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星の勇者  作者: アシラント
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ネネのふるさとに到着

姉御にコテンパンにやられたゴゴはニヤニヤしながら歩いていた。


「......何をそんなに笑ってるんだい?ゴゴ?」


姉御はゴゴの気持ち悪い笑みに若干引きつつ聞いた。


「へへへっ!俺はめちゃくちゃ嬉しいんだよ!世の中には俺よりもとんでもなくつえぇ奴がこんなにもいるなんてよ!ちょっと戦っただけなのにワクワクが収まらねぇんだ!ああ!はやくまた戦いてぇなぁ!!なあ!次はいつ戦うよ!」


ゴゴは姉御に聞いた。姉御はさらに引きながら言った。


「な、なんだいゴゴ。あんたまたあたしに投げ飛ばされたいのかい?」


「もちろん!!さっきは一発で勝負を終わりにされちまったからな!まだ試してない技がごまんとあるぜ!」


ゴゴは白く輝く歯を見せながら言った。その会話に割って入ったのはレイジだった。


「おいゴゴー!約束!覚えているだろ?」


レイジはゴゴのような笑顔を浮かべて聞いた。


「え?......ああ!この武器の秘密について話すってやつか?」


「そうだよそれそれ!!早く聞かせてくれよ!」


「別にいいけどよ、何について知りたいんだ?」


「そうだなー。じゃあまずはその武器が何でできているのか聞かせてくれ!」


「ああ。いいぞ。っつっても、俺が知ってることなんてちょびっとしかないんだが......」


「それでもいいんだよ。知っていること全部話してくれ!」


「ああわかった。じゃあまずこの武器が何でできているかだが、こいつは神のへそくりに似た素材でできているんだ。」


「えっ!?神のへそくりだって!?」


「ああ。色を塗ってあるから分かりづらいだろうが、神のへそくり特有の光る線があるだろう?」


ゴゴはキーホルダーサイズのハンマーを手に持って見せた。たしかに紫色のハンマーの下にうっすらと神のへそくりと同じエメラルドグリーンの光が線を走っていた。


「ほんとだ!確かにこれは神のへそくりだ!でもだったら幻獣使いのゴゴは痛すぎて持てないんじゃないのか?」


「ああ。神のへそくりを持ったらめちゃくちゃ痛い。だがこの武器は持っても痛くねぇんだよ。なんでなのかは俺も知らねぇけどよ。でも、なんというか、神のへそくりのような敵対心?みたいなのは感じねぇんだよ。」


