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星の勇者  作者: アシラント
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マフィアタウン道中②

レイジは旅の道中でネネのことを聞いた。


「なあ、ネネ。その...ネネのことをもっと知りたいんだけど、聞いてもいいかな?」


レイジはチラチラとネネの方を見ながら聞いた。ネネはドキッと驚いたが、うなずいた。


「う、うん。いいけど...なんでそんなこと聞くの?」


「まあ、ネネの過去って思い出したくない事があるかなーって思って、そのー、無理に話してくれなくても大丈夫だからな!言いたくなかったら、それでいいから...」


レイジは最大限に気を遣ってそういった。ネネはそんなレイジのあたふたした感じが面白く、クスッと笑った。


「なにそれ?そんなに気を遣わなくてもいいって。私は、私に興味を持ってくれたのなら、まあ、話してあげてもいいかなーって...」


レイジとネネはまさに男女の()()めのような初々(ういうい)しいやり取りをしていた。その様子が姉御やあんこには乙女心をくすぐられるようで、二人してその様子を鼻息を荒くしながら見守っていた。そんなことには気づかずにレイジは話をつづけた。


「そ、そうか!なら、よかった。ネネに嫌われたらどうしようかと心配していたんだ。」


レイジはそう言ってホッと胸をなでおろした。その様子を見てネネは思った。


『レイジがあたしに嫌われたらイヤなのかな?それって、もしかして、私のことが好きって事!??...いやいや!まさかそんなわけないでしょ。きっと私はレイジが出会ったことのない過去を持っているからそれに興味を惹かれただけよね?...ちょっと残念...』


ネネは残念そうにため息をついた。そしてレイジの言葉に答えた。


「大丈夫よ。それくらいでレイジを嫌いになったりしないから。それにもし私に何かあったらこのスイッチを押せば駆けつけてくれるんでしょ?そんなことを言ってくれた人を、嫌いになれるわけないじゃない。」


ネネは懐に隠していたスイッチをレイジに見せた。レイジは恥ずかしそうに手で口元を隠した。


「あ、ああ。もちろん、どこにいたって飛んでいくよ。ネネを守るためにな。」


「えっ!?ああ、そう、なんだ。それは...」


ネネはレイジに聞こえないほど小さな声で「ありがと...」とつぶやいた。レイジは「なんだって?」と聞き返したがネネは「なんでもない!」とほほを赤らめて言った。


「そ、そっか。じゃあ、まあ、とりあえず、ネネの過去を聞いてもいいか?」


「ええ。いいけど...」


「じゃあ、まず、どういう生活をしていたの?」


「そうね...山の洞くつで生活していたわ。あの山は木々で囲まれてて、普通の人間は入ってこない場所だったわ。そこで森に住む動物たちや果物や木の実を食べて生活していたわ。」


「そうなのか...大変じゃなかったか?」


「大変だったわね。毎日食べ物を探して森の中へと歩いて行って、冬場は動物たちが冬眠に入ったりするから見つけるのにすごく苦労したわね。でも冬以外だったら割と楽しかったわ。狩り自体は楽しいものだったわね。動物を殺めるのが心苦しかったけど、それでもがんばれば食べ物にありつけるっていうのは単純で面白かったわね。」


「なるほどなー。それは俺たちも同じなんだなー。」


レイジはネネと自身の生き方が似ていることに共感した。


「そうね。レイジたちも食料は基本的に道中で狩りをするものね。私もその役に立ててよかったわ。」


「ああ!ネネの狩りの技術は姉御も驚いてたぞ!『こんなに狩りがうまい人は見たこと無い』って!俺も驚いたよ。ネネがいてくれて助かったよ。」


「そ、そう?そんなに褒められると、どう反応していいのかわからないわね。」


ネネは褒められて恥ずかしそうに手と手を合わせてモジモジとした。


「まあその、反応に困るってのは、ちょっとわかるな。俺もそういう経験したことあるしな。」


「そ、そうなの?」


「ああ。そうだよ」


ネネとレイジは互いに恥ずかしそうにしていたため、会話が微妙に弾まなかった。そんな様子をあんこと姉御はもどかしい気持ちで見ていた。


『もーう!なんかちぐはぐだなー。はやく付き合っちゃえばいいのに!』


と、あんこは小声で姉御に言った。姉御もウンウンと大きくうなずいた。


『そうだねぇ。あたしは恋愛のことはアドバイスできないからねぇ。なにせ恋人を作る前に子供ができちゃったからね。』


『それってあたしとレイジのこと?たしか10歳の時にレイジを拾って11歳の時にあたしを拾ったんだよね?...改めて聞くと凄い人生歩んでるねー!姉御ちゃん!』


『フフフッ。でも、後悔はしてないからねぇ。あんたたちがどんどん成長していく姿を見てあたしは感動しているんだからね。あんたたちの成長を見守ることができてあたしはとっても嬉しいよ。』


