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1:始まり
目の前に、少女がいる。少女は俯いていて、長い髪の毛が顔にかかり、表情は分からない。
俺は、彼女の顔を見たくて、彼女の元へと1歩踏み出そうとした。すると、冷たく肌を切り裂くような寒さを持った風が、強く吹いた。
その風は、彼女の艶を持った髪をなびかせ、顔を隠していた防壁のひとつを崩した。
今なら、彼女が顔を上げてくれれば、見れる。
そして、俺のどうしても見たいという思いが手を彼女の顔の元へと伸ばしていく。
そして、顔に私の手が触れる―――直前で、彼女はおもむろに顔を俺へ向けた。
俺は驚いて、慌てて手を引っ込めようとするが、その腕を彼女が掴んだ。
再び、ビックリして、自分の手へ向けていた目線を、彼女に合わせる。
彼女は、涙を流していた。大粒の雫を両目からボロボロとこぼしている。しかし、直ぐにニコリと、ほっぺにえくぼを作って笑った。そして、こう言ったのだ。
「私と婚約してくれませんか」
これは、2人の愛を求め彷徨うモノガタリ。