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幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
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14.冒険者ギルド

 ギルドを出た。宿屋はまさに目と鼻の先だ。宿屋に入るやいなや声がかかる。


「あらまぁまだ太陽も高いってのにお客さんかい?って、やや!お連れの嬢ちゃんは大丈夫なのかい?」


 宿屋の受付からだった。恰幅のいい女性だ。ザ!宿屋の肝っ玉母ちゃんだな。


「あぁちょっと怪我をしたが大丈夫だ。こいつを休ませてやりたいんだが部屋は空いてるか?」


「まだ掃除も十分じゃないがシーツだけ変えるで良ければ案内するよ!一泊10000ウェンだ。食事が欲しけりゃ食堂においで!10の刻まではやってるからね。朝は3の刻から。料金は別払いで一食3000ウェンだよ!」


 街では2時間おきに鐘がなる。10の刻といえば夜の20時くらいだ。3の刻は朝6時だ。


「安いな。わかった。じゃ3泊頼む。俺はリョーガだ。今日か明日、ショーという男が来たら通してやってくれ。俺はこいつをおいて出ないといけないんでな。あと・・・俺は大食いでな。弁当をできる限り多く作ってもらいたい。一刻でどのくらいできる?」


「そーかい。一刻もありゃ20食てとこだね。だけど流石にそんなにいらないだろう?」


「いや、それでいい。合計90000ウェンでいいか?」


 金を出し、20食をさらっと了承するリョーガを見て一瞬驚きの顔をするが、すぐ元に戻る。ここら辺は冒険者商売をする上で身についた図太さだろう。


「まいどあり。でもあんた!食べ物を粗末にしたらイムサーシャ様に怒られちまうからね。お残しするんじゃないよ!」


 またイムサーシャか。


「ああ大丈夫だ。残すつもりはさらさらない。」


 部屋は2階の階段を登ってすぐ。部屋に入ってベッドを確認すると篠原さんを寝かせる。言葉の通り、肩の荷が下りた。というやつだ。篠原さんにはこれ以上治療の必要は無い。出血が多かったため、2、3日の療養は必要だろう。

 部屋はベッドが2つ。クローゼットもトイレも洗面台も風呂もない。あるのはテーブルと椅子だけだ。だがメティスに聞いた通り、綺麗だ。清潔ささえ感じるほどにチリ一つ落ちていない。綺麗と言えば街の中やギルドもそうだった。それ故に作り物の様に感じてしまう。どこぞの夢の国を彷彿とさせる。


 つまり、ファンタジー素晴らしい!


 休憩の必要は無い。と思ったが、急に身体が重く感じる。


「メティス。ちょっと身体が重い気がするが、俺の身体に何か異変が起きてるか?」


「異変と言えば異変ですが、予想された範疇かと。ご説明が長くなるのですが、急ぐ話でもございませんので、ひとまずギルドに戻った方がよろしいかと。」


 とりあえず、問題なし。ってとこだな。篠原さんにこれ以上施しはいらんだろう。ここでさよならだ。


 ギルドに戻ると受付がこちらをみる。


「あら。ずいぶん早かったのね。じゃ先に冒険者登録やってしまいましょうか。まずは全体的な説明をするわね!」


 と意気揚々に受付が説明を始める。俺はメティスから事前に話を聞いてたため繰り返しだ。

 受付による説明は要約するとこうだ。


 ・冒険者ギルドは冒険者ギルドにもたらされる依頼によって運営されている。

 ・依頼者が依頼と成功報酬を冒険者ギルドに出す。

 ・冒険者ギルドは内容を確認してクエストとして発行し、このクエストの受注者を募る。

 ・冒険者はクエストの内容を見て、自分の希望に合っていれば受注する。

 ・冒険者がクエストを成功させれば、冒険者ギルドは手数料を引いた成功報酬を冒険者に支払う。

 ・冒険者がクエストを失敗させれば、冒険者は冒険者ギルドに違約金を支払い、冒険者ギルドは返還金を依頼者に支払う。

 ・ギルドカードは冒険者ランクにより素材が異なる。

 ・冒険者ランクはFが最低でAに行くにつれ上がっていき、Aの次はS、その上がZ。

 ・Sランクは全世界で10名と決まっており、Zランクは何人いるのか何をしているのか。Sランク以上の冒険者、各支部のギルドマスター以上しか知らないらしい。

 ・ギルドカードの紛失は罰金と無償労働が与えられる。ランクが低いほど軽度でランクが高いほど重度の罰となるらしい。

 ・パーティランクは臨時メンバーを除いたパーティメンバーの平均ランクできまり、ギルドにパーティ申請をする必要がある。

 ・依頼は基本的にパーティランクで難易度が決められているが、成功の可能性ありと判断されればランクを超えた依頼を受けることができる。

 ・ランクアップは各支部のギルドマスターによって決められたランクアップ試験に合格する必要がある。

 ・Sランク、Zランクへの昇格は冒険者ギルドのトップであるグランドギルドマスターの裁量によるものらしく、そのときどきによって違うらしい。



「・・・・最後に。冒険者ギルドの理念は自由。誰が何をしようが冒険者ギルドに敵対しなければなにもしないわ。だけど冒険者ギルドの敵対者は全力で討つ。冒険者ギルドへの敵対は自由への侮辱よ。冒険者ギルドに所属する以上はあなたもそんな気概をもっていてほしいわね。


