表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スクーター・ジョー  作者: KOKUKEN-M
5/15

番外編「ショート三編」

第1話「夜更けのジョー」


「すげー、新品のスクーターだぜ」

「おお、バラバラにして部品かっぱらおうか?」

「それいいかもな。ようし、お前誰か来ないか見張ってろ」

 真夜中の自転車置き場。

 見るからに怪しげな男二人。

 外灯に照らされたその顔はまだ若い。

 年のころ18、9といったところか。

 一人はそこを離れ、通りを油断なく見回している。

「さて、と…」

 残った男は、日頃からやってることなのか、手際よく懐からスパナなどいわゆる七つ道具を取り出した。

「今度はどれくらいでさばこうかな?」

 ふふ…と笑いながら男はスパナを手にし、赤と白のツートンカラーのスクーターに近づいていった。

 つと車体に手を触れる。

「くすぐってぇ」

「へ?」

 男は目をぱちくりさせた。

 慌ててキョロキョロとあたりを見回す。

「おい、お前何か言ったか?」

 男は向こうにいる相棒に声をかけた。

「なんにも言ってねーよ」

「だよな」

 彼は、それでもしきりに首をかしげながら再び作業に取りかかろうとした。

「てめぇ、なにしやがる!」

「ぎゃっ!?」

 男はびっくり仰天。ひっくり返ってしまった。

「ババババババ、バ、バイク、バイクが喋ったっ!?」

「ったくよー。何なんだよ。人がせっかく気持ちよく寝てたのによー」

 人? バイクって人か?

 男は失神寸前だった。

 案外肝の小さい男だ。

「この落とし前はキッチリつけさせてもらうぜ」

「うぎゃああああああああ!!!」

「あっ、おいっ!」

 男はよっぽどパイクの啖呵がビビったのか、大慌てでそこから逃げ出していった。

「ああん? なんじゃいありゃ~?」

 一人残されたスクーター。

 すると、そこへマンションの住人であり、スクーターの持ち主であるアイドル木村薫がやってきた。

「どうしたの? ジョー。何か騒がしいようだったけど?」

「おお、薫か。なんか知んないけどよー。俺が喋ったらおでれーて逃げちまったんだよ。ったく、俺のこと知らねーモグリがいるらしいぜ」

 ちっと舌打ちしながらジョーは毒づいた。

「ははは…」

 薫はいつものことだと力なく笑うばかり。

「顔はバッチリ覚えてる。見とれよ。今度会ったらキッチリ挨拶さしてもらうぜ」

 ふふふ…ははは…わはははぁぁ───と、いつまでもジョーの笑いは暗闇の中あたりに響き渡った──とさ。ちょん。



第2話「物思いのジョー」


「俺ってやっぱどっか変なのかなー」

「へ?」

 薫はジョーの言葉に首を傾げた。

 思わず、また何を言いだすんだと思いっきり身構える。

「はぁ~」

「………」

 だが、ため息をつくジョーを見つめながら、薫はそういえばと思い出す。

 田舎町での浜崎ヒカルのコンサートに行った時、自分たちはジョーのように話ができるバイクに出会った。

 で、いろいろと揉め事はあったものの、一件落着してこっちに帰ってきたのだが、あの頃からどうもジョーの様子がおかしかった。

 変に黙りこくったり、時々妙に気弱なことを言ってみたり───

 そんなに気にはしていなかったが、もしかして自分と同じように喋るバイクと出会ってナーバスになってるのかもしれない。

 薫は少し心配になってきた。

「どうしたんだよ、ジョー。お前らしくないじゃないか。変っていったって、それは当たり前のことだろ。お前みたいに喋るバイクなんていないんだからさ。考えてもみなよ。それってすごいことだろ。気落ちするなんてジョーらしくないよ。元気出しなよ」

「やっぱり変なんだ」

 思い詰めたような声。

 しまったかも───薫は顔をしかめた。

 人間でも、ずーんと落ち込んでる時は、どんな言葉も慰めにならない時がある。

 それどころか、相手がいいように言ってくれた言葉が、思わぬ傷になっしまうこともあるのだ。

(でも、どうすればいいんだよ)

