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星の勇者  作者: アシラント
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公式戦 姉御vsタイダイ

レイジは試合終了後ステージを降りて姉御に言った。


「姉御、俺の試合、どうだった?」


姉御は答えた。


「そうだねぇ。相手のルーカスがそこまで強い相手じゃないから評価が難しいけれど、波動斬の技術は相当上がっているね。それに相手を殺さないように丁寧に刃を振るったのもよかったよ。まあ、別にあたしは殺さないことが正義だとは思わないけれど、殺さないように振るえたかどうかが大事だからね。その点で言えばレイジの技術力はさすがだと思うよ。」


姉御はレイジをほめた。レイジは少し照れながらも嬉しそうに笑い、そして姉御に言った。


「あ、ありがとな。やっぱ姉御に褒められるとうれしいもんだな。...しっかし、次は姉御の試合かー。相手があのサライヤンよりも強いらしい、マスターブラックの孫のタイダイだもんなー。まあ、姉御の実力を疑うわけじゃないが、そのー、身の危険を感じたらすぐに降参してくれよ?姉御がケガとかしたらあんこが悲しむからな。」


レイジの言葉にあんこはうなずいた。


「そうだね!あたし、姉御ちゃんに何かあったら悲しくなる!だから勝ってね!それかすぐ負けてね!」


あんこの発言に姉御は笑みをこぼした。


「フフッ。どっちなんだい?それは?まあ、全力を出して戦って、無理そうなら負けを認めるよ。でも、あたしもやっぱりファイターなんだねぇ。さっきのゴゴとサライヤンの戦いを見て、なんだか闘志が燃え上がっちまってるよ。」


姉御はいつもの冷静で無茶をしない性格からは考えられない発言をした。そしてレイジとあんこの肩にポンと手を置いて言った。


「悪いけどね、あたしはこの心の炎が消え去るまで負けを認めないつもりだよ。だから、怪我したらごめんね?」


姉御はそう言って二人の返答を待つことなくステージへと上がって行った。そこにはステージ上でぐったりと寝そべっている男がいた。その男は真っ黒な髪の毛を短髪にしており、それとは対照的に真っ白な肌、そしてヒョロヒョロの体にマスターブラックと同じ黒い胴着(どうぎ)(はかま)を羽織っていた。

 その男は深いため息をつきながら姉御に背中を向けたまま言った。


「はぁぁぁぁ...めんどい...動きたくない...家で寝てたい...だから、降参してほしい...」


男は全く覇気のない言い方でそう言った。姉御はその男の態度に少々驚いていた。


『こ、こんな奴があのマスターブラックの孫...?なんだか、レイジみたいなタイプに見えるね...。闘うことに後ろ向きで面倒くさがりな感じが...』


姉御はそう思ってマスターブラックの苦労が理解できた。そしてその男は地面に顔をこすりながら姉御の方を向いて言った。


「ああ。あんたがじいちゃんの言ってた『勇者候補のグループ』か。...ん?あれあれあれ!?」


タイダイはさっきまでのグータラとしていた態度から一変して急に飛び跳ねて食い入るように姉御を見つめた。姉御は怪しい動きをするタイダイに少し警戒しながら聞いた。


「な、なんだい?」


タイダイは姉御をじっくりと見るとパアッと明るい表情に変わってまるで社交界にいる貴族かのような深々としたお辞儀をしながら言った。


「これは失礼!あなたのあまりの美しさに心を奪われておりました。先ほどの失礼な態度、深くお詫び申し上げます。わたくしの名は『タイダイ』。この闘技場で最強の男でございます。そして、お美しいあなたのお名前を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」


タイダイは礼儀正しく、そして声色を変えて言った。姉御は少し警戒しながら答えた。


「...アネッサ...。」


それを聞いたタイダイは嬉しそうに笑った。


「アネッサ...!!!なんとお美しい名前でしょうか!わたくしは今日まで生きてきてあなたほどの美しいお方は見たことありません!ぜひ、わたくしの嫁になっていただきたい!!!」


