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星の勇者  作者: アシラント
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みんなのむかしばなし

固有名詞紹介


「伝説の勇者」


勇者とは、17年前に魔王と戦いお互いに消息不明になった人物。


彼はかなり謎の多い人物。勇者と一緒に魔王討伐の旅をしていたメンバーはほとんど残っておらず、彼の顔を知る者も限られている。彼の両親、家族、出身地などは一切記録に残っていない。


唯一彼の持っていた武器に関しては記録が残っており、当時の人類最後の砦だったサンシティにて贈呈された武具であるとされている。


当時を知る人によれば彼はまさに最強だったという。我々人類の中で群を抜いて強く、幼少のころから魔族に対して強い憎しみを抱いており、良き師匠と仲間に恵まれて強くなっていったという。


彼は戦いにおける身体能力、相手の裏をかく戦いのセンス、幻獣の能力、そして強くなるための努力を惜しまないストイックさなどが非常に優れており、1対1なら彼にかなうものは誰もいないほどに強かった。


しかし魔王との決戦でその消息を絶ち、17年の月日を経てなぜかレイジたちにその当時の記憶がうっすらと流れ込んできた。しかしそれがレイジたちにもともとあった記憶なのか、武器から送られてきたものなのかはまったくもって分からないのである。


先代勇者は謎が多い人物ではあるが一つだけ確かなのは、彼が居なかったら魔族との戦争は魔族の圧勝で終わっていただろう。彼1人で戦局をひっくり返すほどの力を持っていたことは確かである。

サンシティに戻ったレイジたちは王様に幻獣を討伐した事、魔王軍四天王のウィンドが現れた事、ネネの正体とそれを魔王軍が知っていたことを話した。


「なるほど。そんなことがあったのですか。......とりあえず、幻獣の討伐、本当に有難う御座いました。」


王様は深々と頭を下げて礼を言った。そして顔を上げた直後に重苦しい顔で話をつづけた。


「しかし、魔王軍が我々も知らないネネどのの正体を知っていたとは。どうやら本気で戦争を始める気みたいですね。」


王様の深刻な言葉にレイジも真面目になって話した。


「ええ。正直言って我々も油断していました。いくら魔王が復活したからと言って、先の戦争で魔族のほとんどが勇者によって倒されたと聞いておりましたので、戦争にまでは発展しないだろうと思っていました。

しかし実際には魔王軍は着々と準備を進めており、恐らく情報網も相当のものだと思われます。もし今戦ったとすれば、今度はお互いに絶滅するまで終わらないかもしれませんね。」


レイジが浮かない顔をしているとドナルドもそれに便乗してきた。


「確かに、俺も正直舐めてたぜ。もう魔族には強い奴なんか残ってないって思ってた。だがあのウィンドってやつは俺たちが幻獣使いとの戦闘経験の無さを一瞬で見抜き、しかも仲間割れまで狙ってきた。俺は自分が強いって思っているが、あのウィンドは俺たちの数段上の実力を持っていやがる。ブレイブの剣が全く当たらなかったしな。」


「確かに僕の剣は当たらなかったけど、そんなに悩むことでもなくない?もっと強くなればいいだけだしさ!」


ブレイブは能天気なのかポジティブ思考なのかわからないがニコニコと笑いながら言った。それに突っ込むようにユダが話した。


「いえいえ、事はそう単純ではないのですよ。ブレイブ殿。確かに強くなればいいとは思いますが、それ以前に相手は我々の正確な情報をつかんでいる。だから強くなる前に罠にはめられて殺されてしまうかもしれないと言いたいのですよ。」


ユダはいつもと同じように不気味な笑みを浮かべながら言った。


「そっか!だから情報って大事なんだ!いままでそんな風に考えたこと無かったな!」


ブレイブは納得して明るい笑顔を見せた。その笑顔のおかげで場の空気が少しだけ和やかになった。


「まあ、それはいいとして、これから私たちはどうしたらいいの?言っとくけど、ずっとこの町を拠点に戦うなんてイヤよ。......正直、まだあなたたちのことを心から信頼しているわけじゃないの。」


