サライヤンvsゴゴ&ネネ④
サライヤンは神のへそくりの『解放』をし、空中に浮いていた。
「ハーーーーッハッハ!!どうだ!?俺様の本気の本気は!!?」
サライヤンはバチバチと鳴り響く緑色のイナズマとともに高らかに笑った。ネネはその圧倒的な存在感に奥歯をかみしめて苦しい表情を浮かべた。
「これ...まずいよね??」
ネネは目の前の出来事が最悪の状態であることを認識し、ゴゴの方を見た。ゴゴはまるで少年のようなまなざしでサライヤンを見ていた。
「うおおおおおおおおお!!!サライヤン!!!お前カッコいいなぁ!!!」
ゴゴはガッハッハと笑いながら興奮した様子で言った。サライヤンは得意げにフフンと鼻を鳴らした。
「まあな。俺様はいつでもカッコよく、美しく、そして強い!!」
サライヤンはそういうと同時に背中のバーニアが起動し、ゴゴたちの方へと勢いよく近づいてきた。
「どわぁ!!?」
ゴゴは間一髪サライヤンの突撃をかわす。サライヤンはくるっと振り返り、バーニアの出力を高めてまるでスケートを滑るように美しい軌道を描きながら再びゴゴへと近づいてきた。ゴゴは近づいてくるタイミングに合わせて右腕を振りかぶり、勢いよく振り抜いた。
「ここだああああああああああああ!!!」
ゴゴは叫びながら全力のパンチを繰り出した。しかしサライヤンはそれを華麗にジャンプをして避けながら、右足で思いっきりゴゴの顔面を蹴り飛ばした。ゴゴは後ろへ倒れて背中で地面をえぐりながら吹っ飛ばされていった。
「...それにしてもタフだなぁー!?お前ぇー!?俺様の攻撃をいったい何十発くらったんだぁ??そんでなんでまだ立ち上がれるんだぁ???俺様がお前だったら立ち上がれないだろうなぁ...」
サライヤンはゴゴの異常すぎるタフネスに驚きと恐怖が入り混じった表情を浮かべて浮遊していた。そしてゴゴは軽々と身をひるがえして起き上がり、ガッハッハと笑った。
「それがお前の弱点だ!!サライヤン!!お前には、『必殺技』が無い!!!」
「うぐぅっ!?」
サライヤンは図星をつかれて少しだけ後ずさった。ゴゴは続けて話した。
「確かに、お前の武術だったり筋肉だったり神のへそくりの扱いだったりはすっげぇと思う。だが!!お前は強いだけだ!!!ロマンが足りてなああああああああい!!!」
ゴゴは両手を斜めにビシィッと上げて叫んだ。サライヤンはまるで殴られたかのように「うわあああああ!!!」と言いながら後ろへと倒れこんだ。
「...確かにな。俺様の『雌水雄炎拳』は様々な状況に対応できる万能の拳法...しかし万能ゆえにお前の『力技拳』のような圧倒的な攻撃力を持っているわけじゃない。...だが、やはり万能というのは素晴らしいものだぞ?」
サライヤンは冷静になって考えて答えた。ゴゴはガッハッハと笑った。
「確かにな!だが、面白くない!!!」
ゴゴはズバッと言い切った。その潔さにサライヤンは高笑いをした。
「ハーーーーッハッハッハ!!!そうだな!!!確かに面白くないな!!!ハーーーーーッハッハッハ!!!」
サライヤンは一通り笑い終わると急に真面目な顔をした。
「まあ、勝つためにはつまらない事も必要だからな。」
そういうとサライヤンはチラッとネネの方を見た。ネネはサライヤンとゴゴが会話をしている最中、ずっと隙をうかがっていたが、サライヤンは全く隙を見せなかったために手が出せなかった。そしてサライヤンはそんなネネとゴゴの2人に対して指をクイクイッとさせて挑発をした。
「かかってこい。2人まとめて倒してやる。」
「いいや!!もう2人追加だ!!」
サライヤンの挑発に乗ったのはゴゴでもネネでもなく、レイジとブレイブだった。レイジとブレイブはお互いにサライヤンの右側と左側を通り抜ける間に、サライヤンに斬りかかった。サライヤンはとっさに両手でその攻撃を受け流した。
「...なんだぁ?今の2人は...?」
「「レイジ!?」」
ゴゴとネネは同時にレイジの名前を呼んだ。レイジはフゥーッと息を吐いて頷いた。
「ああ。助けに来たぞ!ネネ!それと、ついでにゴゴも!」
レイジはジッとネネの方を見ていた。ネネの姿かたちが変わっていることに少々驚いていた。ネネはレイジの目線に気づき、見られたくない姿を見られて恥ずかしさで顔が真っ赤になった。そしてゴゴはガッハッハと笑った。
