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星の勇者  作者: アシラント
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ゲンブvs姉御&あんこ&昆布②

あんこの能力で魂の力を引き出された姉御と昆布はゲンブに向かって攻勢を仕掛けた。


「うぅん?動きがぁ格段にぃ速くなってるぅ?」


ゲンブは姉御と昆布の姿を木々の隙間から一瞬映る走っている姿を見て一瞬で違いに気づいた。そして今までの、のほほんとした緊張感のない顔つきではなく、目を凝らして警戒をし始めた。その小さな変化に姉御は気づいた。


『ゲンブの奴、気づいたみたいだね。でも、警戒されたとしても短期決戦しか勝機は無いね。仮に奴がまだ見せていない能力を持っていたとしても突っ込むしかないね!!』


姉御は覚悟を決めて昆布に散会の合図を手で送った。昆布はうなずいて姉御とは別の方向に走ってゲンブを挟み撃ちする位置まで来た。


『昆布はあたしの予想以上の力を蓄えていたね。戦闘経験はまだ浅いようだけど、理解がないわけじゃない。...ただ、昆布はあまり自主性が無いように感じるね。この場面、本来なら昆布の動きにあたしが合わせる方がいいんだろうけど、きっと昆布は援護に回りたがるはず。...だから!』


姉御は腰を深く落とし膝を曲げ、グググッと力を溜めてからゲンブに向かって一直線に飛びかかった。


『あたしが特攻する!そうすれば昆布は必ず合わせに来る!あの子の性格ならきっとそうする!』


姉御は昆布の性格を信じてゲンブに襲い掛かった。ゲンブは襲い来る姉御を水の竜巻で返り討ちにしようとした。しかしその水は昆布の放った『ホワイト』の矢ではじけ飛んで消えた。姉御は『やっぱり援護に徹するんだねぇ!』と心の中で思った。


「へっへっへ!姉御!援護は任せるでござるよ!!」


昆布は得意げな顔をして言った。姉御は予想的中の嬉しさの反面、昆布の主体性の無さに少しがっかりした。


『あたしよりも強い力が一時的にあるはずなのに、それでも援護に徹しようとするのね...なにか理由がありそうな気がするわね...まあ、昆布の事情は聞いたことがないから分からないけど、今はゲンブを倒せればそれでいいわ!!』


姉御は昆布に対する疑問を一旦頭の(すみ)に追いやって魂の力を最大限に込めた薙刀の一撃をゲンブの首の上側をめがけて振り抜いた。その一撃をゲンブは避けようとしたが動きがノロいため避けきれずにくらってしまった。


「ぐぅぅ...いたい...」


ゲンブは首の上側から血を噴き出した。しかしその傷は浅かったために、大したダメージにはなっていなかった。それでも姉御は確実に理解した。


『昆布の言う通り、頭よりも首の方が柔らかい?それともあんこの能力で魂の力を引き出したおかげ?どっちにしろ、これなら勝ち目がある!』


姉御は勝機を見出し、昆布とあんこに向かって叫んだ。


「全員!!あたしの援護をしろ!!ここで決めきる!!!」


姉御はそう言って足に魂の力を10%ほど集めて空中を蹴った。するとまるで地面を蹴り上げたかのように空中で方向転換をしてさらにスピードが増した。それを見た昆布は驚愕した。


「ま、まさか!あの技は空蹴(くうしゅう)!?会得した人間を見るのは初めてでござるよ!?」


昆布は驚きながらもきちんとゲンブの周りから立ち上がる水の竜巻を撃ち落していた。そして無意識に撃ち落しながらも頭の中では姉御の動きを目を凝らして観察していた。


『空中を蹴って移動する姿から、ヒノマルの国ではそう呼ばれている技。拙者も文献でしか見たこと無かったからまさかとは思ったでござるが...確か文献では魂の力に理解があるものが、自身の体の一部に魂の力を集中させることでたとえ空中にいても自在に動けるって書いてあったでござる...拙者には全く理解できなかったでござるが...』


昆布は姉御の動きを見て気づいた。姉御は空気を蹴っているのではなく、自身の魂の力を蹴っているのだと。


『つまり、空蹴は自身の魂をその場に固定させ、無理やり足場を作る荒業(あらわざ)って事でござるか...ゆえに姉御が蹴った場所にはかすかに魂の力の残留があって、数秒後には霧みたいに消えているでござるな...。習得するにはいったいどれだけの魂の力への理解と修練が必要な事か...拙者には自分が出来るイメージすら湧かないでござるよ...』


昆布は改めて姉御の凄さを実感した。そしてあることに気づいた。


『でも、確かにすごいテクニックでござるがゲンブを倒すことにはあまり繋がらない気もするでござるね。...!だからあの時、拙者が援護したら悲しそうな笑みを浮かべたでござるか!?だから魂の力だけで言えば姉御を上回った拙者がゲンブの首を狙うべきだって、姉御はそう思っていたって事でござるか?』


昆布は姉御の気持ちに気づいた。そして面倒くさそうに、そして嬉しそうにフッと笑った。


「まったく、それならそうと言ってくれてもいいでござるのに。...まあ、姉御の性格上人の意思を捻じ曲げることは嫌ってそうでござるしなぁ。兄貴とあんこの育ち方を見ればなんとなくわかるでござるねぇ。...ま、それじゃあ、行きますか!」


