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幸福と絶望と異世界生活と  作者: ゴルハアミーゴ
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11.グリズリーウルフ

 輪を飛び出した俺は気闘法を使い、グリンウルフに目掛けて木の剣を振り下ろす。装備しているのは木の剣だ。切断面は尖ってはいるが切断能力は皆無に近い。だが、グリンウルフの真正面に振り下ろされた剣はそのままなんの抵抗もなく、グリンウルフの頭を両断した。


『外したか?』


『・・・いえ、頭部を切断。絶命しています。戦闘の邪魔になるため、死体はインベントリに格納します。』


 グリンウルフの死体が消える。あまりの文字通り手ごたえのなさに拍子抜けを食らう。


『マスター。ひとまずは戦闘に集中ください。フォローを続けます。』


 何かあったということか。まぁいい。とりあえずいけそうだ。次だ。


 手近なグリンウルフへとどんどん切り掛かって行く。首を切断して1頭、胴を切断して1頭、脚を薙いでから剣を突き立てて1頭。死体は一つ残らずインベントリ行きだ。


 そうこうしている間に輪への攻撃が開始されている。立ち止まってる暇はないか。


『マスター!後ろです。』


 メティスの声が響き、後ろを振り返るとグリンウルフが、飛びかかって来ていた。左手に構えた盾で殴りつけるように防ぐ。盾に顔面を強打されたグリンウルフはそのまま絶命し、インベントリに格納される。


 弱いな。ただ、気を緩めるわけにはいかない。メティスの予想では俺はグリズリーウルフに苦戦する。しかも全力で戦闘してだ。


『マスター!輪は乱れていませんが、そろそろグリズリーウルフが動くようです。篠原雪の前方に移動して下さい。』


『了解だ。』


 移動を開始する。グリンウルフをなぎ倒しながらだ。慢心はしない。俺は素人だしな。10数匹のグリンウルフを葬ったところで篠原さんの前方の位置までたどり着く。とはいっても篠原さんから50mは離れている。森の中でもあるし、篠原さんからこっちは見えないだろう。俺はメティスの誘導に従っているだけだしな。


『間に合ったか?』


『はい。問題ありません。すぐに来ます!』


 気をひきしめ直すと、木々の間をクマほどの大きさの狼がこちらに向かって走って来る。


 向かって来る足音のリズムが変わり一瞬だけ身をかがめる。そして体を伸ばし、俺の頭へと一直線に跳躍して来た。目は爛々と赤く輝き、口からは大きな牙と唾液が揺らめいて見える。


 そう。見えていたのだ。


 隙がありすぎるな。苦戦するというからには少し様子を見るか。ひとまずは警戒して大きくかわす。グリズリーウルフは俺の動きを見失ったのか、一瞬だけ辺りを見回して俺の姿を探す。


 トロくさいクマみたいなやつだ。現代の動物園にいるパンダよりも動きは遅い。ようやく俺を見つけると、同じように一直線に俺に迫って来る。先ほどの攻撃と同じような動きで今度は右手を振り下ろそうとしているようだ。

 ここまで隙だらけだとさすがに手を出さないのはな。悠然と右爪を交わした体を屈ませグリズリーウルフの右側面に抜ける。


「まずは小手調べだ。」

 屈ませた自分の身体をもとに戻すと同時に木の剣を振り上げる。小手調べといいつつも全力だ。俺は素人だし、手を抜くなんてことはない。


 ガッという音が身体に響き、グリズリーウルフの伸び切った体を上半身と下半身に両断していた。


 ついあっけにとられるが、即座に冷静な思考を取り戻す。


「ちっ!死んだように見えて上半身と下半身で動き出すような輩か。そんな特性があるなら教えておけメティス!」


 木の剣を構えなおして、いつ動き出しても対応できるよう身構える。が、伝わってくる匂いは濃厚な血の匂いだった。


『お見事でしたマスター。グリズリーウルフの死体をインベントリに回収しますので、もう少しお近づきください。』


 またしても拍子抜けで思わず、思わず無警戒にグリズリーウルフに近づく。死体は綺麗さっぱりかいしゅうされた。インベントリに生物を入れることはできない。つまり、グリズリーウルフは死んだということだ。どうなっている?いくら何でも弱すぎるだろう。まだ他に大型個体がいるのか?


『メティス!状況を説明してくれ。今のがボスでいいんだな!?』


『はい!マスター!状況は後程説明しますが、急いで輪に戻らなければ危険です。』


 メティスの言葉に思考が停止する。まるで言葉が通じない人と会話をしているようだ。


『危険?グリンウルフはあと数体のはずだ。何が危険なんだ?』


 こんな雑魚に危険もないだろう。話が食い違ってる。奴らがあの雑魚どもにやられるわけがないだろう。すぐに戦闘も終わりだ。


『マスター!お急ぎを!彼らはまだグリンウルフに一撃も攻撃を当てられていません。』


 一撃も?何故だ?なぜそんなことになる?状況が理解できない。理解できないがメティスが嘘をつく理由がない。なんだ何が起きている?


 混乱している中でも輪の方向へ足を一歩踏み出そうとしたところで、女性の叫び声が森に響く。さらに浦田と思われる声が続く。


「ユキーーーーーーーーーーーーーーー!」


 メティスの警告どおりと言うわけだ。クソっ!どういうことだ!


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