冒険者 41 エルフたちと 2
私たちはエルフたちの先導で森の中に入っていった。
ヒトツメの森の外周部分、まだ瘴気の届いていない普通の森の中に。
サンダリオンと呼ばれた生き物の二つに割れた蹄は大きく広がって腐葉土を踏みしめ、虎のヨミよりグレイがかった体色はちらちらする木漏れ日に溶け込むようだ。
彼らについている二人のエルフと、先頭のリーダー以外のエルフたちは、少し離れて動いているのか物音もたてない。
一番音を立てているのは・・・この私。
ふかふかの腐葉土の下の隠れた小枝を踏み折るし、不用意に触れた幹はぼろっと皮が剥がれてムカデが出て来て悲鳴をあげるし、なにより・・・。
「ぜーっ、ぜーっ、ぜーっ」
息が続かない。
私たちだけで旅してた時より、進軍速度が速いんだもの。
熊さん団長、いや、レッドさんが呆れたようにこっちを見ている。
そっちはおっきな身体をしているくせに、なんで音を立てずに動けるのよ!
(もおっ!こっちは新米冒険者なんだからっ!
おい、エルフのリーダー、子供たちの乳母にしようっていうなら、ちょっとはこっちの待遇も考えてよねっ!)
いや、もう一頭サンダリオン連れて来て、鞍無しで乗れって言われても困るけど。怖いから。
ヨミが苦笑しながら私の手を取った。
「無理をするな、遥。私を頼れ」
「でも・・・」
わたしはちょっとレッドさんの方を見る。
「大丈夫、困るようなら、口を塞ぐ」
口を・・・って、何する気なのー、元暗殺者っ。
『ま、大丈夫じゃろう。カラハンにはナンドールのような人間至上主義はない。
亜人も人も共に暮らしておるはずじゃ』
そうか、なら平気か。
これじゃ、私が皆の足を引っ張る。
「お願い。ヨミ」
ちょっとした茂みの陰へ行って、ヨミは一瞬で白い虎の姿に変わる。
その背に乗ると、マントのフラップがすっと伸びて、手綱代わりになってくれる。
出ていくとちょっとぎょっとしたレッドさんが、納得したようにうなずいた。
「なるほど、貴様、シェイプシフターだったか。
どうりでエルフの子がこわがらぬはずだ」
笑顔で迎える碧ちゃんと翠ちゃんと並ぶと、ちらとこちらを振り返ったリーダーは、俄然スビートを上げ始めた。