昆布はそう言って武器の『ホワイト』を弓矢形態から蛇腹剣の形態に変化させてゲンブの首元めがけて飛び出した。


「姉御!!選手交代でござる!拙者がゲンブの首を狙う!!姉御とあんこで拙者の援護をして欲しいでござるよ!!」


昆布はそう言ってグルグルと回転しながらホワイトを伸ばしてゲンブの首の上側を斬り抜けた。ゲンブの首はさっきの姉御の時以上に深い傷を負って血を噴き出した。


「ぐうぅ!この一撃は...まずいかもねぇ。」


ゲンブは昆布の一撃を喰らって一瞬で理解した。


『この顔が老けてる男の方が、僕にとっては厄介だねぇ。これは...ちょっと本気出した方がいいかもねぇ...』


ゲンブは姉御の一撃を喰らった時以上に真剣な顔つきになって昆布の方を見た。昆布は対岸の森に着地して再度ゲンブの首元めがけて飛び出した。ゲンブは一直線にやってくる昆布の目の前に水の竜巻を置いて迎撃しようとした。しかしそれは姉御の薙刀で打ち消され、さらにあんこの上からの奇襲でゲンブの右目はつぶされた。


「うぅぅぅがぁ!!...見てなかったぁ...!」


ゲンブは昆布に気を取られてあんこの存在を忘れていたことを悔やんだ。そしてあんこが右目をつぶした隙に昆布が渾身の一撃を首に放った。確実に刃が入り断頭したかに思えた。しかし、昆布の刃は途中で止まった。


「...斬れない...?」


昆布は身の危険を感じてすぐに刃を引いて対岸に着地した。そしてその違和感について考えた。


『なんだ?今の違和感?刃は確実に入っていた。振り抜く力も完璧だったはずでござる...なんで斬り落とせなかったんでござるか?』


昆布の疑問はすぐに解消することになった。自身の右手にある『ホワイト』がびしょ濡れな事に気づいたからである。


「...水?そうか!あいつ拙者の刃が入る直前に自身の首を水でガードしたんでござるか!?だから拙者の攻撃の威力を抑えて、首を跳ね飛ばせなかったんでござるか...!?なん...って厄介な!!これじゃ拙者の力でも致命傷は与えられないでござるよ!?」


「いや!十分だ!あんこ!昆布!三人で同じ場所を一度に攻撃する!!これが最後の攻撃!!魂の力を全て出し切りな!!!」


姉御はそう言って高く飛び上がった。昆布とあんこもそれに続いて高く飛び上がった。そして姉御は空中に魂の力で足場を作り、あんこと昆布に作戦を話した。


「いいかい、ここから一気に下に向かって突撃し、あたしと昆布でゲンブの首を両側から叩き斬る!あんこは今まさに迫りくる水を最大火力で押し返し、ゲンブの首を攻撃する!いいね!?」


姉御は手短に話した。あんこと昆布はうなずいた。


「よし...行くよ!!」


姉御はそう言って空中の足場を勢いよく蹴り飛ばしてゲンブの首の右側を狙って一直線に向かった。昆布も首の左側を狙って向かった。そしてあんこはヒシちゃんたちを丸の形に配置した。


「スタンディング...オベーション!!!」


あんこは必殺の特大レーザーを放ってゲンブの迫りくる水を押し返し、そのままゲンブの首に当て続けた。


「ぐぉおお!!!こ、この力はぁぁ!!!」


ゲンブは必死でもだえている隙に姉御と昆布はお互いに全ての魂の力を乗せた最後の一撃をゲンブの両側にぶち込んだ。


「「はああああああああああああああああ!!!!!」」


2人はゲンブの首を切断する勢いで振り下ろした。


「ググゥッ!!?グウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


ゲンブは今までに聞いたことのない本気の声を出しながら耐えていた。そしてゲンブは自身の下にある水を大爆発させて姉御と昆布を弾き飛ばした。


「くっ!」


「ぐわぁ!?」


姉御と昆布は2人とも岸に打ち上げられた。そしてあんこは力を使い果たし、そのままフラフラと落ちていった。


「ま、まさか、届かなかったの!?」


姉御は息も絶え絶えな状態でフラフラと起き上がり、ゲンブの方を見た。ゲンブの両側から血が噴き出ているが、それでも首をはね落とせなかった。


「はは...ふふふ...はぁーっ!はぁー!はぁー!はぁー!はぁー!!あ、危なかったけどぉ、ギリギリ間に合ったよぉ。僕の水爆弾。」


「み、水爆弾?」


昆布は上体だけを起き上がらせて聞いた。ゲンブは得意げに言った。


「そうだよぉ。水を操って、一点に集中させるてから解放することによってぇ、はじけ飛ぶ爆弾みたいなものだよぉ。...実は、この湖の水面がだんだんと下がってたって事、知ってたぁ?それはねぇ、僕がこの水爆弾を作ってたからなんだよぉ!」


ゲンブは純粋に、そして勝ち誇るように笑った。そして上から落ちてくるあんこに向けて口を開いた。


「じゃあ!この一族の末裔の女の子を頂こうかなぁ!これで僕は、最強になれるかもねぇ!」


「あんこ!!!」


姉御は力の入らない足に無理やり力を込めて助けようとしたが、もはや立ち上がっているだけでギリギリだった。そのため手を伸ばすことしかできなかった。


『まずいでござる!!!』


昆布も姉御と同様に手を伸ばすしかできなかった。このまま見ていることしかできないと、姉御と昆布が思っていた次の瞬間、空に輝く炎が見えた。


「「...!?」」


姉御と昆布はそれを見上げた。そこにはものすごい勢いで落ちてくるレイジとブレイブの姿があった。


「ブレイブ!!斬り落とす!!!いいな!!?」


「もちろん!!!それが一番の救出だもんね!!!レイジくん!!!」


2人は姉御と昆布がやった時と同じようにゲンブの右側と左側の首をめがけて落ちてきた。


「...え!?」


ゲンブがそのことに気づいた瞬間にはもう遅く、ゲンブの首がレイジとブレイブの攻撃によって跳ね飛ばされた後であった。

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