表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
3/37

3.スマホゲー

 青く光る立方体が暗い空間を照らしている。立方体は明滅していて、生命の鼓動のようにも見える。音は聞こえないが不安になるような静けさじゃない。


「ここは・・・」


 あたり見回して現状を把握しようとするが、全く見覚えのない景色だ。


「待たせたな!小僧!わしが来たぞ!」


 静かな空間の中を特大の声が響きわたり、俺は口から心臓が飛び出そうになる。いや、でないけど。反射的に声のする方を向いた。案の定、予測通りの人物?神物がいる。


「お主のアマテラス様じゃ!来てやったぞ!私がおらんくて泣いておったのではないか?寂しかったであろう。そうであろう!だが、お主の希望通り来てやったぞ!ほれ、咽び泣くがよい。」


 て、テンション高すぎる。キャラが変わってるなこの神様。何があった・・・。とはいえ、神様だ。仰々しいほどに丁寧に接しておけば失礼はないだろう。機嫌を損ねられても困る。


「アマテラス様!こんなにも早くお会いできるとは僥倖にございます。大変申し訳ありませんが、ここは一体どこなのでしょう?お教えいただけないでしょうか。」


 丁寧すぎるか?冷静に答える。だがアマテラスとのテンションの差は開くばかりだ。


「ふふふふふ。よくぞ聞いてくれた!こここそがお主の記憶を頼りに遊びつく。。。げふん。研究しつくした、スマホゲーを再現した、スマホゲー空間。略してスゲー空間なのじゃ!!」


 幼女が目の前で腕を組んで踏ん反り返っている。こいつ。ネーミングセンスのカケラも無いな。しかもスマホゲーを遊び尽くしていたらしい。なんて神だ。


「さすがアマテラス様です!荘厳たるこの雰囲気。まさしく神の為せる業。敬服いたします。

 無知な私にお教えください。この素晴らしい空間では一体何ができるのでしょう。」


「スゲー空間なのじゃ!」

「はい。素晴らしい空間でございます。」


「スゲー空間なのじゃ!」

「はい。ですから素晴らしい空間と。」


「スゲー空間!」

「・・・・・・・スゲー空間です。」

「がはははは。そうであろうそうであろう。」


 アマテラスは空中でふんぞり返って笑っている。うぜーーーーーー。けど社会の無慈悲に晒され続けた超絶ヒラサラリーマンにはどうってことないな。。。。虚しい。ひとしきり笑った後、アマテラスが説明を始める。


「妾が作ったこの最高傑作はな!スマホゲーを忠実に再現している!時にリョーガよ!お主、スマホゲーとはなんたるか、理解しておるかのう。」


 スマホゲーとはなんたるか。それは。


「ガチャですかね。」

「さすが妾のリョーガ!!そうだガチャだ。スマホゲーはガチャに始まってガチャに終わる!ガチャが無いなんてスマホゲーでは無いのじゃ!」


 いや、俺はお前のものになったつもりはないが。そしてガチャがないスマホゲーもあるぞ?


「では早速じゃ、そこの召喚石に触れてみろ。」


 言われるがままに部屋の中央で明滅する立方体に手を触れた。するとそれぞれの面が一色ずつ違った光を放ち始める。


「説明用として、一回限定初心者応援10連ガチャを用意した!ピンク色のがそうじゃ。面に触れてみよ。」


 言われてピンク色の面に触れると、その面がリョーガの前に回転し、固定される。


「さて、ここからじゃがな。ガチャを引くにあたり、詠唱が必要となる。詠唱を終えたら目の前の面を手で思い切り殴りつけてみよ。では準備は良いか。妾に続けて詠唱せよ。」


『愛と青春の煌めき』

『あ、愛と青春の煌めき』


『今吹き荒れよ』

『今吹き荒れよ』


『愛のラブラブハリケーン』

『愛の・・・・』


「ちっがーーーーーーーう!淡々と言うでない!全身全霊をかけんばかりに勢いを込めるのじゃ!魂じゃ!魂!タマシイ!チャマシイ!!!」


 チャマシイって・・・・あ、暑苦しい。やるしかないのか。覚悟を決めて拳を握る。


『愛と青春の煌めき

 今吹き荒れよ

 愛のラブラブハリケーーーーン!』


 唱え終わると同時に目の前の立方体を殴りつける。死ねる。40近いおっさんには拷問以外の何者でもない。ヤケクソで全力で殴った。立方体は何もないところに飛び、何かに跳ね返ってあらぬ方向へ、また何かに跳ね返って別の方向へと飛び回る。俺の周囲をしばらく飛び回ると、ふと元いた場所に戻る。正面から見て上の面が開くと同時に手前に倒れて来た。中からは様々な色の光の玉が現れ、殴られた反撃とばかりに俺を吹き飛ばしてくる。


