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星の勇者  作者: アシラント
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神のへそくりの威力

固有名詞紹介


「神のへそくり」


神のへそくりとは、20年前に地中深くから発掘されたもの。その素材、原動力、メリット、デメリットなど全くわかっていない。効能もそれぞれの武器によって効果が異なっている。唯一の共通点は幻獣に対して有効な攻撃手段になっているという事だけだ。

あんこはゴゴが自分の技で死なないか心配になったが、まあゴゴなら大丈夫だろうと思い現れた幻獣に攻撃を仕掛けた。ヒシちゃんたちに指示をしてビームを放ち、飛んでいる幻獣の皮膚を焼いた。幻獣は痛さで咆哮を上げてあんこの方へと振り向いた。幻獣は翼を力一杯にはばたかせ、あんこに突撃を仕掛けてきた。あんこは左へと避けた。


「あわわ!思ったよりも速いねぇ!」


あんこは幻獣が自身の想像以上に速い事に驚いた。姿を透明にしていた時にはなるべく音を立てないようにゆっくりとしかはばたいていなかったのだが、それが必要でなくなった今は音を気にせずに殺しにかかっているからだ。


「おーいあんこ!なんとかして奴の飛行能力を無力化できないか?空を飛ばれてたら俺たちも援護できねえからさ!」


レイジはあんこに向かって両手を大きく振りながら叫んだ。


「うーん、どうだろ?わかんない!けどやってみるー!」


あんこは無邪気な笑顔で手を振りながら答えた。その姿はまさに太陽。あまりにも可愛い。そしてあんこはくるっと回り、幻獣の方へと向いた。


「あの子の羽をもぎ取っちゃえば良いのかなぁ?」


あんこはおどけた顔をしながら少し残酷なことを口にした。まるで子供のようだ。そしてあんこが幻獣に襲い掛かろうとした。


「おい、ちょっと待てよ。そいつは俺の獲物だぞ。手出しは無用だって言っただろ?」


ドナルドがマントをなびかせ、ポケットに両手を突っ込みながら言った。ドナルドは幻獣に自身のプライドを傷つけられたことに腹を立てていた。なのであんこに対して少々キツい言葉を吐いてしまった。しかし、あんこはそんなこと気にも留めなかった。


「なになに〜?なんか用〜?」


「そいつは俺一人で十分だって言ってんだよ。」


「空も飛べないくせにー!カッコつけてもカッコよくないぞー!」


あんこは自分の役目を取られそうで頬をぷくーっと膨らませて怒った。その怒り顔もかわいい。


「俺がいつ、空を飛べないと言ったんだ?」


ドナルドはフッと鼻で笑うと、ググッと足に力を溜めて勢いよくジャンプした。そしてジャンプの最中にブーツからジェットブースターを起動させ、空を自由に飛び回った。


「俺の勇者のブーツは飛べるんだよ!」


ドナルドはブースターの勢いそのままに幻獣の腹に渾身の蹴りをいれた。蹴られた場所はジュウウウウっとまるで熱したフライパンを押し当てたような音を立てた。幻獣は口から唾を吐き散らかしながら悶え、苦しそうな咆哮をあげた。


「どうだ!神のへそくりの蹴りは!痛いだろぉ!」


ドナルドはまるでいじめの加害者のような笑みを浮かべながら言った。幻獣はドナルドを睨みつけ、尻尾でドナルドを打ちつけた。ドナルドはそれを腕で防御し、吹き飛ばされながら空中で体制を整えた。


