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幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
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7.ガチャとスゲー空間

 目の前に青く光る立方体が浮かんでいる。あぁスゲー空間だ。スゲー空間という命名がとんでもなくもったいなくなるほど、神聖な雰囲気で綺麗な空気。まさにスゲー空間だ。やかましい幼女神に出迎えられるか?と思いきや空振りだ。忙しい忙しい言ってたわりにヒマなヤツだと思っていたが、案外そうでもないらしい。まぁいい。あくまでアマテラスが俺の記憶をベースに構築した空間だ。見れば何かぐらいわかるだろう。


 まずは立方体からだ。

 一度手を触れるとそれぞれの面が様々な色に輝き出す。初回限定の面は灰色になり、他の面よりも大人しい光を帯びている。もう使えませんよ。ってとこだな。

 次に他の面に目を向ける。


 武器ガチャ

 防具ガチャ

 アイテムガチャ

 ジョブガチャ

 スキルガチャ

 精霊ガチャ

 女神の祝福ガチャ


 立方体といえば正六面体だ。数が合わない。初回限定の面を合わせて八面もある。・・・意味が分からないがそういうもんだと思おう。ツッコミを入れてもむなしいだけだ。にしても女神の・・・・・


「女神の祝福ガチャとはなんなのでしょう。」


 おおおおおおおお。ビビった。誰もいないはずの自分の傍らから声が響く。女性の声だ。


「マスター?あれ、視界が・・・」


 コスプレイヤーのような格好をした水色の髪の女性が立っていた。肌は真っ白で水色の瞳。西洋風な顔立ちで年齢が想像できない。露出が多めで細身だが、スタイルはいい。つまり目のやり場に困る。


「あ、すいません。ってあれ?俺のことマスターって・・・・メティスか?」


 女性はぼーっとしたように顔を赤らめて喋りだす。


「そうです。私です。メティスです。マスター。私が肉体を持つことができるなんて・・・」


 やばい。平常心だ。美人はハヅキで慣れてるとは言え、ここまで完璧に人種が違うと耐性がない。ドギマギしてしまう。しかもなんだこの恥ずかし気な仕草。直視できん・・・


「メ、メティス、その姿はなんだ?心当たりはあるか?」


「いえ、全く心当たりがありませんマスター。肉体、服装共に私が有する知識に該当するものはありません。ただ・・・」


「ただ?」


「ただ、マスターの記憶にあるスマホゲーの中のナビゲーションするキャラクターといくつか類似点があります。」


 ナビゲーションするキャラクターか。スマホゲーを起動するとはじめに喋るやつや、ガチャを回す時に出てくるキャラクターだな。定番といえば定番だな。確かに言われてみれば似ているポイントはあるな。


「となると、アマテラスが作ったナビゲーションキャラクターみたいなものかも知れないな。何を再現してんだか。・・・ひとまず、この空間の中のことはアマテラスでないとわからないだろうし、気にするだけむだだな。現状何か不具合はありそうか?」


 メティスが若干視線を切って考える仕草をする。一挙手一投足に華があるな。


「特に問題ございません。マスター。」


 きりっとしてこちらを見つめるメティス。油断した。完璧に目があってしまった。どぎまぎとしている心の中まで見透かされている気がする。やりづらい。


「そ、そうか。じゃ確認を続けよう。」


 改めて立方体に近づくと一つ一つ面を見ていく。ガチャは単発のものと11連続のものの2種類あるみたいだな。よくスマホゲーであるやつだ。精霊ガチャと女神の祝福ガチャは11連ガチャが無く、単発のガチャだけみたいだな。精霊ガチャが一回1万pts。女神の祝福ガチャは一回10万pts。

 女神の祝福は10万か。いつか試してみたいものだ。ptsという表記は恐らく何かしらの単位だが、他のガチャは一回100pts、11連ガチャで1000pts。11連ガチャのほうが一回分お得だな。

