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星の勇者  作者: アシラント
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対決!!!

ゴゴはレイジの静止を振り切って、ユダへと殴りかかった。ゴゴの全力の右ストレートはユダの顔面へと狙いを定めた。しかしそのパンチは、ユダの大剣で防がれた。瞬間、周りには凄まじい衝撃波が走った。金属をハンマーで叩いたような甲高い音がレイジの耳を貫いた。その衝撃波と音は、周りにいたブレイブとネネを振り返らせた。


「......これは一体なんの真似かな?筋肉君?」


ユダは動じる事なく冷たい視線をゴゴへと送った。ゴゴは興奮が抑え切れない様子でニッコリと笑った。


「俺はよぉ、一目見た時からお前の虜なんだよ!お前があまりにも強そうで強そうで、戦いたくてウズウズしてたんだ!もーーーーう我慢なんか出来ねぇ!!!ユダ!俺と勝負しろぉ!!!」


そう言うとゴゴは左の拳でアッパーを仕掛けた。それをユダは難なくかわし、下り際に蹴りをゴゴの腹へと打ち込んだ。さらにその蹴りを利用してユダは後ろへと飛んだ。ゴゴは腹の痛みに顔を歪めた。


「なるほど、あなたはとてもマヌケですね。私の大剣は神のへそくりで出来ていることをお忘れですか?あなたはおそらく幻獣使いのようですが、なぜ天敵である神のへそくりに触れたのですか?また、なぜそこから下がらずに左のアッパーという反撃してくださいと言わんばかりの攻撃をしたのですか?」


ユダは淡々とゴゴの無駄を指摘し、質問した。


「へっへっへ、それは俺が興奮しすぎて冷静な判断ができないからじゃないかなぁ?」


ゴゴはただヘラヘラと笑っていた。そんなゴゴの様子に呆れて、ユダはレイジの方を向いた。


「レイジ殿!これはあなたたちのチームが仕掛けた勝負でしょうか?もしそうならば、私はあなた方にとても失望しましたよ。同じ勇者候補として仲良くできるかと思ったのですがねぇ。」


ユダはレイジに聞こえるように大声で言った。


「いや違う!ゴゴが勝手に......」


「それを信じる根拠はあるんですか?」


ユダはレイジの発言に被さるように言った。レイジは何も言い返せず、下唇を噛んだ。そんな様子を見たユダは失望のため息をついた。


「残念です。わたしはあなたの事を信じられる人だと思ったのですがねぇ。」


「なーにごちゃごちゃ言ってんだ?レイジは関係ねぇだろ。今は俺とお前の勝負なんだからな。」


ゴゴはシャドーボクシングをしながら言った。


「おいゴゴ!なんでユダと戦うんだよ。戦うなら俺とでもいいだろ?」


レイジは剣を抜き構えた。ゴゴはそれをチラッと見たが、すぐにユダの方へと向いた。


「悪いな、レイジ。お前と戦うのは姉御に禁止されてんだ。だから戦えねぇ。それによぉ......」


ゴゴは勢いよくユダへと近づき、またユダの顔面目掛けてパンチを繰り出した。それをユダは大剣で受け止めるが、今度はユダは後方へと弾かれ、一歩下がる状況になった。再び大きな衝撃波と音が周囲へと走った。


「こんな強えやつには滅多に会えねぇんだ!戦わないなんて選択肢が無いんだよぉ!!!!」


ゴゴは震える右手をジッと見てウズウズしてきた。それは恐怖と武者震いが混ざった震え方だった。


「こんな感情は滅多に無いぜ。俺が恐怖を感じるなんてよぉ!!!」


『この筋肉男、さっきよりもパワーが増している......?わたしへの攻撃に迷いが無くなっているという事か......?』


ユダの思惑通り、ゴゴはレイジ達への罪悪感を徐々に無くしつつあった。


「ゴゴ!!!頼むからやめてくれ!!!」


レイジは必死になってお願いをした。しかしその声はもうゴゴには届かなかった。ゴゴは完全に戦闘モードへと入り、もう一発、ユダの顔面目掛けてパンチをした。ユダはそれを大剣で防ぐ。しかし、あまりにも強すぎるゴゴのパワーに、ユダは両足で地面を抉りながら後方へと大きく飛ばされた。


