まさかの弱点発見!?
レイジはゴゴと戦っていた。レイジはゴゴの武器の秘密を知るために、ゴゴはレイジと戦いたいために戦っていた。
「なら、この叩きつけランスの恐ろしさを教えてやるぜー!」
ゴゴはランスを左手で持ってレイジに突っ込んだ。レイジは何が来てもいいように身構えた。ゴゴはランスを突き出して攻撃した。レイジはサッと左に避けてから刀を振ろうとしたが、ゴゴがランスをグイッと振り回してレイジを吹っ飛ばした。
「ぐえっ!?」
レイジはゴゴに吹っ飛ばされたが、空中で体勢を立て直して着地した。
「あの体勢から即座に俺に攻撃を当てるとは、俺の動きを読んでたのか?」
「いーや、動きを読んでたわけじゃねーけど、筋肉がすさまじいから腕だけでこのバカでかいランスを軽々しく扱えるって事よ!いやー!筋肉ってすっさまじいなー!?」
ゴゴは自身の左腕をキラキラした目で見つめた。レイジは気にもせずに仕掛けていった。レイジは二本の刀を軽やかに振り回してゴゴに襲い掛かった。ゴゴはバカでかランスを縦に持ってレイジの攻撃を全て受け流した。
「なるほどね!ランスならそうやって防御にも使えるって訳ね。」
レイジはゴゴの言った意味を理解した。ゴゴはニヤッと笑った。
「そのとーりだぜレイジ!ハンマーは攻撃特化だけどよ、このランスは最低限の防御は出来るって事よ!」
ゴゴは自慢げに話したが、ランスで防御するよりも普通に避けて殴った方が速いような気もすると、レイジは思った。
「でも、それだけじゃあ俺の攻撃は避け切れないぞ!」
レイジはさらにスピードを上げてゴゴに猛攻を仕掛けた。その1つ1つの刃がゴゴの命を狙う野生の獣のように攻め立てるレイジに対して、ゴゴは段々と苦しい顔を浮かべた。
「うぐぎぎぎぎっっっ!!?」
ゴゴは歯を食いしばってその猛攻に耐えていた。いつかレイジのスタミナが切れて攻撃が鈍くなった瞬間を期待して耐えていた。けれどそんなゴゴの期待を裏切るように、レイジの猛攻はさらに加速してゴゴに襲いかかった!
ゴゴはレイジの攻撃を防ぎ切ることができず、軽い傷をその体に負うようになっていった。さらにそれにとどまらず、レイジの左手の刀から炎が走り、その炎がゴゴの肉体をジリジリと焼いていった。
「うおぉっ!?痛ったいし熱っつい!?」
ゴゴの肩、腕、足はレイジの猛攻によって浅いながらも相当な痛みを感じる傷がいくつもできた。
『このままじゃ、まずいなー。』
ゴゴはこんなピンチの時でも冷静だった。そして冷静に下した決断は、ランスを捨てることだった。
「そりゃ!」
ゴゴはランスをレイジにポイッと投げて渡した。レイジはそのランスを吹っ飛ばすように横へ薙ぎ払った。その瞬間を見逃さず、ゴゴはグッと姿勢を低くしてその横薙ぎを掻い潜り、渾身のアッパーをレイジに食らわせた。レイジはギリギリのところを両腕でガードをして、顔面への直撃を避けた。レイジはそのまま後方へと吹っ飛ばされた。そして、空中でくるっと回転するとズサーッと地面を削りながら着地した。
「ようやくランスを捨てたのか。」
「ああ。さすがにあの猛攻はランスじゃ防ぎ切れねーからな!」
ゴゴは首をゴキゴキと鳴らしたり、指をポキポキと鳴らして言った。
「だけど、大丈夫かゴゴ?かなり切っちゃったけど......」
「ああ!大丈夫だ!何も気にすることはねーよ!」
そう言うとゴゴはその切り傷に力を入れると、その切断面がピッタリとくっついた。
「ええ!?どういう原理なの!?それ!?」
レイジは興味津々で聞いた。ゴゴはフフンと得意げに鼻を鳴らした。
「これぞ、俺の最強能力!くっつく能力だ!!」
「......ああ、そういえば言ってたな。最強だって。......でも、それだけ?それのどこが最強なんだ?俺の炎の方がよっぽど強いと思うけど......」
「へへへっ!分かってねーなーレイジ!?こいつの真骨頂はこんなもんじゃーねーんだぜ!?」
「じゃあ......どんな......ものなの?」
レイジは息を切らしながら聞いた。その様子を、不思議に思ったゴゴは質問を仕返した。
「っていうかよー、レイジ。お前、めちゃめちゃ息上がってねーか?あんなウォーミングアップだけで疲れちまったのか?」
「うーん、なんでだろう?別に普段とそんなに変わりなくやったつもりだったんだけどなー。」
レイジ自身も不思議に思いながら考えた。そして、ゴゴがその答えに気づいた。
「もしかして、その勇者の刀が悪さしてるんじゃねーか?」
「えっ?勇者の刀が......?」