ネネはうつむいて申し訳なさそうに言った。その言葉に対しユダもニタニタと笑いながら便乗した。


「ケッケッケ!私もそれには同感ですねぇ。所詮私たちはいまだに本物の勇者を見分けられていない。誰が裏切るのか全く予想できないですからねぇ。背中を預けられない以上一緒に行動するのは控えさせてもらいますよ。」


「ハッ!それはお互い様だ。てめぇみてえな気持ちわりぃ奴となんか頼まれてもごめんだぜ。それによ、俺は俺で行く当てがあるんだ。邪魔すんなよ。」


ドナルドは机に脚を乗っけながらユダをにらみつけて言った。ユダはその視線をずらすことなく互いににらみ合っていた。会議室に緊張が走る。王様は汗を流しながら重たい口を開いた。


「で、では、今後は皆さん自由に行動しながら魔王につながる手がかりを見つけるということで、宜しいですかな?」


王様は愛想笑いを浮かべながら言った。それに対して皆何も言わずに承認した。


「で、では、勇者の皆さん。なんとか魔王を倒して世界を救ってください。それでは!」


王様は逃げるようにそそくさと会議室から出て行った。そしてユダとドナルドはにらみ合ったままユダが立ち上がり会議室を出て行った。


「......チッ!気味のわりぃ野郎だぜ。あいつが勇者なわけねぇだろ!どう見ても裏切り者じゃねぇか!」


ドナルドはイライラしながら机をダンッと蹴った。


「まあまあ。確かに気味が悪いとは思うけど、人を見かけで判断するのは良くないよ。それに、ユダは相当強いと思うよ。ゴゴが一方的にやられてたもん。」


レイジはドナルドにそう言った。ドナルドはゴゴの方を見て言った。


「......よう。そういえば話すのは初めてだったな。筋肉の兄ちゃん。俺はドナルドだ。」


「何!俺に話しかけてくるとは!もしかして俺と戦いたいのか!?」


「ちげーよ!なんでそうなるんだよ!話が飛躍しすぎだろ!」


「いやー、俺が人に話しかける時なんて戦いたい時ぐらいだからな。てっきりドナルドもそうかと思ったよ。」


「お前生粋の戦闘狂かよ!戦う以外の趣味は無いのかよ!」


「何を言うか!戦い以外の趣味なんてあるはずないだろ!それ以外でわくわくなんてしねーよ!」


ドナルドはゴゴの曇りないキラキラの目を見て思わず笑ってしまった。


「ははは!お前、面白い奴だな。そういえばお前たちってどういう関係なんだ?なんか、ちぐはぐな奴らが集まってるみたいだが。」


ドナルドはレイジたちの関係に興味を持った。ゴゴはレイジに目配せをして説明してやってくれと言っているようだった。レイジは仕方なくドナルドに説明した。


「えーっと、まず姉御は俺が赤ん坊の時から育ててくれた姉であり母親である大切な家族だ。そしてあんこは俺の一つ下の妹みたいなやつだよ。この二人とは物心ついた時から一緒に旅をしてるんだ。」


「ほうほう。そうなんか。じゃあゴゴは?」


「ゴゴは、魔王軍がある街に攻めてた時に出会って、そっからなんやかんやあって仲間に加わったって感じだな。」


「んじゃあ、一緒にいた歴は全然浅いって事か?」


「そうだね。まだ一週間ぐらいしか一緒にいないな。でも不思議とすぐに打ち解けられたな。姉御とは過去になんかあったっぽいけど、全然話してくれないからなー。」


「そうか。なんとも変な関係だな。」


「そういうドナルドはどうなんだよ。」


「え?俺か?」


「ドナルドは俺たちと会う前は何してたんだ?」


「そうだなぁ。俺はここに来る前は喧嘩に明け暮れたただのガキ大将だったな。」


「ガキ大将?」


「ああ。俺は生まれてすぐに両親に捨てられて、施設で育ったんだ。まあよくある話だ。そんで不良になって施設を抜け出して、いろんな奴に喧嘩吹っ掛けてはそいつから金を巻き上げて生活していた。まあ、喧嘩には自信があったからな。ほとんど負けたことがねぇ。その腕を見込まれてマフィアにスカウトされてよ。そんで今までマフィアやってたな。」