そう言って姉御はあんこの頭をギュッと抱きしめた。あんこはデヘヘーっと嬉しそうにその包容を満喫した。


「おいレイジ!お前も一緒に遊ぼうぜ!」


遠くからブンブンと大きく手を振っているのはゴゴだった。ゴゴは朽ち果てた電信柱を空中に投げてそれに乗っかって飛距離を測る謎の遊びを昆布としていた。


「くぅー!!さすがゴゴ!投げれば投げるだけその飛距離が伸びていってるでござるよ!だんだんとコツをつかんだのでござるか!?」


昆布は自身の歩数で距離を測っていた。そして昆布に褒められたゴゴは胸を張って鼻を天狗の様に伸ばしながら誇らしげに語った。


「まーぁねーぇ!俺にとっちゃ、こんな距離はまだまだウォーミングアップにもならねーぜ!次は投げた後に乗れるか乗れないかギリギリのところを攻めていくぜ!!!」


そう言ってゴゴは再び手ごろな電柱を探しそれを思いっきり投げてそれに乗っかろうとした。しかし今度はうまく乗れず、ゴゴは滑り落ちて落下した。


ドッゴオオオオオオオン


ゴゴは墜落した。その衝撃でコンクリートの地面はひび割れた。


「うああああ!!!大丈夫でござるか!?ゴゴ!?」


昆布が駆けつけると腕を組んだポーズを決めて「耐久性能◎!!」と言った。そのばかばかしい言葉に昆布はお腹を抱えて笑った。


「そんな!下半身がズッポリと埋まった状態で!決め顔されても、かっこよくないでござるよ!」


昆布は笑いながらそう言った。レイジもゴゴの様子を見に来た。


「何やってんだよゴゴ。怪我無いか?」


「んだーいじょーぶ大丈夫!丈夫さだけなら世界一だぞ?そんな俺がこれしきの事でケガなどしなーい!」


ゴゴはそう言って風呂から上がるおじさんの様に地面からヌッと這い上がってきた。


「まあ、大丈夫ならそれでいいけど...」


そう言ったレイジは何かしらの気配に気づいた。それは姉御、あんこ、ネネ、昆布も一緒だった。唯一気が付いて無いのはゴゴだけだった。


「ん?どうしたんだ?みんなして?にらめっこでも始まったのか?」


「シッ!ちょっと黙って!」


レイジはゴゴに静かにするようにとジェスチャーをした。ゴゴは素直にそれに従って、小声でレイジに聞いた。


「なになに?なにがあったの?俺がうるさくし過ぎたせいでみんな怒ってんのか?」


「そうじゃなくて、気配を感じるんだよ。何かがこっちに近づいてくる気配だ。...ゴゴは感じないのか?」


「気配?気配ってなんだ?見えねーし聞こえねーし匂わねー。なんにもいなくねーか?」


ゴゴは本当に気づいていなかった。しかしそれはすぐに姿を現した。


「俺の気配に気づくなんて、ちょっとは成長したのかなー?勇者君。」


瓦礫の陰から姿を現したのはファイアだった。


「お前は!あの時街を破壊したやつ!」


レイジはそう言ってすぐさま刀を抜いた。


「おうおうおう!やる気満々ってやつかぁ!?いいだろう!一騎打ちと行こうじゃねーか!」


ファイアもそう言って腕に装着された大砲のような銃を構えた。


「一騎打ち?なに悠長なこと言ってるんだ。ここは全員で行かせてもらうぞ!」


「え?一騎打ちしてくんねーの?」


「そりゃそうだ!お前をとっ捕まえて魔王の居場所を吐かせてやる!」


「ええええ。聞いてた話と違うんだけど!?」


ファイアは一騎打ちをしないレイジに困り果てた。その時ファイアの後ろにもう一人現れた。


「久しぶりだな。」


遅れて現れたのはアイスだった。その姿をみたレイジはより一層警戒心を高めた。


「魔王軍四天王が二人も同時に現れるとは、本気で俺たちをつぶそうって魂胆か?」


「いいや、お前たちがどれほどの強さなのかを、改めて試そうと思ってな。」


「勝手なことを!そんな挑発には乗らないからな!」


「そうかな?ファイアとの一騎打ちに乗らないというのなら、我々の持っている情報を教えるチャンスも無くすことになるが、いいのだな?」


「なに?チャンス?」