「敵対心?」


「ああ。うまく言えねぇんだけどよ、魂に響くような痛みを感じないんだよ。だから痛くないんだよ。」


レイジはゴゴの言うことがいまいち理解できなかった。敵対心なるものを今まで感じたことがないからだ。


「えーっと、じゃあなんでゴゴはそれを神のへそくりに似たものだと思ったんだ?その光があるだけ?」


「いやいや!これを作ったやつが神のへそくりを真似して作ったって言ってたんだぜ!だからこれは神のへそくりの一種なのかなーって思ったんだよ!」


「えっ!?ちょっと待て!今『神のへそくりを真似して作った』って言ったか!?」


「ああ。そういったけど?」


「おおおおおおい!それって誰だよ!それがわかったら今すぐ会いに行きてーよ!」


レイジは興奮していた。自身が前より疑問に思っていた神のへそくりの謎を知る人物に会えるかもしれなかったからだ。


「誰って......そうだなぁ......俺の父親ってところかなぁ?」


「父親ぁ!?」


意外な返答にレイジは声が裏返った。


「ああ。まあ、そうだな。父親が作った武器だよ。俺はそれをこっそり盗んできたんだよ。」


ゴゴはレイジとは真逆に、淡々と話していた。


「あ、会わせてくれ!」


「ちょっとレイジー?ネネちゃんの村はどうするのー?」


あんこがふわふわと浮きながら割って入った。


「えっ!?......そうだったなぁ。でも会いたいなー!知りたいなー!何とかできないのか?ゴゴ?」


レイジは上目遣いでゴゴの方を見た。ゴゴは頭の後ろをかきながら「うーん。」と悩んだ。


「まあ、会わせてやってもいいけどよぉ。でもそうなるとなぁ、俺殺されちまうかもしれねぇしなぁ。」


「殺される?」


レイジは首をかしげた。


「ああ。勝手に出て行ったし、おまけに大切な神のへそくりレプリカを盗んで来ちまったしなぁ。出来れば会いたくないんだがなぁ。レイジがそこまで言うなら連れてってやってもいいけどよぉ。」


ゴゴは渋い顔をしながら言った。


「おいゴゴ!お前が死ぬかもしれないんだったら別に行かなくてもいいぞ!仲間の命を踏み台にしてまで知りたいことなんて知りたくないからな!」


レイジのその言葉にゴゴはキョトンとした。レイジがどうしたと聞くと、ゴゴは話し始めた。


「ああ。そこまで信頼されてるとは思ってなかったからなぁ!俺を『仲間』って言ってくれて嬉しいぜ!」


ゴゴは白い歯を見せて、左手でサムズアップしながら笑顔で答えた。それを見てレイジもゴゴと同じようにポーズをとり笑いあった。そしてその様子をほほえましく見ていた姉御がパンパンと手をたたいて自身に注目を集めた。


「はいはい!男どもの友情はそのぐらいにしてー。ついにネネの村が見えてきたよ!」


姉御が指をさした先には強固なシールドが張られている村が見えた。レイジは一目見て異常だとわかった。普通のシールドは火の光を浴びられるように半透明な水色をしているはずなのに、この村のシールドはまさに真っ黒だった。


「なんだあれ!!あんなんじゃ一旦外に出ないと外の様子が見えないじゃん!効率悪くね!?」


レイジは効率厨としての血が騒いだ。


「いや、普通あんなんじゃ中の様子が見えないじゃん!ってなるところだから。」


レイジはあんこに冷静なツッコミをされた。


「なあネネ!ネネの村ってあんな感じが普通なのか?」


レイジはネネの方を向いた。ネネはいぶかしげに村を見ていた。


「......いいえ。私が出たときはもっと普通の村だったわ。なんであんな事になってるのかしら......?」


ネネは自身の知っている村の姿とは似ても似つかないほどに変わっていたので驚いた。


「って事はネネが出て行ってから村はあんな感じになったって事か?」


「ええ。おそらくね。」


ネネは期待していなかった方向への変化に少しだけ興味がわいた。レイジはネネ以上に好奇心をくすぐられた。


「おいおい!それはとんでもなくワクワクするな!なんであんな感じなんだろう?中はどうなってるんだろう?人は住んでるのかな?どんな人が住んでるんだろう?ああーー!!ワクワクするなー!!」


