表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の勇者  作者: アシラント
151/157

バトルマスタータウン公式戦 2日目

レイジたちが宿屋へと向かっているとき、ゴゴはゲンブと戦っていた湖の場所でサライヤンと出会っていた。


「ようサライヤン!お前が俺を呼び出すなんて、珍しいな!どうしたんだ?」


ゴゴの質問にサライヤンはフッと笑った。


「単刀直入に言う。お前、俺様と一緒に亡命しろ。」


「え?」


ゴゴはいきなりとんでもないことを言われて首を(かし)げた。サライヤンはその反応に何の驚きもせずに話をつづけた。


「お前は、あまり信念だとか無いかもしれないが、俺の信念は知っているだろう?人間はクソ!だから魔族を支持する。それが俺の生き方であり信念だ。そして、矛盾したことに、俺はお前を気に入っている。人間でありながら浅ましい本能を微塵も持っていない。お前の中にあるのはただ『戦い』それだけだ。」


「そうなのか?まあ戦い以外に興味がないのは確かだな。」


「そうだろう?俺が亡命したらお前と殺し合いをしなければならなくなる。それは嫌だ。だからお前は俺様と一緒に亡命しろ。そうすれば俺は心置きなく亡命できる。」


「うーん、残念だが俺は亡命できねーよ。姉御の許可がないとな。それに、俺は別に人間が嫌いなわけじゃないしな。魔族もそんなに知ってるわけじゃねーし、全然亡命できないな。」


ゴゴの返答にサライヤンは少し悲しそうな表情を浮かべた。


「...そうか。まあ、そうだろうな。お前はいっつもそうだな。俺の思ったとおりに動いた(ためし)がない。...まあ、そういう所がお前らしいな。ゴゴ。...話は以上だ。お前が俺と一緒に来ないなら、次に会ったときは殺す時だ。」


「ああ!!今度こそ、俺はお前に勝つ!!!」


ゴゴはニコッと笑ってそう言った。

 そしてレイジたちは宿屋で一晩眠り、翌日になって試合会場へと(おもむ)いた。


「ああ、結局俺はドナルドと戦うことになるのか。ちょっと憂鬱だなー。」


レイジは今日の対戦相手がドナルドであることにため息が出た。そのため息を聞いてゴゴは眉をひそめた。


「ええ!?なんでそんなにがっかりしてるんだ?ドナルドほどの強敵と戦えるなんて最高じゃねーか?」


ゴゴの戦闘脳な発言にレイジはジトーッという目で見てから再びため息をついた。


「お前は本当にそればっかりだな。ゴゴ。普通戦うなんて嫌だろう?めんどくさいし、死ぬかもしれないし...。」


そうレイジが言っていた時に、ステージで試合が終わり、レイジとドナルドの試合が始まろうとしていた。


「続いての試合はー!これはこれは、とてつもなく面白そうな試合になりそうです!!勇者候補のひとり、ドナルド選手vs!同じく、勇者候補のひとり、レイジ選手の試合です!!!お二人とも、ステージにお上がりください!!!」


マイクマンの言葉に会場は大いに盛り上がった。皆、勇者候補同士の対決に期待で胸を高鳴らせていた。そしてレイジはため息をついた。


「はぁ。やだなー。怖いなー。なんで俺がドナルドと戦わなきゃいけないんだよ...。...まあ、アルバートとフォルキットの約束もあるしな。一応全力で行くけど、多分勝てないだろうなー。あいつほんと強いし。」


レイジは憂鬱な気分でグチグチと言いながらもステージに上がった。そしてドナルドはレイジを見てフッと笑った。


「嫌そうな顔してるなー?レイジ?お前は本当に戦いが好きじゃないんだな。」


ドナルドはレイジの表情を見て少し不器用な心配の言葉を言った。レイジはため息をついて答えた。


「はぁ、そりゃそうだよ。俺強さとか全然興味ないんだし。なんで俺が強くなるために頑張んなきゃいけないんだよって、いっつも思ってるんだよ。まあ、死にたくないから一応頑張るんだけどさ。」


レイジは諦めのため息をつきながら言った。ドナルドはうなずいた。


「なるほどな。やっぱりお前は面白いな。個人的にはそういうはっきりと自分の意思を持ってるタイプの人間は好きだぜ。」


「...ファーザーもそういう性格だったのか?」


レイジはドナルドが本当にファーザーに(とら)われているのか知るために、その質問をした。ドナルドは答えた。


「まあ、お前とは真逆で、ファーザーは戦うことが大好きだったけどな。でも、確かに意志はハッキリと持っているタイプだったな。周りや状況に流されず、自分の意志を貫こうとしていたな。そういう所が、俺は惚れたんだろうな。」


