19.次のガチャ
魔法屋を出ると外の光に目が眩む。少し昼を過ぎてしまったが、そろそろ街を出てしまいたい。
『メティス。他に俺の興味を引くものが無ければそろそろ出発だ。問題ないか。』
『はい。特にマスターにお目にかけるものはないかと。出発で問題ないものと思います。』
『よし。ではまた会話しながら行きたい。身体の操作を頼む。感覚系も全部カットで大丈夫だ。街をでたら教えてくれ。』
『了解しましたマスター。』
身体の感覚が無くなると同時に会話を始める。
『メティス。イムレストまでの道すがら、戦闘技術の向上に努めたい。自分の能力を自分がわかってないのも気持ち悪いしな。現時点での最高効率で強くなる方法を立案してくれ。対応力を上げるためにも魔法を使えるようにするのも一つだな。』
『了解しました。立案の前にガチャの方針を決めた方が良いかと思います。ガチャは運の要素がありますので先に方針を立案したとしても簡単に修正するような事態となることが予想されます。』
そうか。そりゃそうだ。ptsも1万ほどあったはずだし、11連ガチャを10回も引けるのは相当すごい。
『ではどのガチャを引くか決めるとするか。10回も引けるんだ。それぞれ一回ずつ引いて出たものによって方針を変えてもいい。何かオススメの方針はあるか?』
『ギャンブル要素が強いのですが、せっかく1万pts溜まっているのです。精霊ガチャを引くのも一つの手かと思います。』
精霊か。憧れるなぁ・・・RPGのようにサラマンダー、ウインディーネみたいなのがいるのだろうか。
『メティス。精霊について教えてくれ。この世界での精霊はどういう存在なんだ?』
『精霊をご説明するためにはマナについてご説明しなければなりません。マナも気や魔力、この場合魔素ですが、同等のエネルギーとなります。少々混乱するかと思いますが説明いたします。』
メティスからの説明を要約し、改めて気や魔力の特性について纏めると次の通りになる。要するに全部が全部同じことができるけどそれぞれ特性があって効率がいいものを使った方が楽して強力ですよと。
気功
動物の身体で生成。
エネルギー単体で見ると気。
行使すると技。
空気中に存在出来ない。
動物の体内に保管できる。気器にて保管
動物の身体を強化する際の強化効率が高い。
魔力
空気中に存在。
エネルギー単体で見ると魔素。
行使すると魔法。
空気中に存在できる。
動物の体内に保管できる。魔器にて保管。
別の存在に変換、作り出す効率が高い。
精霊力
動物以外の自然物が生成。植物も含まれる。
エネルギー単体で見るとマナ。
行使すると精霊術。
空気中に存在できる。
動物の体内に保管できない。保管する器官なし。
別の存在に働きかける効率が高い。
『余談ではありますが、エルフという種族は動物の例に当たりません。エルフの起源は精霊と人類が交配して生まれた突然変異種です。人類の気功を扱う機構が精霊力を扱う機構となっているため、気功が使えない種族となります。』
『・・・メティス。その事実を知っているのはこの世界に何人いる?』
『事実として知っているのはマスターのみとなります。』
おいいいいー世界の秘密を知っちゃったよ!どうすんだよ俺がポロっと口走ったら!やばい。どんどん人に言えないことが増えてく・・・泣ける。
『わ、わかった。で、精霊とはなんなんだ?』
『自我を持ったマナの集合体となります。マナ密度が高い場所で希に発生する存在で、下位の精霊であれば犬、猫と変わりませんが、最高位の存在は神に準ずる存在と言われています。』
神に準ずるか・・・さすがに神に会ったことがある身からすると感動とかないと思うが、精霊にはロマンがあるな。超常的な感じがする。
『で、精霊ガチャとなるとその精霊を召喚するようなもんだと思うんだが、精霊を呼び出して何か良いことがあるのか?』
『通常、精霊は人が踏み入ることが困難な場所にしか存在しません。ですが冒険者を中心とする多くの存在が求めてやまない存在となっています。それは精霊と契約することにより、精霊術が行使出来るようになるという点です。精霊術については先ほど説明したとおり、他の存在へ働きかける際の効率が高い。という特性を持っています。その特性を知らずに魔法と比べた場合、圧倒的な差となって誤解を与えてしまいます。つまり、精霊術は圧倒的に強大な力だというのが一般的な認識です。』
『なるほどな。事実を知らなければ、精霊術は魔法の上位存在と誤認してしまうのも無理はないな。』
『精霊ガチャと名付けてある以上、召喚した精霊と契約出来る可能性が高いと考えます。強力な精霊術士と敵対した時は今のところ逃げる以外に方法が無いというのも精霊ガチャを選ぶ一つの理由になるかもしれません。属性によっては全く抵抗ができないこともありますが、同じ精霊術である以上、何かしらの方法を模索することは出来るはずです。』
『そういうリスクの話ならば精霊術士がこの世界にどれだけいるのかという話になるが、まぁ対策しづらいリスクは潰せるときに潰しておくと言うのも考え方だ。今は他の物にptsを割いて後から精霊と契約したとして、その時に自分の能力を伸ばす方針が間違っていた。遠回りしていた。などとなってもげんなりだ。それに何より俺が精霊と会ってみたいしな!』
『よし、次のガチャは精霊ガチャで決まりだ!』
 




