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星の勇者  作者: アシラント
136/157

公式戦1回戦 ゴゴvsサライヤン①

ゴゴとサライヤンはお互いに地面を蹴って一気に間合いを詰めて近距離のラッシュ対決に持ち込んだ。お互いに速すぎて残像が見えるほどの拳が交差して、観客たちはいったいどちらが押しているのかすら分からなかった。それでも、見ごたえのある近距離戦は観客たちの心をつかみ、瞬きすら忘れるほど興奮していた。そしてゴゴは叫びながらがむしゃらに拳を振り抜きまくっていた。


「ぐおおおおおおおおおおお!!!!!」


ゴゴは己の腕が引きちぎられるかと思うほどの威力で何十発もパンチを繰り出した。サライヤンもそれに負けじとゴゴ以上の速さと手数で応戦した。そしてサライヤンの攻撃はゴゴの体をとらえ、逆にゴゴの攻撃はすべて避けられていた。そしてゴゴは思った。


『くそっ!俺の得意な近距離の殴り合いでこうも格の違いを見せつけられるか!?しかも...』


ゴゴはサライヤンの舐めた行動に気づいた。そしてゴゴとサライヤンはお互いの拳と拳がぶつかり合い、両者弾き飛ばされる形でラッシュ対決は終えた。そこでゴゴはムッとした表情でサライヤンに言った。


「おい!!サライヤン!!!今の攻撃、なんで受け流しの構えをしなかったんだ!!!雌水雄鉄拳(しすいゆうてつけん)の雄鉄の部分でしか攻撃してなかったよな!?それは俺に対する侮辱ってやつか!?」


ゴゴは怒りをあらわにした。サライヤンはフッと笑った。


「まあ、そう怒るな。今のはあくまでお前の今の実力を測るための小手調べだ。正直言って、俺の今の実力はお前が逆立ちしても勝てないほどの高みにいるからな。はじめっから全力で倒しに行くんだったら、もうすでにヨロイヤンを装着しているからな。」


サライヤンはそう言って自身の後ろのステージの角を指さした。そこには光学迷彩ステルスで透明化していたヨロイヤンが立っていた。ゴゴは驚いた。


「ええ!?ヨロイヤン!?そこにあったのか...全然気が付かなかった。」


「まあ、これは使わねーでやるよ。生身ですら俺の方が強いのに、その上ヨロイヤンまで装着したらお前に勝ち目がなくなるからな。」


サライヤンは挑発するようにあざ笑いながら言った。ゴゴはそれを気にもせずにフッと笑った。


「そうか。それはありがたいが、お前はまだ勘違いしてるぜ!」


「...勘違い?」


「ああ!お前のパンチ、さっき何発か食らったがな、全然痛くなかったぞ!!お前は結局、俺を殺せるほどの威力の高いパンチは...」


ゴゴがそう言いかけたその時、サライヤンは一瞬にしてゴゴの(ふところ)へともぐりこみ、それにゴゴが気付いた瞬間、サライヤンは己の右腕に大量の魂の力を注ぎこんだ。


「雌水雄鉄拳...|雄鉄拳(ゆうてつけん)の奥義...」


サライヤンがそうつぶやくと、サライヤンの右腕は筋肉が膨れ上がり、そしてその拳をゴゴの腹を突き破らんとする勢いでぶち込んだ。


「『玉鋼(たまはがね)』!!!!!」


サライヤンの拳がゴゴの腹に直撃した瞬間、その衝撃波が二人のいるステージを包んでいるシールドが震えるほどの破壊力だった。


「ぐお...お...おぁ...」


その威力はゴゴが白目をむいて腹を抑え込み、口から血や泡を吹きながら倒れるほどの威力だった。それを見ていたレイジたちは心底驚いた。


「な、なんだ!?あの拳の威力は!?こんな威力...ゴゴがガイアに放ったあの力技拳(りきぎけん)奥義の技ぐらいの威力だぞ!?」


レイジはシールド越しに感じるサライヤンの拳の威力に驚いた。姉御は苦しい表情を浮かべた。


「あ、あの男、こんな大技を隠していたのかい!?しかもゴゴとは違ってサライヤン自身が速いから避けることもできなかった...サライヤンはどうやらあたしが想像していた以上に恐ろしい相手だったらしいね。」