 まぁここら辺は相場感がなんともだな。まずptsの入手方法を把握しなければ。


 立方体を眺めていると、後ろから声がかかる。


「マスター。後方で石版のようなものを発見しました。」

「ナイスだ。メティス。」


 後方に振り返り数歩歩くと急に5mほどの高さの石版とその手前に1mほどの高さの石版が2枚現れる。これは・・・と石板の全景を眺めていると、大きい石版の上部に光る文字が記述されていることに気づいた。


 Achievement


 英語かい。意味は実績、功績、偉業とかだったかな。スマホゲーぽいな。続けて光っている文字を読む。


 初めてモンスターを倒す。・・・100pts

 スライム族のモンスターを1匹倒す。・・・50pts

 初めてURスキルを取得する。・・・500pts

 初めてGRスキルを取得する。・・・1000pts


 どれも心当たりがあるな。これはスマホゲーでいう実績ポイントシステムのようなものか。この世界で達成した実績でptsを取得できる。つまり、ガチャが引けるということだな。


 気づくとAchievement以外の文字から光が消えていた。その代わり石版の最下部には次の文字が光っていた。


 所持pts:1651pts


 合計ptsがここに出てくるってわけだろうけど、合計が合わないな・・・端数の1ptsはどこから来たんだ?改めて石版を見渡すが目につく記述はなかった。アマテラス。ヘルプ機能は基本だろうがよ。


 じゃ次だ。小さい方の石版の一つに書かれている記述を見る。


 Charges

 100000W → 1pts


「これは・・・」

「課金のようですね。Wとはこの世界の多くで流通しているウェンという通貨のことかと。10ウェンが1円程度の価値があります。」


 メティスがサポートしてくれた。課金まで再現したのか。。。まぁスマホゲーから課金は切っても切れないとは思うけど。にしても1pts1万円か。なかなかぼったくってくれるなアマテラス。回収した金は何に使うつもりだ。


 続いてもう一つの石板に目を落とす。


 Job

 なし


 ○下級

 剣士lv1、商人lv1、遊び人lv1


 ○中級

 ナイトlv1


 これは明らかにジョブに関連するものだがなんだ。よくわからないな。一番下のナイトの文字に触れると、一番上のなしの文字がナイトに変更された。


「マスター。おそらくこれは任意にジョブ変更できる石板となっているようです。今ステータスを確認しましたが、ジョブがナイトに変更されました。この石板だけで一つのスキルとして確立されてもいいほどのものなのですが・・・」


 任意にジョブが変更できるのか。なかなか便利そうだ。


 石板の他に何かあるか探してみたが何も見当たらない。メティスも何も見つけられていないようだ。ひとまずこんなところだろう。



「メティス。この空間では時間が止まっているらしい。どうせならこの場で今後の方針を検討したいと思う。問題ないか?」


「問題はありません。マスター。」


 強い意志を持ってメティスが見つめ返してくる。び、美少女と二人きりの空間で永遠とお喋りできるというのはかなり問題がありそうだが。


「分かった。俺はこの世界の常識には疎い。詳細な説明が欲しい場面もあるが、流石に覚えきれないだろう。細かい理由は後から教えてくれれば問題ない。判断基準となる情報を教えてくれ。」


「了解しました。マスター。マスターのご信頼に応えられるよう、精一杯尽くさせていただきます。」


 だからやめろ。そんなまなざしで尽くすとか言うのやめろ。


「よし。じゃ最初はどうするかな。俺としては不確定要素が多いガチャを回してから出た内容によって方針を決めていったほうがいいかと思うが。なにか意見はあるか。」


「おっしゃるとおりかと思います。マスター。まずはガチャを引きましょう。ただ、どのガチャを引くかについて考慮が必要かと思います。当面の目標としてはガチャごとの特性、確率、中身を把握するためにも、精霊、女神の祝福以外のガチャを早々に試す必要があるでしょうが。」


