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幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
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23.強化方針と魔法

『斥候系のジョブの基礎とも言えるスカウトを Masterするのが良いかと思います。』


『斥候系か・・・となると、索敵とかそんな感じのスキルが目的か?」


『はい。もちろんそれも一つですが、能力の器用さが低すぎますので、それを補うためにもスカウトが一番適しているかと。』


『器用か・・・あまり重要そうな感じがしないがどういう効果があるんだ?』


 森の中をイムレストに向けて歩いている。比較的明るく、足場の沈みこみは相変わらずだ。魔物も動物さえ見当たらない森の中、ただ一人歩くというのはどう見えているのだろう。いや、見ている人なんていないだろうが。メティスが動物や魔物を見つけたら教えてくれる段取りだ。俺が起きてからの成果はゼロ。寂しい限りだ。ここはスメラギ地方の中では辺境だという。辺境ということばからすると、森なんかに入れば、動物や魔物がわんさか出てきそうなもんなんだが。イムシスを出てから数日は経っているはずで、人里が近いということが理由にはならない。イムレストからしても数日かかる距離だからだ。


『マスター。恐らく器用という言葉の本質を考えれば自ずとわかるかと思われます。』


 話は能力の器用という項目についての説明に戻る。


『器用という言葉の本質?』


『マスターが世界でも細かいものを作ったり、何かの動作を再現したりと、そういったことが出来ることを器用と表現していたかと思います。これはつまり、集中力が高い。ということと知覚能力が高いということです。』


『集中力はわかるが知覚能力というのはいまいち意味がわからないな。』


『極端に言うと力加減の上手さになります。この場合、手加減という意味ではありませんのでお気を付けください。自分の力が外部に与える力がどれだけのものか事前に知覚する。外部から与えられた力が自分にどれだけ影響を与えるか知覚する。それが知覚能力です。経験によるものも勿論ありますが、自分の身体がセンサーとなって知覚する際に、その正確性が高くなる、精度が上がるということになります。』


 な、なんか少しだけ俺がやらかしたことを責められてる気がするな・・・怒っているような雰囲気を感じる。


『な、なるほど。それでも優先度が一番高くなる理由がいまいちじゃないか?索敵系のスキルは確かに有能だと思うが、それだけだと他にも優先度が高いものがある気がするんだが。』


『いえ、理由はまだあります。スカウトから派生するジョブにも魅力がありますが、なにより、さきほど知覚能力と申しましたが、この意味には知覚スピードも含まれます。反射神経と言った方が伝わりやりやすいかもしれません。』


『反射神経が鍛えられるってことか。なら圧倒的に優先度は上がるな。』


『はい。反射神経云々のレベルの話ではない次元なのですが、り認識出来ない攻撃が認識出来るようになり、避けられないはずの攻撃が避けられるようになります。グリズリーウルフとの戦闘で攻撃がゆっくり感じたかと思いますが、あれは救うものの効果による器用の能力が上昇した結果です。』


 あ、あれがまさにそうか。確かにかなりのスピードで突っ込んでくる相手の様子がはっきり分かった。


『スカウトを取得、 Masterするのは納得だ。その方針でいこう。ただ、魔法や気法がせっかく使えるのだから、使えるようになっておきたいんだが。』


『それに関しては道中で慣れる程度でよろしいかと。また、マスター単独で一般的な魔法を実施する分には詠唱が必要となります。その場合はもちろん詠唱を覚える必要があります。私がサポートすれば今すぐにでも無詠唱は対応可能ですが。』


『そうか。やっぱり自分でも唱えてみたいもんだが、詠唱を覚えるのは大変そうだな・・・取り急ぎ試してみるか。メティス、身体の感覚を戻すのと、魔法のサポートを頼む』


『了解しました。マスター』


 身体の感覚が戻るのを確認する。右腕は元どおりに治ってるな。違和感は無い。


『よし、じゃどうすればいい?』


『先ほど一般的な魔法は。とお伝えしましたが、初めてですので、マスターの好きな通り念じて頂ければよいかと。私がマスターのイメージを読み取り具現化します。魔法屋での魔道具と同じ様に対応して頂ければ問題ありません。』


 あの時と一緒か。では遠慮なく。

 早速正面に左手をかざし、左手の延長線上に炎の塊が現れるイメージをする。


 ・・・特に何も起きない。


『メティス?』


『・・・マスター。出来れば、念のためですが水魔法にしていただけませんか?ここは森ですので・・・』


『あ、ああ。確かにそうだな。』


 俺がまたやらかしたときのことを考えてってやつかもしれんが、何か信用が無くなっている気がする。まぁ炎が引火したら大変だしな。


 同じように水の塊が現れることをイメージする。イメージするのとほぼ同時に水の塊が現れた。大きさはバスケットボールより一回り大きめだ。


『おおおおー!魔法だ!魔法の感じがする!』


『喜んでいただけたようで何よりです。マスター』


『メティス、この塊は動かせるか?』


『はい。念じて頂ければ。』


 右へ移動することを思い浮かべる。数瞬の間があり、右へ移動を開始する。まずはゆっくりだ。次は左。少しイメージするのに慣れてきたので、上、下と移動させた後は、球体から楕円、楕円から立法体、立法体から分裂して小さい球が9つ。それぞれが分裂してさらに小さい球が36個。


 そこまでやったところで球が地面に落ちてしまった。


『メティス?』


『MP切れです。マスター。操作する対象が多いほどMP消費は多くなりますのでご注意を。』


 地面に落ちた水の球を見る。濡れた地面といった様子で地面の色が変わってしまっている。魔法が解けたからと言って生み出した物体が消えるわけじゃないんだな・・・


『そうか。これは何という魔法なんだ?名前とかあるのか?』


『今の魔法に名前はありません。この世界の魔法とは、一定の効果を持たせ、効率化された魔法に魔法名がつきます。魔法の定義化というものになります。水魔法で言うとウォーターボール、ウォーターウォールが定義化された初級魔法になります。もちろん定義化された魔法であっても定義の枠に外れない限りはカスタマイズ可能です。ウォーターボールは水の塊を直線的に飛ばす魔法ですが、形や大きさ、推進スピードがカスタマイズできます。』


『なるほどな』


『ちなみにですが、一般の魔法使いは定義化された魔法を使うのが一般的となりますので、先ほどのようなことはよほど魔法の才能がある者か、長く修練した魔法使いにしかできませんので、ご注意ください。』


 これも納得だ。いくら効率がいいとは言え、俺のわずかなMPで先ほど試したような自由な動きができる魔法が使えるならば、初級、中級などという枠組みが崩壊しそうだ。


『剣術や魔法、ジョブレベルにしても本来であれば長い長い鍛錬が必要なものです。マスターはその理から外れているとは言え、自分の身に着けるためにも継続的な鍛錬が必要ですね。』


『そうだな。それ以外にも冒険者としてやっていくなら野営にも慣れていかないといけないだろう。メティスに任せれば万事解決な気もしないでもないが、自分でできるようになりたいところだ。』


『そうですね。良い心がけかと思います。』



 俺はイムレストの街に向け、鍛錬をしながら歩むことにした。スライムの戦闘で気絶したムートはたいして変わらない様子で、休憩時には放してやり、呑気な鳴き声をあげていた。いまのところ、この世界における俺の唯一の癒しだ。レベルなどの概念も今のところ感じられず、戦闘への参加は途中であきらめた。完璧なペットになってしまった。


 イムレストについたのは予定より5日遅い15日後。

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