公式戦 あんこvsコッケ②
コッケは盾を地面に突き刺した。すると盾はその姿を変えて鳥のような姿に変わった。コッケは不敵に笑いながら言った。
「クックック!これこそ!僕の秘密兵器!『チキンシールド』だよ!」
コッケの声に反応するかのように、チキンシールドは頭を天井に向けて、声を上げた。その声はニワトリらしからぬ、フェニックスのような美しい声だった。その声にあんこは思わず驚き心を奪われた。
「す、すごい!?なんてきれいな声。全然ニワトリじゃない!」
「クックック。ニワトリです。僕がニワトリだって言ったらそうなんだよ。だってチキンシールドの持ち主は僕だからね!...それに、こいつは美しいだけのオブジェクトじゃない。その恐ろしさを教えてあげるよ!」
コッケはそう言ってチキンシールドに命令を出した。
「チキンシールド!あいつをボコボコにしろ!」
その命令を受けてチキンシールドはまた美しい声を上げて優雅に羽ばたくと、羽の部分としっぽの先から赤いオーラのようなものが排出され、その姿はまさに不死鳥のようであり、そして空を自由に飛び始めた。そしてチキンシールドはあんこに向かって突撃を仕掛けた。あんこはそれをまるで闘牛の突進を避けるかのように寸前のところで避けた。
「うわ!意外と速い!それに、すっごく綺麗...!」
チキンシールドはあんこの周りをぐるぐると旋回しながら飛んでいた。その赤いオーラを出しながら飛ぶ姿はあんこの心を魅了した。そしてコッケは笑いながら言った。
「クックック。このチキンシールドはただニワトリに変化しただけじゃないよ。その能力を見せてあげるよ!」
そう言ってコッケはさらにチキンシールドに手で何かしらのサインを送った。チキンシールドは鳴いてそれに応え、あんこの前に立ちふさがった。
「うわ!目の前!何してくるの!?」
あんこは驚きながらもスッと後方に下がって盾のヒシちゃんを構えていつでもシールドを展開できるようにした。チキンシールドはあんこの前で羽ばたいたまま動かず、お互いに何もせず、時間だけが過ぎていった。そしてあんこが困惑の表情を浮かべた。
「...あれ?何にもしてこない?」
あんこが何も攻撃をせずにいることに、コッケは驚いた。
「な、なんだと!?あの子、攻撃をしてこないのか!?なんでだ!?チキンシールドの能力はダメージを受ければ受けるほどその赤いオーラをまとって、パワーもスピードも上がって行く能力なのに!...ハッ!まさか、そのことに一瞬で気が付いたのか!?」
コッケは深読みをし過ぎて自らチキンシールドの能力を言ってしまった。あんこはそれを聞いて驚いた。
「へぇー!そんな能力なんだ!この子!すごいね!キミ!」
あんこはチキンシールドの頭をなでなでして褒めながら言った。チキンシールドは嬉しそうに頭をスリスリして喜んだ。その状況にコッケは困惑した。
「えぇ...な、なんでチキンシールドが懐いているんだ?え?これどういう状況?」
コッケの困惑をよそに、あんこはチキンシールドと楽しそうにお話をしていた。そしてあんこはコッケに向かって言った。
「ねえねえ!コッケくん!この子、『チキンシールド』って名前、好きじゃないみたい!!別の名前を付けてくれー!って言ってるよー!?」
あんこは手を振りながらそう言った。コッケはさらに困惑した表情を浮かべた。
「えぇ...?いや...その子...喋んない...はず...鳴き声しか、出せない...ってか、チキンシールドっていい名前じゃん。僕にぴったりの名前なんだけど...?」
コッケのそんな言葉はあんことチキンシールドには届かず、二人はさらに楽しそうに話し合いを続けていた。そしてあんこはコッケに言った。
「ねえねえ!この子、あたしに名前を決めてほしいって言ってるから決めてもいーい?」
「えぇ...?いつの間にそんなに仲良く...?しかも名前まで決めてもらいたがるほどに...。」
コッケの言葉は全く届かず、あんこはうーんとうなりながら腕を組んで考えた。
「そうだねー。キミの名前はー...フェニックスの『フェニー』!!どう?いい感じ?」
あんこに名付けられてフェニーは嬉しそうに鳴いた。それを見てあんこも嬉しそうに笑った。
「そっかそっか!気に入ったんだね!よかったー!」
あんことフェニーは互いに空中でダンスを踊るかのようにふわふわと宙を舞った。コッケはポカーンと口を開けたままその様子を見ていた。
「えぇぇぇ。もう、チキンシールドが戦う意思を持ってないじゃん。...というか、僕の武器、奪われたんだけど...え?どうしよう。」
「あ!そうだったね!フェニー君がいなくなったら、君はどうやって戦うの?」
「...降参、するしかないかも。だからお願い帰ってきてぇ!僕のチキンシールド!!!」
コッケは目に涙を浮かべながら両手を合わせて懇願した。フェニーはチキンシールドと呼ばれて不満げなひょ場を浮かべ、プイッとそっぽを向いてしまった。コッケは絶望した表情を浮かべた。
「そ、そんなー!?お願いします!あなたがいないと僕は勝てないんです!帰ってきてくださいぃぃ!チキンシールド様ぁぁぁ!!!」
コッケはぶわっと涙をあふれさせて懇願した。フェニーはジトーッという目でコッケの方を見てからまたプイッとそっぽを向いた。コッケは絶望の淵に立たされたような表情を浮かべた。
「そ、そんなぁぁ!?うぅぅぅぅ、うわぁぁぁあああ!!!」
コッケはついにダンゴムシのように丸まって大声で泣き始めてしまった。フェニーはそんな情けない様子を見てため息をつきながら仕方なしにコッケの元へと飛んで行った。なぜかあんこもそれについて行ってコッケを慰めた。
