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星の勇者  作者: アシラント
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透明人間ユダ

固有名詞紹介


「幻獣」


幻獣とは、17年前より現れた不死の生物。正確には体は消滅するが、魂が肉体から離れて地面へと潜り、数年後に復活するのだ。


幻獣は様々な種類があり、自然を操るものや、肉体を強化するもの、幻を見せるものなど様々存在している。


幻獣たちのほとんどは人間よりも知能が低いが、稀に賢い個体もいる。


人間だけを捕食対象としている。


その幻獣を唯一倒せる方法として、肉体から離れた幻獣の魂を食べて、自身の魂の中に封じ込めることができる。


幻獣の魂を食べたものは幻獣使いとなり、その幻獣の能力を使うことができる。


幻獣が一体どこで生まれ、なぜ人間を捕食するのか、なぜ今になって出て来たのか、それはまだ謎のままである。



レイジとユダは落ちてきた幻獣の元へとやって来た。幻獣は疲れ切っており、その場から動けずにいた。それを取り囲むように姉御たちが一定の間合いを保ちながら睨み合っていた。


「姉御!もう弱ってるからさっさと倒して魂をユダに食わせようぜ。」


「ユダに......?」


姉御は鋭い目でユダを見た。ユダを信じてもいいのだろうか......?という疑いが入った目だ。ユダはその目に対していつもの不気味な笑みを浮かべているだけだった。姉御はフゥッと息を吐き、レイジを信じることにした。


「わかった。じゃあユダに幻獣の能力を与えようか。みんなもそれでいい?」


姉御は大きな声で周りに聞いた。周りは頷いたり肯定の返事をした。


「よし、それじゃあ、トドメを刺すよ!」


姉御が掛け声をすると、全員が身構えた。一番先に動き出したのは姉御だった。姉御は一直線に幻獣へと向かっていった。幻獣は姉御にその長い舌を伸ばして反撃したが、姉御は華麗に避けて幻獣の頭を蹴った。


「今だ!レイジ!あんこ!」


姉御は後ろの2人へと言った。レイジとあんこは息を合わせて幻獣へと波状攻撃を繰り出した。その攻撃は幻獣の両目を失わせた。その連携を見たドナルドは思わず見とれてしまった。


「......なんていい連携だ。少し、うらやましいな。」


ドナルドは誰にも聞こえないぐらい小さな声でつぶやいた。そしてブースターを点火させ、幻獣の横っ腹に強烈なキックをお見舞いした。


「連携!!おれもやりたい!!」


ブレイブは子供のようにはしゃぎながら大きな声で言った。そして剣を天高く掲げ幻獣の後ろから切りつけて尻尾を切り落とした。


「これが、家族の絆......?」


ネネは困惑しながらも幻獣の最後の抵抗である舌での攻撃をそのマントではじき返した。


「ケッケッケ!素晴らしいですねえ!レイジ殿たちの連携も素晴らしいですが、それに即興で合わせられる他の勇者候補の方々もなんと素晴らしいのでしょうか!」


ユダは愉悦に浸りながらその大剣を握りしめ、空高く舞い上がり急降下して幻獣の首を切り落とした。すると幻獣の体はボロボロと音も無く崩れ去り、中からゴゴとその幻獣の魂が出てきた。


「ゴゴ!大丈夫か!?」


「ほおぉ!これが幻獣の魂ですか?」


レイジはゴゴの身を案ずるために、ユダは幻獣の魂を得るために近づいて行った。


「......ん!?レイジか?こんなところで何してんだ?」


ゴゴは気絶とかは全くしておらず、むしろ部屋でくつろいでいるかのように冷静で日常的なテンションだった。


「え......思ったよりも大丈夫そうだな。幻獣の腹の中にいたってのに。」


レイジは肩透かしを受け少し拍子抜けだったが、ゴゴが無事で安心した。


「レイジ殿、では約束通り、私がこの幻獣の魂を頂きますね。」


ユダは幻獣の魂を手にしていた。それは目で見ているのかどうかわからなくなるほどに美しい光で包まれた球体状の形をしており、その中心に真っ白に光り輝くものがあった。


「あ、ああ。もちろんいいけど、本当に食べて大丈夫なのか?」


「ケッケッケ!心配には至りませんよ。食べてみればわかりますから......」


レイジの心配をよそにユダはその魂を一口に食べてしまった。


「......ユダ?大丈夫か?」


「ほう?これは......?」


ユダは自身の体をじっと見た。そして、透明になった!