「ああ。それって元々神のへそくりだろ?神のへそくりってことはよー。幻獣使いにとっては天敵のような存在だろ?それを炎の幻獣をその魂に宿すレイジが使ったら、普通は痛くて触れもしないはずなのに、なんかよくわかんねーけど使えてるから、それが原因なんじゃねーのか?」
「......確かに。この『憤怒の魂』だけの時は今の5倍は戦えてたな。」
「憤怒の魂って、この勇者の刀じゃない方の刀か?」
「ああ。そうだよ。こっちもまた運命的な出会いをしたんだよ。ネーミングセンスはそのまんま付けただけだけどな。」
「そうかー!こっちは神のへそくりじゃないんだなー。だとすれば、やっぱりその勇者の刀が悪さしてんのは間違いねーってことよ!」
「......やっぱり俺は勇者じゃないのか?ドナルドはあれだけずっと身に着けていたのに幻獣討伐の時に息一つ乱してなかったもんな。もしかしたら彼こそが本物の勇者......?」
レイジは頭の中の考えに神経を張り巡らせた。しかし、いくら考えていても何一つ答えは出てこなかった。その悩んでいる姿を見てゴゴはレイジに大声で問いかけた。
「オラオラー!レイジ!悩み事を解消するために戦ってんのにもっと悩むなんて......そんなに俺と戦い続けたいってのかー!!?」
ゴゴは満面の笑みで言った。レイジは首をブンブンとちぎれるようなスピードで横に振って思いっきり否定した。
「なーにを照れてんだよ!レイジ!俺はお前とあと50年は戦い続けたいって思ってるぜー!!」
「そんなに戦い続けられるわけねーだろ!!」
レイジはツッコミを入れたがゴゴはガッハッハと笑った後にレイジに襲い掛かってきた。
「それなら、その勇者の刀を体が慣れるまで使い続けるしかねーな!!」
そう言うとゴゴは何も持たずに素手でレイジに攻撃をしてきた。レイジは軽い身のこなしで避けるも、勇者の刀を使った反動でスタミナがなくなっており、ところどころ避けきれなくなっていた。
「ちょ、ちょっとタイム!俺は、疲れて、動きが、鈍くなってんだ。だから、タイム!!」
「戦いにそんなもんはねー!!殴られたくなかったら、死ぬ気で避けろー!」
ゴゴは容赦なくレイジに猛スピードのラッシュ攻撃を仕掛けた。レイジは避けることにだけ専念して刀を鞘に納めた。
「なにぃーっ!!?剣を納めた......だとー!?......まさかレイジ!!俺と拳での決着を望んでいるというのか!!うぉーーー!!!嬉しいぜ!レイジ!」
「は?別に、そんなんじゃ、ねぇーーーーー!!」
レイジはツッコミと同時に思いっきり右ストレートでゴゴの顔面にぶっ放した。ゴゴは大きく後ろへと吹っ飛ばされた。避けようとしていたのに怒りに身を任せて殴った。しかしそのおかげで幸運にも活路が見いだされた。
「おいおいおいおいレイジ!!口ではそんなこと言ってるけどよ!今のパンチは最高にいいパンチだったぜ!!あああああああああああああああ!!!!燃えてきたーーーーーーー!!!!オラーーーーーー!!!もっとこーーーーーーい!!!!」
ゴゴはレイジの怒りのパンチを顔面に食らったにもかかわらず、鼻血を出しながら最高に狂った笑顔を見せていた。
「......話をきけぇーーー!!!」
レイジはゴゴの変な解釈に対してさすがに怒りの感情を爆発させた。そして怒りに身を任せて燃え上がる拳を握りゴゴへと殴り掛かった。ゴゴは体を後ろにそらしてリンボーダンスのように避けた。
「拳が燃えていやがる!?本気の中の本気で来たって事かぁ!?」
ゴゴは起き上がりレイジの方を向いた。ゴゴとレイジはお互いに見合っている。その両者の間には肌がひりひりするほどの気迫のぶつかり合いが生じていた。
「ゴゴ、お前のその戦いにしか考えられない脳筋な頭にイッパツお見舞いしてやる。」
レイジはより一層真っ赤に燃え滾る炎のこぶしを握り締めて言った。ゴゴは上がっていた口角をさらに上げて答えた。
「理由は何でもいい!レイジと本気の喧嘩ができる!!これ以上に魂が震える瞬間はそうそう起きねぇなぁ!!!」
ゴゴはより一層全身に力を入れて筋肉を肥大化させた。ただでさえムキムキな筋肉がさらにムッキンムッキンになった。
二人のにらみ合いは見ていた3人にも緊張が走り、身構える程だった。
「......本気なの?ケガじゃすまないわよ!」
ネネは仲間同士での本気の戦いに困惑していた。ネネの思っていた仲間の形とは大きくずれていたからだ。
「うーん。この勝負、ただの遊びで終わる気がしないね。姉御ちゃん。」
