公式戦抽選会
エロマと色兎の赤い霧事件から2カ月が経過し、ついにバトルマスタータウンの公式戦が開催された。そしてレイジ達はバトルマスタータウンの闘技場に向かい、そこで行われるトーナメントの抽選式に参加していた。
「...すごい熱狂だな。」
レイジは闘技場のリングの上で参加選手として待っているときに、観戦席から沸きあがる熱狂の歓声に驚いていた。そしてリングの中心に立っていたマイクを持った男が電源を入れて話し始めた。
「お待たせいたしました!!!これより、バトルマスタータウン公式戦の抽選会を開催いたします!!!司会は私、『マイクマン』が務めさせていただきます!!!」
マイクマンがそう言うと観戦席から地鳴りのような歓声が沸きあがった。観客のほとんどは目が血走っており、今か今かと戦いの火ぶたが切られるのを待ち望んでいた。そんな状況を観客席に座ってみているのはネネとヤミナだった。
「...すごい熱狂ぶりね。なんだか少し怖いくらいだわ。」
ネネは自身が魔族の見た目であることがばれないように勇者のマントのフードを深くかぶって、周囲を見まわしながら言った。ヤミナも周りの熱狂に少しビビッて縮こまっていた。
「う、うん。ちょ、ちょっと、苦手、かも...」
ヤミナは周りの大人たちが大声を発するたびにそっちの方へと振り向いて驚いていた。そんなヤミナを安心させるようにネネはヤミナの手にそっと手を添えた。
「大丈夫?やっぱり、別の場所に移動する?もうちょっと後ろの方が落ち着いてみられるかもしれないわね。」
ネネの提案にヤミナはブンブンブンブンと小刻みにうなずいた。ネネはそれを見てクスッと笑って席を立ち、後ろの席へと移動した。
「...さすがに、ここまでの熱狂だとは思わなかったわ。私は魔族の見た目がばれると大変だから出ない方がいいってゴゴが言っていたけれど、本当にそのとおりね。まだ試合が始まってもいないのにこれだけの人が集まってる。レイジがブレイブと戦った時はこれの半分くらいの人数だったのに...やっぱり公式戦っていうのは相当人気なのね。」
ネネは改めて公式戦というものの人気ぶりを実感した。そしてヤミナはネネの話にうなずきながら後ろの席へと移動し終え、フゥーっと安堵の息をついた。
「う、うん。ほんとにそう。う、ウチもびっくりした。あんなに大声で...なんか、怒られてるみたいで怖かった。」
ヤミナは肩をすくめて言った。そしてマイクマンは会場全体に響くいい声で言った。
「さぁ!それでは前口上は抜きにして、さっそく抽選会をしていきましょう!参加者64名!!この参加者をAブロックとBブロックに分けて公式戦を行います!!では早速抽選会のスタートです!!!」
マイクマンはそう言ってテーブルにある大きなスイッチを指さした。
「抽選の仕方はいつも通り!このスイッチを押してスタート!そして再び押してストップ!!ストップしたときに表示された数字が戦う順番となっております!!それではさっそく参りましょう!!順番に並んでくださーい!!!」
マイクマンに言われて参加者たちは一斉に列になって並びだし、次々に抽選を開始した。レイジたちはちょうど列の真ん中あたりにいた。
「なるほど。公式戦っていうからどういうやり方かと思ったら、本当に運で決まるんだな。」
レイジは抽選の仕方を見ていてそう思った。それに対してゴゴはガッハッハと笑った。
「まあな!だから一回戦から強ぇーやつと戦うことになるとやべーんだよな!」
ゴゴの言葉に対してレイジはふと思った。
「あれ?そういえばゴゴってバトルマスタータウンの順位って64位だったよな?ってことは、1勝もしていないってことなのか?」
「おお!よく気が付いたな!そうなんだ!!俺は公式戦で勝ったことがないんだ!!」
ゴゴは笑顔で言った。レイジは困った表情を浮かべた。
「そ、それって誇らしく言うもんじゃないだろ...」