『この筋肉男、強い......?』


ユダは先程までのゴゴとは比べものにならないほどの馬鹿力に驚いた。


「筋肉君、あなたが本気でわたしと戦いたいというのはわかりました。どうやらこちらも全力で行かねばならないようですね。ですから、これからの戦いは加減が出来ません。なので、万が一命を落とす結果になったとしても、後悔しないでくださいね?」


ユダは警告をして、戦闘モードへと入った。その言葉にゴゴは鼻で笑った。


「心配するな、死んだら後悔もクソもあるもんかよ。」


ゴゴはそう言って全身に力を溜めた。まさに一触即発の状況になった。お互い睨み合い、その場の空気が緊張感で満たされた。


「やめろ!二人とも!今はあの幻獣を倒すことが目的だろう?」


その緊張感をブチ破るようにブレイブが二人の真ん中へと介入した。


「おいおい、そんな所にいたら巻き込まれるぞ?さっさと退いてくれよ。」


ゴゴは真剣な表情で軽口を言った。


「ケッケッケ、こうなった以上、どちらかが倒れるまでやり合うしか無いでしょう。それに、仕掛けてきたのはあっちの筋肉君ですしねぇ。」


ユダもニタニタ笑いながらも、身に(まと)わせるオーラは全くブレることなくゴゴへと向いていた。その様子を見てブレイブはため息をついた。


「そうか、辞める気はないんだな。ならば......!」


ブレイブは腰に携えていた勇者の剣を抜いた。


「それを僕は、全力で止めさせてもらうよ!」


ブレイブも戦闘モードに入った。三人のオーラはぶつかり合い、三つ巴の戦闘になった。と思いきや、もう一つのオーラがこの場に入ってきた。


「同感だよブレイブ。こんな馬鹿げた戦闘は、今すぐに辞めさせるべきだよな。」


レイジがその身に炎を纏って参戦した。その炎は冷静なレイジらしくない、真っ赤に燃える怒りの炎だった。


「おいゴゴ!俺は遂に怒っちゃったぞ。お前の顔面を殴らないと気が済まねーぞ!」


レイジは怒りの笑みを浮かべながらゴゴを睨みつけた。ゴゴは申し訳なさそうに笑顔を作った。その場の空気が異様なまでにピリピリとしている。四人のオーラが互いにぶつかり合い、ネネと兵士たちはそれを見守ることしかできなかった。


「行くぞゴゴォ!!!」


レイジが一番先に動き出し、一直線にゴゴへと近づいた。そして燃える拳をゴゴの顔面目掛けて放った。ゴゴは体を逸らしてその攻撃を避けた。


「あっぶねぇ!?」


ゴゴは思わず声が漏れた。そして体制を立て直そうと、後ろへと飛んだ。その後ろを狩ろうと、ユダは目にも止まらぬ速さで先回りして大剣を横に薙ぎ払った。その大剣をブレイブが割って入って剣で受け止めた。


「ブレイブ殿、今あなたが受けなかったらわたしの目的は達成されたのですが、なぜ受けたのですか?」


「ユダくん、もしもこの筋肉くんを倒してしまったらレイジくんが君を殺そうとするだろうからね。」


ユダとブレイブは互いに全力で鍔迫り合いをしていた。そしたら突如として大きな声が聞こえてきた。


「レイジ!!!!!!避けろぉ!!!!!!」


その声の大きさに全員が声のした方を向いた。そこには姉御とあんことドナルドが全力でこちらに走ってきていた。その奥には死んだようにぐったりとしたあの幻獣が倒れていた。