「マ、マフィア!?」


「ああ。まあ、ただの特攻隊長だ。金やら暴力やらで殴るだけだ。単純な仕事だ。」


「そ、そうか。どおりで威圧感があると思った。」


「まあ、そんなわけでよ。出来ればそこの筋肉の兄ちゃんをうちの組にスカウトしてぇと思ってな。どうだ?」


ドナルドはゴゴに向かって言った。ゴゴは目をキラキラと輝かせて首を縦に振ったが、脇腹を姉御に肘で突かれて委縮した。


「お、俺自身はとーーーーーーっっっっっても行きたいんだが、あいにく姉御との約束があるから俺はレイジたちと一緒に行動しなきゃいけねーんだ。すまねー!」


ゴゴはまるで欲しいおもちゃを前に苦しい顔をしながら買わない選択をする子供のように断った。さすがのドナルドもゴゴにそこまでの顔をさせたら引かざるを得ず、しぶしぶ引き下がった。


「そうか。まあ、それなら仕方ねぇな。だがもし気が変わったらいつでも来てくれ。お前みたいなやつなら大歓迎だ。」


ドナルドはゴゴと固い握手をして友情を深めた。そしていつの間にかネネとブレイブも会話に入ってきた。


「ふーん。ドナルドはマフィアだったのね。」


「なにー!?マフィアー!?悪い奴じゃん!退治しよ!」


ネネは納得したように言った。ブレイブは剣を取り出しドナルドに襲い掛かろうとしたがレイジが「まあまあ。」と言って間に入り落ち着かせた。


「なんだ?お前らも俺たちの話を聞きに来たのか?まあ、別にいいけどよ。」


ドナルドは頭の後ろで手を組みツーンとした態度で言った。それに対してネネはムッとした表情で言い返した。


「何よ。気になったんだからいいじゃない。それよりもさっきから聞いてたけど、あんた達面白い人生歩んでるのね。」


ネネは口角を無意識に緩ませながら言った。レイジは初めてネネの笑顔を見た。その素直に表現できていないが思わずあふれ出てしまった笑顔に心を奪われた。


「......あ、ああ。......そうだね。」


レイジはまさに心ここにあらずといった言い方をした。


「ちなみにブレイブはどんなことしてたのよ?」


ネネはブレイブに話を振った。


「ん?僕?僕は実は騎士なんだ。」


「「「騎士ーー!?」」」


レイジとネネとドナルドは三人声をそろえて驚いた。


「うん。僕の家族はみんな騎士なんだ。あの伝説のキングナイト一族の末裔らしくって。」


ブレイブはニコニコしながら話した。


「キングナイト一族!?」


姉御はそれを知っているらしく、珍しく驚いた。


「......キングナイト一族って何?」


レイジは姉御に訊いた。


「キングナイト一族は初代のサンク・キングナイトが作り上げた騎士の名家だよ。なんでも一族にしか扱えない様々な技を駆使して戦うようで、剣の強さで言ったらあの伝説の勇者に匹敵するほど強かったって話だよ。実際、伝説の勇者が出てくる前はサンク・キングナイトが唯一の希望だといわれていたくらいだからね。」


「そんなに強かったんだ。じゃあブレイブも相当強いのか?」


レイジはブレイブの方を向いて聞いた。ブレイブは胸を張って自慢げに答えた。


「もちろん!剣の扱いなら兄弟の中で一番強かったしね!それに僕は生まれた時から体が頑丈ですぐに歩けるようになったから、いい騎士になりそうだってパパとママに言われてたしね!」