レイジに言われてゴゴはガッハッハと笑った。そして姉御がゴゴに聞いた。
「あんたが1勝もできないなんて、この公式戦に出ている選手はそれほどまでにレベルが高いのかい?」
「ん?いや、そうでもないぞ?俺はなぜか運が良くてな。こいつと戦いてぇ!って思ったやつと大体1回戦で当たるんだよな。サライヤンだとかな。そのせいで俺は公式戦で勝ったことがないんだ。まあ、俺が普通に弱いってのもあるとは思うが、大体の相手には勝てると思うぞ?」
ゴゴの話を聞いて姉御は少し困った顔をした。
「それは...なんだか困った話だね。相手の平均レベルでもわかればよかったんだけど。まあ、正直言ってこの選手たちの中にサライヤンほどの脅威を感じる選手はいないね。戦ってないから正確なことは言えないけど、やっぱりサライヤンは上澄みの方だったんだね。」
「まあ、サライヤンは2位だからな!バカみてぇな格好で強く見えねーって言われてるけど、実際つえーからな!あああぁ!!!サライヤン!!!早く戦いてぇなぁ!!!」
ゴゴはサライヤンとの対決を想像して全身がプルプルと震えるほどに興奮していた。それを見た昆布はからかうように言った。
「おいおいゴゴ!サライヤンのことを想像してると、本当に1回戦からサライヤンと戦うことになるぞ?拙者はまあ、それでも助かるけど。」
「おおっと!そうだったな!!まあ1回戦にサライヤンが来るなら一番いいけどな!!その方がお互い傷を負ってない状況での戦闘だからな!!全力で殴り合えるってもんだからな!!」
ゴゴはそう言ってまるで遠足に向かう時の小学生のようにルンルンとはしゃいでいた。それを見たあんこはくすくすと笑った。
「ゴゴ、なんだか子供みたい!そんなにサライヤンと戦うの、わくわくするの?」
「もっちろん!あいつを倒せたとしたらよぉ!!絶対に最っ高の気持ちになれるだろぉ!?そのために一応この3か月ぐらい頑張ってきたんだからよぉ!」
「...まあ、ゴゴは結局波動拳を全く出せなかったんだけどね...」
あんこはグサッと事実を言った。ゴゴはガッハッハと笑った。
「そうだったな!!魂の力を操るとか、マジで意味不明だったぜ!!まあ波動拳の適性がなさ過ぎたおかげで筋トレして筋肉がさらについたから俺としては最高だったけどな!!」
ゴゴは高笑いしながら言った。レイジはほほを指でかきながら言った。
「...まあ、ゴゴに魂の繊細な操作とか多分無理だったろうしな。ただ、それ以上筋肉つけても意味ないと思うけどなー。」
「ガッハッハ!!レイジ、嫉妬は醜いぞ!!」
「いや嫉妬してねーよ。本当にいらねーと思ってんだよ。」
「ガッハッハ!まだまだだな!レイジ!!お前もいつか筋肉の魅力に気付くぞ!」
「いやー、気付かないだろうなー。だって筋肉を育てるよりも魂の力を正確に操れる方が強いからなー。筋肉を育てるのはコスパが悪いよ。」
レイジたちがそんな会話をしていたらついにレイジの番がやってきた。
「さあ!!それでは次の選手!!...おや?これは!!勇者候補の一人!レイジさんではありませんか!?さあさあ皆さん!!我ら人類の希望!!5人の勇者の一人、レイジ選手の登場です!!!」
マイクマンがそう紹介すると会場から歓声が上がった。レイジは少し恥ずかしそうに前に行き、スイッチを押して抽選を開始してもう一度押した。モニターに表示された数字は32だった。
「おおっと!!レイジ選手はAブロックの最後!!32番です!!対戦相手は...ルーカスです!真面目な剣闘士、ルーカスが相手だああああ!!!」
マイクマンがそういうと、会場はワッと盛り上がった。そしてレイジはゴゴに聞いた。
「真面目な剣闘士ルーカス...どんな奴なんだ?」
「さあ?知らないな!多分最近バトルマスタータウンに選手登録されたんじゃないか?」
