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幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
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34.4つのもの

早ければ日曜日には投稿します。

第1章はどうにか年末までに仕上げたいと思います。

 お前は死ぬ。まるで冗談みたいな話だ。ハヅキも自分の病名を明かされたとき、こんなだったのだろうか。リヴも母親から病気の話を聞いたとき、こんなだっただろうか。いや、ちがうな。俺にはまだ希望がある。そのために目の前の神が4つのものをくれるという話だ。彼女達にあっただろう絶望とはわけが違う。


「早速ですが、その4つのものとは何ですか?・・・何だ?」


「4つのもの。とは言ってもどれもこれも物ではないんだけどね。」


 物ではない。ということはスキルやジョブというような物とは形容しがたいものということか。


「一つ目はこれよ。はい。どうぞ。」


 言葉の意味について考えていると、唐突にアマテラスが宙を指差した。光の玉がそこに現れ、声と共に俺のほうに向かってくる。


 光の玉をつかもうと手を伸ばすが、指先にふれると、光の玉は俺の身体に吸い込まれるように消えてなくなった。


 ふいに頭の中に声が響く。


 〈ジョブ:剣聖を獲得しました。〉


 これは・・・


「ハウルというものと戦うんでしょ?だったらそのジョブが一番よ。なんていっても最上級ジョブの一つですからね。」


 さ、最上級ジョブか。下級、中級、上級の更にその上。今なれるジョブでも中級のナイトが最高だ。それより上の上級をさらに超えている。願っても無いな。


「まだこの世界に来て間もないあなたにとっては過剰戦力でしょうけどね。まぁあなたの考えてる通りに事が進んだとして、この後、まじめに剣聖のジョブレベルを上げたとしても五分かそれ以下ってとこね。精進なさい。」


 それもお見通しか。全く。ハウルはどんだけ強いんだ。嫌になるな。


「残り3つはあなたに必要な情報をあげる。」


「情報?まさかハヅキの情報とかか。」


 ハヅキの情報ならば俺が今何よりも欲しい情報だ。剣聖にハヅキの情報。それだけでも10万ptsにお釣りがくる。


「一つはまさにそれね。ハヅキの情報をあげる。なにせ、ハヅキをこの世界に送り込んだ張本人ですからね。」


 そうか。そうだった。ハヅキのことを聞くならアマテラスに聞くのが一番なのだ。なぜこのことに・・・あぁ。幼女のアマテラスが拒否してたし、聞く時間もくれなかったからか。


「ハヅキは今メギス大陸というところにいるわ。」


「メギス大陸・・・」


 言い方からするとこことは違う大陸なんだろう。遠くなければいいが。


「ある著名な人物に拾われて、今は修行の毎日ってところね。当分は身に危険が迫るということもないから安心しなさい。」


 そうか。無事か・・・よかった。心に暖かい何かが広がっていく気がする。あぁ。嬉しい。素直に嬉しいな。


「ふふふ。いい顔ね。喜んでくれて良かったわ。安心したでしょう?あなたずっと心配してたものね。ハヅキの無事は私が保証するわ。だからね。」


「だから?」


 アマテラスの声のトーンが落ちたことが気になった。声のトーンが落ちるということはこれが本題ということか。俺が若干身構えたのを察したのか、アマテラスは明るい声で続けた。


「リョーガ。あなた1年でいいからハウルとやらについて強さを手に入れなさい。間違ってもメギス大陸に行こうなんて考えちゃダメよ?」


 ・・・突拍子もない話だ。1年という期間も謎だし、強さという表現も曖昧すぎる。


「それ以上、詳しくは教えて頂けないということでよろしいでしょうか。」


 アマテラスは優しい笑みを浮かべてこたえる。


「そうね。察してくれてありがとう。これでも大サービスなんだから諦めてくれると助かるわ。強さと言っても人としての強さだからね。意味を履き違えないように。」


 無理だと言ってもさり気なく教えてくれるあたり、緩いのか優しさなのか。まぁわからんな。


「では残り2つはなんでしょうか。」


 敬語かそうでないか口調が安定しない。話していくうちに敬語になってしまうのは本当に相手を敬ってるからなのかもしれないな。


「そうね。次の一つは叡智のスキルについてよ。」


「叡智。メティスについてですか?」


 メティスの様子を伺おうと後ろを振り返るがメティスは存在感を消すように膝をついて伏せた状態から微動だにしない。なぜだか、電源が落ちてしまったロボットのように感じた。