「へっ、テメェの攻撃なんざ、屁でもねぇ!このまま俺が仕留めてやらぁ!」


ドナルドは再び蹴りを入れようと幻獣に突っ込んだ。しかし幻獣は口からとても長い舌を出し、その舌を鞭のようにしならせてドナルドの体を捕まえた。


「なにっ!?ベロだと!?」


ドナルドはそこから抜け出そうと必死にもがいた。幻獣はドナルドをブンブンと振り回し、地面へと勢いよく放り投げた。


「くそっ!」


ドナルドはブースターを吹かすも、落下速度を落とすことが出来ずに地面へと激突した。土煙が勢いよく舞う。ドナルドは地面に体の半分が埋まるほどの勢いで叩きつけられた。


「いってえ。あの野郎、舐めやがって!!」


ドナルドは幻獣を睨みつけ、舌打ちをしながら再度空中へと飛び立った。そんな様子を見てレイジはドナルドに近づいた。


「なあドナルド、そんなに無闇に突っ込んで行ってもまたあの舌で返り討ちにあうだけだぞ。もっと頭を使わないと。」


「あぁ!?なんだと!?この俺に指図する気かぁ?」


ドナルドはレイジの胸ぐらを掴んで睨みつけた。レイジは臆することなく話を続けた。


「俺が援護する。ドナルドはその隙にヤツの翼を狙ってくれ。翼を取れば奴は何も出来ないはずだ。それにお腹の中にはゴゴがいるはずだからな。あんまり蹴って欲しくはない。」


「......チッ!」


ドナルドは舌打ちをしながら乱雑にレイジから手を離した。レイジは気にせずに聞いた。


「それで、俺の作戦に乗る気はあるのか?」


「......ああ、乗ってやるよ。ただし、俺はテメェを信用したわけじゃねぇからな。あの幻獣が予想以上に厄介だから、手を組むだけだからな!」


「よし!それで充分だ!あんこ!いつものやつをやるぞ!準備しておけよー!」


レイジは大声であんこに言った。あんこは「うん!」と元気よく答えた。


「いつものやつ?なんだそれ?」


「俺と姉御とあんこの三人で狩りをするときにやる戦法だよ。まあドナルドは羽をもぐことにだけ集中してくれれば良いんだって!」


レイジはニコニコとしながらドナルドの背中を押して指定の位置までどかした。


「そこで待っててくれ、俺が合図したら一直線に幻獣へと飛んでくれ。」


そう言うと、レイジはあんこと目を合わせ、互いにうなずいた。そしてレイジは心の奥底から燃え上がる魂を感じて、その炎を右手へと宿した。するとレイジの右手は真っ赤に燃え上がる炎となり、その熱はどんどんと温度を上げていった。


「あんこ!今だ!」


レイジのかけ声に反応して、あんこはひしちゃんを幻獣の周りへと飛ばした。そしてひしちゃん達はぐるぐると幻獣の周りを球体状に回り始めた。幻獣は全方位をひしちゃん達に囲まれ、脱出を試みようとするも、ひしちゃんに触れるだけでその肌を焼いてしまい右往左往するしかなかった。


「うおおおおおお!!」


レイジは右手を幻獣へと狙いを定め、その炎を一気に放出した。炎は一直線に幻獣の方へと向かった。炎は幻獣に直撃し、幻獣はその熱さゆえに悲鳴ともとれる咆哮を上げた。そして幻獣は炎から逃れようと移動したが周りをヒシちゃんに囲まれているので移動できずに、翼を前に出して防御して耐えるしか無かった。


「いまだドナルド!奴の羽をもいでやれ!」


レイジは炎を出しながらドナルドに言った。ドナルドはその光景をポカーンと口を開けてみていたが、レイジに言われて我に返った。


「なるほどな。そういう事なんだな。」


ドナルドは納得した表情をしてブースターを点火させた。


「つまり、お前らのやっていることはただの目くらまし。俺が奴の羽をもぐためのな。へへ、しょうがねえなあ!やってやるよ!」


ドナルドは自分が切り札のような扱いをされたことに満足げな表情を浮かべながら勢いよく飛び立った。そして幻獣の背後を取ると一直線に幻獣の羽の付け根をめがけて突っ込んだ。すると幻獣は大きな悲鳴を上げた。それを聞いてレイジとあんこは幻獣への攻撃を止めて黒煙を見た。黒煙の中から翼を両方とももがれた幻獣がもがきながら落ちてくる姿が見え、それと同時に黒煙の中から華麗に飛んでいるドナルドを見た。ドナルドは「どうだ!」と言わんばかりのドヤ顔でレイジの方を見ている。


