表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の勇者  作者: アシラント
140/157

公式戦 レイジvsルーカス

レイジはしぶしぶステージに上がった。そこにはすでに丸い盾と剣を装備したまさに剣闘士という格好をしている青年が少し緊張した様子で立っていた。青年はレイジの姿を見るとすぐに頭を下げて挨拶をした。


「レイジさん!自分が対戦相手のルーカスです!!よろしくお願いします!!!」


ルーカスは大きな声ではきはきと言った。レイジはそのあまりにも真面目なあいさつに少し戸惑いながら受け答えた。


「あ、ああ!よろしく!」


レイジはぺこぺこと首だけ動かしながらあいさつした。そしてマイクマンが試合の開始を宣言した。


「さあ!それでは参りましょう!!試合開始です!!!」


その宣言をした瞬間、ステージはシールドに包まれた。レイジはシールドの性能がすさまじいことを再び確認した。


「うお!やっぱりシールドはすごいな!この無音になる感覚。改めてシールドのすごさを思い知るよ。」


レイジはシールドを見ながらそうつぶやいた。ルーカスは剣と盾を構えてレイジに言った。


「で、では!レイジさん!試合、よろしくお願いします!あの勇者候補の方と戦えるなんて、光栄です!!」


ルーカスは憧れによる緊張と嬉しさが入り混じった表情を浮かべながらそう言った。それを聞いてレイジはうなずいた。


「ああ。まあ、別に俺は他の勇者候補たちと比べればそこまで強くはないけれどよろしくな!」


レイジはルーカスの礼儀正しい態度に好感を持って笑顔で対応した。そしてレイジは名刀『憤怒の魂』を抜刀して構えた。そしてルーカスはレイジが構えたのを確認し、一気にその距離を詰めた。


「はあああああああああああ!!!」


ルーカスはフェイントをかけることはせずに、素直に右手の剣を右から左へと薙ぎ払って攻撃した。その攻撃をレイジは後ろへと飛んで避けた。


『ルーカスの動き...素直だな。剣の使い方もまさに教わった通りに振った感じがある。おそらく誰かに鍛えられた動きかな?身体能力は中々か...?魂の力を開放していないところを見るに、まずは小手調べって感じか。そのうちフェイントとかしてくるのか?まあ、一旦は様子見でゆったりとかわしていくか。』


レイジは今のルーカスの攻撃で大体のルーカスの情報を読み取り、そして予測を立ててまだ様子を見ようと決めた。ルーカスは空振りした剣をクルッと手首を裏返してから一歩踏み込み、左から右上へと切り返した。レイジはその攻撃もまた後ろへと飛んで避けた。


『切り返し...きれいな太刀筋だ。剣の修業を真面目に取り組んできた証なんだろうな。しかも反撃を警戒してしっかりと左手の盾でこちらの刀を受け止めようと意識した動きをしている。なるほど。ルーカスは相当堅実な動きをするファイターってことか。...これは切り崩すのが大変そうだなー。何か策を考えないとだな。』


レイジはルーカスの強さが『堅実』だということに気づき、それを崩すための策を考えることにした。ルーカスはレイジが一歩下がればその分距離を詰めて動き、レイジの刀の動きに注意しながら剣を振るった。


「はあああああああああ!!!」


ルーカスは動きこそ地味ではあったが、レイジが苦手とするタイプだった。


『距離も常にインファイトで攻めてくる。しかも俺の反撃を警戒しながらだから隙がない。俺は、どんなに強い奴でも隙さえ見つければ勝ちへの道筋を見つけることはできるが、こういうタイプは本当に苦手だな。動きにも、精神的にも、油断も隙も無い。しかも、まだ魂の力を出してないってことが怖いな。うーん。これは俺もリスクを負って相手の情報を引き出すために動くべきかな。』


レイジはそう思って今までかわし続けていた攻撃を始めて刀で受け止めた。ルーカスはレイジが受け止めたことに少し驚きつつもすぐに盾でレイジの体を殴った。レイジはその攻撃を受けて一歩だけ後退した。   

 その隙を逃さず、ルーカスはつばぜり合いの状況から思いっきり力任せに腕を突き出すことでレイジの態勢を崩して転ばせようとした。しかしレイジはその攻撃が来た瞬間に飛ぶように後ろへと後退してルーカスの態勢崩しを避けた。


