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星の勇者  作者: アシラント
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赤紫色の霧⑤

ゴゴはケダモノのように色兎とエロマに襲い掛かった。2人は後方へと飛んでゴゴの攻撃を避けた。ゴゴの殴りは地面を叩きつけ、まるで地雷が爆発したかのように土をえぐった。色兎は飛び散ってくる土に手で顔を守りながらエロマに話しかけた。


「エロマちゃん!私が前衛を張る!後衛はお願い!」


色兎に言われてエロマは力強くうなずいた。


「うん!任せて!色兎ちゃん!」


エロマはそう言って色兎の後ろへと回り、ゴゴの動きに備えた。ゴゴは湧き上がる力と心に胸を躍らせ、感情のままに体を動かし敵へと向かって行った。


「だああああああああああああああああ!!!!」


ゴゴは目の前の色兎へとその拳を振り抜いた。色兎はかがんでその攻撃を避け、ヒュッとジャンプをしてからゴゴのあごへと膝蹴りを食らわせた。ゴゴは頭が上空の方へと向いてしまったが、それほどダメージは食らっておらず、そのまま色兎を左手で掴もうとした。


「はぁああ!!!」


エロマは色兎が掴まれる直前でゴゴへと向かって飛び出し、低姿勢のまま足を突き出してゴゴの腹へとキックを食らわせた。ゴゴはその衝撃でズザザザッと地面をえぐりながら後方へと弾き飛ばされた。そしてゴゴは思った。


『何ッ!?あのエロマとかいう奴、闘いは苦手じゃなかったか!?普通に良い蹴りじゃねーか...』


ゴゴは腹に痛みを感じながらそう思った。そしてエロマもゴゴの表情から考えていることが読めて答えた。


「うふふ!意外と強くてびっくりしたかしら?ラブミストを最大展開しながらだと運動能力が落ちるの。だからラブミストの展開距離を短くしたの。その上でこのラブミストの罠に(はま)った人たちがエッチをするとその人物から魂の力をもらえるの。つまり、今の私は色兎ちゃんに迫るぐらいの強さがあるのよ。」


エロマは可愛くウィンクをしながら答えた。ゴゴはそれを聞いて納得した。


「ガッハッハ!!なるほどな!!!つまり、俺が不利な状況から圧倒的に不利な状況になったって事か!?ガーッハッハッハッハ!!!最高だああああああああああ!!!」


ゴゴは叫び声と同時に魂の力をさらに解放させ、その魂の力の気迫で色兎とエロマは少し吹き飛ばされた。そして色兎は驚いた。


「な、なんてでたらめな魂の力なの!?扱いきれなくて外に漏れ出てるし!もったいない!!」


色兎はそう言いながらゴゴから目を離さずに体勢を整えた。そしてゴゴはあふれ出る魂の力をさらに放出させながら一直線に色兎へと襲い掛かった。色兎はゴゴの怒涛の連続攻撃を冷静にかわし続け、その間にエロマがゴゴの右脇腹へと蹴りをぶち込んで吹っ飛ばした。


「ぐぅうぅぅ...!?」


ゴゴはクルッと身をひるがえして体勢を整え、地面にひびが入るほどの力強い踏み込みをしてからまた色兎へと一直線に突っ込んで行った。色兎はそのゴゴの無意味な行動に少し呆れてきた。


「また考えも無しに突っ込んできて...肉体は強くても、頭はダメダメだね!」


色兎はそう言って近づいてくるゴゴの姿をじっと見て避ける体勢に入った。そしてゴゴは振りかぶった右手を振り下ろすと同時に、いつの間にか手に持っていたハンマーのキーホルダーに魂の力を流し込んで巨大化させて色兎を攻撃した。色兎はそれを認識すると同時にゴゴのハンマーを左半身でもろに食らい、バキバキと骨が折れる音を立てながら吹き飛ばされていった。


「色兎ちゃん!?」


エロマは吹き飛ばされた色兎の方を見た。色兎はあまりの衝撃で空中で体勢を整えることも出来ずに、地面をえぐりながら遠くへと吹き飛ばされた。そしてゴゴはエロマが一瞬色兎を心配した隙を逃さずに色兎へ向かってハンマーを放り投げた。色兎はそれをジャンプして避けたが、ゴゴは地面に穴ができるほどの威力で踏み出してエロマの頭上へとジャンプしてその右腕を思いっきり色兎へとぶっ放した。