「!!?ユダの体が消えたぞ!?......でも。」


ユダの体だけは消えたが、彼の身に着けていた服装や装備はそのままだった。


「ふーむ、思っていたよりかは消えていないですねえ。一体理由は何でしょうか?これがもともとの能力という事でしょうか?いやしかし筋肉君が食べられたときはこの私ですら何の気配も感じなかった。ということはこの能力の適正?練度?はたまた......」


ユダは自分の世界に入り切ってしまい、周りの声を受け付けなくなってしまった。が、それを現実世界に戻したのはゴゴだった。


「ユダあああああああああ!!!俺と勝負しろおおおおおおおおお!!!!」


ゴゴは胃液でべたべたになっているにもかかわらず、ユダに殴りかかった。ユダはハッとして大剣でガードした。


「まったくこの筋肉君は、本当に邪魔ばかりしてくれますねえ。」


ユダは不気味な笑みを浮かべてゴゴを弾き飛ばした。ゴゴは空中で体勢を立て直して着地し、再度殴りかかろうとするが、レイジの右手がゴゴの左手をつかんだ。ゴゴは邪魔するなよぉという顔で振り返ったが、そこには怒りの炎を燃やしているレイジがいた。


「おいゴゴ。いい加減にしないと俺がお前を殺すぞ?」


レイジは阿吽像のような顔つきで言った。さすがのゴゴもそれには驚き、握っていた拳を緩めて戦闘態勢を解いた。


「わーかったよ!しょうがねえなあ。」


ゴゴはユダに背を向けてトボトボと姉御とあんこのいる方へと歩き始めた。レイジはそれを見届けてから話した。


「じゃあとりあえず幻獣退治も終わったことだし、サンシティに返って王様に報告でもしようか。」


レイジは全員に聞こえるように大きな声で言った。それを聞いたほかの勇者候補たちはそれに賛同して、帰りの準備を始めた。


「おやぁ?もうお帰りになられるのですかぁ?勇者候補の皆さん。」


突如勇者候補の五人は謎の人物に呼び止められた。五人は振り返りその姿を確認した。身長はとても高くこの中にいるメンバーの中では一番高かった。体系はスラッとしていてなおかつ筋肉がある、まるでボクサーのような体系だった。服装は白のタキシードを着用しており、髪の毛は腰まである長いストレートの白髪をだらんと下げていた。顔は少し縦に細長く、目つきは鋭く吊り上がっていた。


「......誰だ?お前。」


ドナルドは臨戦態勢に入り聞いた。


「おや、名乗り遅れてしまいましたね。私はウィンド。魔王軍四天王の一人です。」


「魔王軍......四天王!?」


レイジはその言葉に驚いた。


「ええ。レイジさんたち4人はファイアとアイスに出会ったと思いますが、彼らも四天王の一人なのですよ。」


「なっ!?ファイアとアイスだと!?」


レイジは驚いた。まさかあの二人がそこまで強い存在だったとは思わなかったからだ。


「ええ。彼らから話は聞いていますよ。なんでも任務は達成されたとか。」


「任務?あの町を破壊する事か?」


「おっと、少し口を滑らしてしまったようですね。失敬。」


ウィンドはフフッと一人笑いをした。ドナルドはいぶかしげに聞いた。


「......で、ウィンドさんよぉ。あんた一体何で俺らに会いに来たんだ?何か理由があるんだろ?」


「おっと、そうでした!私が皆さんにあった理由は単純です。なぜ勇者の装備を使える人が5人もいるのでしょうかねぇ。」


ウィンドは含みのある笑みを浮かべながら言った。ドナルドはそれに食いついた。


「なにぃ?やっぱりこの中に嘘つきが紛れ込んでいるって事か?」


「うーむ、そもそも伝説の勇者はたった一人であったと認識しております。それなのになぜ5人もいるのか、それは皆さん不思議に思うところでしょう。なので、私共魔王軍は独自に調べさせてもらいました。するとあーら不思議!明らかに勇者ではない人がこの5人の中に潜んでいるではありませんか!」