『ルーカス...基本をしっかりと学んでいるタイプだ。ゴゴとかの規格外の筋力があればこういう堅実な相手でも強引に防御を崩して戦えたんだろうな。俺にはできなかったけど...けれど、それは過去の話だ!今の俺には、波動拳(はどうけん)がある!!やってやるさ。強引にな!!』


レイジはそう決意し、ルーカスに言った。


「おいルーカス!!お前、剣の技術は相当強いな。肉体も、鍛錬を怠らなかったみたいで俺よりも筋力がある。俺はお前みたいなやつと戦うのが一番苦手だった。だけどな、それも今日でおしまいだ!俺は今から本気で行く!お前も隠している力があるなら本気で来い!!!」


レイジはそう言ってフゥーっと息を吐くと深く精神を集中させ、己の内側に宿る魂に意識を集中し、それを開放することで魂の力を最大限に引き出した。レイジは少しだけ雰囲気が変わった。ルーカスは思った。


『おお!これは、はったりとかじゃなさそうだ!本気だ!本気を出そうとしてるんだ!...じゃあ、こっちも魂の力を開放しよう!...でも、本当にこれが本気なのかな?さっきのゴゴさんたちの戦いを見るに、本当の本気になったら体から魂の力があふれる感じだったけど...?』


ルーカスはレイジの体から魂の力が漏れていないことで、本当に本気なのかを疑問に思った。しかしその認識は間違っており、ゴゴの場合は魂の力をうまく操れないからこそ体から漏れてしまい結果的に本気を出していることがバレバレになっていただけであり、本当に恐ろしいのはレイジのような魂の力を出している時と出していない時でそこまで変わらない状態の人間であるということを、ルーカスはまだ知らなかった。


「じゃあ、俺も、一応、魂の力を引き出します!」


ルーカスはレイジに言われたとおりに魂の力を引き出した。ルーカスは体からわずかに魂の力が漏れ出ていた。それを見た瞬間、レイジは右手に持っている名刀『憤怒の魂』を両手で持ち、左足を前に出して体を構え、そして肩の高さで地面と水平になるように刀を構えた。その構えを見た瞬間、ルーカスはさっきまでの疑いを一瞬で考え直した。


『この構え...ヤバい!!なにかは分からないけれど、僕の全身が命の危機を大音量で知らせている!!!背筋に悪寒が走る!鳥肌が立つ!心を恐怖が(おお)いつくす!!!』


ルーカスは一瞬にして魂の力を全力で最大限に引き出した。生存本能に突き動かされ、必死に引き出し全ての魂の力を盾へと(そそ)いだ。そして、それを見届けたレイジは予備動作もなくまるで(はじ)かれるように一気に距離を詰めて刀を水平に放った。


波動斬(はどうざん)!!!」


レイジの放った刀は魂の力を(そそ)がれた盾をまるでケーキを切るかのようにスーッと刀が入り、いとも簡単に盾を両断した。その様子をスローモーションにルーカスは見ていた。そして、それが自身の死の瞬間だと脳は認識した。そしてその刃はルーカスの胸を斬りつけた。


「ぐわあああああああああああああああ!!!!!」


ルーカスは斬られ血を吹き出しながら仰向(あおむ)けに倒れた。レイジは着地するとフッと息を吐いて刀を(おさ)めた。


「これが、波動斬の威力か。とてつもない攻撃力だな。あれだけの魂の力を注ぎこまれた盾を綺麗に両断できるなんてな。」


レイジは波動拳の派生、波動斬の威力に驚いた。そしてルーカスは自身が胸を斬られたにもかかわらず、それほど痛くないことに気づいた。


「...あれ?あんま痛くない...?僕、斬られたのに...?」


ルーカスは自身の胸を見た。確かに切り傷はあったがその傷はとても浅かった。そしてレイジは言った。


「ああ。まあ、一応気を付けて斬ったからな。殺したくはなかったしな。へへへ!やっぱり魂の力を扱う能力だけは一流なんだな!俺は!」


レイジはルーカスの無事を知って自身の技術力の高さを実感した。そしてレイジはルーカスに手を差し伸べた。


「いい試合だった。ありがとな。...って、もしかしてまだ戦う気だったりするか?俺はもう買ったつもりだったが...?」


レイジにそう言われてルーカスはフッと笑ってレイジの手を取った。


「まさか。僕の完敗ですよ。圧倒的な実力差を感じました。ありがとうございました!」


ルーカスはレイジの手を取って立ち上がりそう言った。そして試合はレイジの勝利で幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