 いまだに薫は自分を情けない男だと思っていた。

 でも、ジョーさえいつものように高飛車でいてくれれば、なんだかこっちまで何でもできそうなに気分になるのだ。

 それだけジョーの影響力はすごいということだ。

 だから、ジョーがこんなふうに落ち込んでたりすると、とたんにどうしていいかわからなくなってしまう薫であった。

「と、とにかく……落ち込んでたってしようがないよ。今日は僕とちょっとドライブしようよ。ヒカルちゃんでなくて不満かもしれないけれど」

「そうだな。たまには薫とデートでもするか……」

「…………」

 やっぱりヤバイかも。

 ジョーが男とドライブするなんて、普通じゃ考えられない。

 薫は本気で心配になってきた。

 

 

 峠のスタンドにやって来た。

「ジョーの親分、いらっしゃいませ。ご機嫌はいかがですか?」

 スタンドの店長は例の事件の時の店長だった。

 今ではすっかり心を入替え、とても良心的な経営をしている。

 しかも、ジョーは永久的にロハでガソリンを入れることができる。(おいおい、いいんかい、そんなんで)

「おー……」

 だが、やはり声に力がない。

 店長も怪訝そうな顔になって、

「どうしたんすか? 大将は?」

「うん。ちょっとね…物思いの秋ってとこかな?」

「はぁ……」

 店長は何だかよくわからないと言った表情を見せたが、ジョーに向かって明るく声をかけた。

「元気出してくださいよ、親分」

 ガゴンという音をさせて、タンクのふたを開け、ガソリンを注ぎ込む。

 ゆっくりとメーターが回り始め──

(あれ?)

 いつものレギュラーじゃない?

 薫が怪訝そうな顔をすると、店長はウィンクしながら言った。

「いいんでさ、薫のだんな。親分に元気になってもらえるなら、今日はハイオク、サービスしちゃいますぜ」

「店長さん…」

 薫は思わずうるうる。

 そうして、薫はしばらくジョーと街中をぐるりと回って家路についた。

 

 

 といっても───

 ドライブをしても結局ジョーの沈んだ心は浮上しなかった。

 薫もちょっと意気消沈。

「じゃ、僕行くよ」

「ああ。またな」

 自転車小屋で別れを告げると、薫はとぼとぼとマンション内に入った。

「あれ?」

 見るとポストに何か入ってる。

 大きさと重さから見てどうやら手紙とは違うようだ。

「はて、なんだろう」

 送り主は───

「ああ、紅一郎さんだ」

 小さな港町で知り合った、もう一台の喋るバイクの持ち主だった。

 薫は何かしらと思いつつ、部屋に戻り包みを開けてみた。

 中から出てきたのはビデオだった。

「?」

 薫はまず、リビングにある29型TVで見るためデッキにテープを突っ込んだ。

 そして、しばらく見てから───

 ダダダダダダ─────!!!

 彼は携帯用のテレビデオを抱えて飛び出していった。

 いったい何だったのか。

「ジョー!!」

 薫はハァハァと息を切らしながらジョーの前にやってきた。

「いったい何だよ……それってTVじゃんか」

「とにかく、これ見て!!」

 薫はずずいと液晶画面をジョーの方へ向けた。

「やあ、薫くん」

 そこには片手を上げ、爽やかな微笑を浮かべる紅一郎の顔が映っていた。

 画面の彼は続ける。

「この間は本当に楽しかった。この世に喋るバイクがいたとは驚いたがね」

「お前のバイクもそーだろーが…」

 ぶつぶつとジョーは呟く。

「実は、俺の仲間の黄河ってやつが新しいビデオカメラを買ったもんで、ちょっと写してもらったんだ。それで、君にビデオレターを送ってみようと思ってね。あ、そうそう。ジョーくんは元気かな? うちのカーマインからメッセージがあるんだよ」