姉御はサライヤンの底知れない実力に恐れを感じた。昆布は頭を抱えた。


「しかも、ゴゴのやつ、腹に直撃でござるよ!?おそらく内臓がもうぐっちゃぐちゃになっちゃってるでござるよぉ!早く医療室に連れて行かないと死んじゃうでござるよ!!」


昆布はゴゴの安否を心配した。そしてあんこは悲しそうな表情を浮かべた。


「ゴゴ...あんなにサライヤンとの試合を楽しみにしてたのに...こんな結末なんて...ゴゴかわいそうだよ...」


あんこはゴゴの心を心配した。そしてマイクマンは驚き唖然としていたが、ハッと我に返って実況した。


「こ、これは...なんということでしょう。なんともあっけない幕切れです!残念ながら...試合終了で...」


マイクマンがそう言おうとしたその時、マスターブラックが止めた。


「いや、まだじゃ!!!まだ終わらせるな!!!」


マスターブラックは会場全体に響き渡るほどの大声でそう言った。


「まだ、ゴゴのやつは闘志を燃やしておる!!!死ぬまで誰も止めるでない!!!!!」


マスターブラックがそういうと、会場全体はシーンとしていたが、ゴゴの方を見るとゴゴは血反吐吐き散らしながら苦しそうに、そして一生懸命に立ち上がろうとしていた。それを見た会場はワッと盛り上がった。


「ぐ...ぐはぁ...が、あぁぁ...」


ゴゴは四つん這いになり、口から大量の血がまき散らされながらも顔を上げてサライヤンを見た。サライヤンは息を切らしながらゴゴに語り掛けた。


「はぁ、はぁ、どうだ?ゴゴ?俺の...全力の...拳は...。さ、さすがに...お前でも...立ち上がれないか?もう...勝負は終わりなのか?」


サライヤンは右腕を抑えながらゴゴにそう聞いた。ゴゴは狂ったような笑顔を浮かべてゆったりと立ち上がり、そして獣のように叫んだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


その声は会場に届いてはいなかった。しかし、会場にいた全員がゴゴの叫びを理解した。その叫びは、まだまだ戦いを終える気がないという意思の表れだと。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!ゴゴが、ゴゴが立ち上がったぞおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


会場は歓喜に湧き上がった。そしてサライヤンはフッと笑った。


「やっぱり...立ち上がるか...そうか、そうだよな。...だが、残念だ。ゴゴ。俺は...お前に勝つぞ?」


そう言った瞬間、サライヤンの姿が一瞬にして消え、そして再び、ゴゴの懐へともぐりこんだ。


「今度は...左の...『玉鋼』!!!!!」


サライヤンは左手に魂の力を込めて筋肉を肥大化させ、そのままゴゴの腹にぶち込もうとした。


「ぐうううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


ゴゴは叫び声をあげながら自身の左手でサライヤンの拳を相殺しようと殴りかかった。しかしゴゴの左手はまるでプレス機に圧縮されたかのようにぐしゃぐしゃに折れ曲がり、サライヤンの拳は再びゴゴの腹にぶち込まれた。


「が...あぁ...」


ゴゴは息ができないほどの苦しみで意識が飛びかけた。しかしゴゴは先ほどと違い、倒れずにそのまま右手でサライヤンをぶん殴って反撃した。サライヤンはその拳をまともに喰らい、体ごと吹っ飛ばされた。そしてゴゴは口から血があふれ出ながらもサライヤンの方を見て笑った。


「さ、サライヤン...ゴッハァ!!!...さ、さっきの...左手の...『玉鋼』...へ、ヘヘッ!右手に比べてえええええええ!!!弱っちいなああああああああああ!!!!!」