「最高だぜー!ありがとなー!ドナルドー!」


レイジは大きく手を振りながらドナルドに言った。ドナルドは何も言わずにただ満足な表情を浮かべたままレイジの隣へと降りてきた。


「......レイジ殿、その腕から出ている炎は何ですか?」


いつの間にか近くに立っていたユダに話しかけられ、二人は思わず飛び上がり構えた。しかしユダの姿を確認すると緊張を解いて咳払いをした。


「あ、ああ。ユダ。えっと、俺のこの炎が何なのかって?それはまあ見ればわかると思うけど、幻獣の能力だよ。つまり、俺は火の幻獣使いって訳。」


そういいながらレイジは右手から炎を出した。


「......幻獣使い......ですって?ケッケッケ!それは面白い冗談ですねぇ。我々が幻獣使いになれるわけが...」


ユダは不気味に笑っていたが、急に真面目な顔になり真剣に何かを考えていた。


「...本気でその能力が幻獣のものだと仰っているのですか?」


ユダは今まで見せたことがないほどに真剣な眼差しでレイジに聞いた。レイジは「あ、ああ。」と少し気圧(けお)されながら答えた。するとユダは顎に手を当ててブツブツと独り言を発しながら考えた。


「...なるほど。ならば私ももしかしたら幻獣の能力を手に入れることができるかもしれませんねぇ。」


ユダは相変わらずこちらには一切見向きもしないで独り言をつぶやいていた。そんな様子にドナルドは眉をひそめた。


「おい、さっきからなにをごちゃごちゃ言ってやがる?せっかく俺が奴の羽をもいでやったってのに、このままじゃせっかくのチャンスが台無しになるぜ?さっさと片付けようぜ。」


そういってドナルドは落ちてきた幻獣に向かって飛び立った。それを見てレイジも走り出したが、ユダが呼び止めた。


「何か用か?ユダ?」


ユダは初めは目をそらして言おうか迷っていたが、意を決して口を開いた。


「レイジ殿、私は、あの幻獣を食べようかと思います。それで、もし私がバラバラに吹き飛んだりした場合にはこの大剣をあなたに託したいと思います。」


そういってユダは自身の背負っている大剣をレイジに渡した。レイジは困惑したまま受け取った。


「ちょ、ちょっと待てユダ!あの幻獣を食べるって、なんだ?それにバラバラに吹き飛ぶってどういうことだよ!?」


レイジは体験を握りしめたままユダに聞いた。その言葉にユダも困惑した。


「???レイジ殿は火の幻獣を食べたから幻獣使いになったのではないのですか?」


「えっ?記憶にないぞ?そんなこと。」


「えっ?」


二人は困惑し、互いに顔を合わせたまま沈黙した。


「えーっと、幻獣は死なないということはご存じですか?」


「いや、知らないな、死なないのか!?あいつ!?」


「ええ、たとえその体を切り刻んで生命活動を停止させても魂が抜け出して地中に潜ってしまうんです。そして2~3年で元通り復活してしまうんです。」


「なるほど。じゃあどうすればいいんだ?」


「そこで、先ほど申し上げた通り、その幻獣の魂を食べるんです。そうすると幻獣の魂は食べた者の魂と融合し、食べた者の魂の方が強ければ、その能力を自在に操ることができるのです。」


「へー、そうなんだ。」


「ですが、もし食べた者の魂が負けていた場合、その者の姿が幻獣になってしまったり、爆発して幻獣の魂だけが地中に潜ってしまうのです。」


「な、なるほど。要するに運ゲーって事か。」


「まあ、そうなりますなぁ。」


「でもよ、ユダ。お前ならやれるって!」


レイジは屈託のない笑顔で言った。ユダは驚いてレイジの顔を見た。


「まあ、さっきの戦いを少しだけ見ただけだけど、それでも俺はお前が強いって事ぐらいは分かったぜ!ゴゴも戦いたい欲が抑えられないほどだったしな。」


「ゴゴ、あの迷惑な筋肉さんですか。」


ユダは複雑そうな表情を浮かべながら笑った。


「まあとにかく!幻獣をあと一歩まで追い詰めたんだ。援護しに行こうぜ!」


レイジはユダの手を引き、幻獣の方へと走り出した。ユダは突然のことに驚きながらも笑って走り出した。







キャラクター紹介


主人公


この物語の主人公レイジは、産まれてすぐに街を滅ぼされており、姉御が立ち寄った際に唯一生き残っていたのが赤ん坊のレイジだけだった。そして姉御はレイジを拾い、今日まで育ててきた。


レイジは火の幻獣を宿しており、体から炎を生み出すことができる。そんな幻獣使いの彼が神のへそくりである勇者の刀を手にしてもなんともないのは何故だろうか...?

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