「そ、そうか。まあ、初戦からサライヤンだとかマスターブラックの孫だとかドナルドだとかブレイブだとかの強い奴と当たらなくてよかったよ。」
レイジは少しだけほっとして試合場のリングから降りた。そして次にゴゴがマイクマンの前に現れるとマイクマンは心底うれしそうな表情をして言った。
「おおっと!!!さあ、皆さん!!!お待ちかねの...『魂無しゴゴ』の登場だあああああああああああ!!!!」
マイクマンがそういうと会場は今日一番の歓声で包まれた。その迫力はゴゴの人気ぶりを表すには十分すぎるほどに会場全体が盛り上がっていた。その盛り上がりにレイジは驚いた。
「うおっ!?ゴゴが出るってだけでこんなに盛り上がるのかよ...どんだけ人気あるんだよ...」
レイジはゴゴの人気ぶりに驚いていた。そしてマイクマンはさらに続けて話し始めた。
「皆さんの中にはゴゴを知らないという方もいらっしゃるでしょう。何しろ彼はここ5年ほどバトルマスタータウンにいなかったのです。その時のバトルマスタータウンの皆さんの悲しがりようときたら...もうこの町全体がどんよりとした空気に包まれたものです...」
マイクマンは悲しそうな感情をたっぷりと乗せて言った。その言葉に会場全体もどんよりとした空気に包まれた。そしてマイクマンはハッと顔を上げて元気よく話し始めた。
「しかし!!その5年の沈黙を破り、今まさに!!!伝説の男が再びこの地に降り立ったあああああああああああああ!!!!」
マイクマンの言葉に会場全体が再び歓喜の声に包まれ、地震が起きているのかと錯覚するほどの地鳴りを起こした。昆布とあんこと姉御は予想以上のゴゴの人気ぶりに驚き、ゴゴに聞いた。
「ゴゴ!お前そんなに人気だったのか!?正直びっくりしたぞ!?」
「ほんとほんと!!ゴゴ、すっごい人気!?」
「ああ。そうだねぇ。あたしもここまで人気だとは思わなかったよ。いったい何がそんなに人気になる要素なんだろうね。」
昆布、あんこ、姉御の発言にゴゴはふっと笑って答えた。
「俺もよくわからん!!!」
ゴゴの発言に昆布はツッコんだ。
「えええええ!!?お前もわかってないのかよ!?」
昆布のツッコミにゴゴはガッハッハと笑った。そしてゴゴは会場の歓声をじっくりと受けてから、大きく息を吸い込み、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
と、会場の歓声に負けないほどの雄たけびを上げた。その雄たけびを受けた観客たちはみな立ち上がってさらに歓声の声量を増して叫んだ。会場全体が一瞬にしてゴゴの旗色に変わった。そしてゴゴは勢いよくスイッチを押してルーレットをスタートし、そして止めた。
「おおっと!!!出ました!!!ゴゴの番号は...1番!!!!な、なんということでしょう...い、いきなりクライマックスの予感がいたします!!!!対戦相手は...伝説の試合を生み出したライバル!!現在バトルマスターランキング2位の男!!!『サライヤン』だあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
サライヤンの名を聞いた瞬間、会場はまるで火山が噴火したかのようなボルテージの爆発を生み出した。そしてゴゴは心底うれしそうにサライヤンの方を見た。サライヤンは腕を組んでフッと笑い、鋭い眼光をゴゴに向けた。お互い、言葉を交わさずして理解した。これは運命なのだと。
そしてレイジは口を大きく開けて驚いた。
「えええええ!!?ほ、本当にゴゴがサライヤンと戦うことになった!!?まじかよ!?こ、これがゴゴの運ってやつなのか!?」
レイジは驚いて口が開いたままになっていた。それは昆布とあんこと姉御も同じだった。そしてゴゴは満足そうにリングから降りて壁で寄りかかっているサライヤンのもとへと向かった。
「...やっぱり、お前と戦うことになったな!サライヤン!!!」
