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幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
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13.イムシスの街

 篠原さんを担いで森を駆け抜けると、30分とかからず街道にでた。街道の先には街の外壁が見える。街道に出てからは小走りで歩き、外壁の一部にある門を目指す。


『街に入るのに身分証明が必要か?』


 ここまでの道すがら街に入ってからの最低限の知識や予測される展開などをメティスに確認していた。最後の最後に街に入るための身分証明について確認するなど、念のための確認でしかない。


『本来必要なのですがその場で仮登録という形で街に入ることが可能です。』



 段々と門が近づいてくる。他に門に近づいて行く人影は無い。今はまだ朝と言っていい時間だ。この時間に街から出る人はいても街へ入る人は少ないだろう。誰だって野宿は嫌だ。野宿をして朝方に街に入るならば、無理をしてでも前日までに街に入ってしまうだろう。


 案の定、門付近には列が出来ているわけもなく。門番まで素通りだ。


「どうした?街に忘れ物か?」


 門番が気さくに声をかけてくる。金髪碧眼の無骨な男が日本語で。だ。違和感が半端無い。早朝に街を出た冒険者と勘違いしてるのだろう。


「いや、旅人だ。同行者が倒れてしまってな。容体は安定しているが早く休ませてやりたい。」


「そうか。大変だったな。身分証明書はあるか?」


 よく聞くと門番が喋っている言葉は日本語では無い。俺が喋っている言葉もだ。馴染みのない言葉だが、どうやら脳内で自動的に翻訳されているような、不思議な感覚だった。


「二人とも持っていない。二人とも身分証明書が必要な都会には来たことがなくてな。」


「そうか。じゃぁこのステータスストーンの上に手を置いてくれるか?」


 もちろんこの展開はメティスも想定済みだ。焦ることもなく円形の石にしか見えない魔道具の上に手を置く。このステータスストーンについてメティスに話を聞いたときは、


『問題ありません。あのような骨董品。操作などしたい放題です。」


 ということらしい。身分を偽装し放題とか。メティス・・・・


「これでいいか?」


「リョーガか。剣士だな。よし。ステータスストーンは起きてないと効果が無くてな。そっちの嬢ちゃんは緊急証明を出しておく。気がついたら必ず門に来てくれるように伝えてくれ。」


「わかった。親切にありがとう。」


「困ったときはお互い様ってもんだ!まぁ街の中で悪さはしないようにな!あぁ。身分証明書はどこかのギルドに登録して発行してもらうのがいいぞ。街を出るなら冒険者ギルドか商人ギルドが楽だ。手続きが省略されるからな。」


「何から何まで助かる。ついでに冒険者にギルドはどっちの方角に行けばいい?」


「街に入ったら左手に曲がってすぐだ。建物は他の建物よりおおきいから分からないなんてことは無いはずだ。じゃ!良い一日をな。イムサーシャ様のお導きのあらんことを!」


 右手は握り拳で左手は胸の前で右手を掴む姿勢をとって頭を下げた。一瞬ギョッとするが、すぐに宗教によるものだと理解し、言葉を返す。


「あぁ。ありがとう。そっちもな。」


 宗教は人の自由だ。信じたければ信じればいい。街に入ると左手にすぐギルドの看板が見えた。わかりやすく冒険者ギルドと書いてある。どうやら文字も理解できるらしい。何故だかわからんが、まぁ不便はないだろう。気にしないこととした。


 しかし、なんだ。ファンタジーだ!道行く人々は髪の毛や瞳の色がカラフルだ。獣が混じったような顔をした人もいる。街の中を飛ぶ鳥は鳩のようなものからフクロウまで様々だ。馬車は馬にトカゲのようなもの。

 面倒ごとを片付けたら少し腰を落ち着けて街を散策したい。だがそれは当分無理だろう。この街にいる限り、黒崎達と再会する可能性がある。


 もう面倒なのは勘弁だ。頭を切り替えよう。多少の損やリスクは構わない。この街からさっさと脱出する。街に入るまでにメティスに話していた内容を思い返しながら、冒険者ギルドの扉を開けた。


 冒険者ギルドに入ると一斉に視線が集中する。当然だ。人を一人担いだ人間が入ってきたんだからな。室内を見回し、カウンターらしき場所がある事を確認してそちらに歩を進める。若いが気の強そうな女性の受付がこちらを怪訝そうな顔で見つめている。


