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星の勇者  作者: アシラント
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ネネvsネリィ

ゴゴがサライヤンと闘っている途中、ネネは犬の擬人化した姿のような魔族のネリィと闘っていた。


『...まずいわね。相手の情報がないわ。一応スピードが自慢だって言っていたけど、それ以外が全くわからないわ。...どう立ち回ったものかしら。』


ネネはネリィとにらみ合いながら相手の出方をうかがっていた。しかしネリィはネネの緊張した様子とは真逆に、どこかほんわかとした雰囲気で聞いてきた。


「ねぇ!あなたも、魔族なんでしょ?どうして勇者なの?」


ネリィは曇りのない眼で聞いてきた。ネネはその瞳を見てあんこと同じ純粋さを感じて迷いながらも素直に話した。


「...私は魔族じゃないわ。姿かたちは魔族だけど、両親は立派な人間だったの。...だから、私もよくわからないのよ。」


ネネは警戒しながらも答えた。ネリィは「ふぅん...」と口をすぼめて人差し指を顎に当てながら考えた。


「じゃあ人間なの?」


「人間...の、はずだけど...」


ネネの回答にネリィは再び「ふぅん...」と、同じ反応をした。


「でも、その姿は竜族(りゅうぞく)にそっくりだよ?」


「竜族?」


ネネは聞きなれない言葉に興味を示した。ネリィはうなずいた。


「そう!竜族!あたしら魔族の中でもすっごく強い種族の人たちなの!その角とか肌の色とかでてっきり竜族の魔族だと思ってたんだけど、違うの?」


「...わからないわ。私は、自分の姿に関しては何もわからないもの。」


「そうなんだー。でも、その姿は絶対竜族だと思うよ?あたしが魔族大陸にいたときにも竜族の人と会ったことあるけど、みんなあなたみたいな姿だったよ?」


「そう...」


ネネはネリィの言葉が嘘を言っているようには聞こえず、一応頭の片隅に置いておくことにした。そしてネネはネリィに聞いた。


「そういえば、あなたはどうしてあの胸毛のキモい男と一緒にいるの?奴隷として買われたの?」


ネネは悪意無いひどい発言をしながらネリィに聞いた。ネリィは「胸毛のキモい男って...」と苦笑いしながら考えて答えた。


「そうだねぇ。奴隷として買われたけど、すっごく恩があるからかなー。」


「恩がある?」


ネネが聞くとネリィはとても嬉しそうにうなずいた。


「うん!サライヤンはね、見た目と行動と発言はキモいけど、でも優しいんだよ!」


『見た目と行動と発言って...ほとんどダメじゃない...』


ネネは心の中でそう思いながらも再びネリィに質問をした。


「優しいって、どういうこと?」


ネネの質問にネリィはとても苦い表情を浮かべて悩んだ後、重たい口を開いて話し始めた。


「うーん。あんまり話したくない事なんだけどね...実はあたしは、サライヤンに拾われる前は男たちの(なぐさ)み者として売られてたの。」


ネリィの告白に、ネネはどう反応していいのかわからず黙って聞いていた。ネリィはただうつむいたまま話を続けた。


「本当に辛い時期だったね。魔族と人間の間じゃ子供ができないから、そういうのにちょうどいいんだって。まあ、魔族とそんなことしたいって思う人って、お金持ちで人間相手じゃ満足できない人が沢山なんだって。サライヤンが言ってたよ。」


「...そう。」


ネネはただ相槌を打つことしかできなかった。ネリィはパッと顔の表情を明るくしてネネの方を見た。


「でもね!そんなときにサライヤンがすっごい大金を出してあたしのことを買ったの!それで『お前はもう自由の身だ。好きに生きろ。』って言って、あたしが『行くところも無いから一緒に行きたい』って言ったら『...好きにしろ。』って言ったの。だからあたしはサライヤンに付いて行ってるの!」