レイジは思わずその言葉に食いついた。それを見計らっていたかのようにアイスはフッと口元を緩めて笑った。


「そうだ。もしレイジが一騎打ちでファイアに勝ったら、私が魔王軍の情報、そして魔王様の居場所を教えよう。」


「そんなことをして、そっちにどんなメリットがあるんだ?」


「なに、勇者の実力を正確に知れるからな。対策を考えやすい。」


「...この間会ったときにそれをしなかったのは何故だ?」


「あの時は街を破壊することが最優先の任務だったからだ。そのおかげでそこの筋肉を捕まえられたからな。」


「ゴゴを?...そういやずっと聞きたかったことがあるんだが、なんでゴゴを捕まえたんだ?もし捕まえるのなら勇者である俺を捕まえるんじゃないのか?」


「それを知りたければ、ファイアと戦うんだな。そこでお前が勝てばお前の知りたいことに全て答えよう。」


レイジはそう言われて考えた。


『なぜゴゴを捕まえた?しかも連れて帰るのではなく俺たちにプレゼントした。ずっとそこが引っかかってた。ゴゴはバカだからスパイとして潜入したという線は考えづらい。そして今更俺と一騎打ちをしたいだと?なにかある。奴らには俺と一騎打ちしたがる理由がある。さっき言ってた実力を測るなんてそれらしい言い訳に過ぎない。もっと奥底に隠している理由があるはず。なんだ?それっていったいどういう理由なんだ?』


レイジは必死に考えたが、ファイアとアイスの真の目的は見当もつかなかった。そんな様子のレイジを見て姉御が意見した。


「レイジ。あたしはこの一騎打ちに挑むべきじゃないと思うよ。相手はあんたよりも数段上の実力を持っている。もしかしたらあたしよりも強いかもね。そんな相手に挑んでも負けは確実。そしてあいつらはあたしらが負けた時のことを一切言っていない。この賭けはあまりにもこちらに不利すぎる」


姉御はレイジの耳元でささやいた。レイジは確かにと思った。


『姉御の言うとおりだ。俺もファイアのことを少ししか知らないが、街のシールドを破壊できるなにかを持っている男だ。そして相手は俺のことをよく知っているようだ。俺がこのマフィアタウンに向かう途中というのもわかっていたようだ。偶然出会ったわけではないはずだ。そんな奴と戦ってもいいのだろうか?戦うことでなにか大切な物を失うんじゃないのか?』


レイジはその用心深さからなかなか決断ができずにいた。そしてゴゴがウッキウキで前へと躍り出た。


「うおおおおおおお!!!!またお前たちと出会えるなんて!俺はなんて幸運なんだ!!!よおおおおおおおおし!!!俺が一騎打ちを受けてやる!!!かかって来おおおおおおおい!!!」


ゴゴはアクセサリーのハンマーを巨大化させて肩に担いで戦闘態勢に入った。ファイアとアイスはため息をついた。


「お前じゃないんだよ!今戦うのは!お前は弱いんだから、ケガしないうちにとっとと帰れよ!」


ファイアはシッシと手で追い払うような行動をした。だがゴゴは全く聞く耳を持たずに準備運動を始めた。


「いっちに!さんし!ごーろく!しちはち!あああああああああ!!!はやくやりてぇぜ!!!」


「...しかたない。ファイアまずはあのバカをいたぶって退場させるしかあるまい。」


「...そうだな。あいつをどかさねーことには、勇者君は闘う気にならねーみたいだしな。」


「ああ。そしてあのバカを倒したら人質にする。闘わなければこのバカを殺すと。そう言えば嫌でも戦う気になるだろう。」


「相変わらず恐ろしい事を思いつく奴だなー!そういう所頼りにしてるぜ!」


そう言ってファイアはゴゴのいる場所に行き、銃を構えた。


「じゃあ、しょうがねーからお前と闘ってやるよ。」


「いよおおおおおおおおし!!!盛り上がってきたーーーーーーー!!!」


ゴゴとファイアは互いににらみ合い、まさに一触即発の状態になった。




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