ドナルドは懐かしむようにそう言った。レイジは思った。


『今のドナルドの言い方からするに、そこまでファーザーに囚われている感じもしないな。まあ、たった一つの質問で心の全てがわかるわけないか。...仕方ない。やっぱり全力で戦うしかないか。本当にファーザーに囚われているんだったら、戦い方にも何か変化があるはずだしな。』


レイジはドナルドの心を知るために全力で戦うことを決意した。そしてそれと同時にマイクマンは宣言した。


「それでは!!試合開始です!!!!」


その宣言と同時にシールドは展開された。そしてレイジは抜刀して戦う意思を見せた。しかしドナルドはシールドが展開しきったことを確認すると、ゆっくりと胸ポケットから煙草(たばこ)を取り出して一服しだした。


「...レイジ。お前、アルバートとフォルキットからなんか言われたんだろう?」


煙草をふかしながら言ったドナルドの質問に、レイジはドキッと心臓が驚いた。


「...なんで、そう思ったんだ?」


レイジの反応を見てドナルドはフッと笑った。


「やっぱり、そうなんだな。まあ、あいつらが何を考えていたのかは何となくわかる。俺がファーザーに囚われているとでも思っているんだろう?...まあ、別に否定はしないが、いつあいつらがそう思ったのかって、聞いたか?」


ドナルドの質問にレイジは嘘を言っても見抜かれ、意味がないと理解し、真実を話した。


「...ドナルド達がユダに襲われたとき、手を出すなって言われてそう思ったって言っていた。」


「...なるほどな。一対一にこだわっていたから、ファーザーっぽいって思われたのか。」


「...ああ。」


レイジがそう答えるとドナルドは煙草を地面に落とし、足で踏みつけて火を消した。


「...そうか。なるほど。納得。...まあ、お前には一応弁明しておく。俺は別に一対一にこだわったわけじゃない。ただ、あのユダってやつは異常な強さだった。正直、あいつが透明化の能力を持っていなければ、俺はあいつらに援護を頼んだだろう。だが、透明化できるってのが、どっからどこまでかを正確に判断できなかったんだ。」


「どっからどこまで...?」


「ああ。それは自分の体の一部だけなのか。それとも触れたものを透明化させることが出来るのか。それがわからなかったから、あいつらにはむやみに動かないことを言ったんだ。もし触れたものを透明化できるのであれば、ユダが三対一の不利な状況で仕掛けてきたことに説明できちまう。だろう?」


「...確かに、ユダの立場で考えれば、明らかに不利なのに襲ってきたのは何か作戦があるってことだったのか?」


「まあ、結果的にはそういう罠は見つからなかったけどな。その懸念点があったからこそ、あいつらには手を出すなって言っただけだ。それを伝えなかったのは俺のミスだな。まさかそう捉えられるとは思っていなかったからな。」


「...なるほど。じゃあやっぱりドナルドはファーザーに囚われていたわけじゃないんだな。」


「そういうことだ。...まあ、それはさておき、俺はお前と全力で戦いたいと思っているけどな。」


「え?」


レイジはドナルドの言葉に露骨に嫌な顔をした。ドナルドはフッと笑った。


「俺は見ていたぞ?お前は新しい必殺技を身に着けていたな。それを見た時から手合わせしたくてうずうずしてんだ。本気で行かせてもらうからな?」


ドナルドはバキバキと指や首を鳴らしてそう言った。レイジは相当悩んだ挙句、諦めのため息をついた。


「はぁ、わかったよ。じゃあ一応全力で戦うけど、ちょっとでも命に危険があったらすぐ降参するからね?勢い余って殺したりしないでよ?あくまでただの稽古の一環みたいな勝負にしよう?」


レイジはそう言った。ドナルドはうなずいた。


「ああ。それでもいいさ。お前が本気を出せるなら何でも。それに、俺はお前を殺す気なんかねーよ。お前はいずれゴゴと一緒に俺たちルドラータファミリーの幹部になる男だからな。」


「...それは却下したいんですが。」


「なら、俺に勝ってお前がファミリーのボスになれ。そうすれば適当に解散しても文句は出ねーぞ?」


ドナルドは少し煽るように言った。レイジはフフッと笑った。


「そんな言葉で俺をやる気にさせようとしてるのか?全然だね!勝つ気なんか全くないからね!」


レイジはやる気ゼロアピールをした。ドナルドはフッと笑った。


「やっぱりお前面白いな。好きだぜ?お前のそういう所。」


ドナルドはそう言って勇者の靴を変形させてブースターを起動し、空を浮遊した。レイジもドナルドの闘志を感じ取り、名刀『憤怒の魂』を握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