 色兎は言葉を発する暇も無く、一瞬のうちに地面へと叩きつけられ、まるで隕石が衝突したかのように地面がクレーター状にえぐれた。


「はぁ...はぁ...はぁ...ハッハッハ。お、終わり...なのか...?」


ゴゴは口からダラダラと血を垂れ流しながら勝負が終わってしまったのかと思った。しかしエロマはうめき声をあげながらゆったりと立ち上がった。


「はぁ...はぁ...はぁ...フフフッ。ま、まだ、終わってないわよ?」


エロマはゴゴの右腕の攻撃で負傷した左手を押さえながら言った。そしてエロマはフゥーッと息を吐いてからゴゴへと言った。


「...ごめんね。本当はこんな手段取りたくなかったんだけど、あなたが私たちの想像以上に強いから...」


エロマがそう言っている間に空から謎の光が2人の間に割って入った。そしてとてつもない風を巻き起こしながら何者かが登場した。


「いやはや、あなた方がこんな獣一匹に手こずるとは...少し残念ですね。」


それは、真っ白なタキシードに身を包み、真っ白な帽子をかぶり、そしてゴゴの見覚えのある顔が登場した。


「...お、お前...確か、サンシティの近くであった、魔王軍四天王の1人、ウィンドじゃねーか!?」


ゴゴの言葉にウィンドはニヤリと右の口角だけをあげて笑った。


「おやおや!あなたにそんな記憶能力があったとはねぇ。賢い動物ですねぇ!ふっふっふ。いかにも、わたくしはウィンドでございます。彼女たちから救難信号がありましたので、急いで飛んで来た、といったところでしょうかね。」


ウィンドは帽子を手に持って深くお辞儀をしながら言った。ゴゴは思わぬ増援に驚きつつもガッハッハと笑った。


「なんってこった!!俺より強ぇー奴がどんどん集まって来やがる!!?うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!今日が俺の命日だな!!!!」


ゴゴは死を覚悟してテンションが上がった。そしてウィンドに向かって突撃しようとした瞬間に、横から顔をドロップキックされて吹っ飛ばされた。


「ぐっはぁ!?」


ゴゴは吹っ飛ばされた場所でムクッと起き上がり、蹴とばしてきた相手を見た。それは色兎だった。色兎はゴゴのハンマーにやられた左腕を押さえながらウィンドに対して文句を言った。


「ウィンド!なんで来たの!?まだ、私たちはやれるって!」


「いえいえ!わたくしも暇だから来たわけではありませんよ?ただ、魔王様の命令をいまだに遂行できず、あまつさえこんなケダモノにやられかけるような体たらくでは、少々心配でしてねぇ。」


ウィンドは挑発するように言った。色兎はムッとしてウィンドをにらんだ。


「やっぱりヤな奴!エロマちゃん!なんでよりによってこんな奴を呼んだの!?」


色兎に言われてエロマは困った表情をしながら答えた。


「そんなー。私はただ救難信号を送っただけ。誰が来るかなんてわかんないわよー。」


「おやおや?どうやらわたくしは歓迎されていないようですねぇ。せっかく助けに来てあげましたのに、これでは助ける甲斐が無いというものですねぇ。」


ウィンドはわざとらしく悲しむ演技をしながら言った。それに対して色兎は何か言おうとしたが、その前にゴゴが叫んだ。


「おい!!!うるせぇ!!!そんなのどうでもいい!!!ウィンドは何で平気なんだ!?ラブミストの影響を受けてねーのか!?」


「おや?意外とそういう所に気づくタイプでしたか...まあ説明しましょうか。わたくしは風を操る能力がありましてね。それを自身の体の内側から発生させることによってラブミストの空気を吸い込まずにいられるのですよ。...というか、わたくしはあなたの方が不思議に感じますけどねぇ。ラブミストを吸い込んでいるにもかかわらず平気なのは何故でしょうかねぇ?」


「ガッハッハ!秘密だ!」


「フフッ。ひどいですねぇ。わたくしはちゃんと説明しましたのに。まあ、いいでしょう。どうやらわたくしはまだ出番では無かったようですからねぇ。ここで色兎とエロマコンビの闘いを見させていただきましょう。それでもし2人に勝てたら、わたくしがお相手致しますよ?」