ネリィは幸せそうに言った。ネネはその顔を見て不思議に思った。


「なんでそんなに幸せそうなの?...家族のもとに帰りたいと思わないの?」


ネネの質問にネリィは眉間にしわを寄せて考えた。


「もちろん帰りたい気持ちもあるけど...でも、いいんだ!」


「いいって...なにが?」


ネネは首をかしげた。ネリィは後ろで手を組んで少し上体をかがませて満面の笑みで答えた。


「サライヤンが居てくれるから!」


ネリィのその笑顔は、全幅(ぜんぷく)の信頼を寄せている表情だった。それを見てネネはネリィがどれほどサライヤンを信頼しているかを理解した。


「...そう。あなたにとって、サライヤンは大切な人なのね...」


「うん!とっても大切!なんていうか...もう一人の家族って感じ!」


「...そう。家族...なのね。」


ネネは噛みしめるように言った。ネネにとってもレイジたちは大切な家族であると認識しているからネリィの気持ちが理解できた。そしてネネは一つの疑問が湧いてきた。


「...なら、なんで私をさらおうとするの?」


ネネの質問にネリィは心苦しそうに口を開いた。


「...それは...ごめんなさい。本当に悪いと思ってる。でも、お金が必要なの!サライヤンの病気を治すにはそれしか方法が無いの!」


「...え?」


ネネは驚いた。そしてネリィはネネの方をチラチラと申し訳なさそうに見ながら言った。


「あたしも、人さらいなんて絶対やらないでほしかったけど、でもそれしか無いの!サライヤンは病気で、人さらいでしか手術代が稼げないから!」


ネリィは吐き捨てるように言った。ネネは驚き、そして納得した。


「そう...それなら仕方ないわね...」


「あいつが病気ぃ!?...それ絶対嘘だぞ?」


ネネとネリィの会話に割って入ったのはサライヤンと戦闘中のゴゴだった。ネネは驚きながら眉間にしわを寄せて聞いた。


「...え?どういうこと?」


「どういう事って...あいつ絶対健康だぞ?拳を(まじ)えたから分かる。あれは健康の拳だ。」


ゴゴはよくわからない理論で自身をもって否定していた。ネネは全く理解できず「はぁ...」としか返事できなかった。


「おいおいおいおい!変な事吹き込むんじゃーない!俺は健康じゃーなーい!」


遠くからゴゴに向かって勢いよく飛んできたのはサライヤンだった。サライヤンはその勢いのままドロップキックを繰り出した。ゴゴはそれを足を踏ん張り、腰を落として両手を前に突き出し、サライヤンの攻撃を受け止めようとした。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


ゴゴはケダモノのような咆哮をあげて血管が浮き出る程筋肉に力を入れ、地面をえぐるほど踏ん張りながら受け止めた。サライヤンはゴゴの成長にフッと満足そうに笑い、体を回転させてゴゴの手を振りほどいてから回し蹴りをゴゴの顔の側面にぶち当てた。


「グハァ!」


ゴゴは顔面を地面にたたきつけられた。そしてサライヤンはゴゴの顔面を思いっきり蹴って、遠くへ飛ばしてネネとネリィたちから遠ざかろうとした。しかしネリィはサライヤンを呼び止めた。


「待って!病気って...嘘なの?」


ネリィの深刻な表情を見てサライヤンは罪悪感に(さいな)まれた苦しい表情を浮かべてから言った。


「...いや、本当のことだ。あいつの嘘に騙されるな。ゴゴは嘘がとてつもなく上手な人間だからな!」


『それは絶対にないわね...』


サライヤンの言葉にネネは心の中で完璧に否定した。ネリィはサライヤンの言葉こそが嘘だと分かっていながらも、サライヤンのことを信じたい一心で一旦はその疑いの心を飲み込むことにした。


「...わかった。でも、この仕事が終わったらちゃんと話してね?嘘ついてたらやだよ?」


ネリィは子供のような純粋な言い方で言った。その純粋さがサライヤンの心をさらに痛めつけていた。そしてサライヤンは何も言わずに遠くに蹴り飛ばしたゴゴを追いかけて風よりも速く駆け抜けていった。


「...あの、サライヤンの言ってることはほとんど嘘だと思うけど...もしかしたら本当かもしれないから、悪いんだけど一旦捕まってくれないかな?」


ネリィは申し訳なさそうにネネの顔を覗き込みながら言った。ネネは呆れるように乾いた笑いが出た。


「それは無理ね。もし本当だとしたら、私は奴隷として売られるんでしょう?魔族は高く売れるらしいじゃない。」


ネネの発言は冷静で淡々とした言い方だった。ネリィは「だよねぇー。」と無茶なお願いが断られて、その通りだと理解しながらも少し落胆した声色で言った。そしてネリィは今までとはまるで真逆の雰囲気をまとい始めた。


「...じゃあ、悪いんだけど力ずくで連れ去ることにするよ!」


ネリィはそういうとまさに獲物を狩る時の獣のようなギラギラとした目つきでネネを見て、姿勢を低く保った。ネネはそのネリィの雰囲気をバチバチと感じて、ネネも同じく姿勢を低くして臨戦態勢に入った。


「...そう。やっぱりやりあうって言うのね。だったら、容赦はしないわよ?」


「もちろん!全力で行くからね...!!」


ネリィはそう言って勢いよく地面を蹴り上げてネネに戦闘を仕掛けに行った。




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