「とまぁ、長くなったけどこんな感じね。本来ならこれからランク判定試験をやるんだけど、あいにく試験官がいないわ。仮Fランクギルドカードを渡しておくから、また試験官がいる時か他の街で受付に出してくれれば受けられるわ。」


「あぁ。ありがとう。」


 長かった。自分が理解している話を改めて説明されると眠くなってしまうのは昔からの癖だ。眠気に耐えるのに苦労した。・・・・よくよく考えたらメティスに眠気を抑えてもらえばよかった。失敗したな。


 受け取ったギルドカードは木を加工したような不思議な質感だった。ギルドカードの表面には以下のような刻印がされていた。


 冒険者ギルドカード


 ランクF仮

 名前:リョーガ

 種族:人類


 受付からの話しながらカウンターからギルド奥のテーブルに移動していた。いくらなんでもカウンターで向き合いながら延々と説明を受けるわけにはいかない。


「さて、長々と話したけど、そろそろ素材の査定も終わってる頃ね。ちょっと待っててね。」


 そう言って席を立つと、受付から金貨袋を持って戻ってくる。金貨袋もまたファンタジーだ。


「さてー。明細は?必要?」


「いや、大丈夫だ。」


 安いだの高いだの交渉はする気はない。


「そ、じゃ合計510万4500Wだね。あ。先払いの10万Wは抜いてあるからね。」


 先払いでもらった10万を足して日本円で52万か。流石に命をかける仕事だが。サラリーマン時代の月給がほぼ一日・・・虚しい。


 金貨袋から金貨5枚、銀貨1枚、鉄貨4枚、石貨5枚が渡される。金貨袋をそのまま渡されるかとワクワクしてしまった。。。


「すまんが金貨1枚は銀貨にしてもらっていいか?」


「いいわよ。」


 そう言って金貨1枚と銀貨10枚を交換した。


「さて、あとはハヅキって子の情報だけど。残念だけど見つからなかったわね。冒険者ギルドの情報は各支部と通信魔法で同一のデータがリアルタイムで見られる状態になってるから精度は高いわよ。まぁ偽名で登録してるとかだと探しようがないけどね。というわけで、正確に言うと、あなたが提示した条件では見つからなかった。というのが正解ね。」


 偽名か。流石に考えてなかったが。あいつが偽名を使うかな?何か思い当たれば良いんだが。


「そうか。では人探しの依頼を頼むとしたらどうなる?できる限り長い期間で探してもらって見つかったら俺に連絡が来るようにしてほしいんだが。」


「そうねー。まぁ可能性はほぼ0よ?名前と性別と種族だけでは探しようが無いもの。しかも長期間ともなると費用もかさむし、信用できる冒険者じゃないとサボってるかどうかも判断が付きづらいし。」


「そうか。まぁ無理だとは思っていた。気にしないでくれ。」


「じゃ依頼されたことはこれで全部だけど、他に何かある?」


「そうだな。イムレスト行きの馬車はどこから出ているかわかるか?」


「イムレストね。わかるけど。落石のお陰で定期便が止まっているのよね。今領主様が落石をどかす手配をしているらしいから待つしかないわね。残念だけどこればっかりはね。」


「そうか。残念だけど待つしかなさそうだな。色々とありがとう」


 ギルドを後にすることにした。受付からはまた何かあったら気軽に声をかけてといわれたが、もう当分くることもないだろう。


『メティス。イムレストまで歩いて行くとどのくらいだ?』


『10日ほどかかるかと。』


『10日か。まぁ待っているよりはいいだろう。メティス。お前の能力の試運転だ。俺の身体を操作して、宿屋で弁当、街中で旅路に必要な資材を揃えてくれ。今日できる限り早く街を出る。』


 自分でやるとファンタジーな世界に目移りして今日中に出発は無理そうだ。メティスならこの程度容易いだろう。


『了解しました。マスターの身体をお借りします。』


 メティスの声が途切れると自分の身体が勝手に動き始める。自分の身体は動いている気がするが、自分で動かしている感触がない。宿屋で弁当を受け取る様子をみるに自分の口が自分の意図しない言葉を話すのはなかなか奇妙だ。


『メティス、宿屋のおかみに頼んで、篠原さんが起きたら門に行って身分証明をするように伝えるよう言っておいてくれ。』


『了解しました。伝えておきます。』


『メティス。俺の感覚の遮断はできるか?』


『もちろんです。例えば触覚を遮断し、聴覚、視覚、嗅覚のみにするとこのような形になります。』


 唐突に肌の感覚、立っている感覚が無くなった。着ている服の感覚も無くなり、メティスが目の前で手を広げるが、他人の腕のように何も感じない。


『なるほどな。あとは意識を完璧に停止することもできるわけだ。少し考えごとをしたい。全感覚を切ってくれ。物資の調達は頼むな。』


『了解しました。何かありましたらお声がけください。マスター。』


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