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星の勇者  作者: アシラント
148/157

公式戦 レイジvs昆布③

レイジは意識を(たも)ったままバーニングレイジを発動させた。


『ちゃんと意識を保っている...。スザクの言う通りなのか。』


レイジは心の中でそう思った。それに対してスザクが答えた。


『信じる気になったか?レイジ。』


突然スザクの声が頭に響いてレイジは驚いた。


『うわ!スザク!?お前、今は喋れるのかよ!?てっきりあの世界に入らないと喋れないのかと思ったぞ。』


『フッ。前も貴様が現実に意識を向けている時も話していただろう?あのチュー五郎の時も。』


『それはそうだけど、なんか、さっきの別れ際に最後のセリフみたいな言い方してたからさ。』


『まあ、それはいい。それよりも、バーニングレイジはどうだ?前と変わらないか?』


『ん?...まあ、変わらない...か?いや、なんというか、前よりはちょっと落ち着いているというか、感情だけで動いていない感じがあるな。前は生き残るために必死だったけど、今はもうちょっと冷静でいられる感じか?』


『なるほどな。それはいい知らせだ。そして、貴様に伝えておくことがある。バーニングレイジの本当の強さをな。』


『バーニングレイジの本当の強さ?』


『ああ。貴様のバーニングレイジは使い方が雑過ぎる。そもそも、バーニングレイジを発動させるとどのようなメリットデメリットがあるか知っているか?』


『まあ、発動したらなんか心臓から流れる血がマグマのように変わって、炎をエネルギーに動く魔人のような姿になるってことくらいかな。』


『そうだ。そして身体能力が向上し、炎の力も数段パワーアップする。しかしな、注意点がある。それは、炎をつかいすぎると身体能力も低下することだ。まあ、当たり前だが、炎がエネルギーである以上、それを下手に使えば継続的な戦いはできなくなる。』


『じゃあ、どうすればいいんだ?』


『簡単なことだ。使い分けるのだ。炎での攻撃が有効な場合と、そうでない場合で使い分ける。さらに、貴様が学んでいた波動拳を組み合わせろ。』


『波動拳を...組み合わせる...!?』


『ああ。我も初めて見る技だった。そして、波動拳に炎を乗せることができそうだと思った。』


『思っただけか。』


『まあ、そうだが、あの波動拳という技、我々の魂の技術の核心を得ている。それに、その波動拳に似た技も、我々幻獣は使っている。ゆえにわかるのだ。その波動拳には炎を乗せられることをな。』


『そうなのか?...やっぱり、四幻獣はとてつもなく強いんだな。』


『無論だ。ただの幻獣たちは魂の進化に(ともな)って知性を大きく失う。しかし、四幻獣はそれを乗り越えて知性を失うことなく幻獣となった者たちのみ。ゆえに強いのだ。』


『そうなのか。そういえば、幻獣はもともと人間だったってゲンブが言っていたな。...と、いけない。今は昆布との勝負に集中しないと。』


レイジはそう思って頭をブンブンと振り、意識を昆布の方へと集中させた。昆布はレイジが何か考え事をしていることを察しておとなしく待っていた。


「...お?どうやら、考え事は終わったみたいだねぇ。じゃあ!!やろうか!!!」


昆布は魂の力をすべて開放させて全力で挑もうとした。レイジはそれに応えるように、自身の胸に手を当てて、ドクンドクンと鳴る心臓の音の高鳴りを感じ、より一層炎のエネルギーを燃やして全力を出した。


「この勝負、速めに決着をつける。お前の命が危険だからな。だから、俺は一分で片を付ける!!!」


『そうだ。それでいい。そして、もう一つアドバイスがある。貴様は暴走した時、全方位へと熱風を放つ攻撃をしていた。それはおそらく貴様の遺志ではないと思うが、あの攻撃はやめろ。エネルギーの無駄遣いだ。』


『ああ。わかった。俺は全く身に覚えがないが、その攻撃はしないでおく。』


そうスザクに言ってレイジは刀を強く握り、腰を落として足に力を溜め、今までとは比較にならないほどのスピードで昆布の懐へと突っ込んで行った。その速さに昆布は驚いた。


『速い!?ホワイトの攻撃が間に合わない...!?』


昆布は瞬時にそう判断してホワイトの蛇腹剣をぐるぐると渦巻(うずま)くように動かして円状の形にし、盾を展開してレイジの刀の攻撃を防いだ。しかし、昆布はレイジのパワーを見誤っていた。レイジのパワーは昆布の防御態勢を余裕で崩し、そのままステージ端に展開されているシールドまで吹っ飛ばした。昆布はシールドに背中をつけながら嬉しそうにフッと笑った。それに対してレイジは眉をひそめた。


「...なぜ、笑うんだ?」


昆布はゆっくりと前へと歩みながら答えた。


「へへへ!うれしいんだよ。これほどまでに、兄貴が強いってわかったから。...じゃあ、拙者も本気で行くよ。」


昆布はそう言って右手を振り上げた。そしてレイジは再び信じられないスピードで昆布へと近づいた。しかし今度は昆布の右手から繰り出されるホワイトの一撃がレイジのスピードを捉え、的確に頭を射抜くようにホワイトを放った。レイジは急停止してかがんで避けた。その隙を逃さず、なんと、昆布は一気に近づき左手に魂の力を集中させた。


『左手に魂の力が集まっていく...!なにか、来る!?』


レイジはそう予感し、崩れかかった態勢を立て直してその攻撃からの防御に意識を集中させた。そして昆布が波動拳を放とうとしていることを直感し、それを突き破るためにレイジも左手に魂の力を溜めはじめた。そして昆布は十分(じゅうぶん)に近づいて波動拳を放ち、それと同時にレイジも波動拳を放った。