レイジはウッキウキに踊りながら村へと近づいていこうとした。すると閉ざされた門の前に一人の男が倒れているのを発見した。


「おい!大丈夫か!?」


レイジは慌てて駆け寄りその男を抱きかかえた。すると男は「うーん。」と言いながらゆっくりと目を開けた。


「おいあんた、こんなところで倒れてたけど何があったんだ?」


レイジは聞いた。すると男はジッとレイジの方を見て、か細い声を出した。


「腹が......減った......。」


男はグゥーーっと大きな腹の虫を泣かした。レイジはそれに少し安心した。


「なんだ、ただの腹減りかよ。待ってろ、今なんか持ってくるから!」


レイジはそう言って男をそっと寝かせて姉御の方へと駆け寄った。姉御たちもレイジを追いかけて来ていた。


「レイジ!どうしたんだい?その人は?なんかの病気かい?」


姉御はレイジの肩越しに男を見ながら言った。レイジは首を横に振った。


「いいや、腹が減ってるらしいから、何か食わせてやろうかと思って。」


レイジがそういうと姉御は眉間にしわを寄せた。


「......腹が減っただって?......それはもしかしてなんかの罠なんじゃないのかい?」


姉御はあたりを見まわした。周りは草木が生い茂っており、敵が隠れるのには絶好の場所だった。それを確認してから姉御はもう一度口を開いた。


「あまり言いたくはないけど、これは罠の可能性が高いね。あまり関わらない方が......」


「はいこれ!アンパン!美味しいよ!」


姉御の警戒とは裏腹に、あんこがアンパンをあげてしまった


「ちょっとー!危ないから餌付けしちゃダメでしょー!!」


姉御は頭に怒りマークを浮かべながらあんこの頭にチョップした。あんこは頭を押さえて目をウルウルさせながら「だって~...」と言って不満そうにした。そんな茶番劇を気にもせずに男はアンパンをガツガツと食べた。


「おいおいおい!敵が出てくるんじゃないの!?ウッホーーーーー!!!戦いたいぜ――!!!」


ゴゴは戦えるかもしれない事にワクワクしていた。


そんな様子を遠くから見つめていたネネは『何やってんだろう?もめ事かなぁ?助けに行った方がいいのかなぁ?』と心の中で思いながら心配していた。


「ぷはぁーーー!!い、生き返るぅぅぅぅぅ!!!」


いきなり大声を出したのはアンパンを食べきった男だった。


「ありがたき幸せでござる!!この三日、何も食べていなかったのでござるよ!」


男は満面の笑みであんこに握手をし、手をブンブンと振った。その笑顔を見てあんこも『いいことしたなぁ』と満足そうに笑った。


「このご恩は一生をかけて返させて頂きたく存じるでござる!」


男はあぐらをかき、頭を深く下げてお礼を言った。レイジは男に近づき、その姿をじっと見つめた。男の服装はまさに武士のような恰好をしていた。真っ赤な鎧を身に着け、そばには真っ赤な兜を置いておりその兜のてっぺんには太陽を模した金色の飾りがつけてあった。体格はレイジのような細身でありながら筋肉は男の方がガッチリしていた。髪の毛は赤い髪の毛を後ろに結び、それをちょんまげにしていた。顔は眉毛が濃く、えらが張っており、すこし老けているようにみえ、20代半ばから後半あたりの顔立ちをしていた。


「お前、出身はヒノマルの方か?」


レイジは聞いた。男は「はい!その通りでござる!」と元気よく答えた。


「へー!お前もヒノマルの出身なのか!実は俺もヒノマルの出身なんだよ。多分だけど。」


レイジはそう言いながら姉御の方を向いた。姉御は罠を警戒していたが、何も起きないので一旦警戒を解いて話を始めた。


「ん?ああ、確かに赤ん坊のお前を拾ったのはヒノマルの街だったね。あそこの鍛冶屋で作られた武器はそのどれもが一級品だったからね。あたしも良く世話になってたね。」


姉御は懐かしそうに語った。


「確かにあんたのその珍妙な格好はヒノマルの兵隊っぽい人たちがつけていたのとよく似てるね。その変な髪型とかもね!」


姉御は男のちょんまげを指さして言った。男は頭の後ろをかきながら「照れるでござるよ。」と言った。


「そういえば、お前の名前は?まだ聞いて無かったよな?」


レイジは男に聞いた。男は改めて姿勢を正した。


「拙者、名を子分昆布(こわきのこんぶ)と申すものでござる。皆からは(こぶんのこんぶ)と呼ばれているでござるよ!歳は17。世界の広さを知りたいがゆえにヒノマルから旅立ってきた武士の端くれにござる!」


「「「17歳だってー!?」」」


レイジ、あんこ、姉御は口をそろえて言った。どうみてもあと10歳は年を食っていそうだと思っていたから驚いていた。


「うむ!ちと老け顔ではあるが事実でござるよ。」


昆布はそう言ってにっこりと笑った。


「......見た目はあてにならないんだなぁ。」


レイジは新たな教訓を得て納得することにした。



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