 本当に必要なのか。。。これ。


「さてさてー何が出るかのう。ちなみにじゃが出る物にはこの世界のアイテムランクと同じものを採用した。下からノーマル、レア、スペシャルレア、スーパースペシャルレア、ウルトラレア、レジェンズレア、ゴッズレアじゃ。まぁ、N、R、SR、SSR、UR、LR、GRとも表すかのう。玉の色でランクがわかる便利設計もつけておる。下から、白、銅、銀、金、紫、黒、虹じゃな。まぁ紫以上なんて早々出ないようにしておいたがな!」


 と、ドヤ顔で解説するアマテラスだったが、


「アマテラス。。。様。どう見ても紫の玉が2つはあるのですが。。。」


 アマテラスの動きが止まる。いや、止まった様に見えて目だけで玉の色を確認している。


「あ、あぁ!最初は妾からの選別として良い物が出るようにしていたのを忘れておったわ!

 き、気にせず、玉を手にとってみるがいい。」


 嘘だな。動揺しまくってるじゃないか。とはいいつつも、変に指摘して取り下げられてもこっちが困る。貰えるものは貰っておこう。まずは紫の玉に手を伸ばす。紫の玉に手を触れると、玉は突然消えて無くなった。脳内に声が響く。


<スキル:ステータス(UR)を取得しました。>


「まずはステータスじゃな。URじゃと他の転生者たちが持っておる物よりは若干見える項目が多い感じじゃ。」


 確認は後だ。ひとまず一通り手に入れてしまおう。次の紫の玉に手を伸ばす。


<スキル:インベントリ(UR)を取得しました。>


「次はインベントリか。これも他の転生者のものより性能が良いな。」


 説明が適当だな。まぁいい。


「よしよし。この程度であったら特に大きな影響もないであろう。問題無しじゃ。ほっ。」


 アマテラスが盛大な独り言をはいている。主要な玉を回収したので流れ作業で次々と玉を回収していく。内訳は次の通り。


 N:ポーション

 N:木の剣

 N:木の盾

 R:スキル 剣術

 R:ジョブ 剣士

 R:ジョブ 商人

 R:ジョブ 遊び人

 SR:ジョブ ナイト


 ガチャで武器防具やアイテム、スキル、ジョブも手に入るのか。ふむふむ。


「ん?お主一つ拾い忘れておるではないか。」


 言われて自分の足元を見下ろすと一つの白い玉があった。あれ、見落としたか・・・と、手を伸ばす。

 手を伸ばしたが瞬間に気づいた。ん?どう考えても11個目だろ?


 白い玉に手を触れると玉から強烈な光があふれ出し、あたりを埋め尽くす。目を開けていられずに咄嗟に光から顔を背ける。しばらくして、光が収まるのを感じるとうっすらと目を開ける。そこには虹色に輝く玉が神々しく浮かんでいた。アマテラス様、これは・・・と言いかけると虹色の玉は意思を持つかの様にリョーガの胸に吸い込まれていった。


<ホーリースキル:叡智を取得しました。>


 虹色の玉ってことはGR。最高ランクってことだ。こんなもの手にしていいんだろうか。そう思いアマテラスを見ると、その顔は厳しく虚空をみつめていた。


「アマテラス様?」


 声をかけてもアマテラスは微動だにせず、宙に浮かんでいる。ただならぬ気配にリョーガはそれ以上声をかけるのを躊躇した。注意深く見つめると、アマテラスの口が動いているのがわかる。それは次第に大きな声となり、俺の耳に入ってきた。


「えいち。叡智じゃと?そんなスキルは聞いたことがない。ガチャから排出するよう設定した覚えもない。しかもホーリースキルじゃと?・・・だとすればすでに・・・」


 ふとアマテラスはこちらを向きなおし、明るい雰囲気を取り戻す。


「まぁ良い!一歩リードと言ったところだの!気にするでない!」

「一歩リード?私は何かと競っているのでしょうか?」

「む!!!い、いや、言葉の綾じゃ!気にするでない!ほら、ガチャも終わったし、そろそろ現実に戻るのじゃ!この空間にはステータス画面から来れるでの!時間は止まった状態になるため、ちょくちょく来るが良い。ほかにもいろいろ機能をつけておいたでの!ではまたの!妾も忙しいのじゃ!」


 空間の明かりが消えていく様に意識が埋没していくのを感じる。俺は誰かと競わないといけないのか。何をどう競うのかわからないが、なかなかに不安にしてくれるな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