ゲンブvs姉御&あんこ&昆布
姉御、あんこ、昆布は湖で緊張感なく泳ぐゲンブと戦いを続けていた。
「くっ、あの水...厄介だね。」
姉御はゲンブの操る竜巻状の水に追われながら木々を飛び移って逃げていた。あんこは空中に逃げながら姉御に言った。
「姉御ちゃん!全然近づけないよ!どうしよう!?」
あんこは迫りくる水の竜巻を切断のヒシちゃんを使って切りさばいていた。姉御は逃げながらチラッと空中にいるあんこを見て言った。
「このままじゃ分が悪い!一旦集合!!」
姉御はそう叫んで逃げるのをやめて迫りくる水を薙刀で斬り、あんこと昆布の集合を待った。
「作戦会議でござるか!?姉御!」
集合の合図を出してからすぐに昆布は姉御の元へとやってきた。その速さに姉御も内心驚いた。
『...はやっ。なんでこんな速いの...?』
姉御はそう思ったがそれを聞くほどの余裕がなく、迫りくる水の相手で精一杯だった。そしてそう思っていると同時にあんこも水に追われながらやってきた。
「来たよーー!!」
あんこは姉御に十分近づくと同時にクルッと反転して追ってきた水を爆発のヒシちゃんで吹き飛ばした。姉御は薙刀を思いっきり横に薙ぎ払って数十メートル先の水まで斬った。
「よし、じゃあ作戦を言うよ。まず、この水の性質がなんとなくわかった。まず、この水はゲンブが操っている。だけど、無制限って訳じゃない。おそらくゲンブと体が接している水しか操れないんだと思う。つまり、横に斬るんじゃなくて...」
そういうと姉御は自身に迫ってくる水をジャンプで避けた後、ゲンブのいる湖から伸び出た水の竜巻の根元を狙って薙刀を振り、刃の部分から斬撃を飛ばして輪切りにした。
「こういう風に輪切りにするとその先にある水は操れなくてただの水になるって事さね。」
姉御がそういうとさっきまで姉御を追いかけていた水は力を無くし、バッシャーンと地面に落ちた。そして昆布は姉御の技を見て驚愕した。
「ええええええ!!?斬撃を飛ばしたぁ!?...姉御、そんな技も出来たでござるかぁ!?」
昆布は驚きと尊敬のまなざしを姉御に向けた。姉御は少し照れくさそうに笑うと華麗に地面に着地して言った。
「まあね。最近は使う機会が無かったから出来るかどうか心配だったけど、全然衰えてなかったね。安心したよ。...まあそれよりも、重要なのは水の竜巻の対処法が分かった事さね。」
「じゃあ!もう勝てるってことぉ!?」
あんこはウキウキしながら聞いた。姉御はフフッと笑ってあんこの頭をくしゃくしゃと撫でながら言った。
「残念だけど、それは違う。水の対処は分かった。でも肝心なのはゲンブのあの硬さの方さ。甲羅はもちろん、弱点だと思っていた頭でさえ、あたしらの全力でも傷をつけるのがやっとだった...」
「うん...あれはすっごく硬かった!」
あんこはうなずきながら言った。姉御もうなずいて話を続けた。
「だから、それを突破するには3人の力を一点に集中する必要がある。」
姉御の意見に昆布は首をかしげた。
「いやー、拙者たちの力を合わせた程度で突破できるものでござるか?あの硬さは拙者のホワイトじゃ文字通り歯が立たないでござるし、無理ではござらぬか?」
昆布の疑問に対して姉御はフッと笑った。
「まあ、普通はそうだね。でも、あんこに魂の力を解放させる。それで十分。」
「あんこに魂の力を解放させる?...それで、十分?なんででござるか?」
昆布は姉御の言っていることが分からず、聞き返した。姉御は得意げに話した。
「あんこはね、普段は魂の力を解放させないように言ってるんだ。なぜなら、あんこが魂の力を解放させると、敵味方関係なく魂の力を与えてしまうからね。」
「それー、大丈夫なのでござるか?」
昆布は不安げな表情を浮かべて聞いた。姉御はフフッと笑った。
「まあ、上手くいく保証はないね。でもそれしか方法が無いんだ。それに、あんこの力はより親しい相手に力を与えるからね。それに賭けてみるしかないね。」
「...そうでござるねぇ。まあ、やれるだけやってみるでござるかぁ...」
昆布はあんこの能力を信じていなかったため諦め気味な覚悟を決めた。そして姉御はあんこに顔を向けて言った。
「あんこ。やるよ?」
「うん!わかった!」
あんこは笑顔で頷いてから意識を集中させた。すると周りの木々たちがまるであんこに惹かれるかのようにどよめきだし、風があんこの周りを回り始め、そして大地に生命力がみなぎり始めた。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ...はぁ!!」
あんこはその瞳を開眼させると、身にまとっている衣装は全て脱げ、代わりにこの世のものとは思えないほど美しい純白の羽衣をまとい、白く透き通る蝶のような羽が生えた。それを初めて見た昆布は言葉にならない感動を覚えた。
「あ...ああぁ...うおぉ...おぉん?」
