対する目的は、勝って勝利の喜びを感じたいとか、勝って自分の方が優れていると感じたいとか、負けた時の屈辱感を味わいたくないとか、そういう風にどうしてそう思ったのかを自分で理解できると、魂の力をコントロールできるようになるの!」


姉御の説明にゴゴは全く理解できなかった。


「勝ちたいって思うことに、目的なんかあるのか?俺には感じられねーんだけど...」


「それはまだ自分が気づいてないだけよ。ゴゴにも必ず勝ちたいと思う目的があるはずなの。その目的が何なのかはあたしにはわからないけど。」


「そうなのか?じゃあ、どうやって知るんだ?」


「それは色々な事に挑戦するしかないわ。いわば人生経験ってやつね。その経験が自分自身を知るきっかけになることが多いの。」


姉御の説明にゴゴはまだ納得はしていなかったが、一部は納得した。


「確かに、俺は38歳だが、レイジたちに比べても人生経験は少ないな。俺に知らないこともレイジたちは常識みたいに知ってることが多いからなー。」


「そうね。つまりまとめると、魂の力は本能がパワーを生み出し、理性がそれをコントロールするって事よ。わかったかな?」


姉御が生徒たちに聞くとゴゴ以外の三人は理解できた。ゴゴは相変わらず頭をひねっていた。


「目的目的...なんだ?俺はなんで勝ちたいんだ?でも、とんでもなく勝ちたいな。しかも卑怯な手段を使わない勝ち方じゃないと満足出来ねーしな。なんでなんだろう?よくわかんねー!」


ゴゴがバカみたいに悩んでいるとダンが話しかけてきた。


「なんだよゴゴ!今の話理解できなかったのか?バカだなーお前!」


ダンの発言にゴゴは「なに!?」と驚いた。


「じゃあダンには今の話が理解できたってのか?」


「もちろん!つまり、俺は強くなりたい!その目的は、この町をよくするため!ってことだろ?」


ダンの理解力に姉御は褒めた。


「すごいね!ダン!あたしの話をよく理解してるじゃないか!」


ダンは姉御に褒められて得意げにしていた。そしてゴゴとダンたちの間に全く壁がない事に気づいたレイジは、ゴゴのコミュニケーション能力に驚いた。


「ゴゴって、そんな才能が有ったんだな...俺は子供に好かれたこと無いから、普通にすごいと思うぞ。」


レイジの言葉にネネも共感を示した。


「そうね、ゴゴには子供の警戒心を解かせるバカさがあるものね。レイジは頭が良すぎてバカになれないから、子供からしたら親しめないのかもしれないわね。」


「ネネ!それは褒めているのかバカにしているのか微妙にわかんねーぞ。」


レイジの困惑した顔にネネはクスッと笑った。


「大丈夫よ、どっちもだから。」


「どっちもかよ!純粋にほめてくれよ!」


レイジの迫真のツッコミにネネはクスクスと笑いが止まらなかった。そして昆布も笑いながらレイジに声をかけた。


「ハハハ!兄貴は確かにバカには、なれないでござるなぁ!なにせ真面目でござるからなぁ。仲間思いで責任感もあって、おまけに頭の回転が速いでござるからなぁ。そのうえで論理的な思考ばっかりでござるから、そりゃあ子供たちからしたら共感しにくい人って感じるでござるよ!拙者はそんな兄貴が大好きでござるけどね!」


昆布はそう言ってレイジに抱き着いてほっぺにキスをしようとした。それをレイジは本気で嫌がった。


「うわ!やめろ昆布!そういうスキンシップは嫌いなんだー!!」


レイジは昆布を引きはがして頭にチョップを入れた。昆布はプクーッと膨れ上がったたんこぶを押さえて涙目で言った。


「痛たたたた!もーう!ひどいでござるよ兄貴!男として惚れているでござるのに、そんなに拒否しなくてもいいじゃないでござるかー!」


「お前がネネみたいに美人だったら受け入れるけど、お前顔がおじさん過ぎるんだよ!俺の趣味じゃねーんだ!」


レイジは何気なく発した言葉がネネを驚かせた。


「えっ!?び、美人...?」


ネネはほほを赤らめながらレイジの方を見た。レイジは思わず自分の心の声が漏れてしまったことに焦った。


「ああ!いや、そのー、なんていうか...」


レイジは必死に言い訳を探したが、全く思いつかず、ため息をついて白状することにした。


「...はいぃ。美人だと、思っております...」


レイジは今までにないほどに自信無さげに答えた。その答えにネネは顔を真っ赤にして思考が今までにないほどに駆け巡った。


『ええええ!!?レイジが私のことを美人だって思ってたの!?い、いままでそんなこと言ってくる人は誰もいなかったわ...こ、これって、もしかして、レイジがあたしのこと、す、好き...って事!?い、いやいやいやいやいや!!!そ、そんなわけない...はず...だって私の見た目、魔族だし!』


ネネは考え過ぎて頭から蒸気を発していた。それをみたあんこはネネをからかった。


「あーっ!ネネ!レイジに褒められて恥ずかしそうにしてるー!かわいいー!」


「ななななな!?」


ネネは今までにないほどに焦って、ろれつが上手く回らなかった。




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