冒険者 39 魔女? その4
ちょっと熊さん、そんな重大な責任感、私に押し付けてくださってもー・・・。
私が聖女じゃなくって浄化が間に合わなかったら、お国が魔獣だらけになって大変なことになるなんて。
こりゃ何が何でも、私にくっついて確かめなきゃいかんと思うだろうねえ。
ほんとに、一刻も早く神殿に行って、私の身体がどうなっちゃってるのか教えてもらわないと。
魔力万能の世界に来て、山ほどギフトをもらいながら、魔力が感知できず使えないなんて、えーい、腹が立つったら・・・。
「遥。落ち着け」
『主、体温が上がっとるぞ』
言われてはっと気が付くと、指先まで熱くかっかと火照っていて、エルフの子供たちは私にぎゅっと抱き着いて、気持ちよさそうに熟睡してた。
湯たんぽかよ!私は!
翌朝。
日の出前の薄明りの中、キャンプは準備でざわついていた。
夕べ遅くまで議論していた騎士たちは、朝になってもまだ不安げな様子だったけど。やがて大きな姿が一人、離れてこっちにやって来る。
騎士の鎧を脱いで革鎧に長剣、荷物を担いだ、燃え立つ赤毛の大きな熊さんは・・・。
もろ、山賊の親玉そのもの。
もう、似合い過ぎだわ。
うん、これはぜったい、剣より斧を持たせたい!
コスプレマニアのツボにもろにはまった姿に、ぷぷっと吹き出しそうになったら、ぎろり、と凄い目つきでにらまれてしまった。
べっ、と舌を出して返したら、ぎょっとした顔。
ふん、そっちが勝手についてくるって言ったんだからねっ!
ナンドールの青髭、もとい、青髪の騎士ガダンと同じくらいか、それ以上に大きい人だけれど、二人の雰囲気は全然違う。
向こうは大きいぞ、強いぞっていう威圧感をバンバン前面に押し出していたけど、この人はなんていうか・・・そう、自然体だ。
山のように大きいけれど、山なんだから当たり前だ、っていう感じで。
近づかれても、全然苦しくない。
いままでエルフっ子たちの世話をしてきた、奴隷商人の部下のリク君に同行をお願いしたけれど、もう、全力で拒否されてしまった。
店の主人が殺されて、おまけに違法取引をしていたとわかって、この先店がどうなるかわからない。
残った家族たちが心配だからって。
下手をすれば使用人たちも、連帯責任を取らされてしまうって。
そういえば残るヨハン君たちも、パンタールで難儀なことになりそうだ。
権限のない他国での武力行使をしたわけだし、肝心のエルフ誘拐の主犯は殺され、証拠のエルフたちもいない。
ただでさえ、聖女誘拐の嫌疑をかけられてたっていうのに。
っていうか、これ、はたから見たら、カラハン騎士団長が変装して聖女を攫って行くって図じゃない!
うわー、絶対に、他人に正体を見破られるわけにはいかないわ。
ナンドールとカラハンの戦争になってしまう。
騎士たちから瘴気酔い止めの飴玉を集めて、小袋に入れて渡しに来てくれたヨハン君に、大変だねってささやいたら、青い顔をしていながらも、大丈夫ですよと笑ってくれた。
出来るだけ早く厄介ごとを片づけて、アトス・クアトロス神殿に向かいますから。と。
そして。
「兄と共に行くそちらも、大変なことだと思います。もし、本当に困ったら」と、教えてくれた一言。
えーっ、なにそれ!本当に?
と、いろいろやっているうちに。
あたりが明るくなると、森の端にエルフたちが立っているのが見えた。