ウィンドは手に小さな竜巻を起こしながら言った。ゴゴはガッハッハと笑った。


「それは最高だな!絶対に勝って見せるぜ!!!」


ゴゴはそう言って張り切って力強く踏み込んだ。しかしゴゴの心中は見た目とは裏腹に少し焦っていた。


『やべーな。俺の全力の一撃だったってのに、2人ともまだ闘える状態じゃねーか。それに比べて俺はさすがに体が重く感じてきた...筋肉も限界を迎え始めている...。俺の最強の一撃である力技拳(りきぎけん)の最終奥義をぶつけるしかないな。その隙を作れるだろうか...?』


ゴゴは刻一刻と迫る自身の限界に焦りを感じつつ、わずかに残された勝利への道を探って考えを巡らせ、最終奥義を2人にぶち当てるという答えにたどり着いた。そしてゴゴはフゥーッと息を吐いて落ち着きを取り戻しつつ、拳を握り構えた。その瞬間にゴゴの背後から声が聞こえた。


「おうおう!さすがに3対1は卑怯じゃないか?」


ゴゴは声の聞こえた場所へと振り向いた。するとそこには真っ黒のロングコートに身を包んだドナルドがいた。ゴゴは予想外の登場人物に驚きながらも笑顔で言った。


「ド、ドナルド!?まさかお前が来るとは思っていなかったぞ!?」


ゴゴにそう言われてドナルドはフッと得意げに笑いながら被っていた黒い帽子を放り投げて答えた。


「ちょうどさっきこの街に着いてな。レイジたちを探しに来たら変な色の霧が見えてな。中から戦闘の音がするから入ってみたら、お前がいたって訳だ。...んで、こいつらは誰だ?1人は魔王軍四天王のウィンドだろ?あと他の2人は?」


ドナルドはポケットに手を突っ込んだままゴゴに聞いた。ゴゴはうなずいた。


「ああ、あのウサギの魔族は魔王軍十二支獣の一柱、『色兎』だ。そしてその横の人間がこの霧を発生させている幻獣使いだ。あいつらは手を組んでいる。つまり敵だ!」


「なるほど。人質かと思ったがそうじゃねーのか。なら、殺しても問題無いな?」


そう言ってドナルドはポケットから手を出して姿勢を低くして戦闘態勢に入った。そしてゴゴは少し複雑そうな表情を浮かべた。


「まあ、そうだが、ウィンドが相手にいるからな。そのチャンスがあるかどうか...」


ゴゴの発言に対してウィンドはフッと笑った。


「ええ。そうですねぇ。まさか援軍が来るとは思ってもいませんでしたよ。しかもかなり強敵ですねぇ。私は決着が付くまで見ていようと思っておりましたが、どうやらそういうわけにもいかないようですねぇ。仕方ありません、ドナルドのお相手はわたくしが務めましょう。それでよろしいですね?」


ウィンドはドナルドと色兎とエロマに順々に顔を向けながら言った。色兎とエロマはうなずき、ドナルドはフッと笑った。


「まあいいだろう。お前は今のボロボロのゴゴじゃ分が悪そうだからな。俺が相手してやる。」


「ありがたいですね。ではわたくしたちは場所を移動しましょうか。彼らの邪魔はしたくありませんからね。」


そう言ってウィンドはシュッという音と同時に姿を消した。ゴゴの目にはどこへ行ったのか分からなかったが、ドナルドは見えており、勇者の靴のバーニアを起動して移動しようとし、その時にゴゴに向かって言葉をかけた。


「ゴゴ、かなり厳しい状況だと思うが、死ぬなよ?お前はもう俺たちルドラータファミリーの一員として認めているんだからな。」


「ドナルド...ああ!任せろ!いざとなったらせこい手使ってやるぜ!!」


ゴゴはキラリと光る白い歯を見せ、親指を立てながら笑顔で言った。それを見たドナルドはフッと笑うとゴゴの左手方向へと飛んで行った。そしてゴゴは再度息を吐いて集中力を高めながらゆったりと目を開き、拳を握ってグッと構えた。


「さあ!!!限界を超えたバトルだ!!!行くぞおおおおおおおおおおおお!!!!」


ゴゴは地鳴りのような叫び声を発しながら勢いよく色兎とエロマに向かって行った。色兎とエロマは互いに見合い、力強くうなずいてからグッと拳を握って構えた。

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