ゴゴの言葉にサライヤンはフッとクールぶって笑ったが、その笑みからは嬉しさがにじみ出ていた。
「...まあな。お望み通り、全力でお前をぶっ殺しに行ってやるぜ?」
サライヤンに言われてゴゴは狂気をはらんだ笑みを浮かべて答えた。
「それは...楽しみすぎるなぁ!!!!」
ゴゴとサライヤンはそう言ってお互いにバチバチとやる気の魂のオーラが体からにじみ出ていた。そしてマイクマンが話し始めた。
「これは...まさに恐ろしい運命力!!!私、早く1回戦が見たい!!!ですのでこの抽選会もパッパと進めていきましょう!!次の選手どうぞ!!!」
マイクマンに呼ばれて口を開けていた昆布はハッとして口を閉じ、前に進んでスイッチを押した。そして番号が表示された。
「さあ、昆布選手の番号は...30番!!!Aブロックの15回戦目です!!!対戦相手は...大食いファイターのブートンです!!!」
「お、大食いファイターでござるか...なんだか、変な2つ名でござるなぁ。しかも30番って、勝ったら兄貴と当たるじゃないでござるか!!?な、なんてことだ...すっごいヤダ!!!」
昆布はそう言って絶望の表情のままリングから降りた。そして次にあんこが出てきてスイッチを押した。
「さあ、なぜ浮いているのか分からないあんこ選手の番号は...64番!!!Bブロックの最後です!!!気になる対戦相手は...うわっ!陰気なシールド戦法で大会を盛り下げまくった男、コッケ選手です!!!」
「コッケ選手?なんか、かわいい名前!」
あんこはニコニコと笑いながら浮いてリングを降りた。そして次に姉御がスイッチを押した。
「さあ!!アネッサ選手の番号は...33番!!対戦相手は...おおっと、これは...気の毒ですねぇ。現在バトルマスタータウンランキング1位の男!!バトルマスター設立者、マスターブラックの孫!!『タイダイ』選手が相手だあああああ!!!」
会場はそのことを聞いて気の毒そうに「おおおぅ」と言った。レイジも眉間にしわを寄せて姉御を心配の目で見た。
「姉御...なんて運の悪い...まさか1位のやつと当たるとはなー。」
姉御はリングを降りながらレイジにそう言われてフッと笑った。
「まあ、あたしはいいさ、勝てなくても。タイダイがどれほどの強さか、あんた達に教えられるなら、まあ、運がいいって思えるからね。」
姉御はそう言ってレイジの隣に立って抽選会が終わるのを待った。そして数十人の抽選が終わった後にドナルドの番になり、マイクマンが話し始めた。
「さあ、お次は...おお!!なんと!勇者候補のひとりであるドナルド選手がやってきました!!!」
ドナルドはリラックスした表情でスイッチを押した。
「さあ、ドナルド選手は...28番です!!!」
ドナルドの番号を聞いてレイジと昆布は二人ともうげっという表情になった。
「28番って...俺たちのどっちかが勝ったら当たるじゃねーか!!うわっ、マジかよ...昆布と当たるのですら運がないって思ってたのに、それに勝ったらドナルドかよ...負けようかな...」
レイジは最後にボソッとそうつぶやいた。しかしその言葉を聞いた姉御の視線を感じてハッとした。
「じょ、冗談だよ!姉御!わかってるって!!真面目にやるって!!」
レイジは怒られると思い必死で謝った。姉御はそれを聞いて「ならいい。」と言った。そしてドナルドがレイジたちの前に現れた。
「よう。レイジ。それとゴゴと昆布。どうやら勝ち進んだらお前たちと当たりそうだな。まあ、正直言ってお前たちとは戦いたくはなかったが、まあ、運がなかったらしい。もし戦うことになったら全力でいくからな。温情なんか期待しないでくれよ?手加減できる相手じゃねーことは俺もわかってるからな。」
ドナルドにそういわれてレイジは困った表情で言った。
「手加減してほしいけどなー。俺より強いんだもん。」
レイジの言葉にドナルドはフッと笑った。