あんこは心配そうに姉御を見つめた。
「ああ。これは流石に止めに入った方がよさそうだね。」
姉御はスタスタと二人の間に割って入った。
「二人とも、熱くなりすぎだよ。今日の勝負はここまで。判定はレイジの勝ちって事でいいね?」
姉御は両手を広げて二人に制止の合図を送った。レイジはそれを見てすぐに炎を消して振り上げたこぶしを下ろした。しかしゴゴは納得いっておらず、異議を申し立てた。
「ええええええええ!!?なんで止めるんだよ!これからが一番面白い所だったってのに!」
「......負けたことに腹を立ててんじゃなくて、戦えなかったことに腹を立てているのね。ちょっと変わってるわね。」
ネネはゴゴの変なお怒りポイントに苦笑いした。姉御はムッとゴゴの方を見た。
「何言ってんの!本気の勝負なんか許した覚えないよ!レイジの悩み事を吹き飛ばすためならいいよって言っただけよ!」
ゴゴは子供のように地団駄を踏んでさらに反論した。
「納得できねぇよ!俺の魂がせっかく踊ってきたのに、こんなんじゃ絶対ヤダヤダヤダ!!!」
ゴゴはおもちゃを買って欲しい子供のように言った。姉御はやれやれと頭を抱えた。
「......わかったよゴゴ。ただし!戦うのはこのあたしだ。それなら文句ないだろう?」
姉御はすっと構えた。その構えは拳を握らず手を自然体にした状態で構え、右足を一歩前に出し、肩幅ほど足を開いた構えだった。それを見たゴゴは目をキラキラと輝かせた。
「うおおおおおおおお!!!最強の姉御が相手してくれるんなら文句はねぇぜ!!!」
ゴゴはテンションが高まって空に向かって咆哮を放った。しかしレイジとあんこはそれとは真逆に足をガクガクとさせていた。
「......?どうしたの?二人とも。すごい汗だけど。」
ネネはレイジとあんこに聞いた。するとレイジとあんこはギギギギッとさび付いたロボットのように首をガクガク震わせながらこちらに向けた。
「あ、ああああの構えは姉御が鉄拳制裁をくらわすときの構えなんだよ。」
レイジはガクガクと震える顎をなんとか抑えながら話した。
「そそそそうなの!姉御ちゃんはあんまりにもわがままな子には痛い目見てもらうって言ってたの!」
あんこも震えながら言った。
「ふーん。そんなに怖いんだ、あの構え。」
ネネはそんなに実感がわいていなかった。なぜなら姉御の構えからは何も感じられなかったからだ。ゴゴからは闘志に燃えたオーラを感じられるが、姉御は怒りも悲しみも憎しみも喜びも感じられなかった。いわば明鏡止水の心だった。
「それじゃあ、かかって来な。ゴゴ。」
「うおおおおおおお!!!行くぜえええええええ!!!!」
ゴゴは勢いよく姉御に突っ込んだ。その速さは見ていた3人も一瞬見失うほど速かった。そしてゴゴはその勢いのまま姉御に殴りかかった。姉御はその拳を両の手で触り、くるっとゴゴの腕を回した。次の瞬間ゴゴが空中を回転していた。
「あばばばばばばばば!」
ゴゴは何が起きたか理解できず、言葉を漏らしていた。そして数秒ののちゴゴは地面へと落ちてそのままゴロゴロ―ッと勢いよく転がって行った。
「ふーっ。さっ!ネネの生まれた町に行くよ!」
姉御は手をパッパッと払うと前へと歩き始めた。
「......なるほど。姉御さんだけは絶対に怒らせないようにしよう。」
ネネは心にそう誓って姉御の後を追った。
キャラクター紹介
「ドナルド」
勇者候補の一人。マフィアのファミリーに属している。その中でドナルドはソルジャーという殺しや、金稼ぎなどを専門とする地位についている。ゴゴの戦い好きな性格を一番活かせると思いマフィアに誘う。
白いシャツに黒いコート、黒いズボンに黒いカウボーイハットをかぶっている。髪は銀色で顔はイタリア系の顔をしている。そして勇者のブーツを装備しており、主に足を使っての戦闘を得意としている。さらに勇者のブーツはブースターを装備しているために空を戦闘機のように飛び回ることも可能である。
彼はかなり若いころから喧嘩に明け暮れており、対人戦の経験は勇者候補の中では抜群の多さである。しかし、幻獣使いや幻獣、魔族とは戦ったことがない。
彼は自身が正義のヒーローではない事など重々承知だが、勇者の力を得てしまったために、仕方なく魔王討伐を目指す。ついでに、いい仲間が見つかったらマフィアに誘い、勇者の装備をすべてそろえて世界最強になろうと思っている。
彼が力に固執し始めたのは悲しい過去があるのだが、それはいずれ分かることになる。