「ん?なんだ?」


レイジは不思議そうに姉御達を見つめて突っ立っていた。そんなレイジの様子を見てゴゴは、バッと両手を突き出し、レイジとブレイブを突き飛ばした。


「痛てぇ!?」


レイジはゴゴに突き飛ばされ、背中から地面へと激突し、ズサーッと地面をえぐった。


「おいゴゴ!いきなり何するん......」


レイジは怒りの感情をゴゴへとぶつけようとしたが、ゴゴがどこにもいなかった。


「......ゴゴ?」


レイジは辺りを見回したがどこにもゴゴの姿はなかった。レイジが混乱していると、姉御が息を上げながらレイジの元までたどり着いた。


「レイジ!怪我はないか?」


「あ、姉御。ゴゴが、いなくなったんだが?」


レイジは困惑の色を出しながら言った。姉御は強く頷いた。


「あの幻獣の仕業だよ。あの幻獣がゴゴを食べたんだ。」


「えっ?でも幻獣はあそこで死んでるみたいだし、第一ここに来てないぞ?」


「私たちはあの幻獣を見くびっていたんだ。あの幻獣は蛹だったんだよ。」


「さなぎ?」


「そう。あそこでぐったりしてるのは抜け殻なのよ。あんた達がデットヒートしてるのを感知した幻獣はさなぎの殻を破ってあんた達の方へと走り出したのよ。」


「そうなのか?だが俺は幻獣の姿なんて見てないぞ。」


「ええ、あの幻獣は透明になったのよ。まるでカメレオンのようにね。」


「透明に......?」


「ええ、だから近づいてくることに気づけなかったのよ。」


「じゃあ、ゴゴはどこに?」


「おそらく、幻獣の腹の中にいるわ。」


「腹の中か......まだ死んでなければいいけど......」


レイジは冷静さを取り戻し、今自分がやるべきことを考えた。


「よし、じゃあさっさと幻獣を倒そう。ゴゴを取り返さないと。」


冷静さを取り戻したレイジを見て姉御はウンと笑顔で頷いた。


「じゃあ早速あんこになんとかしてもらおう。おーい!あんこー!」


レイジはふわふわ浮いていつになく真面目な表情で偵察しているあんこを呼んだ。あんこはふわふわと近づいてきた。


「どうしたのー?どうしたのー?なになになになになんかあるー?」


あんこは左右に頭を振り、リズムを取りながら無邪気な笑顔でレイジに聞いた。


「あんこのその神のへそくりで透明になった奴の位置を探し出せないか?」


「えー?それ今あんこがやろうとしてたことだよー。」


あんこは口を3の字にさせて「ブーブー!」といった。レイジはバツが悪そうな笑みを浮かべて謝った。それを見たあんこは口をとんがらせたまま「まあ、許すけど。」と言い、再び空中へと浮かび出した。


「じゃあ、やるよー?いーい?」


あんこはある程度の高さまで上がった後に大きな声でレイジに確認をした。レイジは「ああ!やってくれ!」と、大きな声で返事をした。確認が取れたあんこは腰につけていた三十センチほどの小さな筒状の棒を取り出し、それを天高くに掲げた。するとあんこの体から銀色の粉が大量に吹き出し、その銀の棒の周りへと集まり正八面体が八つ出来上がった。


「よーし!ヒシちゃん!行ってこーい!!」


あんこはその正八面体ヒシちゃんを八方へと飛ばした。そして体にググっと力をためてまるで抑えつけたバネのようにその体と力を解放した。するとヒシちゃんは謎のレーザーを放った。すると幻獣が苦しそうにその姿を現した。それは先ほどまでの幻獣よりも一回り小さくなり、羽が生えた姿だった。


「いた!いた!あんこみたいに空飛んでた!ねえ空飛んでたよ!レイジ!」


あんこはレイジの方に目を向けた。レイジはのたうち回っていた。


「いてててて!ぐあああああ!肌が焼けるようだああああ。」


「うぐぐぐぐ、俺も痛えぞ!」


レイジと同じぐらい痛みにゆがんだ表情で、ドナルドが言った。


「ううう、僕も痛いなあ。」


ブレイブも痛がっていた。


「ケッケッケ!確かにこれは幻獣と幻獣使いにとっては天敵になりますねえ。」


ユダは相変わらずニタニタと笑いながら言った。


そんな様子を見てあんこはふと思った。


「これ、私の神のへそくりの能力でゴゴが死んじゃったりしないかなぁ?大丈夫かなぁ?」






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