「「波動拳!!!!!」」


二人の波動拳は至近距離で衝突し、とてつもない爆音と衝撃波を放ちながらぶつかっていた。そして昆布はニヤリと笑った。


「兄貴...兄貴は知らなかったよね?拙者の本気の波動拳。拙者の波動拳はね、兄貴みたいに一点集中させることは全くできなかったんでござるよ。...でもね、その代わり、拙者の波動拳は、ゴゴのパワーを上回るほどの爆発力があるんでござるよ!!!!」


そう言って昆布は放ち続けている波動拳をさらに一段階解放した。


拡散波動拳(ショットガン)!!!!!!」


昆布の言葉と同時に波動拳は爆発し、レイジは驚いた。


「なっ!!?」


そして驚くと同時に波動拳はまさにショットガンのように拡散し、レイジの体を襲った。その威力はまさに昆布に本気で殴られた威力が無数に襲ってくるようだった。


「ガハッ!?」


レイジは昆布の波動拳を喰らい、口から血を吐いて後方へと吹っ飛ばされた。そして昆布はニヤリと笑った。


「へへへ。兄貴、兄貴がやろうとしていたことは分かるよ?拙者の波動拳の中心に鋭い波動拳をぶち込んで自身の体に当たらないように受け流そうとしたんでござるよね?でも、残念ながら拙者の波動拳はそれを許さない。拙者の波動拳は兄貴の波動拳と相性がすこぶるいいんでござるよ。」


レイジはそれを聞いて思った。


『...なるほど。だから俺の波動拳をあてても相殺されなかったのか。...いや、それ以上に、そもそも昆布の魂の力はとてつもなく高くないか?俺が十分に魂の力を集める時間がなかったのもそうだが、それを考えてもあの時間であれだけの魂の力を集められるのは、ヤバくないか?』


レイジは昆布の異常な魂の力の総量に驚いた。そして昆布はニヤリと笑った。


「兄貴ぃ。今、拙者の魂の力が何かおかしいことに気づいた顔しているでござるねぇ。へへへ、まあ、その通りでござるよ。魂の力っていうのは、うれしい出来事や楽しい時間を過ごすより、苦しみや悲しみとかの辛い出来事がある方が育つんでござるよ。拙者には、それがある。おそらく、兄貴の人生の10倍ほどはね。」


「...つらい出来事?」


レイジは聞き返した。昆布は少し悲しげに微笑んだ。


「...まあ、つまらない出来事でござるよ。他人にはね。そして、その恨みは、今でも育っている。兄貴を殺したいという恨みがね。」


「俺を...殺したい...!?」


レイジはその言葉に驚いた。そしてその表情を見た昆布は吹き出して笑った。


「プッ!アハハハハハ!!!冗談でござるよ!!!兄貴ぃ!そういうことを言っておけば、同情して負けてくれそうだって思っただけでござるよ!へへへへへ!!」


昆布はそう言って笑っていた。レイジは少しムッとした表情を浮かべた。


「なんだ?それ?お前、そういうつまらない冗談なんか言うなよ。俺は、てっきり、本当に、お前に恨まれているのかと...」


「へへへ、まあ、そういう冗談を何故言ったのか?それは、ただの時間稼ぎでござるよ。そのバーニングレイジ、発動には制限時間がありそうでござるね。おそらく、拙者を倒すって言っていた『一分』、それが限度なんじゃないでござるか?だから、その制限時間まで耐えきれば拙者の勝ち。そう思ったから兄貴が攻撃の手をやめそうなことを言っただけでござるよ。」


「...なるほどな。どうやら、お前はもう昆布じゃないみたいだな。」


「んー?どういう意味でござるか?」


昆布に聞かれてレイジは昆布に指をさした。


「その面頬(めんぼお)、装着した瞬間から、お前の言動はおかしくなった。恐らく、その面頬は呪われているものだろう。多分、それを装着すると悪魔が体を乗っ取り、性格が激変してしまう。...そうでもなけりゃ、あれだけ優しくて、面白くて、俺の大切な友人が、そんなことを言うわけがない。」


「...なるほど。意外と早くバレたなぁ。」


「...!?ってことは、やっぱり...!?」


「その通り。俺は、昆布じゃない。俺は悪魔だ。人を殺すことでしか満足できない悪魔だ!だが、完全に意識を乗っ取っているわけじゃない。主導権はあいつにある。だが、あいつが俺の力を必要としたとき、俺が降臨(こうりん)してやっているんだ。」


「...やっぱり、そうだったのか。」


「ああ。そして、乗っ取っている時間が長ければ長いほど、俺の力は増幅する。ほら、こんな風に...!」


そう言って昆布の体を乗っ取る悪魔は両手に力を込め始めた。すると昆布の腕は赤色の肌をした、鬼のような剛腕(ごうわん)に変わり、爪は赤黒く(とが)ったものへと変わった。

 その姿を見て、レイジは驚き、そして悲しみの表情を浮かべた。


「昆布...。」


その一言に、重たい感情を乗せて言った。そしてレイジは覚悟を決めて、左手で勇者の刀を抜刀した。


「俺が、必ずお前を倒す。そして、二度とその面頬をつけないことを約束させる。お前がどんどんと変わっていく姿なんて、俺は嫌だからな。」


そう言ってレイジは右手に名刀『憤怒の魂』を、左手に勇者の刀を装備してすべての魂の力を開放した。

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