第二章
鹿島と青貝の出会いは、二人が産まれた時まで遡る。
病院のガラス戸の向こうに置かれたベビーベッドの上に、鹿島と青貝はいた。陽射しを存分に取り入れた無菌室で、丸裸の二人はただ空を見上げていた。
記憶を抜かすような歳でも無いが、さすがに赤ん坊の頃までは覚えていない。ただ住んでいた町や入院していた部屋が同じで、ベビーベッドが隣同士だったのもあって互いの両親が親しくなったのだけは知っている。
俺達は双子以上に双子っぽかったが、両親だって互いに似た者同士だった。親父は互いに似たような思いを胸に仕事をしていたし、家も近かったから学区まで一緒だった。利用するスーパーマーケットやレジャー施設も同じで、どこへ行っても出くわし続けた。
似た者同士の夫婦の子供が同じ歳と性別で産まれたのなら、俺たちが似たり寄ったりなのも運命なのかもしれない。体格も趣味も知能もほとんど同じくらいで、どれも同じくらいに大した事が無かった。
勉学よりも外遊びを好み、スカしたランチプレートよりもチェーン店の牛丼の方がコストパフォーマンスも腹持ちも良いと喜び、女性との交際経験は無いけど理想は高いという典型的な童貞思想。
だが思わぬ所で歯車はズレだした。八年前の空から天人が降りてきたあの日、青貝の父が死んだ。正確には天人の精神攻撃によって初めて死亡した、十三人の内の一人だった。
最初の犠牲者は肉眼では確認出来ない程に小さな空の穴を観測に向かった警察や自衛隊員、役所お抱えの測量士等だったが、青貝の父は不運にも職場が穴の真下にあった。
それが攻撃の合図だったのかこれを機に被害はどんどんと広まり、世界中に天人の絶望の因子が拡散して、結果八億の人類が死亡した。自分の父もここで死んだ。
地球全土が自殺体で溢れるという悪夢のような状況に生き残った人々も気が触れ始め、国は半強制的な精神安定維持プログラム薬品「アンチ・デストルド・システム」を開発、国民に配り出した。
最初は二次自殺者が最も多い天穴の被害中心地にて配り、その後改良型を現場で働く職員達に配った後に一般で流通し始めた。
混沌と化した世界での思考の違いから、アンデスを内蔵した人間は〝新人類〟と呼ばれるようになり、そうでない者は〝旧人類〟と区分されるようになった。
多くの人間に〝人生〟というものを改めて認識させた審判の日も、結局は科学の力によって神に反訴して逆転勝訴の日になった。