「お前は本当に強さに興味がないんだな。ま、そういう所がレイジらしいって思うし、俺は好きだけどな。」
そう言ってドナルドはレイジの方にポンと手を置いた。
「まあ、お互い頑張ろうぜ?」
そう言ってドナルドはスタスタと歩いていき、ゴゴの前に立った。
「よう、ゴゴ。お前、また筋肉量が増えてないか?この間あった時よりもさらにムッキムキになってるな?」
ドナルドに言われてゴゴは嬉しそうにポーズを決めながら答えた。
「さっすがドナルド!俺の筋肉量がアップしていることに気づくとは!!」
「...なんだか、ファーザーを思い出すな。ファーザーもお前みたいに筋肉バカだったからな...俺も筋トレを始めてみようかな。」
ドナルドの言葉にレイジはボソッと「...ファーザーか...」とつぶやいた。そしてレイジは心の中で思った。
『やっぱりドナルドのやつ、ファーザーの死から立ち直ってないのか?まあ、さすがにそうか。たった一日で尊敬する人もその組織も失くしたんだもんな。引きずっていてもおかしくないか。』
レイジがそう思ったときに、マイクマンが話し始めた。
「さあ!!次なる選手は...おおっと!!!出ました!!!三人目の勇者候補のひとり!!名家キングナイト一族で最も優秀と言われる男!!!ブレイブの登場だあああああ!!!!」
ブレイブはそう紹介されて会場に手を振りながら上がっていき、スイッチを押した。
「さあ、ブレイブ選手の番号は...60番!!!」
「おお!僕は60番か!」
ブレイブは軽い感じでそう言った。そしてあんこが言った。
「60ってことは、あたしが勝ちあがったら3回戦で当たるね!!レイジが負けた相手に当たるって、あたし運ないかも!」
あんこもブレイブと同様に、軽い感じで言った。そして残りの選手も全員番号が出揃ってついに抽選会が終了し、マイクマンが終了の挨拶をした。
「以上を持ちまして、抽選会を終了させていただきます!!この後は!!!さあさあ皆さんお待ちかね!!!ついに!!!バトルマスタータウン公式戦の開幕でございます!!!!」
マイクマンは抽選会の終了と同時に公式戦の開幕を宣言した。それに対して会場は「うおおおおおおおおおおおお!!!」と盛り上がった。そしてマイクマンは話し始めた。
「それではさっそく参りましょう!!!第1回戦の開始です!!!両選手はリングにご登場ください!!!」
マイクマンにそういわれてゴゴとサライヤンはお互いに燃え上がる闘志をまといながらリングに上がってきた。この二人の登場で会場のボルテージは一気に湧き上がった。そしてマイクマンはリングから降りて言った。
「それでは!!これよりバトルマスタータウン公式戦、第1回戦の始まりです!!!シールドの展開をお願いいたします!!!」
マイクマンがそう言うとリングを包むように球体状のシールドが展開された。そしてゴゴとサライヤンは今までうるさすぎるほどの歓声をその身に浴びていたが、シールドが閉まり切った瞬間にその歓声は一瞬にして静寂の、無音の世界へと変貌した。それを感じたゴゴはフッと笑ってサライヤンに言った。
「この感じ...懐かしいな。あれだけ大音量の歓声が、一瞬で二人だけの空間に変わっちまう。そう、これだよ。やっぱりこれなんだよ。この感覚が...最高なんだよ!!!」
ゴゴはそう言ってグッと全身に力を込めた。筋肉が躍るように湧き上がる。そしてファイティングポーズをとってサライヤンに言った。
「さあ!!!本気の勝負だっ!!!!!」
ゴゴに言われてサライヤンもクールを気取りながらも心臓の高鳴りを抑えられず、銀色のアイドル衣装をピチィッと体に叩いてから、『雌水雄鉄拳』の構えをとった。
「もちろんだ。決着をつけるためだけに、俺は亡命を遅らせたんだ。すぐ死にやがったらぶっ殺すぞ!?」
そう言ってゴゴとサライヤンはお互いに右足で地面を蹴り、試合が始まった。