「俺はついでか!?でも嬉しい!!」
ゴゴはバカみたいな笑顔で笑った。レイジは「あ、あぁ。」とネネの方に気を取られていたために気の抜けた返事をした。サライヤンはゴゴに聞いた。
「なあゴゴ?こいつらはいったい誰だ?」
「ん?レイジとブレイブか?レイジは俺の友達だ。そしてブレイブは強い奴だ。」
ゴゴは自身の思っている印象を正直に言った。その言葉にサライヤンは驚愕した。
「な、なにぃぃぃぃぃ!!?あのゴゴに...友達だとぉぉぉぉぉぉぉ!!??」
サライヤンは今までで一番驚いていた。ゴゴはガッハッハと笑った。
「おい!サライヤン!!これで4対1だぞ?さすがにお前でも厳しいんじゃないのか??」
ゴゴは煽るように言った。サライヤンは「フッフッフ」と不敵に笑った。
「逃げる!」
サライヤンはその一言だけを言うと一瞬にしてネリィの元まで飛んでいき、そのまま担ぎ上げてどこか遠くへと逃げて行った。レイジはそれを追いかけようとしたが、あまりの速さに追いつけないと判断して追うのをやめた。
「サライヤンとか言ったっけか...あの速さ、尋常じゃないな...判断力もあるし、それにネネとゴゴの2人を相手取って無傷だったか?底知れない実力を感じるな...」
レイジは今の一連の動きを見ただけでサライヤンの大体の実力を測っていた。
「姉御の言っていたことは本当だったな。俺たちの誰よりも、あいつは強い。それも、まだ余裕があるようにも見えた。いったい何者なんだ?あいつは?」
レイジは独り言をブツブツとつぶやいていたかと思えば、急にゴゴの方へと振り返って聞いた。ゴゴはレイジの方を向いて答えた。
「ああ、サライヤンはバトルマスタータウンで2位の実力者だぞ?ちなみに俺は、64位。」
「いや、そこは聞いてねーよ...」
レイジはゴゴの全く要らない情報にツッコミを入れた。ゴゴはガッハッハと笑った。そんなゴゴは放っておいて、レイジはネネの心配をした。
「ネネ。大丈夫か?」
ネネはさっきまでの翼の生えた状態ではなく、いつも通りの姿に戻っていた。
「え、ええ。大丈夫よ。その...あ、ありがとう。心配、してくれて...」
ネネは本気の姿を見られた恥ずかしさとお礼を言う恥ずかしさのふたつを感じながら言った。レイジは「あ、ああ。」とぎこちない返事をし、そして少し目を泳がせながら言った。
「それと...さっきの姿。あれ、かっこよかったな。」
レイジは最大限に気を利かせて言葉を慎重に選んで言った。ネネもそれに気づき、フフッと笑った。
「気遣ってくれるの?フフッ。...ありがと。」
ネネは自身の本気の姿を見られて嫌われるのではないかと考えていたが、レイジにはそんな気が無い事に気づき、ホッと胸をなでおろしながら感謝の気持ちを伝えた。レイジは「あ!ああ!!」と自身の気遣いを気づかれた恥ずかしさとお礼を言われた嬉しさに頬を赤らめながら笑顔で答えた。
「え!?もしかして、レイジ君とネネちゃんって、出来てんの!??」
ブレイブは雰囲気をぶち壊す発言を素でしてしまった。レイジとネネはお互いに顔を真っ赤にして、レイジがブレイブに言った。
「そ、それは!...それは...ん、んぅう...」
レイジは何か言い返そうかと思っていたが、反論したくなかったために何も言い返すことができなかった。そしてレイジはネネの方に向き直った。
「なあ、ネネ。そのー...さ。あとでー、話があるんだけど...いいかな?」
レイジは心臓の鼓動がバックバクと高鳴っていくのを感じながらネネに聞いた。ネネもドキッと心臓が跳ね上がるほど驚いたが、小さく「え、ええ。」と答えた。レイジは内心ホッとし、緊張の糸が切れた息をフゥっと吐いて自然と笑みがこぼれた。
「そ、そうか!?じゃあ、とりあえず、姉御たちの所へ戻ろうか?そしてー、あれだ!バトルマスタータウンに戻ったら、言うから。」
レイジは口では平静を装っていたが、手や体からはぎこちなさが表れていた。ゴゴはガッハッハと笑ってレイジとネネとブレイブに話しかけた。
「じゃあさっさと行こうぜ!!話したいことが山々なんだぜ!?」
ゴゴはレイジの肩を組んで歩き出した。ブレイブはゴゴの横を、ネネはレイジの横を歩きながら姉御たちの元へと歩いて行った。