タイダイは一瞬にして姉御の目の前に姿を現し、片膝をついて姉御の手を取ってそう言った。姉御は驚きと少しの恐怖でバッとその手を振りほどいて後退した。


「な、なんだい!?いきなりそんなこと...何が目的だい!?」


姉御はタイダイの心理が読めず、疑いの目を向けながら聞いた。タイダイはいったん深呼吸をして心を落ち着かせてから言った。


「おお、申し訳ありません!つい本音が漏れてしまいました!いえいえ、今のは聞かなかったことにしていただきたい。ですので、まずはわたくしとデートをしていただきたい!」


「ええ!?...いや、そんな急に言われても...」


姉御はタイダイの猛烈なアプローチにたじたじになっていた。それを見たレイジとあんこはお互いにため息をついた。


「はぁ、姉御の悪いところが出た。姉御は恋愛をしてこなかったからああいう強引なタイプの誘いを断れないんだよなー。そのたびに俺とあんこが全力で悪い虫を追い払ってきたんだよなー。」


「うん、そうだねー。姉御ちゃんは本当に恋愛だけは触れさせちゃいけないね。あたしでも分かるくらいダメな人とかでも強引に誘われると断れないからねー。もう!普段はあんなに冷静でちゃんとしてるのに!」


あんこは珍しくプンプンと怒っていた。そしてレイジがヤジを飛ばした。


「おーい!タイダイ!遊びで姉御に手を出したら俺たちが殺しに行くからなー!覚悟しておけよー!」


レイジのヤジにタイダイは姉御に向けていた紳士的な眼差しから、急にジトーッとした少し嫌悪感を現した眼差しで答えた。


「はぁ、これは俺とアネッサの大人な恋愛の話なの。子供はすっこんでな。」


タイダイはシッシッと手を払ってどこかへ行けとジェスチャーした。レイジはそれにあきれた様子で首を振った。


「はぁ、まあ、一応言っておいたから大丈夫だろう。多分姉御に手は出さないだろう。もし本当に遊びで手を出してきたときには報復しようか。」


レイジの提案にあんこは強くうなずいた。


「うん!姉御ちゃんには幸せになってほしいからね!まともな人見つけよっか!」


あんこの言葉にレイジはうなずいた。そしてそんなことをしているとマイクマンが宣言した。


「それでは!Bブロック最初の試合です!タイダイ選手vsアネッサ選手!試合開始です!!!」


その宣言を終えたと同時にシールドが展開された。そしてタイダイが姉御に話を持ち掛けた。


「ふっふっふ。二人っきりですね。アネッサ。実は、アネッサさんに提案があるのですが...」


「提案?なんだい?」


「この試合、勝った方が負けた方になんでもいうことを聞かせるっていうのはどうでしょうか?その方が、わたくしも盛り上がるといいますか...」


「な、なんでも...?」


姉御はその提案に少し恐れを感じていた。それを見たタイダイは少し考えてから言った。


「うーん。やっぱりさすがにその提案は受けられませんか。ならばこうしましょう!もしわたくしが勝ったらアネッサにはわたくしとデートをしてもらいます!そして、もしわたくしが負けたらアネッサの言うことを何でも聞きますよ!それでどうでしょうか?」


「え!?で、デート!?...でも、確かに、それぐらいなら...」


姉御は少し考えて悩んだ末に答えた。


「まあ、それぐらいだったら、いいけど...」


「そうですか!!!よーし!!!そうと決まればさっそく、久しぶりに本気、出しますか!!!」


タイダイは体を伸ばしてストレッチをしながらそう言った。そして姉御は思った。


『うーん、勢いでつい了承しちゃったけど、大丈夫かねぇ?でも、そんなに、あたしのことを誘ってくれる人を断るのも申し訳ないしねぇ。まあ、デートくらいならいいかな。』


姉御は心の中でそう思って背中から小さな薙刀(なぎなた)を取り出してそれを展開して伸ばして構えた。

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