「確かにな。ではスキル11連を引くのがいいと思うがどうだ?スキルが11個手に入るのと他のものが11個手に入るのは明らかに価値が違いすぎる。ptsが同じであるならば間違い無くスキルガチャを引くべきだと思うのだが。」


「同じくジョブガチャも同じことが言えるかと。ただ、私も検討致しましたが、このガチャには恐らくですが、ハズレがあります。」


「ハズレか。ガチャならありそうな話だが。なぜそう考えた?」


「マスターの記憶では初回限定ガチャを実施した際、剣士がレア度Rで出て来たことをお覚えでしょうか。」


「あぁ。確かに。それがどうかしたか?」


「はい。この世界のジョブは下級、中級などと区別されていますが、下級である剣士なのにレア度はRでした。つまり、ガチャから排出するものにハズレが無いと仮定した場合、ジョブの11連ガチャを引いた際、最低でもRランク以上の玉しかで無いこととなります。

 そうであるならば、1ptsあたりのバランスが明らかに崩壊しています。この場合、同一ptsならばジョブガチャ以外引かないことをご提案いたします。

 恐らく、同一ポイントのガチャのなかではアイテムが一番外れが少なく、次点で防具、武器、スキル、ジョブの順かと想定します。」


「なるほどな。確かにハズレがある可能性が高い。だがアイテムは何となく分かるが、その並びの根拠は何だ?特に防具と武器の順がよく分からないが。」


「ハズレの件にしてもあくまで推測の域を出ませんが、問題は絶対数の違いです。1人の人が装備できる防具は兜、鎧、小手、腰、靴、アクセサリーなど多岐に渡りますが、武器は持てても一個か二個。この世界に存在する物の数が圧倒的に異なるのです。」


「武器もかなり多様な物があるイメージがあるが。アクセサリーともなるとその数はとんでもないだろうな。なるほどな。聞けば聞くほどハズレある説は間違いなさそうだ。


 アマテラスがこんな簡単なバランス調整ミスをするとも思えんしな。と思いつつも、失敗を誤魔化そうとするアマテラスの姿が思い浮かぶ。思え無くも無い。か?。。。。


「まぁよし。ハズレがある前提で検討しよう。そうであった場合、やはり防具11連か?


 メティスが答える。自分の提案が通ってうれしいのか若干明るい顔だ。


「ご推察の通りですマスター。いつどれだけガチャが引けるか不明、この世界、そして私というスキルがある状況で、マスターに一番適切なガチャは現時点では防具ガチャかと思われます。」


「よし、じゃひとまず防具11連ガチャだ。」


「・・・」


「マスター?」


「メティス。アレはやはりやらないとダメだろうか・・・」


「・・・・・マスター。やらないで後悔するより、やって後悔した方がこの場合無難かと。」


「そうだメティス!メティスも実体を持っている・・・・」


「マスター!やらないで後悔するより!やって後悔した方がこの場合無難かと!」


「な、なんで2回言ったんだ?」


「大事なことなので2回言いました。」


「・・・」


「・・・」


「あぁわかったよ!やるやる!やります!男ならやらないで後悔するより、やって後悔だ!いくぞ!」


『愛と青春の煌めきーー!』

『今吹き荒れよ!!!』

『愛のラブラブハリケーーーーン!!!!』


 行き場の無い感情を拳に込めて、立方体を全力で殴りつける。立方体は前回と同じように辺りに跳ねまわり、リョーガを光の玉で押し流す。


「くそ!さぁ!どうだ!」


 光の玉の中には一際輝く紫の玉が一つ存在した。キタ!URゲットだな!さてさて、何が出るかな・・・紫の玉に手を伸ばす。


<アクセサリー:ガッツの腕輪を手に入れました。>


「素晴らしい!ガッツの腕輪は死に至るダメージを受けた際に一度だけ命を取り止める効果があります!今のマスターには願っても無い効果です。」


 め、メティスのテンションが高い。よほどの品ということか。URだもんな。良し!これでまた死のリスクから遠のいた。死んでしまったらそこで終わりだ。死から遠ざかるのは素直に嬉しい。


