33.アマテラス
次は11月16日(金)の投稿になります。
私生活が忙しく、当面は今のペースでの投稿で進めたいと思います。
静寂がスゲー空間を満たす。空間には男女2人と尻餅をついた幼女が一人、
いずれも静止し、その首をかしげている。
「・・・リョーガよ。すまぬが、もう一度言ってくれぬか?神の身としてはあり得ぬことではあるが、耳の具合が悪いらしい。いや、冗談か。貴様、先ほどの腹いせに妾に冗談をいうたな。剛腹な男よなぁ。その剛腹さがあれば貴様になびくおなごの一人や二人・・・いや、おったのう。お前に心の底から惚れ込んだおなごが一人。」
話がしっちゃかめっちゃかだ。さすがに神様でもこういうときは動揺するもんなんだな。
「主旨がずれております。アマテラス様。私は冗談ではなく、女神の祝福ガチャにてアマテラス様をおよびしま・・・」
「だまれ。小僧。」
アマテラスが俺の言葉を遮る。剣呑な雰囲気を醸し出し、その目はムシケラを見るような哀れみと侮蔑を物語っていた。
「冗談ではないというならば、妾に嘘をついたということであるな。我が名はアマテラス。神の中の一柱。この世で最も尊い存在である神に対して、貴様は虚偽を働いたということぞ。」
圧倒的。超越者が醸し出す圧倒的な威圧感に、いつの間にか膝をつき、頭を下げていた。目の前の存在が神だということを改めて思い出させられる。もう地面しか見ることができない。言葉を発している神の顔を仰ぎ見ることはすなわち、死を意味することと本能が理解していた。
「妾は慈悲深い。もう一度口を開くことを許そう。リョーガよ。ただし、その言葉に偽りあらば、一度亡くしたその命、再びわが手で摘むんでやろう。」
アマテラスの言葉が終わると、口が動かせることを感じた。俺は嘘をついていない。ありのままの事実を述べただけだ。この場を取り繕うためにも嘘でもなんでもつきたいものだが、事実は事実だ。女神の祝福ガチャ以外にアマテラスを呼び戻す方法も全く思いつかない。嘘をつきようがない。
「実績を・・・実績をご確認いただき、私がどれだけptsを取得したかご確認いただければ、私の正しさがわかるかと思われます。」
・・・
再び空間を静寂が満たす。
気づけば心臓が止まるかというほどに空間を満たしていた威圧感が綺麗になくなり、身体が自由に動かせることに気づいた。
ゆっくりと視線を上に向ける。まず見えるのは袴だ。アマテラスが来ているのは巫女さんが着ている朱色の袴が見えるはず。・・・白いな。ギョッとするが、速さを変えずにゆっくりと視線を上に向けていく。袴、袴、袴、まだ袴だ。これって・・・
アマテラスの身長からすると俺の座った視線とほぼ変わらないくらいかやや高い程度。それが顔のある位置は完璧に上、見上げる形になって俺の視線は止まった。
だ、だれ?
頭の中をを疑問符が飛び交う。神。には違いないだろう。
全体的に色素が薄く、髪の毛さえ淡い銀色。服装は巫女の服装から魔改造されたようなアマテラスの服装にかろうじて通じるものがある。
驚いたように目を見開き、口を両手で抑えている。
「あ、あなた。」
鈴の音のような美しい声が聞こえた。あまりの美しさ、声に一瞬呆けたが、我に戻り視線を地面に戻す。
「は、はい。」
声が裏返る。アマテラスとは完璧に別物だ。傍若無人な振る舞いはいかにも神なアマテラスだったが、こいつはなんだかここにいるだけで他を納得させるような、言うならば存在が醸し出す説得力が違いすぎる。街中で芸能人でも見かけたような感覚。その何倍もの強烈な感覚を感じている。同じ空間に存在しているという認識がうまく持てない感覚だ。そういった意味でアマテラスの数段上の存在に感じた。
「あぁ。ごめんなさい。もういいのよ。ほら、早く立って。私は怒ってなんかいませんよ。」
よ、幼女の次はお姉さんか。なかなか驚かせてくれる。神というものはこんなもんなのか。アマテラスは一体どこに行きやがった。
俺がもたもたと居住まいを正していると、目の前の神が続けた。
「なるほどね。あなたの記憶は見させてもらったけど、とんでもないスピードでの成長の理由はよくわかったわ。まぁなんというか。あなたも色々な人、いえ、人では無いわね。まぁ色々な存在に目をつけられたものね。」
あ、アマテラスと違い、ノータイムで記憶を読み取るのか。やはり神としての能力も違うんだろうな。こうしてみるとこの神がザ・神って感じがするな。アマテラスは見た目も幼女だし、神と言われても容姿から言って説得力がないな。
「まぁなんて言っても私の力を分けた分身みたいなもんだからね。能力の格も違うわよ。でも、ベースは私が幼いころの姿だから、あんまりぶーぶー言うと怒っちゃうわよ?」
「え?」
「ん?」
えーと。思っていることが筒抜けということでよろしいでしょうか。
「その通り、察しが早いわね!さすが私が認めた男!」
さすがにやりづらいな。っとこれも聞こえているか。さすがに神様だ。人知を超えている。完璧にお手上げだ。
「まぁ神様相手に交渉しようなんて諦めたほうがいいわよ?でもまぁやりづらいという気持ちはわかるし、話している間くらいは考えを読まないであげる。」
・・・卑猥なことでも考えて、試してみようか。とか考えてすみません。とりあえず読まない。読まない。読んでも気づかないふりをしてくれるってとこか。
「そのとーり!」
「え?」
「あ。」
慌てて口を抑える。仕草が可愛らしいな。親戚のお姉さんと話しているような
暖かい雰囲気を感じる。
「呼び方はアマテラス様のままでよろしかったでしょうか。」
「うん。でも様はいらないし、敬語じゃなくても大丈夫だよ。リョーガ。」
敬語じゃなくてもいいと言われてすぐ切り替えられる人間がどの程度いるだろう。少なくても俺はその類いじゃない。だが、努力はしよう。神様が望んでいるんだからな。
「では、アマテラス・・・実績は確認したということでよろしい・・・よかったか?」
「ふふふ。言ったとおり、リョーガの記憶はみせてもらったから、女神の祝福ガチャが引けたことも納得よ。」
「では!」
「そうね。ちゃんとあなたにプレゼントをあげるわ。だけどね。ちょっと私の想定より早すぎるのよね。もっとあなたがこの世界を知り、人と出会い、成長してから手に入る。そんなものを予定してたの。だから今回はあなたに必要なものを4つあげるわ。」
「4つも・・・ですか。理由は教えていただけ・・・くれないのか?」
「じゃこれもサービスで教えてあげる。この4つがなければ・・・」
「なければ?」
「あなたは死ぬわ。」