「冒険者の登録と素材の買取をお願いしたい。」


 冒険者ギルドのシステムはやり取りもメティスから予習済みだ。


「あら?人族を素材として売るつもり?流石に買い取れないわよ?」


 冗談めかして対応してくる。冒険者といえば荒くれものも多いだろう。このような気の強さでも持ってないとやってられないかもしれないな。


「俺はアイテムボックス持ちだ。こいつは途中でぶっ倒れてしまってな。宿をとりたいんだが路銀が尽きてしまった。」


 インベントリ、ストレージと違ってアイテムボックスはアイテムらしい。それなりに珍しいが無いわけじゃなく、とんでもなく高価ではあるが、格納できる量もピンキリであり、低容量であれば冒険者でも手に入る代物のようだ。インベントリは収納したら内部では時間経過しない。ストレージは時間経過はするが、アイテムボックスの容量とはかけ離れた容量のものがはいる。アイテムボックスはあくまでアイテムで、持ち運びできる倉庫のようなものという認識らしい。


「そういうことね。じゃあまずは冒険者登録ね。書類が必要だから先に済ませてしまいましょ。あんた文字はかける?書けるならこことここに登録名とジョブね。」


 受付は羊皮紙のような茶色い紙とペンを取り出して渡してくる。


「あと買い取って欲しい素材は何?解体してないなら解体費用は買取金額から引いておくわ。」


「グリンウルフが19頭とグリズリーウルフが1頭だな。ここで出してもいいのか?解体は済んでいる。」


 羊皮紙に書かれている内容に目を通しながら答える。

 ちなみにメティス+インベントリで素材の解体は即座に対応可能だ。


 ガサゴソと用意していた受付の動きが一瞬とまり、また動き始める。


「あ、ごめんなさいね。よく聞こえなかったみたい。何と何が何頭?」


「グリンウルフが19頭とグリズリーウルフが1頭だ。」


 受付は今度こそ動きを止めて、こちらを凝視する。しばらく思案したあと、納得したとばかりに声をかけてくる。


「あぁ運び屋なのね。初めての仕事なのに随分といいパーティに雇われたわね。アイテムボックスも借り物ね!とんずらしたらひと財産稼げるわよ?」


 受付がニヤニヤしながら勝手に納得して話してくる。まぁこれもメティスの想定内だ。


「あぁまぁ俺も命が惜しいんでな。」


 恐らく俺が仕事を受ける際に依頼主と制約の魔法を使ったと思ったのだろう。そういう魔法があるらしい。メティス様様だ。この言葉にも勝手に納得したようだった。


 にしてもここら辺でこんなランクの魔物を倒せるパーティなんていたかしら。と独り言を話しながら受付は自分の手元に目線をもどしていた。


「素材は。。。そうね。そこのスペースに並べてくれる?」


 俺が書いた羊皮紙を回収してカウンター後ろの職員に二言、三言申し伝えると、カウンターを回ってこちら側にやってくる。


「その前に買取部所の確認をさせてくれるか?」


「そうね。二種類共に同じよ。目と毛皮に爪、牙、後はもちろん魔石ね。」


 流石に篠原さんを担いだままにしておけず、近くのベンチに横にし、言われた通りスペースに素材を並べて行く。丁寧に懐にてを入れて取り出すを繰り返した。それなりに時間がかかる。


 この世界の魔物には体内に魔石というものがあるらしい。一部では魔石を持たない魔物がいるらしいので、すべての魔物が持っているわけではないようだ。魔物の体内において魔力が結晶化して生成されるものらしく、人類の持つ魔力を蓄える器官である魔器と同等の物らしい。ちなみに人類が魔石を生成することはないらしい。これは魔物は魔器を生体器官として持っているのに対し、人類は別次元に幽体として持っているかららしい。意味不明だったのでメティスに詳しく教えてもらったが、理解はできなかった。


「壮観ね!査定に一刻くらいかかるけど大丈夫?」


『いっこく?』


『2時間程度のことです。』


 なるほど。


「あぁ問題ないが、前払いで幾分か金を貰えないか?こいつを休ませてやりたいんだ。」


「そう。じゃ100000ウェンで足りるでしょ。渡しておくわ。」


 そういうと銀貨を一枚渡してきた。日本円だと一万円くらいだ。問題ないだろう。


「すまないな。冒険者の登録はどうなる?」


「そっちは説明もあるから、余裕をもって帰ってきてくれたほうがいいわね。」


「了解だ。あぁ。それと人を探している。人探しの依頼を出すわけじゃないが、冒険者ギルドに登録しているかどうか調べられないか?」


「んーじゃ調べてみるけどそっちは半刻くらいかかるわね。名前と性別と種族、ジョブは?」


「名前はハヅキ、もしくはササネハヅキだ。性別は女性だ。人族でジョブは分からないな。」


「ふーん。ハヅキ。聞かない響きの名前ね。まぁいいわ。調べておくわね!


 よろしくたのむと返事をして、最後に門から一番近い宿屋の場所を聞く。ギルドを出て目の前の建物らしい。篠原さんを担ぎあげてギルドの出口を目指す。早くこの格好から逃れたいもんだ。


 入ってきた冒険者にギョッとされてしまった。。。


 ひとまず、冒険者ギルドに不安もあったが、メティスのサポートのおかげでとりあえず問題なさそうだ。







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