昆布の心の中では驚きと困惑と美しいと思う気持ちがグルグルと駆け回っていた。そして昆布は困惑している間にだんだんと自身の細胞が活性化されてきていることに気づいた。
「こ、これは!?拙者の体の細胞が!?お祭り状態!!?」
昆布は全身にパワーがみなぎってくるのを感じた。そしてあんこは姉御の方に向いて聞いた。
「姉御ちゃん!いくよ?」
「ああ。頼むよ。」
姉御はうなずいて言った。あんこは姉御の背中に手を乗せた。そしてあんこは集中してから「はっ!」と言って力を込めた。すると姉御の体は爆発するかのように膨れ上がった。
「おおおおおおおおお!!!」
姉御は思わず声をあげていた。その様子を見た昆布は恐怖と不安を感じた。
「ほ、ほんとに大丈夫でござるかぁ!?...でも、確かにパワーが上がっているでござるなぁ!?」
昆布は姉御の魂の力が膨れ上がるのを感じた。そして姉御ははじけそうな体がだんだんと収まっていくとあんこの魂の力が体の周りをまとっていた。
「これは、驚いたね。予想以上にパワーアップしたよ。」
姉御は以前にあんこが魂の力を解放したときよりも格段に魂の力をもらっていることに気づいた。そしてあんこは姉御に褒められて「えへへ!」と透き通るような笑みを浮かべた。そしてあんこは昆布の方へと向いた。
「じゃあ次は昆布の番ね!」
「ええぇ...拙者もやっぱりやるんでござるかぁ?援護だけするんじゃダメでござるかぁ?」
昆布は消極的だった。あんこはそんな昆布の言葉を無視して昆布の胸に手を当てて力を送り込んだ。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ...はぁっ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!か、体があああああああああああ!!」
昆布はあんこに魂の力を送り込まれた瞬間、体の内側から爆弾が爆発したかのように膨れ上がり、それと同時に自身の体にとてつもないエネルギーが満ち溢れていくのを感じた。それは姉御の時以上にパワーアップしていた。
「これはあああああああああ!!!いかんでござるなぁああああああああああ!!!」
昆布は湧き上がるエネルギーを抑え込もうと必死だった。そうしなければ自身の体が暴走してしまいそうだった。そして昆布は冷静さを取り戻してあんこの魂の力を少しづつ自身の体に取り込んでいった。そしてあることに気づいた。
『あれ?拙者が思っていたよりも、あんこの魂の力って少なくね?』
昆布は姉御の様子を見て増大した魂の力はあんこのモノだと思っていたが、実感してみて違うことに気づいた。あんこの魂の力が膨大なのではなく、あんこの魂の力によって自身の魂の力が増大していたのだと気づいた。
「でも...どうして?拙者の中にはこれだけの魂の力が眠ってたって事でござるか?それをあんこの魂の力が目覚めさせたって事でござるか?」
昆布は自問自答して考えていた。そしてそれを聞いていた姉御は昆布に言った。
「昆布、あんたも気づいたみたいだね。そう。あんこの能力は相手の眠っている魂の力を引き出し、増幅させることさ。もちろん、一時的にだけどね。魂の力を自力でここまで引き出すには、やっぱり地道に自分を理解することが大切みたいだね。」
姉御は少し困った表情を浮かべながら笑って答えた。昆布は少し自嘲気味に笑った。
「つまり、姉御よりも拙者の方がパワーアップしたのはそれだけ拙者が自分自身を理解できていないって事でござるかぁ...こりゃ努力するしかないでござるねぇ。」
昆布はヘラヘラと笑いながら言った。そして姉御は昆布の肩をポンと叩いた。
「まあ、そうだね。それよりも、このパワーアップは一時的なものだから、早いとこ決着つけに行くよ!」
姉御はそう言って自身の魂の力を全開放し、金色の猫のオーラが背中から出てきた。それを見た昆布は心底驚いた。
「その姿は何でござるか!?カッコいいでござるよ!!拙者もやりたいでござる!!」
昆布ははしゃいだ。姉御はチラッと昆布の方を見てから言った。
「話はあとで!ほら!集中しなさい!」
姉御は褒められて嬉しいのか、声色が少し高くなった状態で昆布に言った。昆布も優しさを感じる叱られ方をされて嬉しそうに笑った。
「へへへ!了解でござる!姉御、作戦...とまではいかないでござるが、ひとつ提案でござる。ゲンブの首を狙ってみないでござるか?拙者の感では、頭よりも首の方がもろい気がするんでござるよ。」
昆布は真剣な眼差しで言った。姉御も昆布の真剣さを感じ取ってうなずいた。
「確かにね。でもゲンブが大人しく首を狙わせてくれるとは思えない。そこら辺の作戦はあるの?」
姉御は聞いた。すると昆布は自信満々な表情を浮かべて「へっへっへー!」と言い、
「何にもないでござる!アドリブで頑張るでござるよ!!」
と言った。姉御はフフッと笑って、
「そうね。じゃあ昆布のアドリブ力に期待してみようかしらね。」
と、言った。