ゴゴはフラフラとふらつきながらもそう叫んだ。サライヤンはふっふっふと笑ってゆっくりと立ち上がりながら答えた。


「左手は...まだまだ修行中だ...ふ、ふっふっふっふっふっふ。しかし、お前、本当にタフすぎるな。わかったわかった。じゃあ、俺も、遠慮なしで行かせてもらうぞ。」


サライヤンはそう言って指をパチンと鳴らした。するとヨロイヤンが動き出し、パーツがサライヤンの周りをぐるぐると回りだしてから全身に装着された。そしてその瞬間、目の部分が緑色に光り、装着が完了した。ゴゴはヨロイヤンを見て言った。


「ヨロイヤン...か...正直、勝てる気がしねー...が、だからこそ!!!挑む価値がある!!!!!」


ゴゴは勢いよく地面を蹴りだして右手の拳を握りしめ、大きく振りかぶり、サライヤンの顔めがけて殴りかかった。サライヤンは左手を構えて右手を左手に添えて防御態勢を取り、その拳を受け止めた。ズサァっと地面を滑りながらサライヤンはゴゴの攻撃を受けきり、フゥーっと息を吐いた。


「さすがヨロイヤンだ。お前の攻撃が、痛くもかゆくもないぜ。」


サライヤンは余裕の態度でそう言った。逆にゴゴは動くたびに口から血を吐き、腹の痛みにもだえていた。


「ぐ、うおぉぉ、ガハッ...は、腹に受けた...パンチが...いつまでも...痛ぇ...。」


ゴゴは腹を抑えながら言った。サライヤンはフッと笑った。


「あのゴゴが...戦いの最中に、弱音を吐くとはな...俺の一撃は...相当効いたみたいだな...。」


サライヤンは余裕の表情で言っていたが、実際には焦っていた。


『まずいな。俺様の最強の一撃である『玉鋼』を放ったせいで、俺の右腕は正直ボロボロだ...左手は不完全な『玉鋼』だったおかげか、そこまでダメージはねぇが...今は何とかヨロイヤンの補助動力機能を使ってごまかせているが、すぐにばれるだろうな。早いとこ決着つけねーと、マジで負けるかも知れねぇな...クソッ!俺の本領はカウンターだってのに、ゴゴを倒すために編み出した技をぶち当てたいって欲望のせいで焦っちまったな...それほどまでに、俺の心は高ぶっちまってるのか...?』


サライヤンは血が巡るたびに右腕がズキズキと痛んだ。それほどまでにさっきの大技の反動が大きかったことにサライヤンは驚いた。そしてそれ以上に、腹に直撃したにもかかわらず立ち上がって殴りかかってきたゴゴに驚いていた。


「おいゴゴ、お前は前に言ったな。ヨロイヤンは強いだけだって。それはその通りだ。このヨロイヤンは強さを貸してはくれる。しかし、俺自身を強くはしてくれねーんだ。それどころか、こいつに頼りっぱなしになって己自身を鍛えることを放棄しちまう可能性だってある。...でもな、残念ながら俺はそこまで賢い人間じゃねー。己の強さに満足したことがねーんだ。常に、常に!俺は貪欲であり続けている!!!」


サライヤンはそう言って胸の前で腕をクロスした。すると胸の部分が激しく緑色に光輝きだした。


「だからこそ!!!俺にはヨロイヤンを扱う資格がある!!!そして、ヨロイヤン自身もそれに答えてくれる!!!行くぞおおおおお!!!!ヨロイヤアアアアアアアアアン!!!!解ッッッ放おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


サライヤンが腕を振り抜いて胸を突出させると、ヨロイヤンは緑色の稲光(いなびかり)を全身のパーツから放出しながら浮き上がり始めた。それを見たゴゴは狂ったように笑った。


「はは、ハハハハハ!!!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!!サライヤン...超えて見せるぞ、お前の全力をおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


ゴゴはサライヤンの本気を感じ取り、今までにないほどの心の高ぶりを感じ、全身が震えあがるほどの興奮を覚えた。

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