ウィンドはわざとらしくおおおげさにリアクションをしながら言った。


「......勇者じゃないやつ......?それって誰のことだ?」


ドナルドはジッとにらみつけながら聞いた。ウィンドはニヤリと含みのある笑みを浮かべてから口を開いた。


「それは......ネネ。あなたのことですよ。」


ウィンドはネネに目線をやった。ほかの者も一斉にネネへと振り返る。ネネはまるでおびえるようにグッとフードを強くつかみ深くかぶった。


「ネネが......勇者じゃない!?」


ブレイブは心の声が思わず出てしまった。ネネは「違う......!私は......!」とかすかに聞こえる程度の声でボソボソと言った。


「いや待て!相手は魔王軍四天王だ。本当にそんな奴の言うことを信じても大丈夫なのか?俺たちの仲間割れを目論んでいるんじゃないのか?」


レイジはみんなを諭すように冷静に言った。ほかのみんなはレイジの言葉を聞いて落ち着きを取り戻した。


「そうだな!あいつは魔王軍の奴なんだ!そう簡単に信じたりしないぞ!」


ブレイブは頭をぶんぶんと振りながらレイジの意見に賛成した。ウィンドはそんな勇者たちをあざ笑った。


「そうですかそうですか。あくまでも確固たる証拠がないと信じてくれませんか。......なら!その確固たる証拠をお見せ致しましょうか!!」


そう言うとウィンドは右手を強く握りしめた。すると握りこぶしに強いエネルギーが集まってくる。ウィンドはそのエネルギーを勇者たちの目の前に放り投げた。投げられたエネルギーは地面へとぶつかると目を開けていられないほどのものすごい勢いの風を生み出した。そしてその風はネネの守っていたフードを飛ばしてその素顔をさらした。


「......!?!?ネネ殿!??その顔は......!!?」


その顔を見た瞬間、ユダは心臓が凍り付いたかのような感覚に陥った。そこにあったのは青紫の肌に赤紫色の髪、目玉は黒色に赤色の瞳、そして頭には金色の角が2本生えている。その容姿はまさに魔族そのものだった。


「ま......魔族!!?」


ブレイブとドナルドは驚き、同時に武器を取り出し臨戦態勢に入った。レイジも驚きはしたがすぐに冷静さを取り戻した。


「ま、待て!もしかしたら幻術にかかっているのかもしれないぞ!」


レイジのその一言に全員がハッとした。その様子を見てレイジは言葉をつづけた。


「あの時強力な風を受けただろ。あれがもしかしたら幻術のトリガーだったのかもしれないぞ。」


「た......確かに!その可能性の方が高いな。」


ドナルドはレイジの冷静な意見を聞いて警戒を解いた。


「ああ!そういう事か!あぶなかったー!もうすこしで騙されるところだった!」


ブレイブもドナルドと同じく警戒を解いた。しかしユダだけは呼吸が荒く、いつものギョロ目がさらにむき出しになっていた。その目はまさに信じられないものを見たような目だった。


「......ありえない。」


ユダは口をポカーンと開けたまま独り言をつぶやいた。まるで脳内で致命的なバグが起きているかのように止まっていた。


「......ユダ?」


レイジはユダの顔を覗き込んだが、ユダはそれに気づくことなく唖然としたまま動かなかった。


「......まあいい!とりあえず、あのウィンドってやつを何とかしないと!」


そう言うとレイジは勇者の刀ともともと持っていた刀を抜刀して二刀流の構えを取った。







キャラクター紹介


「姉御」


金色の長い髪をオールバックにしている。紫の服をよく着ている。気に入らない奴には口より先に手が出るタイプ。レイジとあんこの親であり姉のような存在。喧嘩はとてつもなく強く、レイジとあんこが手を組んでも全く勝てない程に強い。


姉御が小さい頃から周りの大人たちよりも断然強かったため、幻獣退治の依頼をこなしたり、動植物を自ら捕まえたりして生計を立てていた。


彼女が旅を続けている理由は、幼い頃に両親を殺した男を見つけ出し殺すためと、レイジとあんこに広い世界を見せたいからである。

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