 さて他はどんどん確認だ


 N:ポーション

 N:麻の服

 N:麻の腰巻

 N:木の靴

 N:皮の帽子

 R:鎖かたびら

 R:旅人のローブ

 R:スモールシールド

 SR:銀の胸当て

 SR:戦士のグリーブ


「防具ガチャなのにポーションが出ましたね。」


「あぁ。メティスの言う通り、これがハズレなのかもしれん。」


 せっかくだ。一度最善の装備を整えてみるか。にしても・・・


「メティス、最善の装備の組み合わせをおしえてくれ。あとは着方が分からんのだが。」


「マスター。マスターが所有しているインベントリではマスター自身を中心とした半径3m以内の任意の位置に物品が取り出せ、格納できます。つまり、装備は装着した状態で取り出せます。もちろん、インベントリも私の制御下ですのでマスターはご要望をお伝え頂くだけで結構です。」


 そういい終わると同時に俺の装備が換装された。便利だ・・・今後、俺から着替えという概念が無くなるわけか。至れりつくせりメティスさんだ。


「メティス、装備の一覧を見せてくれ。」


 右手:木の剣

 左手:木の盾

 頭:皮の帽子

 胸:銀の胸当て

 胴:麻の服

 腰:麻の腰巻

 足:戦士のグリーブ

 アクセサリー:ガッツの腕輪

 外装:旅人のローブ


 一覧を横目に自分が装着しているものを確認する。自分がどんな格好をしているか。何がどんな見た目かくらいは把握しておきたい。鏡が無いのは不便だな。。。


「マスター。ステータス画面にてマスターのお姿を第3者視点で確認出来るようにできますが、いかがいたしますか。」


 もうメティスがすごいのかステータスがすごいのかよく分からんな。まぁ今回は恐らくステータスか。


「わかった。頼む。」


 しばらくすると目の前にウインドウが現れ、ウインドウの中に自分の姿が現れる。黒い髪の毛。黒い瞳。若干色白。身長は176cm、体重72kg。そういえば、俺って若返ってたんだな。。。俺の記憶からするともう少しヒョロかった気がするんだが、こんなもんだったか。冒険者。という格好ではあると思うが、武器も防具も傷一つなく、汚れもゼロ。これじゃ貴族か何かが格好だけ冒険者になった様なものでは無いのか?


「メティス。この世界の一般人から見て、この格好に違和感を持たれることはないか?傷一つない冒険者とか違和感たっぷりだと思うんだが。」


「この世界には生活魔法と言うものがあります。汚れを落としたり、見た目をキレイにする程度でしたらごく一般的なこととなりますので、支障はないかと思われます。」


「ということは、冒険者、浮浪者、盗賊などであってもある程度の見た目と清潔さがあると言うことだな。」


「はい。この世界がマスターの住まれていた世界のイメージとは大きく異なるかと。」


 それは素晴らしいな!魔法がある文化の特権というやつか。現代にいたホームレスも実はそれなりに清潔にしているらしいが、それよりもはるかに清潔なんだろう。いい世界だ。


「よし、少し逸れたが防具に関してはこんなとこだな。メティス、この後の方針だ。ガチャはかなり強力なものであることを実感として得た。ptsの効率的な運用が必要だろう。基本は11連を実施する方針で進めたい。」


「了解しましたマスター。私もそう提案しようと考えておりました。」


「よし。じゃぁ次だな。ガチャの結果を踏まえて今後の方針を提案してくれ。」


「了解です。マスター。スマホゲーのスキルにより、最低限の防具は揃えられたかと思います。次は出来る限りの身体能力を手に入れた方が良いかと思われます。」


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