「そうだったんだ。確かにその筋肉は剣を扱うのに最適な筋肉量をしているし、よく見たら体全体がかなりの筋肉質だね。まさにアスリートみたいだ。」


レイジはブレイブがかなり恵まれた体格をしていることに気が付いた。


「それで、ブレイブは具体的にはどんな練習をしているんだ?」


「それは残念だけど言えない決まりになってるんだ。ごめんね。」


ブレイブは申し訳なさそうに謝った。


「いや、いいんだ。そりゃそうだよな。それがわかったら一族だけでやってる意味無いしな。」


レイジは聞けなかったことを少し残念がりながらも、それ以上は聞かなかった。


「なあ。話は変わるんだけどよ。そこの嬢ちゃんはなんで浮いてるんだ?」


突如としてドナルドがあんこを指さして聞いた。


「......え?わたし?」


「ああ。実は幻獣討伐の時から気になってたんだがよ、どういう原理で浮いてんだ?」


「うーん。......わかんない!」


あんこはかわいらしく舌をペロッと出して笑顔で答えた。ドナルドは呆気に取られて「あぁ......。」としか言えずにいた。そこへ姉御が話しかけてきた。


「あんこは赤ん坊の時から浮いてたよ。なんで浮くのかはあたしも本人も知らないよ。」


姉御はドナルドを慰めるように言った。ドナルドも「そ、そうかぁ。」と無理やり納得した。


「それで?この後はどうすんの?」


姉御はこの場の全員に問いかけた。


「俺はマフィアに情報通の奴がいるからそいつに会いに行く。言っとくが、ゴゴ以外は歓迎しないぞ。」


ドナルドはゴゴにウィンクをして言った。


「僕はうちに帰ってパパとママに報告しなきゃ!」


ブレイブは学校から帰る小学生のように走って部屋を抜け出した。


「私は......。」


ネネはこの後に何をしようか悩んでいた。


「ネネ。もしこの後予定が無いんだったら、ネネの生まれた町に案内してもらってもいいか?」


「えっ?私の生まれた町に?......どうして?」


「ネネの正体を魔王軍が知っていた理由がもしかしたらその町にあるかもしれないから。だってネネの正体を知っているのはその町の人間だけなんでしょ?だから誰かが魔王軍につながっているのかなーって思って。」


レイジはネネにそういった。ネネはすこし困った顔をして悩んだ。


「ええ。いいわよ。じゃあ、案内してあげる。」


「本当か!?」


「ええ。でも、私は街には入らないわよ。あそこは......嫌な思い出があるのよ。」


「ああ。それは大丈夫だ。無理強いはしない。」


「そう。じゃあ一緒に行きましょうか。」


ネネは口角を上げながら言った。本人は感情を押し殺しているようだが、誰から見ても嬉しそうなのがバレバレである。


「よーし!それじゃあネネの生まれた町に行くぞ!」


レイジは嬉しそうに歩き出した。



キャラクター紹介


「ゴゴ」


筋肉ムキムキ、単純、豪快、戦闘狂な男。強いものと戦うこと以外興味がない。茶色の髪の毛をピーンと天に向かって一直線に伸ばしており、まるで鉛筆の先っぽみたいに鋭い。顔の筋肉もかなり発達しており濃い顔になっている。

いつも茶色いマントと茶色い腹巻、白いTシャツを着ており、とてもダサい。


彼はその見た目通り力が強く、巨大なハンマーを振り回して戦ったり、力技拳りきぎけんを使った素手での戦いを得意とする。人を殺すことを嫌い、刃物などの斬る武器を握らない。


彼の能力はいろんなものにくっつくことができる。本人は最強だと言っているが、どう考えても弱い。


彼は様々な子供たちが住む施設で育った。よくケンカをしていた。


姉御とは過去に何かあったらしいが、ゴゴも姉御もそれを話そうとはしない。

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