 それから画面は紅一郎からカーマインに変わった。

 嫌味なくらいに輝く白と赤のツートンカラーのボディ。ジョーと同じだ。

「ゴキゲンハイカガデスカ? コノアイダハオシクモワタシガマケマシタガ、モシマタコチラニオイデノサイハ、ショウブイタシマショウ。コンドハワタシモマケマセンヨ」

 相変わらず機械的な喋り方だ、と薫は思った。

 すると───

「おーおーおーじょーとじゃねーかっ!!」

 ジョーの啖呵を切る声が上がり、薫は「やった!」と小さくガッツポーズをした。

「今度だって俺の勝ちだ!! お高く止まった、てめーなんざに負けてたまるかよっ!!」

 まるで指でもおっ立てんばかりの勢いだった。

 だが、薫には、ジョーの声に抑えきれない喜びが滲み出しているのをなぜか感じとっていた。

 そうしてジョーは意味もなく笑い出す。

「ふははははははははぁぁぁぁ──────!!!」

 だが、薫は、いつまでも高笑いするジョーをニコニコとした顔で見守っていた。



第3話「ものもらいのジョー」


「目がいてぇ」

「え? 何、ジョー」

 ある秋の日のこと。

 薫が仕事から帰ってきて、ジョーに「ただいま」と挨拶をしようとした時。

 ジョーがまたしてもボソリと呟いた。

「どうしたの?」

 薫は今度はどこの調子が悪いんだろうと思いつつ、心配そうに赤白のボディに顔を近づけた。

「どこに目つけてんだよ。目だよ、目!」

 ジョーはすこぶる不機嫌な声だった。

 薫は、「まあ、いつものことだし~」とか思ったが、そういう気持ちはおくびにも出さず、

「ごめん、ごめん。で、目が痛いって?」

「おー、なんかな。目がシバシバして開かねーんだよー」

「シバシバ?」

「あー、それから、なんかよー、グリグリしてるしー」

「グリグリ?」

 薫は思いっきり首をかしげた。

 目が開かないって───いったい、どういうことだろう?

 しかし、いくら考えても、メカのことにはまるっきり知識のない(覚えようともしない)薫だったので、

「ジョー、これはもうおやっさんに見てもらうしかないね」

 と、にっこり微笑んで言った。

「おー、連れてってくれ」

「?」

 薫はますます首をかしげた。

 なんだかジョーらしくないぞ──と。

 いつもなら、「いやだー」とか「虐待受けるー」とか、さんざんわめくくせに、今回はおとなしく連れていけという。

 だが、まあ、ギャーギャーと騒がれないだけマシだよなー。

 そんなふうに思い、薫はすぐに『黒見モーター』へと連れていくことにした。



「あー、あれだな」

 黒見モーターのポップ親父が、ざっとジョーを診察し、開口一番こう言った。

「いわゆるものもらいだ。目薬さしとけばすぐ治るさ」

「はぁぁぁ? ものもらいですかぁ??」

 ポップの言葉にびっくり仰天の薫。

 だいいち、ジョーの目っていったい──どこに?

「あのー、ポップさん。目薬って言いますけど、何をどこにさすんでしょうか?」

「ああん? おまいさん、まだこいつのことわかっちゃねーんだなぁ?」

 とたんに、ポップの十八番が始まった。

「ワシに治せん患者はおらん」

「はい、ごもっともです」

 と、薫もいつものように合いの手を入れる。

「では、偉大なポップさん、いったい具体的にどうすればいいのでしょうか?」

「まず、目ってーのはな、ライトのことだ。で、ものもらいってーのはな、その目ん玉、いわゆる電球だな。そのソケットが錆びてんだ。だから目薬、CRC-5-56でもスプレーして拭いてみな。錆びが取れて接点が回復すれば完治だ。ハッハッハー」

「はぁ……」

 ようはソケットが錆びてんだな──もっと普通の人にわかるように説明できないんだろうか、この人は。

 と、思いつつも、何も言えない薫。

 まあ、ともあれ素直な薫は、言われた通りに作業を行い、ジョーの目を治してやったのであった。

「おー、薫~、治った治ったー、よーく見えるぞー。さすがポップの親父だなー。さっ、帰るぞ」

(相変わらず、ワンマンでマイペースなジョーだよなぁ)

 いつのまにかジョーの病院嫌いも直って、多少ホッとしている薫なのであった。

番外編として何話かあるのですが、この三編はショートで短編が三つあります。

この後、その短編も続けて掲載します。

実はあともう一作品あるのですが、そちらは私の旦那様が執筆した「ワンピース」のゾロが登場するいわゆる二次創作となってますので、こちらでは掲載はしません。私が書いたものではないですからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