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夜中にグラグラと

 ついでなので地震の話を。


 しばらくは通常生活と変わらぬ日々を過ごしていたある夜。

 正確に言うならば、9月6日午前3時頃。

 まだ暗い中、ふと目が覚めるとカタカタと小さく揺れ出した。この時緊急地震速報は鳴らなかったのだが、某アプリが起動していてピッピと音を立てていた。

 旦那も目覚めたようで「地震?」と言ってるうちにゆさゆさと揺れが大きくなる。長いなと思いながらアプリをチェックすると震源地は襟裳岬の左横の方。最大震度は6と予想されていた。

 揺れが収まってきたところで念の為子供達に声をかけに行く。

 上の子も下の子もそれぞれハイベットで寝ているので結構揺れたはずだった。

 震度2〜3くらいなら気付かず寝続けていることが多い子供達も、さすがに目が覚めたようだ。無事を確認して居間まで移動してTVをつけようとするも、つかない。あれ? と思いつつ、電気のスイッチに手を伸ばしたけど、やっぱりつかない。カーテンを開けて外を覗くと信号まで真っ暗だった。


「停電してるわ」


 なんとなく全員起きて居間に集まって、旦那はタブレットでワンセグ視聴し始めた。

 うちの辺りは震度5くらいだったらしい。

 停電もすぐに復旧するだろう、くらいの軽い気持ちだったので、子供達にはすることもないし寝てなさいって言ったんだけど、目が冴えてしまったからと懐中電灯を探して来たり、スマホ弄ったりして結局みんな起きていた。


 停電が全道に渡ってることが分かって、明るくなるまでに復旧しなかったら学校も休みかなと、子供達がそわそわし始める。

 うちのマンションは、地下の水道管からポンプの圧力で水を汲み上げているはずだった。停電だと水も出なくなるはずなので、一応「小」の時はトイレの水を流さずおくように言って、お風呂に水を貯めてみた。風呂桶がいっぱいになっても水が止まる気配はない。

 ……もしかして、大丈夫?

 理由はよく分からないけど、うちのマンションは水が止まらずに済んでいた。後から聞いた話、裏の方のマンションでは止まっていたらしいので、運が良かったのか、ポンプを使わない直結方式だったのか……


 明るくなってきた頃、旦那が出勤していった。

 うちは災害時には行かなければいけない職場なので、家のことは旦那は全く頼れない。私の父もそういう所に勤めていたので、そういうものだと思っているし慣れている。

 送って行こうか? って言ったんだけど「信号も消えてて危ないし、車庫開かないから自転車で行く」とのことで、颯爽と出て行った。


 停電でうちが一番困るのがこれだった。

 車庫が開かない。

 電動シャッターで、手動では開けられない造りらしいのだ。

 車に乗れればラジオもテレビも見られるし、スマホやタブレットの充電だってできるのに!


 無いものは仕方ないと、休校の情報を手に入れて(不謹慎ながら)うきうきしている子供達と近所の様子見に行ってみることにした。

 まだ6時台にも関わらず、意外と多くの人が歩いている。

 その時一番近いコンビニは閉まっていた。もう少し歩くと違うコンビニがあったので、そちらに向かってみる。店内は薄暗かったけど人が並んでいる。どうやらレジに並んでいるようだった。

 中に入ってみるとお茶や水とパン類はほとんど無かった。モバイルバッテリーと電池も無い。

 床には瓶が割れてしまった赤ワインが1本転がっていて、片付ける暇もないんだなと分かる。

 本当にたまたまだったのだが、うちは飲料水はコストコで買ってきたばかりだったので水分の心配はなかった。水道も出ていたし。


 いつもは現金がほとんど入っていない私の財布にも、珍しく1万円以上入っていたので、停電が長引いた時を考えて、残っていたカップ麺を数個買って帰ることにする。

 レジの列に並ぶと、後ろに並んだおばさんに話しかけられた。東北の地震の被災者らしく、こちらに移住してきたということだった。おばさんの家も水は出ているらしく、良かったですねと言い合った。

 POSというのだろうか。片手で扱う小さな機械でレジ打ちをしている店員さんには本当に頭が下がる思いだった。自分たちだって同じ被災者なのに。


 マンションに戻ってくると、うちの周りをぐるりと車が囲っていた。何事かと思ったら、近所のガソリンスタンドに並ぶ車の列だった。ああ、そうだよなぁ、って納得しつつ、その列の長さに驚いた。

 エレベーターが動かないので階段を上る。同じマンションの何組かの住人と一緒になった。

 うちは6階なのでまだいいが、うちより上になると結構辛いんじゃないかと思う。

 断水していたマンションは、水を持って上るのが大変だったと後で聞いた。


 お昼はカセットコンロを物置から引っ張り出してきてお湯を沸かし、カップラーメンを食べた。

 うちにはヤカンが無いので、鍋で沸かす。ずっと使っていたヤカンはIHになって使えなくなったので捨ててしまったし、今は電気ケトルを使っているのでわざわざヤカンを買い直すこともしていなかった。

 ガスで沸かすお湯は時間がかかるなぁ、とか、久しぶりの火に袖口気をつけなくちゃ、とか、意外と緊張するものである。


 心許なくなってきたスマホの電池は、いつも使っているノートパソコンから充電できた。1回分が限度っぽいけど、役に立ってよかった。

 まだ電気は復旧しないし、スマホも温存しておきたい。

 暇潰しという訳ではないけれど、娘と少し遠いスーパーの方まで行ってみることにした。

 この位からスマホも繋がりが悪くなっていた。LINEでの連絡も届かなかったり、返事が来なかったり。

 スーパーは閉まっていたけど正面入り口前でパンなど販売しているようで、長蛇の列が出来ていた。近くの別のスーパーは閉まっていて、こちらは人気(ひとけ)が無くひっそりとしている。ぐるりと回ってみると、水を入れるタンクというかビニールの袋を持っている人達をちらほら見かけた。この辺りで水を配給してるらしい。もしも、うちの水が止まっても、ここまでくればもらえるということだ。


 途中、コンビニに並ぶ人達を発見。中に入る人を制限しているようだったので、ちょっと並んでみる。

 順番が来て中に入れたものの、すぐに食べられるようなものや清涼飲料水はすでに棚に無い。おやつを少し手に入れて、帰路についた。

 夏の名残でまだ暑いくらいの日差しだった。


 その夕方、電気が復旧した。うちは早い方だった。カセットコンロの出番はお昼の1度きりでお終い。

 冷蔵庫の有り合わせで晩御飯にして、その日は乗り切ったものの、それから2〜3日は生鮮食料品が手に入り難く、スーパーじゃなくて地域の八百屋さんや魚屋さんやお肉屋さんを回って食料を確保した。それも、昨日開いていた店が今日は開いていない、という風で1~2週間くらいは品揃えが少なかった気がする。


 うちは復旧が早かったのでまだよかったけれど、液状化で家に住めなくなった方たちも同じ市内にいるのだ。震源地から遠く離れていても地盤の違いで被害に差が出てしまう怖さ。

 この辺りにも断層があるはずで、それはいつ動いてもおかしくないんだろう。

 普段は忘れがちだけど、備えはしっかりしておきたいものである。

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