「・・・そうね。そのメティスについてよ。」


 アマテラスの言葉にひどく不安に駆られるが、メティスには何の反応もない。次の言葉を待つ。


「そのスキルは偶然で手に入れられるものではないの。100%人為的なものよ。私でさえ誰が、何の目的でそのスキルをあなたに与えたのかわからないの。人為的なものである以上、あなたがそのスキルを持っていることに何かの意味があるわ。くれぐれも使い方を誤らないように。」


 叡智のスキルが人為的に。か。俺に叡智のスキルを持たせることによって誰かが得をする?検討もつかないな。とはいえ、使い方を誤らないように。か。むしろ正しい使い方さえいまだに模索中だ。


「そして理由がわからない以上、それが悪意であった場合に備えて、そのスキルが無くても生きていける強さを身につけたほうがいいと思うわ。」


 これはまぁ納得だ。メティスに頼りっぱなしでダメ人間になってしまう可能性だって大いにある。咄嗟の判断が俺の意図しない結果を呼ぶことだってある。そこに人為的なものがある以上は警戒度はさらに上げなくてはな。


「最後の一つは教訓ね。あなたが生きていく上での教訓と思ってありがたく聞くように。」


 おどけたような表情で胸を張るが、すぐに神妙な雰囲気をだし、顔を若干しかめさせる。


「生きなさい。どんなに辛くても、苦しくても、悲しくても、無気力でも、痛くても、涙が止まらなくても。生きなさい。あなたが頑張れば、早ければ4、5年後には私に会えるはずよ。そのときに一つだけ願いをかなえてあげるわね。なんでもというわけにもいかないけど、神様なんだからそれなりのことができるわよ?」


「なかなかハードな人生ですね。今回の人生は。」


 か、神様に励まされるって相当いばらの道ってことだよな・・・。気になるが、こんだけボヤかしているんだ。これ以上聞いても無駄だろう。願いか・・・そのときまでハヅキとあえてなければ間違いなくハヅキと再会することを願うだろうな。


「苦しみを経験した方が、人は人に優しくなれるらしいわよ?」


 人に優しくなんかならなくていいから、苦しみなんて経験したくないもんだけどな。


 アマテラスはいつの間にか腰かけていた立法体から飛び降りると、ふと考えこむような仕草をして話を続けてきた。


「一つだけ忘れてたわ。あなたが取得した救うものというスキルだけど・・・それ、私があげたものじゃ無いからね。別の神が授けたものよ。」



 別の神か。アマテラスが唯一神とか絶対神とかそんな存在では無いだろうとは思ってたが、イムサーシャの信仰だってあるわけだし、神様は何人もいるとみていいな。


「こちらの出どころは分かっているのですか?」


「まぁね。出どころは問題無いわよ。」


「出どころ、は。・・・ですか。」


「うーん。あんまりヒントを与えすぎるのも良くないんだけど、まぁこのくらいならいいでしょう。

 そのスキルはあなたの心を糧に進化するスキル。あなたがこうしたい。こうなりたいと思った気持ちの通りに進化する。それが善だろうと悪だろうとね。だけどそのスキルはあなたへも影響を与える。善い行いであればもっとそれをするように、悪い行いでればもっとそれをするように・・・まぁ注意することね。」


 注意するように。て言ってもな。心を糧にするなら注意しようもないじゃないか。まぁ心にとめておく程度しかできないな・・・せいぜいスキルに振り回されないように頑張るしかないだろう。


 アマテラスが近づいてきて、子供をあやすように俺の頭を撫でた。やさしく、母親を思わせるような手つきでくすぐったささえ感じた。


「じゃあね。4、5年後よ?ちゃんと生きて私に会うように。」


 一瞬だけ目を閉じると、目の前からアマテラスの姿が消えていた。


 圧倒的な存在感が失われたことによる喪失感に何故だか少し寂しさを感じていた。



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