「ああ。よーしよし。泣かないでー?大丈夫だよ?ほら!フェニー君も戻ってきてるから!」
そう言ってあんこはフェニーをコッケの前に立たせた。するとフェニーはコッケの頭をコツンコツンとくちばしで叩いた。
「いたい!いたい!...え?」
コッケは今までフェニーに叩かれたことがなかったため、初めてのフェニーの行動に驚きを隠せなかった。そしてフェニーはため息をつくかのような動作をしながらコッケの頭を翼で叩いて喝を入れた。コッケは頭のモヒカンがプルンプルンと揺れながらポカーンとした表情で言った。
「え?...叩いた?...なんで?」
コッケの疑問にあんこが答えた。
「フェニー君が『情けなく泣いてんじゃないよ!戦うなら最後まであきらめるな!』って言ってるよ?今叩いたのはしっかりしなさいって怒ってる感じだよ?」
あんこの翻訳にコッケは納得した。
「...ああ、なるほど。...てっきり本当に敵になったのかと思ったよ。...でも、そっか。チキンシールド...いや、フェニーはそう思ってたのか。...うん。僕、頑張ってみるよ!」
コッケは立ち上がり、ピシッと自身のほっぺたを叩いて気合を注入して、今までの卑怯さをまとった目つきではなく、戦う戦士の目つきに変わった。その目を見てフェニーも満足そうにフッと笑った。あんこも驚いた。
「うわ!さっきと目つきが全然ちがーう!?さっきまでは陰湿な感じのイヤーな目つきだったのに、なんか戦う意思を感じる目つきになってるー!?これならあたしも遠慮なく戦えそうだよ!」
「...うん。なんか、ありがとう。キミのおかげで、目が覚めた気がする。行くよ!!」
コッケはそう言ってこぶしを握った。その闘志に反応して、フェニーも美しい声を発しながら羽を大きく広げてコッケの横に並び立った。あんこはヒシちゃん達を自身の周りに集結させた。そしてコッケが恐怖におびえる心に勇気を振り絞って一歩前に進み、そして拳を振りかざした。
「う...うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
その何の技も作戦もない、ただのパンチと共にフェニーはあんこめがけて突っ込んで行った。あんこは盾のヒシちゃんを展開させてその体当たりとコッケのパンチを防いだ。コッケは盾に弾かれて体が後ろへとのけ反った。その隙をレーザーのヒシちゃんが逃さずにレーザーを撃った。そこにフェニーが翼でその攻撃を受け止めて、赤いオーラへと変換させた。
「うふふ!いいねぇ!なんか連携ばっちり...って感じじゃないけど、フェニー君がちゃんとフォローしてくれてるね!じゃあ、どんどん攻撃行っちゃおっか!?」
あんこはそう言って切断のヒシちゃんとレーザーのヒシちゃんを組み合わせたビームソードを展開してコッケに襲い掛かった。コッケはあんこの動きにビクッと怯えてしまい、一瞬ひるんでしまった。そこをフェニーが守りに入ってあんこのビームソードは防がれた。そしてあんこは考えた。
『うーん。コッケくんはまあ、全然脅威じゃないけど、やっぱりフェニー君がすごく強いね!あれを突破するには...そうだ!』
あんこは何か作戦を思いついたようですべてのヒシちゃんを集結させて、自身の背中にくっつけた。そして風のヒシちゃんに全てのヒシちゃんを連結させ、ジェット飛行機のエンジンのような風を噴射させてあんこは空に飛んだ。
「じゃあ!行くよ!?」
あんこはそう言ってコッケの周りをとてつもないスピードで飛び回りながら、四方八方から突撃を繰り返した。その攻撃をコッケは目で見ることもできず、フェニーがすべて防いでくれていた。そしてコッケは思った。
『な、なんて速さだろう!?全然追えない!...でも、フェニーが守ってくれている!それに、フェニーに攻撃が当たれば当たるほどフェニーの能力が強くなっていって、こっちが有利になる!このままなら勝てる!このままなら...。』
そう思った瞬間、コッケの足元には何やら銀色に光る物体があった。それは爆発のヒシちゃんだった。爆発のヒシちゃんはその場で光りだし、ドーンという音とともに爆発した。フェニーがそれに気づいたときにはすでにコッケに直撃しており、コッケは爆発の威力によって吹き飛ばされていた。
そしてあんこはそれを確認してから空中に飛ばされたコッケに追撃を加えるためにコッケに近づき、そして右手の拳を握りしめてコッケの顔面にパンチを繰り出した。
「ぐへぇっ!?」
コッケは殴られた勢いでステージに叩きつけられた。そして白目をむいたまま気絶した。そしてあんこは嬉しそうに言った。
「えへへへへ!!見た見た!?あたしの作戦!!すっごいスピードでただやみくもに攻撃してるように見せかけて、フェニー君に気づかれないタイミングで爆発のヒシちゃんを分離させて起爆したの!そうして、爆発で飛んできたコッケくんにパーンチ!!うわーーー!!!作戦が決まるとすっごく気持ちいいね!!!」
あんこはコッケとフェニーを交互に見ながらそう言った。そしてフェニーはそれを気にしていない様子で、あんこの方を見向きもせずにコッケの安否を確かめに行った。そしてコッケの気絶を確認するとフェニーはほっとしたように息をついて、その姿をシールド状に戻してコッケの上に覆いかぶさった。
そしてステージを覆っていたシールドが解かれてマイクマンが言った。
「勝者!!あんこ選手!!!!」
会場はワーーッと歓声に包まれた。